VIETNAM2006.5.3〜5.4◎

1日目:ベトナム到着! 強烈カルチャーショックに足すくむ

大いなる迂回…Parisからホーチミンまで


(この旅のなれそめはParis2006から)


ベトナムに行ってみたい、と思ったのは食べ物の魅力に他ならない。 日本で食べるバインミー(ベトナム風サンドイッチ)が大好き。 日本で食べるベトナム料理が大好き。 きっとあちらに行けば自分の好きな食べ物しかないのだろうと妄想はむくむく膨らんでいた。


今回初めて訪れるベトナムは、ベトナム経由Paris便のストップオーバーで1泊のみ、 滞在時間はほんの40時間。2日間で堪能できるのだろうか? でもきっと大丈夫。 ベトナムへ旅行に行く日本人は多いし、楽勝だと思っていた。


…しかし、世の中甘くない(笑)。初のベトナム一人旅、 たやすく、すいすいと街歩きができるもんだと思っていたら甘かった。





Parisからベトナムホーチミンへはたっぷり10時間くらい。 日本からParisへの直行便とそんなに時間がかわらないのである。…そ、そういうものだったのか(笑)。 ベトナム航空は、キャビンアテンダントの制服がアオザイ(写真撮っておけば良かった…)。 眺めている分にはいいのだが、どーにも機内食がうまくない。行きの便もそうだった。 この区間で食べたのはターキーとご飯。やはりこれもチリソースをかけてなんぼの味…。うーむ。


隣合わせたフランス人のご婦人2人組は、とても陽気で感じのよい人たちだった。 ドリンクサービスで、メニューにはかかれていないが「シャンパン」もある、という! おぉ、思わずフランスご婦人たちと「やっぱりシャンパンよね!」と即答。 三人でカンパーイ! …てな感じだったのだが、むむ?(笑)  これ、シャンパンか?(笑) スパークリングワインなのでは…(汗)。





そんなこんなで、再び長い長いフライトを経ることになるが、Parisを出発したのが昼の14時でも、 現地到着は朝の7時台! つまり、朝からまたやり直しなのである。 さっさと寝ればいいのに、暇つぶしに始めた機内のゲームのマインスイーパーにはまり…。 ついに3時間以上もぶっつづけてやってしまった…! もう最後の方は意識もうろう、 目眩や耳鳴りまで始まっていたという(笑)。バカー。




空港からホテルまでのタクシーでみるカルチャーショック


ようやく到着…。 ホーチミンの空港から市街まではそんなに遠くはなく、タクシーかバスが一般的。 タクシーはぼられるという先入観があったので、かなりひるんでいた。 ホテルの場所はバスの到着地からはかなり距離がありそうだし、延々悩む。


パリ便でも一緒だった関西在住のお兄さんが、ちょうど入国審査のときにも一緒になり、 なんと一緒に街までタクシーで出てくれることになった。 彼は各国一人旅をさんざんしているそうだけど、ベトナムは初めてとのこと。 軽装だし、バスでも全然構わなかったらしいのに…。あぁ、ありがとうございます!! ほんとはめちゃくちゃ不安だったので…。


お兄さんと一緒に空港で両替。ベトナムの通過は「ベトナムドン」。USドルも使えるらしいが、 なんかそれじゃつまらないので(←つまらないという問題?)ベトナムドンに替えたが、 ベトナムドンってば桁が違うのである。

10,000ドンで約60円。100,000ドンで約600円!! ぎゃー計算できるかな?!

(実際、下三桁を切り離せば計算しやすいのであまり問題はないのだが)


空港のタクシーカウンターでチケットを買う。街まで75,000ドン。ちゃんとしたカウンターなので大丈夫かと思ったら、 お兄さん曰く「相場より高い…」と。むむ、でもそうも言ってられないのでとりあえずタクシーに乗り込んだ。 まだ朝の8時だというのに気温はぐんぐん上がっている。東京の夏よりも蒸し暑い。 ホテルについてもチェックインできなかろうに…。取りあえず荷物だけでも預けたい。 あぁ、お風呂入りたい、眠りたい!





タクシーで見るベトナムの街は、恐ろしいほどのバイクの群。 それは想像を遥かに上回るものであり…。空港から街に近づくに連れて、道路に占めるバイク率はどんどんあがっていく。





ぎゃぎゃっ。危ない!





ぎゃーー(笑)。なんなのこれはっ!(笑)





タイには行ったことのあるお兄さん曰く「ベトナムの方がずっと…×××だなー」と驚きを隠せない模様。 ひえぇぇ…タクシーに乗って外を眺めるだけでも相当なカルチャーショック、 そうか、私は東南アジアに来ること自体、今回が初めてだったんだ。…圧倒されてしまった…。


ホテルまでやたら遠く感じた。ほんとにこんなにかかるものなのか? とだんだん疑問に。 タクシーのメーターは、とてもじゃないが75,000ドンなんて届かない、まだ40,000前後である。 「もしかして、メーターをあげるためにわざとぐるぐる迂回しているんじゃないの?」 そんな疑念まで浮かぶ。いや、もしかしたらそうじゃないのかもしれないが、ホテルまでの道のりは、 ものすごく長く感じてしまったのである。


ようやく到着したホテルの前でお兄さんと別れた。ネットで5000円くらいで手配した「エンプレスホテル」は、 値段の割には格調のある、ヨーロッパ風のビジネスホテルだった(もちろん、所詮ビジネスホテルなのだが)。 もうチェックインできるらしい! うわーん!! まだ8時なのに?! まだ宿泊客が朝食食べているころよね?(笑)





ドアマンたちにもとてもよくしてもらい、実にいいホテルだった。人にも薦めたい。 …ただし、ホテルの周辺はかなりローカル色が強い。安ホテルが立ち並ぶエリアらしく、 外を一歩でただけで恐くて泣きそうになる私(笑)。右も左も、前も後もこれじゃわからないよぅー(泣)。


ホテルでシャワーを浴び、荷物を解いてもまだ10時…。 なんだか外に出るのがためらわれる。以前、友達が「ベトナムではホテルにずっとこもっていた」なんて話をしていたが、 …うーん、それはわからぬでもない…。



ホテルを出れば外は戦場?! 街歩きに泣く


機内食しか食べていないのでみるみるお腹が空いて来た。非常食(笑)のバゲットももう食べ切ってしまった。 想像以上に勝手のわからない街なので、とてもじゃないがまだローカルな店に飛び込んでごはんを食べるなんてこと、 まだとてもできそうにない。そこで、明日参加するメコン川ツアーを申し込んだ会社を訪ねてみることにした。


日ざしがきつく、猛烈に暑い!! 想像以上にまだまだ「戦後の日本」と言えるようなベトナムに、 カルチャーショックが隠せない私。道ばたでは何をするわけでもなく人がごろごろ転がって座っていたりする。 日傘をさしてみたが、そんなお嬢さんな出で立ちをしていたらたちまち声をかけられてしまう。 すれ違う人、バイクから声をかけてくる人、すべての人が恐くて、とてもじゃないが写真なんて撮れないぞ?! (というわけで、街の写真がほとんどない(笑)食べ物の写真ばかりである…とほほ) それでも気にせず傘をさす。そんな自分が、言葉はひどいが「はきだめに鶴…」とすら思えてならない(笑)。


何よりも一番ちびりそうになったのは(笑)道路の横断!! 信号なんてない。しかし、バイクの群は王蟲の大群のごとく、切れ間なく道路を埋めつくし、左から右へと流れて行く。 ど、ど、どうやってこの道を渡ればよいのだ?! 足がすくんで一歩も歩けない。歩いていても、立ち止まっていても、シクロ(昔ながらの自転車タクシー。 ぼられるのが当たり前で、乗らないのが賢明なんだそうな)や、バイクタクシーに声をかけられるし、 命からがら道路を渡ったと思えば、今度は道を間違えたり戻ったり…。


現地の人の道路の渡り方を真似をしようにも、周りに歩いている人がいない。渡ろうとする人もいない。 みんなバイクか自転車か、地べたやイスにだらーんと座っているだけ。 どうやら、みな歩かないらしい。バイクを乗るから歩かない(なんなんだそりゃ…)。 この暑さだから、涼を求めて、あてもなく、意味もなく町中をぐるんぐるんバイクで乗り回しているんだそうだ。 おいおいおい、これじゃまさに「歩いている人=観光客」、歩いているだけで目立つなんて! えーん、こんなにギャップのある国だったなんて、心の準備ができてませんでしたっ。私が甘かった!


スケッチトラベルという、現地のオプショナルツアーなどを手掛ける会社を直接訪ねて行ったのだが、 延々30分以上、この暑さの中を歩いた。 ようやくたどりついたのはとあるビル(といっても、その事務所の看板すらなかったので泣きそうだった私)。 そこは、日本人がたくさん働いているオフィス。「あぁ、ちゃんと会社で働いている人がいるもんだなぁ…」と、 妙な安心をしてしまったりも(笑)。


ここはあくまで事務所なので、窓口は全然別の、街中にあるらしいのに直接こっちに来てしまった私。 担当の人を呼び出し、明日のことを打ち合わせたあと、私は担当の女の子に泣きついた。 「とにかくおなかがすいて倒れそうなんですぅぅ、 何か食べたいのでどこか教えてくださいぃぃぃ〜。 でもまだ歩くのが慣れずに恐くて泣きそうなんですぅぅ」 …なんとも情けない観光客である。


すると、観光客でもすんなり入りやすいレストランを紹介してくれた。 ガイド本にも必ず載っており、たぶんホーチミンに行った日本人なら全員行くと思われるフォーの店、フォー2000。 最初は「あまり観光客慣れした店には行かないぞ、ジモティーな店に行くぞ!」…なーんていきがっていたが、 いきなりそんなの無理だ。自分の甘さを痛感する。


信頼できるタクシーさんを呼んでもらい、店まで乗せてもらった。14,000ドン。これが初乗り料金か。 そのフォー2000は、ベンタイ市場という巨大な屋内市場のすぐ向かいにあるのだが、 タクシーを降りた後に前後を見失い、市場の中へ迷い込んでしまった。 ひえーーーーなんなんだ、この市場も…。もわんもわんと蒸し暑い体育館のような建物に、 ひしめき合うモノ、モノ、モノ。そしてみんな地べたに座り、だらーーーんとしているのに、 一歩入ると「オネエサーン」と呼び込んでくる。ひえー。品物を見る余裕がまだ全然ない私はとにかく市場を抜け出し、 フォー2000へと駆け込んだ。


(うーん、画像が全くないから、文字ばかりになりましたね…すみません)




初心者にはうれしいフォー2000





というわけで、ようやくありつけたフォー2000(ようやく画像も登場か(笑))。 開放的なテラスの店で、メニューも見やすく、とっつきやすい。初心者向き! 観光客向き! 万歳!!(笑) …とは言っても、メニューをじっくり選ぶ余裕もない、疲弊した私はフォーガ−(鶏のフォー)をオーダー。





別添でハーブやら野菜やらがついてくるが、ミントやパクチーはともかく、食べたこともない味の野菜が多い。 これらを全部フォーに投入してがっついた。えーん。フォーは空腹には優しい…。





…というか、これ、そのへんの庭ではえている草や葉っぱなんじゃないかというような、 ワイルドな味である(笑)。こちらのフォーのお味は、劇的に旨いというわけではなかったのだが、 まずはお腹も落ち着いた。


店の外から、果物などを売り付けてくる行商のばちゃんがいたり、買ってくれとうるんだ目ですがってくる子供、 とにかく誰かに常に見られている、声をかけられる、という意識がしんどい。 食べ終わって席を立とうにも、どうも腰が重いのである(笑)。こういうことって初めてである(笑)。




ベトナムは期待以上の買い物天国!


少し通りを歩き、新しめのデパートに入った。 そこの二階に、スーパーマーケットのような売り場があった。 ホテルのそばにも、コープマートという巨大なスーパーがあり最初に行ってみたのだが、 どうやって入場すればよいのかわからずすごすごと逃げ出してしまったのだが(笑)、 なるほど、スーパーに入る前には手荷物を全部預けて「丸腰」になってから入るものらしい。 それがさっきのコープマートではわからなかったので逃げ出して来たのだが。





あぁ! 普通のスーパーは買い物がしやすい! ついて回ってくる店員もいないし、 なにより「人と交渉しなくて済む」。なんか後ろ向きだが、しょうがないじゃないか。 物価は日本の10分の1という感じだろうか、ライスペーパーや調味料など、あれこれ買い込む。 安いのでがんがん買える。おぉ、こりゃ天国だ!(笑)





スーパーに荷物を預けたまま、丸腰のまま、他のフロアへも移動してみた。 思いのほか、ベトナム雑貨はモロ好みのものが多くて驚く。うわぁーー食器も小物も全部かわいい! ほしい!





数日前に訪れたフランスのアジアン雑貨のお店で「欲しい♪」と思ったかわいい小鉢のセットがあった。 そのときは3000円くらいもしたので迷ったあげく買うのを止めたのだが、 なんと、それはベトナムでは300円くらいのものだった。あぁーー、あのとき買わなくてよかった。 というか、そもそも「フランスの帰り」にベトナムに来て正解だったかもしれない(バターは溶けてしまったが)。 バカみたいに物価の安いベトナムから、バカみたいに物価の高いユーロ圏へ逆に移動していたら、 フランスではもう何もものが買えなかったであろうに。パンですら買えなかったかも?(笑)





街の中心地には、高級ホテルが立ち並ぶ、外国人向けの一角がある。 そこにドンコイ通りといういわゆる「日本人御用達」のショッピングストリートがあるのだが、 このように、人もあまり「座り込んで」いないので、日本人の女の子が安心して歩ける通りである。 (というか、ここ以外はたぶんキツイ気がする) 他の市場や商店よりは遥かに物価が高い。なぜなら、日本人向けの店は、国から税金が余計にかかっているそうでやむを得ないらしい。 でも、それはごもっとも。お金あるところから取るのは正解かも?


どこの店も扱っている雑貨が上質でかわいらしく、 日本人好みのセンスのものばかりである。おかげさまで私も、食器やらサンダルやらバッグやらアクセサリーやら、 ざっかざっかと雑貨を買った。全部買い占めて、日本でベトナムカフェでも開きたくなってしまう(笑)。 それくらいツボにはまるものばかりだった。あらら? さっきまで半べそ状態だった私はどこへ? 泣いたカラスがもうにやけてる(笑)。 たくさん買い込んだのでタクシーで部屋に戻る。ふぅー、つかの間の極楽!





色違いで数足買ったサンダルは11ドル。十分すぎるほど安い…けれど、市場などで売られているものに比べたら高い。 しかし、あれらはいまいち「日本に帰っても履けそうなサンダル」とは言いがたいので、 ちょっと高くてもこちらの「日本人御用達店」で買うのが正解と思われる。





バインセオ46Aとビール


ホテルでひと息つき、今度は友達に奨められたバインセオのお店「バインセオ46A」へ。 ここはどうやら遠いのでタクシーを拾う。車で10分くらい、空港に行く途中の賑やかな市場の側の路地中にある。





その屋台のようなオープンエアの店。これなら、ぴよぴよよちよち歩きの初心者でも入れる!





むき出しの厨房。衛生がどーのこーのと言っていたらたぶんこの国ではごはんは食べられないだろうな。 よかった、私の胃袋は強靱なのである。





席につき、メニューをもらう。メニューはかろうじて日本語メニューもあったものの、 初めから決めていたバインセオ。そしてタイガービールも。





そのときは知らなかったのだが、あとで「ベトナムの女性は酒を飲まない」ということを聞いてびっくり。 (最近はだいぶオープンになってきたらしいが、まだまだ一般的じゃない、と聞いた) じゃあ、こんな街角の屋台で昼間っから堂々とビールをひとり手酌…だなんて、 もしかして私ってハスッパに見られたかも? 阿婆擦れ?(違)





バインセオには大量の「葉っぱ」がついてくる。さっきのフォーと同じく、いくらかは馴染みのあるハーブ、 大半はやはり「葉っぱ」の味であり(笑)。これだけの量だから、きっと洗ってないし、使い回しているだろう。 それってフランスとかでレストランで出てくるパンに似ているかも(そうか?)。


バインセオには、肉と野菜が挟まれ、卵は薄くカリッと焼かれている。クセがなく食べやすくて美味。 葉っぱにくるんで、タレにつけて食べるように説明されたが、これがどうにもうまくできず、 結局葉っぱとバインセオにタレを直接ふりかけて食べていた。 他の地元のお客さんの手付きをみると、くるくるっと生春巻きのように巻いて、タレにちょんちょんっとつけて食べていた。 おぉ…さすが。そうやって食べるのか…。





慣れぬなら、慣れるまで歩き続けよう


バインセオの店の側には、市場がある。観光客向けでもあるベンタイ市場に比べるともっと庶民の台所的な市場で、 生々しい食材(音に例えると、ぐちょ〜〜んとか、びろびろどろどろ〜ん…みたいな)がひしめきあっており面白い。 が、ここでもやはりカメラを構えるなんてことはできなかった、小心者の私(笑)。





少し一息ついていこうと、側にあるチュングエンコーヒーでアイスコーヒーを飲む。 チュングエンは、ベトナムでは日本のスタバ並みに、全国にあるチェーン店で、私は六本木にある一号店でお茶をしたことがある。 日本の店鋪には、バインミーなどの軽食も食べられるが、本場ベトナムではコーヒーのみ。





お馴染みのベトナムコーヒー、小さなアルミのコーヒーメーカーをカップの上に乗せ、 ぽたぽたと一滴一滴落ちるのを待つ。下には練乳が入っているのでかき混ぜるとめちゃくちゃ甘いコーヒーが出来上がる。 私は普段はかき混ぜないで、あまり甘くせずに飲むのだが、今日は全部かき回して飲んだ。 半分はホットで、半分はアイスで。うーん、チョコレートドリンクみたいで美味しい〜♪





外を歩いていると、誰かしらの目が気になって、一息つくことができない。 ここではつかの間の休息を得た。2階の窓から通りを眺める。 切れ間ないバイクの波は、上から見ているだけでも目眩がくらくらしてくる。 …私も、少し(というかだいぶ)疲れているみたいだ。 …体力的に疲れているのではない。心が疲弊しきっているみたいだ。この街に、この国に疲れてしまっているのだ。


隣の席では、高校生くらいのまぶしいくらいに若い男子女子のグループが10人くらいでだべっている。 …さてと、そろそろ動きますか…。重たい腰をあげて、私は歩き出した。





もうひとつ、行ってみたいフォーのお店がこの近くにあるようだったので探してみた。 …しかし…シャッターが降りている(とほほ)。この場所は、中心街からはかなり距離がある。 なんせ来る時はタクシーで来たくらいなのだから。 バスに乗ってみようと、バス停でマップを眺めてみるがどうもよくわからない。


…バス停の前で何分くらい途方にくれていただろう。 夕暮れ時の街は、帰宅ラッシュなのか、ますますバイクの量が溢れている。 登下校の制服を来た生徒たちも、道ばたのチュー(かき氷のようなぜんざい)の屋台でおやつを食べている。 昼間のきつい日ざしもだいぶ和らぎ、幾分すごしやすくなった気がする。 時々、きもちのいい風が私の横をかすめていく。


そうだ。歩こう。歩いて街まで戻ろう。


切れ間なく押し寄せるバイクの大群と平行に、私は歩き続けた。 今、歩いている場所がわからなくなったら方位磁石を取り出して、ひたすら歩いた。 街の街路樹が高くて、ふと、昨日までいたParisの街を思い出した。そこだけは重なるものがあった。





公園では、カップルが身をよせあっている。横には必ずバイクを止めて。

何度も道を横断するうちに、コツをつかんだのか、もう走ってわたることはなくなった。 すいすいっと、流れに任せて、バイクを避けるのではなく、バイクに避けてもらうように渡る。





歩いていると、だんだんと変化がわかる。自分自身の変化だ。 さっきまでの、この街への「怯え」が「興奮」に、「興奮」が「平静」にカタチを変えて行くのがわかる。 迷いながら、同じ道を戻ったりもしながら、街まで1時間弱。 さっきまで、本当に心細くて泣きそうになっていたのに、 たった1時間の無心のウォーキングがほんの少しだけ私に力を注ぎ込んだようなのだ。





屋台のバインミー、初体験





途中で、念願(?)のバインミー初体験。 道ばたの屋台で、バインミーを購入してみた。写真を撮ってもいいかと、ジェスチャーで伝えつつ。 人のよさそうなおばちゃんは、笑いながらバインミー作りを実演してくれた。





見るからにすかすかと乾いた、「麩」のようなバゲット(笑)に、ちゃんと手袋をしてから具を挟み込む。 チープなハム、ナマ酢などの野菜、香菜、各種の調味料(ピーナツバターのようなソースや、ニョクマムなど?) 手際よくざくざくと挟んで行く。これがデフォルトなのだろう。 これで4000ベトナムドンくらいだった(24円くらい?! ぐは!)。





「これを食べるためにベトナムに寄ったのです」。ほんとに。まじで。一度は食べてみたかったのである、 パン好きとしては、本場のバインミー。どこの屋台でも、使われているフランスパンは大差ないようで、 めちゃくちゃすかすか、著しく乾燥していて、乾物の麩のようであり(笑)。 よく「いんちきフランスパン」と形容されているが、まさしくなー(笑)。 調味量や具が均一に行き届いてはいない、アバウトな詰め込みかたなので、口にするたびにカメレオンのように味わいが変わる。





ピーナツソースのような、ゴマペーストのような、脂肪分と香ばしさを合わせ持ったソースと、 野菜が交わった時にとても美味しく感じる! 一口ごとに表情が変わるから、なかなか途中で止められない。 気付くと、ほとんど食べ終わっていた。ほぉぉ、、、これが本場のバインミーね?! きっと、もっと美味しいバインミーがあるに違いないけれど、機会があれば明日も挑戦するべし。




夜の街。


中心地に戻ったころにはすっかり日は落ち、夜の街に変貌していた。 バイクのテールランプで溢れ、昼間とはまた違った意味での熱気を放散していた。 街にはますます若者たちとバイクが溢れ、これからカーニバルでも始まるのかというくらいに。 毎晩が熱帯夜。毎晩が祭りの夜。たった1晩だけの滞在の私にとっては、そう写るのだが、 これが彼らには日常なのだろう。


とりあえず、時間潰しにデパートに入り、土産物などを物色。 そうそう、下着売り場で某ブランド下着もちゃっかり試着&購入(笑)。





ホテルの近くに、ネット屋がいくつもある通りがあったので、そこでインターネットに入る。 バインミーを食べたばかりなので、まだ夕食を食べる隙間はなかったのである。


ベトナムは意外にインターネットが普及しており、ネット屋を見つけるのはそんなに難しくないようだ。 適当に見つけたネット屋でとりあえず席について料金後払い。 コーヒー色に染まったキーボード、なんだかべたべたするんですけど(笑)。 メールチェック、このHPの掲示板チェックなど、一通りの用事を済ませ、 私はメールを書いた。…そう、Parisのあのメーデーの午後、思い掛けないメールの差出人に。


「今、私はベトナムのネットカフェでこのメールを書いています。 ネットカフェのなんだかべたべたするキーボードで、かたかたメールを打っています。 到着してひとりぼっちで町にほおりだされたときは泣きそうになりました。 でももう大丈夫。慣れました。今はここで熱帯夜を味わっています」


熱気で気持ちが高ぶったのか、少しいつもより長めにメールを書いた。





眠さがピークに到着していたけれど、まだ眠りたくない。 何か夕食をと思い、ホテルの側を歩く。一度部屋に戻り、昼間購入したサンダルをおろし、 外に出る。何かと気にかけてくれるボーイさんに「コレカラ デカケルノ? キヲツケテクダサイ」と声をかけられる。 道はがたがたなので、慣れないサンダルで足元をすくわれる。ぐぎゃ!! 何かへんなもの踏んだっ!(笑)足濡れてますけど、、、。


ホテルのそばにある巨大なスーパー、コープマートの目の前にあったごく庶民的な飲食店で、 現地の人に混じり、適当に腰かけた。「メニューありますか?」とジェスチャーするも、 そんなもんはこういう店にはないのだな(笑)、「あれしかないけど」と無愛想なおばちゃんが運んで来たのは、 赤々としたうどんだった。


またまた、食べたことのないような野菜(ネギのような歯ごたえの、もっと香りの薄い野菜など、、)をトッピングして、 とりあえずずずずっとすする。魚肉ソーセージがワサワサ入っているうどんであった。





スーパーでは、とくにこれといった買い物もしなかったが、 ドリアンに注目。うーん、確かに近寄るだけで異質な香りが…。明日、食べる機会はあるのだろうか?



ホテルに戻り、一日の垢を落とした。たった1日で、どれだけこの街に、この国に慣れたのだろうか。 ほぼ徹夜状態で一日歩き回り、想像以上に心もカラダも酷使したベトナムの一日が終わった。 たった一泊だけど、十分すぎるくらいに、この一日が長く感じられた。 明日はメコン川クルーズ。そして夜には日本へ戻る。 日記に書き留める間もなく、言葉通りの「バタンキュー」で床についた。





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