Paris1日目(4月28日)

コンクール入賞パン屋めぐりとエッフェル塔

今回滞在の拠点は15区


ハノイでのトランジット、長いフライトを経てようやくフランスに入国…。 ほとんど寝られなかったのに、着いたら朝7時とはこれまた拷問な。しっかり一日がたっぷり始まるのだ。 バスで町まで出ようと思ったが結局RER(高速郊外鉄道)でParisへ。


今回4泊分宿泊させてもらうのは、15区の日本人留学生のお部屋。 苦学生ということで、部屋の一室(といっても、居間にあたる場所なので扉はない)を超格安で貸部屋している。 15区は住宅街であり、美味しいパン屋さんが多い場所…。 なにげに自分のパン屋さんリストにも15区のお店がいくつもリストアップしているではないか。 その彼女(以下Rさん)のお部屋は、モンパルナスからも徒歩圏の、最寄り駅から至近の便利な場所。 アパルトマンの屋根裏部屋にあたる場所に部屋があった。





ほんとにこじんまりとしたお部屋。私の泊まらせて頂く居住エリアは、カーテンで仕切られる。 トイレ、シャワーなどはすべて共有。いわゆる4日間だけの共同生活である。 それにしても、センスのいいお部屋! 一目足を踏み入れた瞬間にたちまち気に入ってしまった。 しかも、窓の外には、さえぎるものがなく、エッフェル塔だけがそびえている…!


家主Rさんとはすぐに打ち解け、一通りの部屋の説明を受けた後は、 荷ほどき、シャワーを浴び、化粧をしてから一緒にメトロまで部屋を出る。 う、うわーー寒い!! 私、あまりにも薄着で来てしまったらしい…。 「昨日まで暑かったのにね、寒さがぶり返して来たみたい」とな。 えーん、明日からはノルマンディに行くのに寒かろうな…。




本日のパン屋さん(1) 2006年バゲコン優勝店Cohier





さっそく直行したのは、2006年バゲットコンクール1位のCohier。凱旋門に近く、実にハイソ&観光にもよさ気な立地。 重厚感のある気品ある内装に、オシャレなスイーツも並び、実に麗しい〜。

そうそう、そうでした。どんなに品揃えが豊富で色とりどりに並んでいたって、 じっくり選んでいる猶予は与えられないのだ。さっさと順番は回って来て、さっさと注文しないと行けないのだ、 それがパン屋さんのルール。





バゲット単品ではなく、サンドイッチにすることにした。 とにかくお腹がペコペコで、具になるものも食べたくてたまらなかったのだ。 ジャンボンとレタスとピクルスの入ったシンプルなものに。小さめで3.5ユーロくらい。 やっぱりフランスは物価が高いわな…。 2006年バゲコン優勝のマークの入ったウィンドウとトロフィーの前でがぶり!





うんうん、この食感! パリのバゲットの食感だー。 外はカリッとした薄皮はカラッと乾き、中は押し返すようなムチッとした弾力…! 食感がサイコ−! 適度な塩加減、確かに美味しい、…けど。 これといってフツーな特徴がない気もするかな? でもそれはカラシバターがたくさん塗られたサンドイッチだからかも。 たっぷりのバター、ハム、ピクルス。 (でも、あとで残りを部屋で食べた時の、このバターが染み込んだサンドイッチが実に旨くて旨くて!)


Cohier

270 rue du Faubourg Saint-Honore,8e



さて、次は…。 空腹が収まったとたんにしばし途方に暮れる。今回、Parisでしたいことってなんだろう? パン屋に行くことが第一だけど、他にこれと言って思い付かなかったのだ。 そう、いつだって滞在の初めはそう。 最終日が近づいて始めて「あれもすればよかった、これもすればよかった」と慌てふためく。





結局、バスでアンバリッドの方まででて、とりあえずエッフェル塔を眺めながら再びサンドイッチを齧る。 んん? さっきよりずっと美味しくなってるよ。


さらにセーヌ川沿いを延々歩く。美術館にはたくさんの観光客が訪れる。 私はそれを横目に、パン屋さんを目指すのだ。レアルの付近まで来て、またぐるぐるとあてもなく歩いた。




本日のパン屋さん(2) 2004年クロコン優勝店Boulangerie Colin





懐かしいモントルグイユ商店街。その一本隣のモンマルトル通りのパン屋さんが2004年のクロワッサンコンクールで優勝したお店と、 以前BBSで紹介していただいた。ごくごくフツーの佇まいのお店であるが、確かに店のウィンドウに受賞の文字が書かれている。





このクロワッサン、三日月…というより、巨大なイモ虫のような…モスラの幼虫というか…やたら横に長い。 最初食べるとヒキがなく、とても塩気が強くシャープで「?」という印象だったが、 後味がしつこくないからだろうか、なんだか後を引いて止められない。 味的には甘みや香りが強いクロワッサンの方が好みなのだが、 完食するのにほとんど時間はかからなかった。ためらいなく食べ切る早さは美味しさの証拠!


Boulangerie Colin

53, rue Montmartre,2e




本日のパン屋さん(3) 一目惚れと一口惚れDU PAIN & DES IDEES



また目的を失い途方に暮れる。もう一軒くらい行こうか、それとももう買い物に行こうか。 しばし広場で腰掛けながら休憩をする。こっちの夏日は日が長く、いつまでたっても日が暮れないというのに、 冷たい風は強くなってくる。うぅ、体が冷えた。歩いて発電しなければ! ほいじゃ、もう一軒だけパン屋さんに寄ってから、買い物にでも出かけよう。


必ず行こうと思っていたお店がある。 私の味覚をよく知ってくれているパン友さんがパリ滞在の時に訪れたお店をいろいろ報告してくれた中で、 「オーラがある!」と太鼓判を押していたお店。 それは、サンマルタン運河やRepubliqueの広場からも歩いていける場所にあるようだ。 夜はちょっと人通りが無さそうな、殺風景なアパルトマンが立ち並ぶエリア。学校の下校時間なのだろうか、 子供達がたくさん歩いていた。





ここだ! ほ、ほんとにオーラが出ている…。 Parisには山ほどパン屋さんはあるけれど、内装や外装まで凝っているお店はそう多くはない (どこも似たような感じなのだ)。「他とは違う!」と、入店しただけで心を掴まれる店は多くない。 しかしここは、老舗の古き良さというか、主人のこだわりがびしばし感じられる。 これは食べる前から「すごさ」がわかる!!





駅の方にも何軒もパン屋はあったが、こんな通りに隠れたところにあっても客足はこちらの方がずっと多い。 美しいディスプレイのパンに、自分の順番がいつまでも回って来ないことを祈ってしまうほど! もう少し悩ませてください〜。 とても感じのよいマダムが、カメラを首からさげてきょろきょろしている挙動不振な私ににっこり微笑んでくれる。 あぁ、すばらしいお店ですね!





最初はクロワッサンにしようと思っていた。半端なく巻の美しい、厚めの皮をみていたら、 さぞかしクロワッサン系が旨そうだと思ったからだ。 しかし…目が離せないのが、この店のスペシャリテの、ピスターシュクリームのパンオショコラ!! なんという毒々しい、メロンソーダのような緑色!





そして、目がさらに釘付けになったのは、Pain なんとかami(名前失念!)。 この平べったい食事パンの、蜂の巣のような見事な気泡に一目惚れ…! よし、この2つをくださーい!


表のベンチでおもむろにかじりつく。

このPain なんとかamiは、ものすごい美味しさだった。 ガリっとこれだけ堅いのに、その堅さはクラムの水分を保つための堅さなのかと思わされる。 クラムのネチネチべたべたと、歯にぴとぴと吸い付いてくるような粘着性…、 やわらかくもあるのにしかし弾力もあり、ハードでもある。 この完璧なまでの食感に加えて、「焦げた甘苦さ」の快感!! サツマイモを石焼き芋にしたときの、皮とそのすぐ裏側の、糖分が炭化したような一番甘くて旨い部分がパンにそのままなってしまったかのような! そうそう、焼き栗のような甘みにも似ている。はちみつのような甘みにも似ている。 食感とは違うけれど「ほこほこした甘み」とでも言おうか…。こんなパン、初めてかも…!





そして、この緑色のパンオショコラも絶品…!!! 想像を遥かに上回る美味しさだった。クロワッサン自体が持つ甘さと、カリカリッとしたハードさは 「噛み砕く」楽しさも合わせ持つ。ピスタチオクリームによる「ありきたりではない味」のアクセント。 ショコラのリッチな甘み…。うわぁ…。これは他にはあり得ない旨さだわ…。


DU PAIN & DES IDEES

34,rue Yves Toudic,10e

7:30-20:00,土日休



地下鉄で、いつもParisで滞在する部屋のある、サンジェルマンエリアのSevere-Babyloneへ。 この町に戻ってくると、ホッとする。路地に入り込んでも地図を持たなくても歩ける唯一の町。 「あぁ、帰って来たな」って。





とくに何をするわけでもない。見なれた町並みを眺め、行き慣れたスーパーでチーズやワインや野菜を買い、 昼間余ったパンを夜にゆっくり食べ直す。ただそれだけのことをやりたいために、 私はParisに来るような気がするのだ。 MONOPRIXやLE BON MARCHEで買い物を。あぁ、失敗した! やっぱりベトナムは行きに寄ればよかったのか、 だって、バターやチーズは溶けちゃうから買って帰れないよー?!




エッフェル塔、今度は階段で登ってみせる





サンジェルマンエリアから歩いて部屋まで戻るともう8時過ぎ。 この部屋の天窓からはエッフェル塔が見える。 お腹は空いて来たけれど、夕焼けのエッフェル塔を眺めていると、どうしても側まで行かなくてはと、再び部屋を飛び出した。





バスでシャン・ド・マルス公園まで行き、そこから刻一刻と赤く染まる空とエッフェル塔を眺めながら一歩ずつ近づいて行く。 …うぅぅ、寒いよぅぅー! 物凄い寒さである。 ニット2枚、ババシャツ2枚、さらにストールをマント状態にかぶってもなお寒い。





9時ジャストの点灯を待って、エッフェル塔を近くでじっと眺めていたが、唇が紫になりそうだった。 そして、夜景になるのを待っていたらもう凍えちゃうかもしれない。 かといって暖をとれるようなカフェはちょっと遠くて戻ってくるにはしんどい。 せっかく来たのにここで帰るのも…と、踏み止まる。


そうだ! 過去3回来て止めていた「階段でエッフェル塔を登る」をやるなら今だ! エレベーターで登れば11ユーロくらいするが、 階段なら(展望台は低いけれど)3.8ユーロでよいのだ。 疲労しているけど、動けば体もあったまるかも?! 明日の筋肉痛が恐ろしいけれど…。





突風にさらされながら、もくもくと階段を登る。 前を進む、英語圏の女の子たちも、ぜいぜい言いながら登っている。





足元も見ると、どんどん地上が離れていく。あまり下ばかり見ていると踏み外しそうになるので、 なるべく外を、外を…。





もちろんハードではあるし、息もすぐにあがってきたが、 1階まで登るのに、それほど時間はかからず、 ハードでもなかった気がする(もちろん、高さ的にもたいした高さではない)。


息を整えながら、一階の展望台をぐるりと回ってみた。 すると…。まだ上に上がる階段があるではないか! てっきり、徒歩では1階しか登れないものだと思っていた。 …よし…登ってみるか! 話のネタに(笑)。





1階までの階段が余裕だったのに、ここから先の階段はきつく、風もどんどん強くなり、飛ばされそうになる。 足元も狂いそう。そして恐怖も疲労も増してくる。

うわ! 人がぶらさがっている! びっくりした!! 工事のおじさんか?!





…いや、人形だったみたい(笑)。驚かすなよ〜っ。 そんな遊び心のあるフランス人が好き(笑)。





階段で登る私の目の前を、ゴー−ーとエレベーターが通り抜けていく。 中に乗る人が私の事を見て行くのが愉快であり恥ずかしい。私しかこの階段を登っている人はいなかったから! もう一つ愉快なのが、このエレベーターの裏側に、例の工事おじさん人形が張り付けられているのだ。 もしかしたら、階段を登る人にしか見られないと思うのだが、笑えてしかたなかった。 よし、もう少しで到着だ!





地上115メートルの2階展望台に到着! ほら、さっきと同じ方角なのに全然風景が違う!





風は冷たく頬を刺すけれど、体はまだ温かい。そして、これまで以上に景色が美しく見える。 自分の足で登ったのだ、美しさと感動は別格である。はぁー満足満足。 帰りは筋肉痛を恐れて、エレベーターで地上まで戻った。…しかも疲れてメトロまで歩く気力はなく、 タクシーを速攻つかまえて帰宅…。節約(?)の意味、まったくなし!(笑)。





部屋に戻ると、天窓から見えるエッフェル塔が私を迎えてくれた。 もしかしたら、展望台から私の今いるこの部屋も見えたのかしら?!





ゆっくりシャワーを浴び、ワインとチーズとパンを用意してひとり晩餐。 ワインは、Parisに行く直前に、フランス在住の読者の方がメールでお薦めしてくださったボルドー産のソーテルヌsauterneという貴腐ワイン。 食前酒向けの、香りが豊かな甘い甘いワイン。フォアグラは用意できなかったけれど(笑)、 チーズとパンだけでも優雅な気分で楽しませてくれた。


家主様は、帰宅が毎日ほんとに遅いらしい。夜遅く、朝はやや遅めのようなので、 出国の前日まで家主さんに会うことはできなかった。深夜、いつ部屋に戻ってきたかもわからなかったが、 私はよほど爆睡していたのだろう。物音に全く気がつかないまま、深く深く眠りについた。



Paris 2006 TOPdemain(4/29)