59-2.2月関西パン出張ロングステイ -AREA2- 大阪&神戸



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もともとは1泊2日の「パン出張」だった。

だから大阪オンリーで終わりと思っていたのに

パン運の強さが「本業での出張」を引き当てた。

復路は開港したての神戸空港で。よーし、三ノ宮で寄り道しちゃおう。

3泊4日、今回も大阪でパンだけじゃなくて美味しいランチも、飲みも欲張れる。

ロングステイ大阪&神戸編。




唯一許される寄り道、シュクレ@岸辺




過去4度の来訪ストーリーはこちらこちらこちらこちら


初日。お昼過ぎから本町で「たんまりとパンを食べる」ため、

それまでお腹ペコペコにしておこうと思っていた。

時間はあるけど、他に行こうとは思わない。 …そう、ここ以外の店には。

ここだけは許してくれるよね? ここだけは寄らせて!

空港から直行したのはもちろん岸辺シュクレ。


しかしパンが手元にない店までの道のりは、なんて遠いのだろう。

なんて長いトンネルだろう(笑)、

パンを齧りながら歩く帰り道はあんなにあっという間だというのに!





バレンタインも過ぎて冬もそろそろ終わり。

冬パンから少し春色に染まり始めているシュクレのパンラッシュ!

寝る時間を割いてもパンを焼き続けているIシェフ。

顔を見れば「ちゃんと寝てます?」とついつい心配しちゃうのに

相変わらず熱い! 熱いよー。


私が到着した時はお客さんもまばらだったのに、

席に着いて食べ始めたころからどどどどどっと押し寄せて来た!

うわー、これが噂のシュクレ大盛況状態! ほんっとに忙しいんだなぁ〜。

決して場所がいいわけではないけれど、パンがここまで人を呼び寄せるんだろう。


「明日来るかと思ってたのに。苺を使ったパンを焼く予定だったんですよー」

な、なにぃ!(キャプン翼風に)

「じゃあ明日の日曜日もまた来ますわ!」


…結局、翌日は行けなかったのが、今でも後悔の念で私を苦しめる(笑)。

シェフーごめんよぅぅ。





シェフのオススメ新作をセレクト。


手前のオレンジが覗くパンは、パン・オ・セレアル・ポティロン・アプリコ。

…なんと!

かぼちゃとアプリコットとオレンジ入りのセレアル!!

かぼちゃとアプリコットを一緒に食べるなんて、

一体冬のパンなのかなんなのかわからんが(笑)、

「オレンジ色」という共通項のもと、ゴマと雑穀たっぷりのセレアル生地の中で共存。

オレンジ色のぷりぷりっとした歯ごたえのアプリコットがフルーティーな甘さで

それとは対極の「野菜の甘さ」のかぼちゃ。

かぼちゃとアプリコットを同時に口の中に押し入れるなんて未曾有の事。

しかしこれが嘘みたいに美味しく共生しているから恐ろしい(笑)。



ごぼう入りのそば粉のパンは、シェフ曰く「土臭いパンを作りたいんですよねと。

うわーーほんっとに土臭いよ!(笑)

強い蕎麦の香りに巻かれるごぼうたち。

蕎麦を食べるよりもずっと本物の蕎麦を食べているような錯覚。

それにごぼう天をのせちゃったような(笑)、マニアックな味だが旨い!



さらに…名前はよく覚えていないパンがひとつ。

ローズマリーやパセリなどのハーブをたくさん入れた香りの強いパン、

…えっと、えーっと、…『だって春だから』だっけ?(笑)

いや、絶対違うんだけど、そんなような口語調の名前のパンでした(笑)。

いやー、春ですねぇ〜♪(ごまかす私)

(後で判明、「春の香りのような…」だそうな。…近い! ←どこが)





ここに来たら絶対絶対食べなきゃ立ち去れないのがキッシュ!

今日はサーモンとほうれん草を。

どうしてここの生地はこんなにがっしりと厚くて味が濃いのだろう!

このキッシュなら、過酷な状況で持ち帰ったとしても、きっと型くずれしませんね(笑)。

しっかりと味付けがなされたサーモンとほうれん草、そしてタマゴのバランス!

ほんと、他のキッシュが食べられなくなるよ…。





極め付けはこれ!

バレンタインシーズンで出ていた「パン・オ・ショコラ・ボルドレ・オ・ザマンド・カシス」。

(舌を嚼みつつ、フルネームで読み上げて買いました。ぜえぜえ)

一言でいえば、カシス風味のショコラザマンドなんだが、

ボルドー赤ワインで仕込むわ、オレンジとカレンツとグリエカカオをしのばせちゃうわ、

カシス風味のシロップを染み込ませちゃうわ、カシスのクレームダマンドをかぶせちゃうわで…。

絞ったらシロップがぽたぽた垂れちゃうんじゃないかというくらいにしとしと!(というかモロい!)

チョコのこってりした甘さは、カシスの甘酸っぱさで見事に中和されて

でもクロワッサンの存在を消さない程度の甘さ&香り。

ものすごく美味しいよぅ〜!!!

…シェフ! こんなん手間ひまかかる凄いもん作ってるから寝られないのでは?!(笑)


個人的にこのとき、とても面白い出会いがあったので

やっぱり、今日この日に立ち寄ってほんっとに良かったよ。


もう一度ここで言わせて。

「私も、Iシェフのこと、超ーー尊敬してるよ!!」






名もなき店で飲むのは





大阪での夜の飲みはいつだって名前も知らないような店。

どこで食べたい、どこで飲みたい、そういうことがほとんどない。

珍しく私が相手任せになる大阪の夜。

話をするために会うのだからどこだっていい。

語らうことが目的であれば、他に何を求めるというのだろう。

でも、それがたまたまだとしても安くて旨い店だったらもっといい。

そういう店に導いてくれたことに感謝と祝杯。


天王寺の場末な裏通りの居酒屋。

もう名前も忘れた、場所も忘れた。何を語ったかも漠然としてる。

でもその夜のことは忘れようにも忘れない。

新しい宝物を手に入れたような喜びを忘れない。

終電を逃して歩いた夜の街はぴしぴしと冷たかったけれど、

なにかが私を温めていた。とくとくお湯を注いだ湯たんぽのように。






最強3人"娘"の最強ランチ@北新地




3日目の昼。奈良から向かうは北新地。

仕事に向かう前にがっつりランチを食べるのだ。

「覚悟して来た方がいいよ!」という友達曰く、

その店は予約限定のビストロ。予約があれば店を開くという。

美味しさもさることながら、とにかくすごいボリュームなのだという。

奈良で食べ控えたのもそのため。

内容も、完全にお任せ。何が出てくるかは行ってのお楽しみ。

今回の滞在、私は全部お任せっきりだなぁ、いったいどんなことになってしまうの?!


とある雑居ビルの3階、カウンター数席だけのお店。

シェフがひとりで切り盛りしている。

たまたま他の予約客がキャンセルされたために私たち3人だけ!

そう、最強3人娘だけが今日のお昼のお客さん!





前菜はサーモンのサラダ。

…え? これ、ひとり分ですか?(笑)

取り分ける必要はないんですよね?(笑)

脂がこってりのったサーモンにはいくらも添えられて。親子サラダか?!

葉っぱの一枚一枚まできちんと味が行き届いていて

サーモンはかなりこってりだけど割とさっぱりいただける。

これとバゲットとビールで、もうすでに私、腹8分目なんですけど?!


「食べられないものとかありませんか?

…といってももう用意しちゃってるから出せって言われても無理だけど(笑)」

一見愛想が無さそうに見えるシェフ(失礼)は

要所要所で笑いを誘うようなことをおっしゃる。





なんとお次は手打ちパスタ!! タラバガニと水菜のタリオリーニ。

シェフがなにか白いものを手でほぐし割いているのが見えたからてっきり鶏のささ身か何かと思いきや

タラバガニだったのかーー! さらにチーズをたっぷりすりおろしてもらって。





これが今まで食べたパスタの中で一番独創的で一番絶品だったと断言しよう!

めーちゃーくーちゃー美味しい!

美味しい!

美味しい!!

美味しすぎて頭ヘン!(笑)


食感がものすごく独特なのだ。例えるなら「蕎麦」。

幾分コシはあるのだけど、「ぷつぷつ」切れる。その蕎麦のような手打ち麺に、

水菜のシャキシャキした歯ごたえがその「ぷつぷつ」を穴埋めするかのような(笑)

とにかく不思議な食感! そして信じられないくらいに整ったまろやかな味わいーーー!!!

あわわあわわ。あわわあわわ。これは最強3人娘がいともあっさり降参!!

強すぎます、シェフーー!(笑)





まだ来るか!(笑)

メインディッシュはこのチキンの煮込み。

ペシャメルソースのマッシュポテトを添えて、見るからに「がっつん」!!

外側のチキンの中には、鶏のミンチが詰め込まれているのだ。

そんなのが3個も(笑)。無理! 無理! こんなに食えん!

…といいつつ、美味しさって恐いですねぇ〜(笑)、食べられちゃうんだ、ペロリと!


ポテトのクリーミーさと肉のこってりさ、時折ぴりっと効くピンクペッパー。

この一皿でなんて味の幅が広いのだろう!


横には、呻く時も叫ぶ時も同じタイミングの連れ2人。

せっかくの美貌もくちゃくちゃですよ、お姐様たち?!(笑)





デザートまで出るなんて、ほんっとに予想外。

(というか、内容も予算も全くわからないから…ミステリー食ツアーである)

一見フルーツの盛り合わせ的に見えても、どすこーい、ひとつひとつに仕事が!

このチョコレートのケーキは、粉を使っていないとかで、チョコそのもの。

私がケーキ屋に行かないで済むのは、こういうデザートを出してくれるお店があるからだな〜。

これで半年くらいケーキ関係食べなくていいです、まじで(笑)。


美味しいコーヒーを飲んでも収まらない興奮。

お会計を聞いてイスから転げ落ちそうになる。

こ、これで千円ですってーーー?! うそ、うそ、うそーー!

いくら大阪だからってありえませんって!

(あえてお値段を伏せさせて頂きます、はっきりいって、価格破壊です)


3千円のおつりをもらうとき。、 「はい、おつり3万円」とシェフ。

ジョークをとても言ってるとは思えないようなクールフェイス(笑)。

さ、さすが大阪!

それって八百屋のセンスと一緒ですよ、シェフーー(笑)。






行かなければならなかった蕎麦屋




ここは滞在中に一人で入ったお蕎麦屋さん。

以前来ようと思った時は一人じゃなかったのだけど…。

お蕎麦なんて食べる余裕はこの過密なロングステイの中では残されていなかったのに

あえて来たかった。約束、みたいなものだったから…。

私が頼んだ鴨南蛮は、鴨がイマイチだったのが残念だったけれど

ここに来て蕎麦を食べなきゃ、なんだか収まらないというか、

収めなきゃというか……逆に「それほど感激しなかった」ことに安堵してみたり。

いろいろ思いを馳せながら蕎麦をすすったガード下。






定番、ビジネスの前の朝ごはん@パンデュース


過去2度の来訪ストーリーはこちらこちら



大阪出張の楽しみのひとつはなんといってもパンデュースでの朝ごはん。

というか、朝以外来たことがないんです(笑)。

だから昼にどんな品揃えなのかも見たことがない。

…本町の別の店には居るんだけど(笑)。






来るたびに、微妙に変わるラインナップと、「これもう一度食べたい!」がちゃんとある安心感。

このTAKOさんベーグル!! かわいい! かわいい!

姉妹編としてチョリソーを巻いたIKAさんも!





この野菜スープ300円を飲みに来るのです。

「朝からそんなに食べるんかい!」と呆れられそうな量のパンを食べるのです。

いいんですいいんです、これが大阪出張の醍醐味なんですからっ。

前回卒倒したにんじんのフォカッチャは必須。デザートは杏とマンゴーのデニッシュ。

もちろんタコさんベーグルも!!





このネギ焼きみたいなタルティーヌが美味しかった。

バゲットに、ブルーチーズが塗られ、ベーコンを乗せ、たっぷりのネギで覆う。

ネギと青カビの香味とベーコン+チーズの脂が相まって…♪


会社に向かう道のりも慣れたもの。

といっても開店前のhに顔を出して「昼また来るんでー」の一言を忘れずに。


保守的なところもあるのです、私。

同じことやるのが好きなんです、意外だろうけど。






大阪編はこれでおしまい。

…え? あのお店がまだ出てないって?!

大丈夫、この後に続編…いや、本編が待っているので御安心を。


次は神戸編。

神戸空港が開港したばかり。もちろん私は復路を神戸経由にした。

…といっても一軒しか余裕がなかったのだが。




4年ぶりの再訪、三ノ宮の「踊る」パン屋さん


もう4年も前になるのか。夜行バスで三ノ宮に降り立ち、

開店と同時に店に滑り込み、パンの花畑に体が震える経験をしたのは。

色とりどりの品揃えも、完璧なまでのディスプレイにも大興奮したあの朝。

パンを選ぶのに1時間近く迷いに迷った覚えがある。

その興奮は食べてなお一層興奮! …とまではいかなかったことすら覚えているが(←辛!)

パンを選ぶ楽しさ、喜び、そういうものがここには具現化されていた。


あれから神戸は何度も来ているが、このお店自体に来るのはほんとに久々だったのだ。





場所はうろ覚えだったので、周辺のオフィスビルを一軒一軒うろうろさまよう(笑)。

おぉ、ここだったここだった! この地下だった!

夜行バスで来たからここのトイレで化粧したの、覚えてます!(笑)


ところが

もう昼下がりだったからだろうか、私があのころの私とは違うからだろうか、

…あの時のような「踊るパン」のイメージは影を潜めていた。

もちろん、花畑のように咲き誇るデニッシュや、

テンコ盛りの野菜フォカッチャも少なからずあったけれど。


4年の月日が変えたのは、やっぱり「私側」だったのだろうか。

想像できないだろう、その後の4年でどんなにたくさんのパン屋さんとパンに出会うだなんて。

あのころの私に、少し謝りたくなるような気分だった。





小さなパンを3つだけ。

ひとつでいろんなフルーツを欲張りたいから

なるべくアラモード的なデニッシュを厳選したのは言うまでもなく(笑)。

これが美味しかった! フルーツひとつひとつが仕事がなされて

フレッシュフルーツを美味しく食べさせることには本当に長けていると感心させられる。



バタバタとポートライナーに乗り込み、新しい小さな空港へ。

神戸空港開港で、関西への扉がまたひとつ増えた。

私の関西パン出張も、これでまた違うシナリオが生まれるのかもしれない。

でも、きっと「パンありき」であることには変わるまい。

それだけは何年先の私にも断言できること、なのかな。




* 本町h編に続く