Paris4日目(5月1日)

メーデーに泣く! 空回りパン巡り編

行けども行けども休業のパン屋さん


あいにくの曇り空。いまにも雨が降りそうな重くて冷たい空気。 部屋を出たときから「なんかヘンだ」と最初に気付いていたのに、 一軒目のパン屋にたどりついたときにようやくわかった。


今朝、最初に行こうと思っていたのは、日本でも知られているムニエ氏の店、Boulangerie Patisserie MEUNIER Duc de la Chapelleである。 18区の最寄りの駅は人通りの少なさもそうだが、がらんとした住宅地で、観光客は全くの無縁の町である。





そのパン屋のある通りがあまりに静かすぎたので、見事にその店を通り過ぎ、 そこにパン屋があったから「ここか?」と思い込み全く別の店に入ったのである。





絶対ここじゃないよなぁ…と思いながら、とりあえずパンを物色。 アルジェリア系のお菓子が並んでいたような記憶もある。 とりあえず私が選んだのはパン・オ・レザン。 だってだって、あまりに「卵焼き」みたいなルックスで、ぐっちゃりぺっちゃんこで愛嬌あり(笑)。 シュワシュワした食感はルックス通りの見たまんまの味で、例えるなら「レーズンの入った明石焼き」(笑)。





今来た道を引き返した途中に、ムニエ氏の店はあったが…あぁ…。 厨房には仕込みをしている人はいるようだが、休み…!


そうか!

今日って、メーデー?!

そうだった。そうだったのだ。国民の祝日だったのだ。 MSMの修道院が5月1日は閉館しているのを調べていたからこの日程で旅行を組み立てたのに、 すっかりそのことを忘れていた。Parisの街は、まるで眠ったかのように静かだった。 静かすぎて不気味なほどだった。曇り空が辺りを灰色に染めて、一層不気味だった。 …あちゃー、、明日Parisを出発するから、 パン巡りも、お土産探しも、雑貨巡りも、全部この日にやろうと思っていたのに!


このあと、チェックをしていた18区のパン屋さんをしらみつぶしに行くが、 月曜定休のパン屋の多さと(←日曜日と同じくらいに月曜定休のパン屋がとても多いのである) 5月1日という祝日がバッティングして、ことごとくどこも閉まっている!!





たまたま開いていた一軒のパン屋さん(レトロドールを使用している模様)でフルートを一本買う。 最初の数口は可もなく不可もなくだが、後味にじわじわと甘みと旨味が来るので3口目からが旨くなってきた。 位置的にはサクレクールの北側、クリニャンクールとの間くらいだろうか、 腹ぺこ状態でフルートをちぎりかじりしながらこの付近をふらふらさまよう。


街角では空いているのは一部の商店とカフェ、花屋だけ。 メトロの出口や路面にもやたらスズランを売る屋台が出現していた。 メーデーだからであろうか、まるで正月のしめ縄売りのように、道ばたはスズラン売りだけは溢れていた。 スズランはいいからさ…私はどこで何をすりゃーいいんだよぅ?!




前回一番感動したMADAMEのクロワッサンとの再会…


「今日はパンを買ってリュクサンブール公園でピクニックするんだ♪」

と計画していたのにこの天気とこのパン屋全滅状態では…計画実行不能?! いやいや、諦めてなるものか。まずは前回一番感動したクロワッサンの美味しいBOULANGERIE MADAMEへ。 いつも滞在しているバビロンの部屋から歩いていけるところにあるので、 この店に来るのは3回目である。どきどき…開いていますように…。





ほっ…。開いていた…。周りはどこも休みなので、いつも以上に行列ができて飛ぶように売れている。 あのクロワッサンを手に入れた。あのとき涙がでるほど旨かったクロワッサンの味と再会?!





…と思ったら、あらま、この天気、この湿気のせいだろうか、食感が致命傷を受けていた。ひーん。 でもでも、お味は甘みは強く、相変わらず好みの味だった…。 それにしても、メーデーのバカ!!(←関係ない)


BOULANGERIE MADAME

48,Rue Madame

水曜定休




来訪3度目、Mカイザーで欲しいもの?!


MADAMEからそれほど遠くない場所に、Maison Kayserの支店がある。 私は今回、どうしてもカイザーで欲しいものがあった。パンではない。あるもの、が欲しかったのである。 考えてみたら、今回で3度目のParisパン巡りの旅で、皆勤賞なのはMカイザーかもしれない(笑)。 きっと開いているに違いないと店についてみると…。





撃沈…。やはりお休みであった…。

しかし、はり紙をよく読むと、モンジュ通りの本店の方は開いているらしい。 えー? 行くのぉ? 寒くてカラダが変になりそうだよ…。 もう疲れたよ、あたしゃ…。と弱音を吐きたくもなるところだが、 他にすることが皆無なのでがんばって行くことにした…。そう、お目当ての「あれ」を買うために!





本店はリュクサンブール公園を挟んで東の方。ここからだとかなり遠い。 それじゃリュクサンブール公園でパンをかじりながらひと休みをしよう。





あいにくの小雨…あいにくすぎる天気!! 寒いわ、暗いわ、気分は滅入りそう。 しかし、公園のベンチに腰かけ私が取り出すのはピクニックセット…もとい、チーズとバター。 昨日買って来たカマンベールと、冷蔵庫に保存しておいたバターとシェーブルチーズ。 機内食で出たナイフを持ち歩いて、いつでもどこでもパンに塗れるようにしているのだ。





これらをさっきの見知らぬパン屋さんで買ったフルートに塗って食べる。 美味しい〜♪ …けど、悲しい。このまま、どこにも行けずにこれだけで終わるのはあまりに不本意!(笑)





ようやくたどりついたMカイザー本店、徹底的に周りの店が休みの中、しっかりオープンしてくれているカイザー、 救世主のようですよ(笑)。普段も行列の絶えない店だけど、今日はいつも以上に大行列、大繁盛。


そういえば、家主さんは「カイザーのパンは高いから好きじゃない」なんて生活者らしい発言をしていたな。 パンだけは贅沢暮らしの私は、やっぱり好きなんだけどなぁ…なんてことは彼女には言えず、言葉を飲み込んだ(笑)。 日本でももうすっかりお馴染みだし、ぶっちゃけた話、「わざわざParisに来てもMKか?」 みたいな思いもあるのだが、本店に来れば納得するのである。 この店が人気があり、繁盛し、支持されているのは、当然の事だと。 Parisには山ほどパン屋さんはあれど、 ここまでパンの種類が豊富で、カッコよくて、見せ方が旨くて、活気があって、 日本で見なれているパンたちと大きくラインナップが違わないにも関わらず「食べたい!」 と欲求を駆り立てる店はなかなかないだろう。





列に並びながら、パンの棚を必死に目でなぞる。

…! あった!」

そう、「100%Pain」。この洋書を私は今度の来仏で絶対に買おうと思っていたのだ。 このカイザー氏の著書を、大阪の「お弟子さんの店」で見せてもらった時から、 その美しい「パンの写真集」を「次の来仏時には手に入れる!」と決めていた。 (*一応この本は「レシピ集」なのだが、私には猫に小判、豚に真珠(笑)、写真集として欲しいのだ) 日本の店に売られていたのは日本語訳の本で、表紙の題字が日本語であるかそうでないかの違い(←ほんとに微妙)。 私は部屋にあるディスプレイラックには、絶対仏語版を飾るんだと思い描いていたのだ。


33ユーロ…。決して安くはないが、迷わない。売り子のお兄さんに指を指してオーダーした。 「あは、これかい?」みたいな驚きと感心の表情を見せた巻き毛のイケメン君、 私は得意げに「Oui!」と答えるのである。ふふふ…。





買ったパンはバゲットモンジュのプチパンと、クロワッサンショコラ・アマンド。 モンジュもショコラザマンドもめちゃくちゃうまーい♪♪♪ なんていうか、カイザーのダマンドって、ほんとクロワッサン…というよりも「スポンジケーキ」的だよなっていつも思う(笑)。 ひとそれぞれ好みはあるだろうけど、私はこの野暮ったさのある、洋菓子的なアーモンドケーキが大好きなのである。





これは帰国後、部屋のディスプレイ棚に飾った100% Pain…。 引っ越しした時すぐに買った棚だが、この本を飾ってからようやく部屋のインテリアが完成した?! …しかしそれで満足してしまったのか、私はその後、一度も中を開いていないのである(笑)。 これこそまさに豚に真珠!!(笑)


Maison Kayser

8, rue Monge,8e

火曜定休




このあと、私は無情なメーデーの休業責めに苦しむのである。 あれも買おうこれも買おうと思っていたもの、店、ことごとく全滅。 歩き慣れているサンジェルマンエリアにまた戻って来たが、 Le Bon Marcheのデパートも、スーパーMONOPLIXも、大好きなインテリアのお店も、全滅。 あぁ、こんなことなら、到着した28日のうちに買いたいものすべて買っておくんだった!!


祝日は、バスも運休の路線が多いようで、それに気付くまでずーっとバス停の前でバスを待ちぼうけたり。 うぅ、、、寒いし疲れたし(←これ、口癖になりつつある?!)。 めんどくさいがメトロで一度部屋に帰宅。スーパーも開いてないのかよ。。。




シャンゼリゼ通りのアルザス料理再訪


店はどこもやってないし、今さら観光する場所もないし、雨だし、お腹は空いてない(これは致命的?!)。 でも、ラファイエットとか、あの辺のデパートは開いていたりするかも?!  そう思ってサンラザ−ルまで出向いて歩くが、やっぱり開いてない。とほほ…。 もう、わかりきっていたことだけど…。


そうだ、シャンゼリゼの方ならもしかしたら開いている店はあるかも?! 雨の中、うねうねと歩き出した。どこもことごとく開いていないのだが、 途中開いている店と言えばオペラ付近にあるMAXIMくらいだったかも(笑)。さすが。





さすがに観光客は多く歩いている。飲食店関係は概ね開いているが、それ以外のショップは2割程度は開いていた。 …でもブランドショップとかクルマのショールームとか興味ない店ばっかり(笑)。 ラデュレも開いていたが、2003年に来てあまりいい印象がなかったので立ち寄らず横目でスルー。行列は外まで続いていた。

…しょうがない。 まだまだ夕御飯には早すぎるけれど、もうこうなったら「食べて時間を潰す」しかないだろう(笑)。





2003年に来訪して、シュークルートに感激したLA MAISON L'ALSACE メゾン・ラルザス。 もう一度あのブータンノワール入りのシュークルートが食べたくなったのである。


2004年のアルザス来訪時に出会ったアルザスワインのゲヴュルツトラミネールはやはり美味ー!! 甘いのに、後味がスッキリしているからだ。美味しい…(ため息)。


しかし。シュークルートは…。思い出が美しかったのか、ごく平凡だった。とほほ。 ここのザワークラフトって、酸っぱくないので食べやすくて美味しいのだが、 肉が悪かった。ブータンノワールも、お肉も、なんかすっかり出し殻のような間の抜けたような…。えーん。 サービスもあまりにがさつ過ぎて最後の方は私も立腹モード。 値段も安くないし、…正直、あまり人に奨められない店だと下方修正(笑)。 …と、ここまで書いてみて、この日の私の気分のせいか、どうも辛口が多い気が…(汗)



思わぬメーデーの休業ラッシュに、いつまでも晴れない雨空に、どこに行くこともできず いつまでも空のコーヒーカップを前に起きながらぼんやりしていた。 気持ちが滅入ってなんだか席を立ち上がろうにも立ち上がれない。 もし、これが人と一緒なら、語らうだけで意味のある時間に変えられるはずなのに。


携帯でパソコンのメールチェックをしていると、思わぬメールの受信に言葉を失った。 音信不通になっていた懐かしい人から思いがけない近況メールが。 その優しい言葉は私の琴線に触れ、不意に涙がこぼれそうになった。 こういうとき、「一人旅」が寂しくなる瞬間だ。




夕日のない夕方のサクレクールの丘から


凱旋門からバスに乗り、今朝来たばかりの18区まで向かった。 サクレクールに行くためではあるが、意図せずして今朝と同じ路地をぐるぐる歩いている私である(笑)。 少し南下(坂がきつい)するとサクレクールが見えてくる。 途中、たまたま見つけたパン屋さんでドゥミのバゲットを0.42ユーロで買う。





焼き色が薄くて皮は極薄のバゲットは、見た目とテクスチャーはやや冷凍焼成のそれっぽく見えるが、 粘りのあるむちむちのクラムは食べていて飽きの来ない白米味、とでも言おうか。 味に大きな特徴はないのだが、それと引き換えに裏側の厚めのクラストがとても香ばしく感じるというおまけ付き。





サクレクールの側まで着いたころには、晴れ間がようやく見えて来た。 太陽さえ顔を出せば幾分寒さも和らぐのだ。公園のベンチに腰かけ、なぜか「飲み」ながらバゲットを齧り、 日記を書いて時間をすごす。この明るさで実はもう8時過ぎ。本当にこっちは日が暮れるの遅くて、 夕日を眺めることだけが楽しみのヒマヒマ旅人泣かせであるのだ。


サクレクール寺院の中で長椅子に腰掛けながら、またゆっくりといろいろなことを回想した。 忙しい毎日の中ではなかなか整理がつかずに放置していた、 引き出しの奥にそっとしまっておいたもの。 あるいは無造作に積み上げっぱなしにあるもの。 そういうものたちを取り出してはまたしまい、引き出してはまた戻し、 生きる者とそうでない者との間で気持ちは交錯していく。 サクレクールに来ると、いつだってそうだ。 それは整理になるのか、あるいはさらなるカオスを生み出すのか。 …私にはよくわからないけれど。





雲が重くて夕日は結局見られなかったが、ぽつぽつと点灯し始める町の灯りを眺めていた。 …なぜだろうな、そういう独り佇む日本人の女は必ずナンパされる宿命なのだろうか(笑)。 今度はスパニッシュのおじさんに声をかけられる(前はジャマイカ人だった…)。

普段全く英語がわからない私でも、「英語を母国語としない外国人の英語」なら聞き取れる(笑)。 情けないことにそれは結構嬉しいことであり、 だからかまた話がはずんでしまって、案の定、同じ流れで「とりあえずcafeにでも」と(笑)。 もちろん、丁寧にお断りして下山した。ここはナンパ橋か…。



部屋に戻ると、家主さんが在宅! わーん、3日ぶりだ。久しぶりだね、もう明日私は帰ってしまいますよ。 彼女にこの3日間の話をし、メーデーでひどい目に遭った話をし、 彼女のこちらでの暮らしぶりを聞き、私が買って来たパンを食べ比べたり、 彼女手作りのシチューの残りをいただいてプチディナーにしたり。 そう、今夜が最後の夜。 ほんのつかの間だったけれど、Parisでの最後の夜が独りぼっちじゃなくてほんとによかった。


シャワーを浴び、髪を乾かしながら天窓の外を眺めると、 11時ちょうどのエッフェル塔のライトアップがParisの街を明るく照らしていた。







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