Paris6日目(9月21日前半)

6日目前編:アルザス・サバイバル編 〜クリスティーヌ・フェルベールの店へ行く〜

待てども来やしないバスにしびれを切らす!


真っ暗やみの中、目が醒めた。時計をみると7時5分前?! がーん…寝過ごしたか…?!  もうジャムを買いに行くのも昼のバスまで待たなくてはならない?!  青ざめながら再度時計をみると、時計をさかさまに見ていただけだった(笑)。 1時25分。あぁ、よかった。ちゃんと起きられますように…。


なんとか5時半頃目覚めて、シャワーを浴びる。 そうそう、夕べも思ったのだけど、誤算だったのはアメニティにシャンプーがない(笑)。 なんかバスソープのような液体のものはあるんだけど、 …これで頭洗うんすか(笑)。おかげさまで朝の髪はごわごわ。まぁいいか。


朝食は昨日たまたま見つけたブーランジェリーで買ったブレッツェルのサンドイッチ。 トマト、タマゴ、ハム、チーズをサンドしたもの。 ブレッツェルに具を挟んだサンドイッチはParisでも日本でも珍しいが、 例えるならば塩っぱいヴィエノワという感じだ。 表皮の独特な膜のようなヒキと、逆に歯切れのいい生地の「ぱつん」とした食感。 これに、夕べMONOPLIXで買ったブドウも食べて栄養補給万全 (そういや売っていたブドウ3種類のうち2種類はイタリア産だったっけ(笑))。 荷物は部屋においたまま、6時ちょい過ぎにはホテルを出る。 11時頃までに戻ってチェックアウトすればいいだろう。


駅には早くも20分前にはついた。6時55分のバスに乗るつもりなのだが…。 …本当に来るのか?! 駅のカフェでエスプレッソを立ち飲みし待つこと20分。 しかし一向にバスは来ない! これほど心細かったことはない。 寒いし風は強いし真っ暗だし…。 今日は曇り空、時間とともに辺りは明るくなって行く。グレー色の空が広がる。 スクールバスに乗る生徒達がバス停に集まり始める。 気を取り直して別の路線で行くことを考える(=つまり途中からかなり歩くことが予想される)。 路線図をひと通り書き写し、どの場所で降りても歩けるように… (デジカメでは貴重な電池を食うので使わず)。





しかし8時過ぎまでバスは来なさそう。うーー、時間が惜しい…!  バスの路線図を穴が開くまで見つめていた私。 …ん? 下車して歩こうとしているPl.Republiqueというバス停の横に、 "GARE SNCF(国鉄の駅)"とある。も、もしやここへはSFCNで行けるかも?!  急いで駅に入り、時刻表と路線図を確かめる。1時間に2本くらいはそっち方面への鉄道がある模様! 果たして本当にこれであっているのかは不安だがいちかばちか乗ってみよう!  料金1.5ユーロ! 安い!




果たしてこのブドウ畑の向こうには?!


 



15分くらい乗車、3つ目くらいの駅(TURCKHEIMの町)で下車。 細い川が流れ、橋が花で飾られたかわいい駅前だ…が、なんにもない駅前だ。 しかし、手書きで写してきた地図通りに川があり、道がある。これだけでどっと安堵感が訪れる…。ふーー、、サバイバルぅ〜!





フェルベールの店のある村、Niedermorschwihr(ニーデルモルシュヴィル)の標識が目に入る!! よし、信じて向かおうぞ!!


 


山の方へ登って行くと、ニーデルモルシュヴィルのひとつ手前のバス停、BRANDを見つけた。 この調子なら、もうすぐだろう。だってバス停一駅分ならそんなに離れてはいまい…。





…しかし、突然家並みは途絶え、目の前にブドウ畑の山が広がった。 …こ、この山を越えるの?! 確かにバスの路線図はニーデルモルシュヴィル自体は欄外になっていたが…。 確かに唯一の手がかりであるアルザスお菓子巡りの本にも 「バスはブドウ畑を越えて…」という一節があった。ま、まさかこの山の向こうに? さっき、分かれ道があったけれど、まさか道を間違ったのだろうか?!


ブドウ畑の遠くの方から一人の女性が歩いてこちらにやって来た。 その女性に店の写真と名前を指してこの先に本当にあるのか、と聞いてみた。 しかし彼女は"TOURIST"というではないか。 この先に何があるかも分からない様子。ただの散歩をしていただけらしい。

えーい、こうなったら越えてみるしかない!! もう進むしかない!





和歌山のGAMAの時よりももっと状況は悪い気もするが(ここは外国!) ブドウ畑とその向こうに見える町を眺められたらいいなぁと、 アルザスに来る前に思っていたことだ。妙な満足感が湧いて来た。 もしかしたら、これこそ私がアルザスに来る際に望んでいた「サバイバル」なのかもしれない。 振り向くとブドウ畑の向こうには赤茶けた色の屋根の町並みが見える。 ブドウ畑を登り詰めるほど、美しい町並みの全貌が明らかになってくる。


  


ブドウ畑にもちょこっと入ったりする…悪いなぁと思いつつもつまませてもらったブドウの甘さに感動!! ワイン音痴の私としては「ワインにするのはもったいなーい!」なんて思ったりするほどに(笑)。 (ワイン通の方々、罰当たりな私の言動に関する一切のクレームはお断りします(笑))





この景色をみるために、アルザスに来たのかも…とすら思う。 ここまま歩いてその先になにもなくても、なんかそれはそれで満足して帰れそうだ。

…いやいや! 目的は目前に迫っているはず! 臆せず進めー!



ニーデルモルシュヴィルの村に到着! メゾンフェルベールへ





15分くらい歩くと山の頂上に差し掛かり、そして遠くには集落が見えた!

間違いない、あれがニーデルモルシュヴィルに違いないー!


 


村は本当にこじんまりとしていた。 店らしきものはない。「本当にここか?」とまだ不安はぬぐえない。 そうか、そう言えばフェルベールのお店は、 村唯一のお店であるので雑貨屋さんも兼ねている、と書いてあった。なるほど。


 


そして、ひとつのパティスリーを発見!! 入り口には"EPIS"とある。窓にはクグロフ型が並んでいる。 看板には"FERBER"とある! ここだーー!!! まさに町の雑貨屋さんという感じで、野菜や雑誌、惣菜、郷土土産なども売っている。 ふと、うちの田舎を思い出す。祖父母が北海道の過疎の集落で雑貨屋を営んでいる。 それこそ「なんでも屋」なのだ。…それに似ているのだ。 違うと言えば売り物と客足の多さ、か(笑)。日本人観光客ぽい御一行が来ていたのだ。


その横で、修行中の日本人の女の子の職人さんの姿が目に入った。 彼女の案内で、日本人の観光客御一行さんたちがなんと厨房に入っていくではないか。 突っ張る私は、「私は団体客じゃないのよ、『個人』なのよ!」と心の中で見栄をはり(笑)、 そしらぬふりをしていた。…いや、そしらぬふりをするべきじゃなかったのかもしれない。 5分ほどで御一行は「やっぱり厨房は暑いわね〜!」などと言いながら出て来た。 私も「一緒に見せてもらっていいですかー」の一言さえ言えたなら…! くぅぅ〜!





ジャムはあまりに種類があって選びきれない!! 手に取っては戻し、また手に取って…の繰り替えし。 トレードマークの赤い水玉の布がかぶさっているものが概ね6ユーロちょいで、 緑色の水玉のコンフィチュールもある(野菜を使っているもののよう)。 手前に並ぶ、布がかぶさっていないものは「御自宅用」ということで1ユーロ程度安め。 大きめの瓶には各種コンポートなど…。いったいどれくらいの種類が並んでいると言うのだろう!  ここはあくまで「パティスリー」。お菓子も色々並んでいる。 もちろん、パンも。迷ったものの、ここでパンを買うのは止めておいた。


内心、さっきの日本人職人さんが出て来て「日本からお越しですか?」 とでも声をかけてくれんかなぁと淡い期待をしながらお店を延々うろつくこと30分(笑)。 若女将らしきマダムにわざと「このグリオットとローズのジャムはありますか」と、 日本での掲載誌(Cafe&Sweets)を指差して尋ね時間稼ぎしても無駄だった (実はもう見つけていたのに(笑))。


ようやくジャムも8個くらいに絞り(全部食うのか! 持って帰れるんか! と心の中で突っ込み) それとタルト・オ・フレーズ(2ユーロくらい)と、 クグロフのプティ(プティといいつつでかい。4.3ユーロくらい)を買う。 一度、店員の女性がひとり、厨房に入り別の日本人の職人の女の子を呼んで来た。 「ほら、日本人が来ているわよ!」というように。 ちらっと出て来た日本人の女の子と目があったが、すぐにひっこまれてしまった。あぁ。


お会計は40ユーロを越えた。確かにたくさん買ったけど、やっぱり高いわ(笑)。 カードで会計中に、ジャムを段ボールに詰めて梱包をしてくれている。 …段ボールをそのままぽん、と渡された(笑)。 あのー、、、なにかヒモとか取っ手とかつけてくれないんでしょうか…。 車で来たわけではないんです…。バッグには入らないんです…。 …なんて不粋なこと言えるわけがない。 おそらく彼らは私が歩いて来たなんて思っていないのだから!






店の外に出て、まずは買ったばかりのタルトをガッツきたい!! 外で食べるのはお手のもの、段ボールの上にタルトをおいて、おもむろに…。 おぉっと、雨が降り始めている。急いで食べないと! 





小粒の真っ赤なイチゴがぽんぽんと、軽いクリームの上に乗っている。 薄らかかったジャムの効果もあって、イチゴがものすごく甘くてなんて美味しいのだろう!!  たっぷりと敷かれたゆるいホイップクリームはむしろ甘さ控えめ、 タルトはしっかりとハードでバターが香ばしい。 とても素朴で、決して洗練されたものではない。飾りっ気のないストレートな組み合わせ。 そこが、私の嗜好に見事ビンゴしてしまったようだ!  文字どおり「ぺろり」と一気食い!  あー、これを食べるためだけでも来た甲斐があったかも…。


しかしここからがまた大変だったのだ。 来た道を歩いてブドウ畑を下山しなくてはならないのだが、 帰りは8個のジャムの入った段ボールを抱えているのだ。 一応手提げ袋を持って来たのだが、段ボールを入れて持つと、 なんと手提げが重さで切れそうになっている(笑)。 結局腕に抱えて下山する羽目に。だんだん雨が本降りになって来た。 山のふもと、駅の辺りにつくころにはずぶ濡れになっていた私…。 場所は違えどこれもGAMAでのサバイバルを思い出す!


タッチの差でコルマール行きの鉄道が行ってしまう。あ〜れ〜…。 次は11時半! 1時間半も先だ。さすがにこの雨では歩いて帰れない。 このままバスも来なかったら…ホテルのチェックアウトもまだだし…追加料金取られちゃったら… などといろんなことが頭をぐるぐる駆け巡ったがバスはすぐに来た。 え、1ユーロ?! 安い! コルマールまでは20分くらい。 さすがにこの道のりを歩くのは無謀だったわ。ほっ。


駅からホテルに戻り、身支度をしてチェックアウトをする。 滞在税0.7ユーロを支払って問題なく去る。 …に、荷物がめちゃくちゃ重い…!! そりゃそうだ、ジャムがあんなにごろごろ入っているんだから。 ショルダーバッグが肩に食い込んでくる。…これで今日一日旅行を楽しめるのか?



フェルベールでのお土産披露 〜8つのコンフィチュール〜


 


購入したコンフィチュールは8点。

・ゲウシュトラミネール(アルザスワインの銘柄)のジュレ、バラ風味

・アプリコット+グリオット+オレンジ+レモンのジャム

・マダムのためのコンフィチュール(アルザス産グリオットのバラ風味)

・ルバーブ+アルザス産リンゴのジャム カラメル風味

・アルザス産ミラヴェルジャム

・アルザス産ミラヴェル+バナナ+レモンのラム酒風味のジャム

・アルザス産ミラヴェル(パンデピス用スパイス入り)

・アルザス産ミラヴェルとカルダモンのジャム


以上、厳選に厳選を加えた…わりにはミラヴェルだらけになっていた(笑)。


 



どれもフルーツがごろごろと粒状に詰まっている。 素材の味を活かしながらも甘いものは甘く、どれもが贅沢な味わい。 「いったいどんな味がするの?」と蓋を開け、スプーンですくい、 胸の鼓動を高めてから一口運んだ、そのあとの感嘆!  いろんな素材が混じりあっているのに、 決して混乱せずに、ひとつの統一された「新しい風味」となって生まれ変わっている。 特に洋酒やバラやスパイスを効かせた「○○風味のジャム」がどれもインパクトが強い。 日本では1500円くらいするので値段分の美味しさを堪能できるかは私には自信がないが(笑)、 少なくとも、この「サバイバル」の末に手にしたアルザスのジャムたちは、すべてが私の宝物。


(*帰国後に同じ時期にアルザスへ行った友人と、 お互いの買って来たジャムの品評会を催した。 DIARY2004年11月21日参照!)



クグロフ食べ比べ(4)メゾン・フェルベール


 


アルザスで4個目のクグロフ! これはいちおうプチサイズなんだろうけれど、 直径20センチくらいはあるので私にはでかすぎ(笑)。 粉糖が別添されており、食べる時に振りかけるようだ。 外はカリッというよりはサクッとした感じで、思ったよりも中は水分が抜けていた。 わずかにまぎれているレーズンやアーモンドは時折口に含まれる程度なので、 「味」「具」としての役割よりも、あくまで「アクセント」という感じ。 やはりこれも甘さは控えめだ。たとえ粉糖をたっぷりまぶして包み込んで放置したとしても。 しかしお菓子としての甘さは控えめであるけれども、 パンとしてはじわじわと湧いてくる甘みがある。 口当たりは地味で、極めて素朴であるのに、後味にタマゴやバターの余韻がじんわりと残る。 軽く温めて食べるとより味の輪郭がくっきり浮かび上がってきて美味!  飽きの来ない味、とでもいうのだろうか。 …いや、結局これは冷凍保存したゆえ、人にお裾分けするタイミングがなく、 一人で10回に分けて食べる羽目になったので、さすがに最後は飽きた(笑)。罰当たり!



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