aris+MSM2日目(2)(4月29日)

憧れのモンサンミッシェル! MSM滞在記-後編-

ふりむけば…MSM 対岸までウォーク


* モンサンミッシェル前編はこちら *






MSM島内から一本道の堤防を歩き、対岸までは約2キロ。20〜30分の道のりだ。 対岸のホテルに泊まる人たちは、私と全く逆のルートを通る。 そう、MSMに向かって歩き、帰りはMSMを背にして帰る。 常に視界にMSMの姿を入れながら歩くのは全く苦ではないだろう。 ただ…背にして歩くのはやっかいだ。…そう。立ち止まってはふりかえり、立ち止まってはふりかえる。 写真もいったい何枚撮ったことだろう。いっその事、後ろ向きに歩くか、後頭部に目玉をつけるか…。





風がびゅんびゅん吹いて寒い!! しまった、命綱(命布?)のストールを部屋に忘れて来た。 取りに戻るにはもうだいぶ島から離れてしまった。半分くらいまで来ただろうか。 まだまだ日は高く、食事をして戻るころには日はどこまで落ちているだろう。 対岸の草原には、来るときにいた羊たちはもういなくなっていた。ざ、残念! 一緒にたわむれたかった…。羊をバックにMSMの撮影をしたかった…。無念ー。





普通歩けば20分で歩ける道のりを、私はたるんたるんと、わざとゆっくり歩いた。 時に堤防に腰かけ、ひと休みをした。いくら眺めても飽きないMSMの姿を眺めながら、 いろいろなことを考えていた。そう、時間はいくらでもあるんだ。


対岸のホテル街の中に、一軒のスーパーマーケット兼お土産屋があった (生活雑貨半分、土産物半分、といったような店)。 なんだかお腹も減って来たし、なにか名産品でも買おうかと物色。 ここに限らずどこにでも売っているのだが、クレープの袋売りがあったのは笑える。 島内のあの観光地価格で食べたら一枚最低3ユーロくらいはするのに、 スーパーの袋入りクレープなら10枚入ってもっと安い。うーむ。


いつもフランスに来たら、バターやチーズをスーツケースの半分くらいにごっそり買って帰るのに、 今回の旅程は、帰りに猛暑のベトナムに寄る。だから溶けるバター類は御法度…と思いつつ、 買ってしまった、カマンベール。だって、ここはノルマンディー。 名物のカマンベールを食べずして帰れるかってのだ。





チーズを買い、またMSMの見える付近まで戻り、土手に腰掛ける。 冷たい冷たい風がびゅうびゅう吹き荒れる中、まだ体が冷えない内におやつを食べよう。 …そう、ここでまた活躍するのが非常食のバゲット。そして、カマンベールチーズ。 袋から取り出し、指で引きちぎり食べる。ふふーん、贅沢…♪


パッケージのかわいさを基準に選んだチーズ。残念、まだ熟れていなかったらしい。 まろやかさがイマイチだった。白カビ臭がこれまでないほどに強烈。 このチーズは例えるならウニのような味。高級な味、というのではなく、 磯臭いほどに塩気が強い、と言いたいのだが。 でも、いいぞいいぞ、バゲット+チーズ。 (*しかし、帰国後は一度トランクの中で溶けたせいか(笑)、とっても熟してすごーく旨くなっていた!)





今夜はなにかガッツリしたものが食べたい気もして(でも予算はあまりない)レストランを探すが、 どこも高くて目眩がする。よろよろ。そこで、一番手頃で、かつ、ムール貝(これもノルマンディー名物)があるものは…と、 一軒のファミレスっぽい外観のレストランに入った。 エントランスがファミレスっぽいが(ようこそ、Dニーズへ! …みたいな)、 中はいたって感じのよい内装。


しかし、残念ながらメニューをみても、ムール貝をメニューから探しだせず(おいおい、そんな単語くらい調べておきなさい!)、 結局、1ENTREE+1PLATEで15ユーロくらいのMENU(定食)にすることにした。

主菜を白キャベツとターキーのなんちゃらかんちゃらだったので(ボリュームがありそう)、 前菜は控えめにしておこうと、ベジタブルスープにしてみた。





バゲットはいかにも冷凍焼成で、さらにトーストしている感じでやや焦げ気味だったが。 このスープがめっちゃ旨くて成功!! レンズ豆色したポタージュで、ほんのり酸味がある。 いろんな野菜+香草+豆類が溶け込んだような風味のコクのあるスープ。 あー、たりません、おかわりウォンチュー…。





メインのターキーも成功! たっぷりのザワークラフトにボリュームがイイ意味で控えめのお肉が。 お味はマスタードソースで、かなり、かなーりディルの風味が強い。 さっぱりしていて(そりゃそうだ、これだけのザワークラフト!)すいすい食べ進む。 このボリュームなら、最後までしっかり美味しく完食できた。このことが何より嬉しい♪


いやー当たり当たり、今夜のディナー。 ムール貝食べられなかったけどまぁいいや、と席を立つ時に後ろのテーブルを見て脱力。 巨漢の一人客の男性のテーブルには、バケツ一杯のムール貝とフリッツがー。 あーぁ、そうだった。メニューで見つけられなくても、周りをみて「あれください」 とでも指差していっておけば…。まぁ、美味しかったのでいいのだ、いいのだ。




夕日と潮と風の向こうにMSMを臨む


時計はまだ20時。なのにまだまだ日が高い。 ほんとにこっちの日没は遅すぎて夕焼けや夜景を見るペース配分が難しい。 日がとっぷり暮れるまで遊ばなきゃもったいない気がする。だから散々歩き回る、遊び回る。 だから、ほんとヨーロッパに来ると毎日が体力勝負。 MSMだって、日の入りを見ようとするならやはり日帰りはあり得ないな…。





来た道をゆっくりゆっくり、日の入りを待ちながらMSMへと戻る。 来た時とは違う、MSMを見つめながら歩く一本道。 土手をくだって川辺に降りたり、立ち止まったり、また同じ道を戻ったり、進んだり。 ほんとうに一歩一歩、踏みしめながら、近づくのをためらうかのようにゆっくりと歩いた。 風がものすごく冷たい。真冬のように、肌に突き刺すような風。 感覚は麻痺してくるが、それでもこの歩みの速度をあげようとは思わなかった。


雲が多く、雲の隙間から日が差し込む時、向こう岸の防風林のような景色がまるでなつかしい十勝平野を思わせた。 その夕闇のMSMの風景は、それは言い様もない寂寥感がただよっていた。 きっと、この感覚は昼間の青空の下では味わえないものだったと思うのだ。





強い風が、次から次へと雲を流し、つかの間の切れ間を生んだ。そしてMSMに夕日が差し込んだ…!


ちなみにこの画像は2枚の画像を合成。一枚で夕日とMSMの2ショットを撮るには、 私はMSMに近づき過ぎていた。画像では伝えることはできないけれど、 この風の向こうに見えるMSMの微妙な表情の変化に、いつまでも立ち止まって眺めていた。 一瞬たりとも目を離さず。瞬きもせず。





土手を歩いていると、みるみる泥水が足元を取り囲んで来た。 慌てて土手をよじ登る。みるみる、今歩いて来た川辺の道が泥水に飲み込まれて行く。 あれよあれよ…と。ものの数分である。ちょっと目を離したすきにたちまち水の中、である。








これが満潮か…!


満潮とほぼ同時に日は落ちた。 雲が多く、理想通りの夕焼け…とは言えなかったが、感無量。というか、よくこの寒さのなかで1時間以上もじっくり眺めたものだ!!





島内に戻ると、あったはずの駐車場がすべて水没している。 うわ! 島を出る時に通り抜けた門がこの通り水浸し!! ひえー。





てことは? 門の前のバス停ももちろん水没している!  うわー、明日の朝はちゃんとバスに乗れるんかな。ちと不安。



寒さと疲れで腰が猛烈に痛むが、島内を懲りずに散策した。 さっき昼間に島内をぐるぐる歩いたときにすら見つけられなかった階段や路地をたくさん出て来た。 痛みと疲れでヘロヘロの体をむち打ち、どんどん暗くなる島内を歩き回る。 そしてひとつ気付いたのは、島内に戻ってから、あれだけ強く吹き付けて来た風は、ぴたっと止んでいたこと。 これは島内だからだろうか? それとも潮が満ちたから? 日が落ちたから? 遠くまでのびる不気味な色の地平線を見ていると、 冗談抜きでナウシカに出てくる「大海嘯」を思い出したりした(笑)。 「ばばさま、耳が痛い」みたいな(笑)。今にも王蟲の大群が押し寄せて来てもおかしく無さそうな(笑)。 風がぴたっと止まるということは、こんなに違和感を感じるものとは…。





頭上にある修道院を見上げると…。

はっ…! ぽつぽつとライトアップが始まった…!


急いで階段を降り、島の外にまた飛び出す。 その幻想的な姿を写真におさめる。 いったいこの島は、この要塞は、いくつの顔を持つのだろう?! 昼の姿とも、夕日の姿とも、また違う夜の顔。


あぁ、やっぱり島内に泊まって正解だった。この美しい姿を背にしながらあの道のりを戻るだけなんてつまらないもの!



とっぷりと暗くなるのは23時頃。またもうひとつのMSMの顔を見るために、 私は部屋に戻り、一度冷えきった体を湯に使って温め、すぐに寝られるように頭を洗ってしっかり乾かし、 ストールをぐるんぐるんに体に巻いて、再び島の外に出た。





潮の匂いと、もやのような湿った空気が辺り一面に立ち込めている。 驚くことに、もうさっきの潮は引いていた(いつのまに!)。 数時間ごとに…いや、数分ごとに表情を変えるMSM。いったいこの天空の城は、いくつの顔を持つのだろう。


二度と来ないかも知れないMSMでの夜が惜しくて惜しくて、 素直に部屋に戻れない私。 この暗闇の中、また島内を散策していた。散策…と言っても優しいものではなく、 常に階段が付きまとう。し、しんどい。腰が悲鳴をあげている! 明日の朝は9時には島を出る。…って、起きられるのかしら、私!




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