22-2.7月関西 二府二県パン紀行 〜和歌山GAMAと京都の夜〜




*1日目:大阪編はこちら



「大阪篇」でも書いたが、私は本来この日は別の予定が入っていたのに

直前ドタキャン(直前だからドタキャンなんだが)。

とことん気持ちが落ち込んでおり

「なんでこんな日に大阪にいるんだーー」と

気持ちがめちゃくちゃに暗かった。


すべての予定が狂ったので急いでプランを立て直す。

夜は京都の千本出水にあるパンとワインのお店に行くことに決めた。

京都在住の友達にも(2日前に突然に)連絡してみた。


そして夜までぽっかり空いてしまったこの半日をどう埋めようか。

もちろん「パン屋さん」に他ならないのだが(笑)、

例えば京都とかで2軒3軒とパン屋さんを巡ったところで

この気持ちは晴れるだろうか?

むしろむなしくなってくるんじゃないだろうか?

それくらいにブルーだった私(笑っちゃうくらいだ)。


落ち込んだ時に私は歩く。

いや、落ち込んでなくても歩くが。

歩くと余計落ち込むことも多いが

(だってやることないから頭の中でぐるぐる悩む(笑))

今日はひたすら頭をからっぽにして歩きたかった。


「行って帰ってくるのに半日はかかるパン屋さんに行きたい!」

「歩いて歩いて、たった1個のパンを食べたい!」

「ものすごくものすごく鳥肌のたつようなパンが食べたい!」


そこで突然思い立ったのが和歌山県橋本にある窯(GAMA)だ。

大阪に行く前夜にHPを見ていたところ、

最寄り駅から徒歩50分とある。

(車で行くことは考えていない)


「もし道に迷ったら村人に聞いてください」

「不安になるような道のりです」

みたいな言葉がHPに書かれているのに大ウケ。


どんなところにあるんだろう。

どんな人たちがいるんだろう。

どんなパンがあるんだろう。


台風が間近に迫るこの日に、私は難波から南海鉄道に乗り、

1時間程度かけて「御幸辻」に降り立った。


この時点では、はるかにハードなトレッキングに

なるとは想像もしていなかった…。







到着は12時50分ころ。

徒歩50分なら、13時40分ころには着くのかな。

ここに来るまで車窓がどんどん山奥になっていったが、

この御幸辻の駅前は取りあえずそこまで山奥ではなかった。

雨が降っているが、取りあえずいけるところまで行ってみよう。

バカなことにHPの地図はプリントしてこなかったが

いざとなれば村人に聞けばいい(笑)。





野菜の直売もある。

「のどかなところだなぁ」

この時はまだのんきにのどかなことを思っていた。




15分くらい歩いたところで、どうも道が違うようなので

一度お店に電話をしてみた。


「みゆき台って看板が見えるんですが…」

「そっちではないですね。道のりにずーっと行っていただいて

子安地蔵をさらに越えた奥です。お車ですよね?」

…いえ、歩きです」

「歩きですか?」


わからなかったらまた電話ください、とのことだった。

またわからなくなったら電話しよう。

この迷子でロスタイムは15分くらいだろうか。

だいじょうぶだいじょうぶ。

そう楽観的に考えながら友達にメールなどをしながらウォーキング。

今日は友達からたくさんメールが来る日なのだ。

「今、山ン中にいるよー和歌山だよー」


のんきにメールを打てたのもここまで。

しばらくすると電話の電波が入らなくなるのだ…。




m「すみません、パン屋さんはどちらですか?」

村人1(私を見て警戒感を示した太ったおばさん)

「子安地蔵さんのさらに先だけど、そこにこんな変な看板がでてるから。

でも、かなり先よ。歩いて?(いぶかしげな視線)」


キーワードは「子安地蔵」!

よしゃ、そこまで行けばなんとかなるだろう。




歩けどもなかなか子安地蔵は見えてこない。

また太陽が照りつけ出し、汗をかいてきた。

なかなかしんどいなぁこの坂は…。




お、商店を発見!

冷たいものを飲んでおこう。





ぎゃおう! ビール!!

こりゃ飲みたい。しかし飲み過ぎるとパンが入らなくなるなー。

ということでちびサイズを購入。





ほんの一瞬でなくなってしまった。

あぁ、早く到着してすかっとビールを飲みたいなーー。


もう少し進むと、小さな神社が見えた。

なにかトトロとかそういう世界を思い出させる風景だ。







これが子安地蔵かな?

だとしたらもうすぐだね! もうすぐ食べられるのかな−…

と賽銭を入れて手を合わせ、お参りした。

看板は出ていなかったのでここではなさそうね、子安地蔵は。





さっきから果実畑に遭遇する。

よくよく近付いてみると、柿!

私は青い柿をみるのは初めて!

こんなに暑いというのに、

もう秋がスタンバッているんだなぁって思う。





のどかな風景が続く。

しかしこんなところにパン屋さんがあるのか…。

いったいいつになったら子安地蔵はあるのだろう?





おぉーー!

あったぞ子安地蔵!

小さいけど、看板もある!

「山田の奥」と書いてある。

山田?

山田の奥…というのは山田さんちの奥ってことかしら。





子安地蔵の裏手の道は、いよいようっそうとした山の中だ。

下手にこちらに下って行って間違っていたら戻るのは大変そう。


m「すみません、パン屋さんはどちらですか?」

村人2(工事現場の誘導のおじさん…村の人じゃないかも…)

「パン屋さん? 知らないなぁ…。

あ、でもそこの子安地蔵さんとこはこの辺りの地主さんだから

そういうこともやっているのかも。きっとその中だよ」


そこで私は子安地蔵に入ってみた。





なんかちょっと変わったお寺だった。

ドラえもんとドラミちゃん…じゃなかった、キティちゃんがお出迎え?!


  


m「すみません、パン屋さんはどちらですか?」

村人3(お寺の管理人さん?)

「ここにはないよ。

山田って言ったら、この先の道を下に進んで行ったところに

看板が出ているからさ、そっちだよ」


なんとー。山田と言うのは集落の名前だったのだ。

(というか、工事現場のおじさん、テキトーだな(笑))

結局その坂を下って行くことになった。

子安地蔵さえ着けばもうすぐと思っていたのだが。





お寺の上空には鬱蒼とした雲が広がってきた。

空が鳴っている!

本当に「これから台風が来るぞー−」という

どろんどろんとした音が天から鳴っているのだ。

山の緑が無気味に合唱している。まじで恐いと思った。





「山田」の集落の看板はまだ見えてこない。

いったいどこまで行けばいいんだ?

と、目に入ったのは薪が積まれた建物。

窯でパンを焼くんだから、きっとここかな?!

…と思ったら全然違った(笑)。





ぉぉーー!

看板2個目発見!

やはりここでも書かれているのは「山田の奥」。

上をみると、「山田こっち」みたいな看板が出ている。

そして私は「山田」という集落の中に入って行った…(と思う)。





すぐ近くに3個目の看板。

胸が高鳴る! もうすぐかしら?!

鼻を大きく開いて息を吸ってみたがそれらしき匂いはしない。

…もう焼き上がっちゃったのかしら?






遠目からはなんだかそれっぽいものが!

っと近付いてみるものの違ったりする。

ツタの絡まったテラス(?)ぽいのがそれっぽく見えたのだが…。

こんなことの繰り返しだった。


…歩けども歩けども辿り着かない。

どうやら、山田の奥、ということは、

山田と言う集落の、一番奥地ということなのだろう。

ということは、こうやって家が見えている間は

まだあらわれないって事なんだろうなぁ…。

もうとっくに電話も通じなくなっているし、

また太陽はじりじり照りつけるし

ひたすら信じて歩くしかない!





4個目の看板!

すぐそばに商店があった。

そういえば、お店自体もこれまでに2軒くらいしか見ていない。

取りあえず少し休まなきゃ…。

もう1時間は歩いている。

商店でアイスを買った。ここのおばさんには何も聞けなかった。

(聞くパワーがなくなっていた(笑))


村人4(商店のおばさん。かなり無愛想)

60円」

m「…ぇえ? 60円?」





そういや、このアイスは懐かしい!!

小さいころ、ガリガリ君や雪印バニラバーやチョコバーと共に

うちのばあちゃんちで売っていたなぁ。未だに60円かー。

今は立派にカロリー表示もされているよ(笑)。


誰もいない保育園の入り口の側でアイスをかじる。

少しでも日陰に入ると気持ちの良い風が吹く。





気を取り直して歩き続ける。

山の天候は変わり易いのだろう。

また天気が崩れてきた。さっきの風景とはまた変わってきた。

雨が降っては止み、太陽が照りつける。

この繰り返しだった。

雨は時にシャワー代わりとなってくれた。


あまり人が歩いていないのだ。

かといって、ドアを叩いて「すみませーん」なんていう勇気もない。

そこに1軒の庭先で若い奥さんが掃除をしていた。


m「すみません、このへんにパン屋さんは…」

村人5(若奥さん。ちゃんとお化粧している)

「あぁ、ありますよ、この先ずーっと行ったところに

私は行ったことはないけど、ちょっと歩いていける距離じゃないですよ?

ずーっと先ですよ?!」


ぐわっしゃー!

これだけ歩いてこの時点で「まだまだ先ですよ」なんて言われちゃった暁には

ほんとに「とんでもないことに足を踏み入れたなぁ自分」と

ちょっと恐くなった。


本当に延々と歩き続けた。

無我夢中に歩いているから、

来るまでのローテンションだった原因のこととかも

いろんなことも頭から抜けていた。

ひたすら「山田の奥はどこぞーーー!」と

頭の中で叫んでいた。





ほとんど家がなくなってきたところについに5個目の看板を発見!!

うぁーーー、なんつー小さな看板!!

歩きならかろうじて読めるけど、

運転しながらだったらこれはわからない、絶対に。

車だってこれは確かに不安になるわ、この道のりは…。

いわんや「歩き」をば(笑)。





その看板からが本格的に「山奥」になっていた。

鬱蒼とした山道だった。

おぃおぃ…まだ歩かせるのかい?!

家なんて全然ないんですけどっ!





おぉ、ここ?!

…と思ったら違った(笑)。

いい、もう期待しない!(笑)。


汗みどろ…血みどろ…どろどろ…。

意味不明な言葉が頭の中を駆け巡る(笑)。





そんなとき、ふと遠くに音楽が聞こえてきた。


「♪」


近付くに連れて音が大きくなってきた。


「♪♪♪」


妙にごきげんな音楽だ。





うーあぁー!!

こーこかーー!!

もう泣きそうになりながら駆け寄る私。

ここですかーー、本当にここなのねー!!

あぁ、私はようやく辿り着いたのだーー。

時計をみると2時半近く。

90分も歩いていたのか…。





私の後ろを追いこして行く車は一台もなかったので、

案の定お客さんは一人もいない。





おぉ、これがGAMAの窯!!

外にむき出しになっている。ワイルドだー。





小屋を開けると、大音響がぼわっとあふれた。

無骨なパンたちが目に飛び込んできた。


「こんにちはー…!」

「さっきの電話の方ですかーようこそいらっしゃいー」


およそこんな山奥には似合わないほど

若くて素敵なカップルがいた。

パン屋、ではなくて、アーチストという感じだ。

店の中にもアフリカン雑貨が並べられている。




「ありがとう! ここまで…」

えぇ、えぇ、来ましたともーーここまでーー(泣)



パンが食べたい! そこに待ち焦がれたパンがある!

どのパンにも、「酒と食べればこりゃうまい!」「たまらんー」みたいな

酔っ払ったようなコメントがついている(笑)。




「ビールのあてパン イタリースペシャル!!」

そんなこと書かれちゃ…これが飲まずにいられるかっ!(笑)



酒を飲み、パンをかじり、風と山の音の中で眠る…。

そんな生活をここでこの方たちはしているんだなぁと

うらやましくなるような、力がぬけ切ったコメントばかりなのだ。



 


左の画像は、木の実とドライフルーツのパンたち。

右の画像は、胡桃の田舎パン、フォカッチャやベーグル。



基本は量り売り。

値段は安くはないと思うが、見るからにそれだけの手間が掛かっている。

あまり考え無しにあるものを少しずつ全種類トレーに載せた。




表にはにゃんこさん。

私もお外でいただきましょうか…。




道標「SHADOW AVE 藤山正道」

30歩先に川床が見えるのだ。


小屋の裏の方に、なんと川床があるのだ。





雨が降った後なので、泥んこまみれになっているところを

ござを敷いてくれた! ありがとうございますーー。


GAMA「好きなだけゆっくりして行ってくださいね。

はだしになって水に浸かるのもありです(笑)」

m「それでそのまんま川下まで流されちゃうのもありですかね(笑)」




セネガルのトロピカルジュース「ビサップ」。



再び一人になった私。

風がこれまでの汗をすべてぬぐい去って行った。

せせらぎと、虫の泣き声と、風に揺れる木々の音だけしか聞こえない。

(もといアフリカンアコースティック)

私はこういう風景で夏の1ヶ月を過ごしたことがある。

奥多摩の山奥で住み込みのバイトをしていたことがある。

あの時も、本当に「これは心の洗濯に来たのだ」と思ったのだ。


こんなところでパンを、大好きなパンを食べられるなんて…!!

そんな場所があるなんて思いも寄らなかった。

そして…このパンたちが、想像を遥かに超える美味しさだったのだ。




ベーグルはもっちもち!

そしてものすごーーく美味しい〜!!

今日のはいつもより重たく出来たというらしいが、

いや、、これくらい重たい方が、小さい方が嬉しい。

ヨモギは、草餅よりもヨモギ臭い!(笑)

やけにリアルなヨモギ臭さだ(笑)




これはプレーンなのだろうか?

すくなくともエッグではなさそうだけど…。

ウコンかなぁ(笑)。




激しく美味しかった胡桃パン(の裏側)。

形はぼこぼこだし、しかもこんなに焦げちゃっているのだが、

この焦げの部分がめちゃくちゃに甘くて美味しい〜!!


トップの画像のココナッツとショコラのパンも、

フォカッチャも、すべてのパンが、

本当に本当に本当に美味しかった。


表皮はパリッというよりもむしろぼろっザクッとしており厚みがある。

そして非常に深みのある独特な味わいが。

いいようのないワイルドさ、豪快さ、

タブーと呼ばれるようなものも、わはは、飲め飲めーみたいな

アバウトに笑い飛ばしちゃえるような自然体なパンたちだった。

もっと個別に具体的に書き記したいけれど、

今日はここまでにしておきたい。

すべてが一言で済んでしまうからだ。


「美味しい!!」




こちらのパンは通販で買う人が多いと思うが、

十分すぎるほど美味しいと言う評判を聞いていた。

もちろん、このパンならきっと翌日でも、どこででも美味しいと思う。


しかし、私には想像ができない。

この緑と、この音と、この風を

一緒に体験しながら食べるパン以上に

美味しくいただけることなど想像できない。


まるで世界の中心に自分しかいないみたいな時だった。

すごくごう慢かも知れないけれど、この日の私は

「一番GAMAのパンを美味しく食べた人間だ」と

そう思えてならない!!





「ハル社長」。とても日本的なハンサムボーイだ。


風が強くなってきたので川床から引き上げた。

駅までクルマで送ってくださるというのだ。

あぁぁ、、かたじけない、、ありがとうございます。。。




トイレを拝借してお家をでると、なんとまぁタイミングよく

嵐のような雨がざぁぁーーと山を通り抜けて行った。


ありがとう。また来ます。

気持ちに迷いが生じたら、ここのパンを思い出します。

心の洗濯をしに来ます。




クルマの中で話を聞くところによると、

この道のりは迷わずに一心不乱に歩けば50分で歩けるらしい(笑)。

えぇぇ…(疑いの目)…本当ですかぁ?(笑)


それに「不安になりそうなころにやっと見つかる」「見落としやすい」と

評判の看板(笑)については、

…もっと増やさなきゃと思いつつ…

かれこれ3年経つんですよねー(笑)」


歩いてくる人もやはりいるらしい。

みんなトレッキング気分とのことらしいが、

私はどっちかというと出発前はローテンションだったし

「お遍路さん」でもしているような気分だった(笑)。



***



こうして和歌山への旅は終わった。

難波へ帰り、靫公園近くのホテルに戻ったのはもう17時近く。

さすがにもうホテルでくたばっていようと思ったが、

京都で約束をしたので、全身シャワーを浴びて再度出発。

我ながら阿呆みたいにタフ!!

というか、欲張りすぎ?!


(京都でのここからの画像はすべて消去してしまった…!!!

悲しい…悲しすぎる…!!

なのでここからは言葉だけでお送りする…)


シャワーで汗、泥、血(蚊に刺されまくった)を流し、

すっきりした身体で阪急電車に乗り込む。

京都に到着して、バスに乗り継いで千本出水にかけつける。

もう8時だ。友達は来ているだろうか?


サイトで調べた通り、バス停から降りて、路地に入って行く。

え? ここで曲がるの?

え? この砂利道を入って行くの?!

看板は暗すぎて全く見えない。

あぁ、なんかこれって、小学校の時の肝だめしを

ひとりでやっているような感じだよ。

…と、背後からぼんやりと友人の姿が。

おぉぉ、久しぶり!

ヨクキタネー


その古い、一軒屋をがらがらと入って行く。

人様のお宅そのまんまという感じなので、

ついつい「お、おじゃましますぅぅ」とか細く言ってしまう。

本当に古い建物だ。

風が吹いたらミシミシっと家鳴りしそうな、

でもとても手入れが行き届いており、

調度品や家具、すべてにおいてこだわりを感じる。

マスター(と呼んで良いのか?)の好きなものだけに

囲まれた、穏やかで静かな空間だ。


客人は私たちだけ!

大きなテーブルが一つだけある10畳くらいの広間に、

私たちだけが向かい合って座る。

窓の外には、ライトアップされた庭がぼんやりと写し出される。

そして、スポットライトを浴びたパンたちが陳列されている。

あぁ…!


一足踏み入れた瞬間に、私はたちまちこの店の虜になってしまった。


(なおさら、画像を失ってしまったことを悔やむーー!)



まずはオーガニックビールで乾杯。

料理は、「適当にお酒に合うものを」とおまかせにした。

お酒に合うもの、パンに合うもの、シンプルなもの、

そして、マスター自身が好きなもの。

きっとしいてこだわりをあげるとするならば、

「自分の好きなもの」なんだ。

それが、一番のこだわり。


そのごくシンプルながらも非常に奥深い美味しさの料理と、

チーズ(一皿目は匂い控えめ、私たちが臭いチーズ好きとわかると、

二皿目ではクセのあるものを出してくれた)

ワインも、イチオシのものを開けてくれた。

(しかしつくづくワイン音痴の私…美味しくてもそれを忘れてしまうのだ(笑))

パンで特に美味しかったのはキャラウェイの入ったライ麦パン。

それらを盛ったワンプレートはふた皿目もいただいてしまう。

なんて素敵なひと皿だったことだろう。

そしてマスターとの会話。友人との会話。

私だけに与えられたこのひとときを、私はうっとりしながら浸っていた。


もしかしたら、当初の予定がキャンセルになったのも、

この店に来る時間をつくるための「流れ」だったのかも知れない…。

それくらいに、夢のような、

いつまでも醒めたくない居心地の良さがここにはあった。


昼来てもいいかもしれないが、

なんとなくもったいない気がした。

「パンを出す店」「ちょっとナチュラル志向ぽい」「クラシックな雰囲気がいい」

ただそれだけで済ませてしまっていたことだろう。

昼では知り得なかった奇跡みたいな時間がなかったと思う。

私はまた夜に再びお酒とチーズとパンをいただきに来ようと思う。

そのときはまた、こうやって静かだといいな。


(そうかー。もしここで画像がしっかり残っていたら

あの美しい画像がここに掲載されたらみんな殺到しちゃうもんなー(笑)

ある意味これも「流れ」なのかも…)




そして深夜大阪に帰ってきた。

起伏に飛んだこの1日を私はきっと忘れない。

自分にとって、とても節目のあるこの日の事を。




★ 神戸篇につづく ★