3日目前編:グランドキャニオン念願のサンライズ

起床4時。ヤバパイポイントまでバスで行く


携帯電話のアラームは4時に鳴った。 もちろんまだ真っ暗だ。5時間くらいは寝たのだけど、天気は相変わらずよくないようで、 かなり湿気が強い。…案の定、寝る前に洗った靴下が乾いてない!! 靴下一足しか持ってきてない大バカな私は、泣く泣く裸足で靴を履いた。 昨日は雪が降るほどに寒かったのに…大丈夫?!(結論から言うと、大丈夫じゃなかった…)


朝食はなにも用意してなかった。 サンライズを見てロッジに帰ってきてから朝食を食べる予定なのだけど、 たぶんそれじゃ私は動けない。遅刻してでも朝食を食べなきゃ出勤しない私だ。 そこで役だったのが、昨日のお昼に食べないで取っておいたラズベリークッキー! 少量でも高カロリーなクッキー、こういうときはありがたい(笑)。 非常食代わりにがつがつ食べて、さぁ出発!


宿泊棟からバス停のあるセンターロッジまでは街灯もほとんどないので真っ暗。 こんなときに持ってきて助かったのが100円ショップで買っておいた懐中電灯! グランドキャニオン宿泊の人は持って行くとベター。


バスにはサンライズを目指す数人の客が乗り合わせた。 目指すは、バスで10分くらいのヤバパイポイント。 昨日、雲のせいでまったく景色が見えなかった場所だ。 バスは灯りをつけずに運転するので真っ暗。真っ暗闇の森の中を、走っていく。 あぁ、こういう肝試し的な暗さ、好きなんですけど(笑)。





5月初旬の平均的な日の出時刻は午前5時半ころ。 ヤバパイに到着したのは5時頃だったが、うっすらと遠くの空が明るい。 …でも、やたら雲が多いなぁ…。ちょっと不安である。





まだ辺りには人がほとんどいなかったが、 一番よさそうな観測ポイントには、すでにおじさんがタバコをふかしながら佇んでいた。 なんだか、邪魔してはいけないような気もしたけれど、おじさんと並んで日の出がでるのをジッと待つ。


手すりから身を乗り出すように、谷を覗き込む。 この、ほんの10分程度の時間ではあったけれど、自分の聴覚が狂ったのかと思うほどに、静かだった。 大地の呼吸の音しかしない。鳥の声もたまに聞こえるけれど、 …本当に静かだった。空気の音も、雲が流れる音すらも聞き取れるんじゃないかというほどに…。 凛とした、大地の音だけがした。こんな「音」を聞いたのは初めてだった。


10分ほどすると、展望台にはちらほらと人が集まり始めた。もうそのときは「音」は聞こえなくなっていた。






もう5時半はとっくに回っている。厚い雲がじゃまをして、なかなか太陽は顔を出さない。 さらに大きな雲の塊が東の方からゆっくりと流れてくる。 あぁ、お願いだからそのまま動かないで…。サンセットは見られなかったのだから、 せめてサンライズは拝ませてください…!!


ほんっとうに寒かった。昨日来ていた下着もそのまま重ね着して、 持ってきたもの全てを着ていたとはいえ、もともとが軽装だったのでたまらなく寒い…!! 歯をがちがちと鳴らしながら、今にも出ようとしている太陽の方向をじっと見つめていた。





迫っていた大きな雲は、奇跡的に足踏みをしてくれた!! ついに…!! 太陽が顔を出した!!  かなり遅いけれど、6時ちょっと前。サンライズだ…!!






毎日毎日、大昔から太陽は同じようにして東から西へと動くのに、 旅人にとっては、生涯にたった一度きりの、この場所でのサンライズなんだ。 そう思うと、この世では自分はとても小さな小さな存在であるのに、 自分というドラマの中では大きな大きな存在であることを実感する。 当たり前のことなんだけど、自分は自分のドラマの主人公なんだなぁと…。





かなり長い時間同じ場所でじっと佇んでいたので、 目の前に広がるこの景色に慣れてしまっている自分がいた。 でも、これを書いている現在となっては、やはり信じられない。 太陽がのぼり、渓谷を朝日で染めたころ、その場を離れることにした。



渓谷を右手にRIM TRAILをひた走る


送迎バスがロッジまで迎えに来るのは8時半ころ。食事するためにも7時半にはロッジに戻れればいい。 地図で見ると、ロッジから一番近い展望台までざっと3キロくらい…。 来る時はヤバパイポイントまでバスで来たが、帰りは崖に沿った遊歩道"RIM TRAIL"を歩いてみることにした。 間に合うのか? 自信がなかったことと、あまりに寒かったことから、私はジョギングをすることにした(笑)。





そう言えば私は裸足! 雪がちらちら降って来て、冷たさのせいで足が麻痺している。しかも、ウォーキングシューズは連日のウォーキングのせいで、 裏底がすり減って、地面を踏み締めるたびに足の裏にひびく! 痛いのなんのったら!!  寒いわ痛いわ時間はないわ、ついでにお腹も空いてきたという四重苦を抱えながら私は走る(笑)。





それでも右側にはこの景色がどこまでも続いている…。 もしかしたらもう二度と見ることはできないグランドキャニオン。 飽きるほどに見つめておかないと、後悔するかも知れない。だから、 まっすぐ前を向かずに、顔は右を向けながら走れ! 走れ!!  きっと、今目に焼きつけたこの景色のことは、ずっと忘れない。 …とかいいながら案外、こうやって寒さと痛みに耐えながら走った、このことが一番の思い出かも知れない(笑)。





ようやく次のポイントまで辿り着いた。ここからはロッジまで歩いて10分程度。 そう、昨日も通ったラバさん牧場。おはよーラバさん。ただいまーラバさん。 私は素晴らしいサンセットを見て来たんだよー。君は見たことがあるかい?





宿泊棟に戻って、まっ先にお風呂にお湯を張った。とにかく暖まらなきゃ!!  画像では伝わりにくいんだけど、足は冷たさで赤く変色していた…。 もう少しで凍傷? と大げさなことを思ったほど(笑)。





センターロッジのカフェテリアで朝食を。 迷わずベーグルを選ぶ私(笑)。それにシェフサラダとヨーグルトとコーヒー。 ベーグルは、…なんていうか、 Mコーズとか日本のベーグル屋さんでもありそうな感じ。 目が詰まっているんだけどもそっとしていて、ひきがあまりなくて、 ぽそぽそ…っとした感じなんだよな。NYベーグルとはだいぶ違う。



エンジントラブル空港で待ちぼうけ数時間





ラスベガス行きの飛行機は10時〜11時くらいの離陸予定だったので、 午後からまた観光がたっぷりできると思っていたのだが…。 予定よりだいぶ遅れて飛行機に乗り込んだ。 帰りの便も二人のパイロットが乗り込むのだが、今回は美人パイロット。 丁寧にフライトの注意事項を説明した後(でもやっぱり英語だからわからない(笑))、 エンジンがかかり、プロペラが回り、滑走路を走る。 ところが、滑走路を走りながらそのまま失速。…なんとエンジントラブル!!! おーーいぃぃ!! 走ってからトラブル発見ってどういうことだよぉぉ。 もちろん飛ぶ前でよかったけど(笑)。


そんなこんなで、フライトはなんと中止、代替の飛行機が戻ってくるのはなんとその2時間後くらいだった…。 空港では荷物も預けちゃっているからすることもない。頼むってばーーっ。


その間、待ち合い室で例の「丸腰の日本人の女の子」と言葉を交わすようになり、話が盛り上がった。 彼女はこの2日間、この雪の降るグランドキャニオンで、 素足でサンダル、キャミソールに薄いカーディガン、七分丈パンツという裸同然のような軽装で来て、 いろんな外国人に声をかけられたという。注目の的だったらしい(笑)。 「私、今回初めての海外旅行だからなに着ればいいかわかんなくてー」と笑う彼女。おいおい…。 今朝の私も裸足だったのでかなーり辛かったけど、彼女の軽装さを思うと、全然たいしたことじゃなく感じて来た(笑)。


異常に明るくテンションが高い子だった。 全く英語がしゃべれない(こっちが心配になるほどに全くしゃべれない子だった!)のに、 持ち前のコミュニケーション能力で、ひるまず人に話し掛けようとする。 「すんごいたくさんの外人さんと仲良くなったんですよー」 あなたクレイジーね、みたいな目で見られてたんじゃないのかなぁ…(笑)。 「外人の男の人とメールアドレス交換したんですよー電話番号も聞かれたけど教えなくてもよかったのかなぁ」 …それって、ただのナンパじゃないか?(笑)


そんな彼女達も、他のツアー参加者も、泊まっているホテルはベラッジオやベネチアンなどの超高級ホテル。 うらやましいーー!! 私が今夜宿泊するホテルは、週末でも70ドル程度の格安ホテル。 ラスベガス到着後は、それぞれのホテルまで順番にバス送迎してもらえるのだが、 私はつくづく思った。私が泊まるホテルが一番最後でよかったと。


みんながどんどん下車し、最後に残された私は、激しく空腹であることに気付いた。 もう午後3時近く! ちくしょーー。また腹ぺこだよ。 ここで、昨日手をつけなかったお弁当のポテトチップスが活躍することになる。 …あぁ! ポテチって美味しいのねー、、しみじみ。


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