36-1.大阪パン出張 -1- シェフに会いたい


 

2月最終週。半年以上前からこの日に大阪行きが決まっていた。

3日間の短い期間で自由に動けるのは初日だけ。

なんとしても再訪したい店、

なんとしても来訪してみたい店。

なにはなくともこの2店は押さえよう。


例えば3日間、パン遠征するときの私の鉄則。

1日目「冷凍クール便で送れるから絶対持ち帰りたい遠方の店を初日に!」

2日目「持ち帰れないから食べ切れるものだけを買ってその場で食べる!」

3日目「手持ちで持って帰れるからこれまた持ち帰りたい店を最終日に!」


ただし最終日は日曜日。

大阪のパン屋さんはほとんどが日曜日定休。

最終日はどのみち買い物ができる自由時間もなさそうなので初日。

初日に行きたいあの2店だけに思いを馳せていざいかん!


イベントが重なり、大阪にはなじみのパン友たちが大集合!

みんな行きたいお店が集中していて

どこそこ行ったよーという報告を現地でしあう。

さながら「みんなで大阪出張」という感じだ。

本当に珍しい3日間だった。その一部始終を御報告。




岸部ル・シュクレ・クールでお店ジャック!




昨年の夏に来訪して以来、再訪もチャンスを伺っていた。

あれからますます人気店になっている、という噂は聞いていたけれど、

ほんとうにそう。パン特集にはひっぱりだこ、

お客さんも途絶えることなくひっきりなしに訪れる。

こんな不便な場所にあるのに(失敬!)心配は無用だったみたい。

確実に周辺の人たちのパン食生活に変化をもたらしているみたい!





昼前に到着。パンが次々と焼き上がり、前回以上にあわわあわわしてしまった。

どれを選んでいいものやら、どれもここで食べてどれを持ち帰って…。

ただただ眺めることしかできない自分。

他のお客さんに「お先にどうぞ」、これ何回やったことか(笑)。





そば粉のパンたちも種類豊富に揃っていて

今日しか売っていなかったものもあったみたいで…。あーー決められぬ!!





前回買って感動したパンたち、是非とも食べてみたかったセ−グルたち…。

ああん、お店を買い占めたい…!!

(って、パン好きなら誰しもそう思うんじゃないかしら?!)





一番目を引いたのはプティシュルプリーズ。

小ぶりのチューリップパンに、ひとひねりある具材が…♪

三個並んで「ド・レ・ミ」って感じ。「A・B・C」って感じ。





決めきれずにまだ迷っている私の横で、連れが買った焼き立てほやほやのル・クールを!

ハートをかたどったリング型のフランスパンに、たっぷりの甘い豆が入っている名物!!

ひとちぎりもらって、お店の中でパンを選びながら口に放り込む。

がーーーん!!!

なんちゅーウマさ!

かりかりむっちりの生地が甘い、豆も甘い、そして深い余韻!!

ますますパン選びが難航しちゃうってばぁ!





取りあえず席に着き、さぁ食べましょう!

3席しかないイートイン席を私と連れとそのちびちゃんでジャック。

さっきまで「おなかすいたぁ」とごきげんナナメだったちびちゃんも、

ハートのパンを食べてからすっかりごきげんに(笑)。

実に違いのわかるチビちゃんなのである。


前回食べて悶えた「レ・サンクディアマン」を始めとして絶品パンたちをひと齧りずつ。

−グルも甘苦いあの香ばしいクラストのはフランスで味わうパンそのものだったし、

(*もっと詳しく書きたいなぁ。とにかくこれは絶対みなさん買うべきです)

小豆入りのそば粉パンも…。

切ないほど美味しかった。何を食べても、全部!


でも持ち帰り用に買ったのはたったこれだけ。

多く買って冷凍庫に納入しても、きっと1週間もしたら「焼き立ての近場のパン」が食べたくなる。

美味しいテンションをキープしつつ食べられるのはこれがせいいっぱいかなぁ…と

セーブしたんだが、やっぱり少なすぎたかも(泣)。





シェフにご挨拶♪

前回の来訪の時以来、シェフは拙サイトをご覧になって頂いているそうで、

Paris日記の話が出た。やっぱり自分の馴染み深い国の街の風を感じる

風景や店やパンを見るのは嬉しいみたいなのだ。


今日は、シェフのParis修行時代のアルバムを見せて頂いた。

今度は私が懐かしさに震える瞬間!! どのページを開いても、

「あの店!」「あの街角!」「あのパン!」と、悲鳴の連続だった。

パンを食べながら汚さないように大切なアルバムを眺めさせて頂いた。感謝。




あとはひたすらむさぼりタイムー!

ここのクロワッサン・ザマンドは、カイザーのとは全然違う、超硬質タイプ。

こちらのお店ではイートインパンはちゃんと焼きもどしてくれるのが嬉しいのだ。







表面を覆うザマンドとアーモンドスライスが、さながらアーモンドサブレ。

アーモンドの風味がとにかく強くて非常に香ばしいタイプ。




 


なんだかんだ、イートイン席では連れが買ったパンをむさぼらせてもらっていた(笑)。

「いつでも私はこられるから遠慮なく選びやー」と言ってくれたので

ここは惣菜パン、食べさせてもらいましょう〜!


菜の花とゴルゴンゾーラ!!

オリーブオイルで炒めた菜の花とゴルゴンのいい感じの臭みがたまらんーー!

ガーリックのような香りもした気がする。とにかく味付けが美味!!

能書きには「ハチミツ」がかかっていると書いてあったのだけど気付く間もなく呆気なくぺろん。

いよかんのブリオッシュもコシがあって美味しいぃぃ…。







焼き立てのほやほや、まだ陳列される前のシュークルートを横取り!(笑)

フロマージュも焼き戻してもらってじゅわじゅわにしてもらう!





シュークルート!!

マスタードの酸味が柔らかで食べやすいザワークラウト、ソーセージも旨い…。

生地だけじゃないの、ほんっとに具材も美味しいの、ここのパンたちは。


そして感動的なフロマージュ。

カイザーでも定番の商品で、あっちのは私も何度も食べている。

でもでもですよ、ここまでチーズ入ってなかったし、とろけてなかったもんーー!

くはー、はっきりいって、こちらのは泣けます。化粧が落ちますから(笑)。




あぁ苦しいです。美味しくて胸がいっぱいです(笑)。

かなりゆっくりさせていただいて大騒ぎさせていただいて。

また夏にお伺いしますので!!


そうそう、素朴な疑問がひとつ。

どうしてこの店はあんなにべっぴんさんなお姉ちゃんしかいないんだろう。

しかもみなさんすんごい親切で…。できすぎです(笑)。

よっぽど厳しい面接してるのか?!(笑)



*余談*

大阪で開催中のMOBACに合わせて、シェフのところにお友達が面会に来ていたのだ。

岩永シェフが「mi_waさん、先日いかれましたよね?」とのことで

名刺交換をして紹介されたのはなんとここのシェフだったのだ!!

すっごーーい感激。絶対暖かくなったらまた行きますからと誓わせていただいた。



***


本町フール・ドゥ・hで聞きかじりまるかじり





お次はもちろんこちらのお店!

昨年9月にオープンしたこちらのお店は、大阪のパン好きたちを瞬く間に魅了。

こちらもカイザーで修行された経験を持つシェフなのだが

パティシエであるこちらのシェフ、ケーキもお菓子もパンも全部お一人で作られるという。

すごい…こんな町中で大きなオープンキッチンを持つ店を一人で…?!

(当然、睡眠時間がものすごく少ないそうで…頭がさがります!)





昼下がりで、パンの種類は少し少なかったようなのだけど

逆に優柔不断の私にとってはありがたい話(笑)、それでも選ぶのに時間がかかるのだ。

和の平皿に並べられたパンたちは一つ一つが表情が全く異なる。

最初、「カイザーで修行されたことのある…」と聞いていたので

一見すればわかるのかな、と思いきや全然カラーが違う。

オープン当初から、だいぶパンが変わってきたとのことだ。

オープン当初ならきっと私も「お、ここのシェフはカイザーでの経験ありなのかな?」と

わかったかもしれないが、今だったら全くわからなかっただろう!!

それくらいに、完全にオリジナリティな、シェフの独創性あふれたパンばかりだったのだ。





たまたま私が行った時には、雑誌の取材中でライターがシェフにインタビューをしていた。

パンを選ぶふりをしながら私も聞き耳をしっかりたてていた(笑)。


ライターの姉ちゃん「シェフのお気に入りのパンはどれですか?」

シェフ「このグレープフルーツのパンですね」

ライターの姉ちゃん「どのへんがおすすめなんですか?」

シェフ「苦いんですよ(笑)」


私もトレーにその「パンプルムース」を載せたことは言わずもがな(笑)。





お店のかわいいお姉さんにあれこれパンのことを聞きながらなんとか選びぬく。

お姉さんのおすすめをそのまま買っちゃう、素直な私だった(笑)。

リュスティックカカオ(画像なし)は、チョコ入りの柔らかいカカオ生地のパン。

お姉さんのオススメなのだが、レジの前で私は一口かじりついた(かなり常識はずれた行為?)。

生地は甘くなく、まるでクリームのようにとろぉ〜んととろけたチョコが!!

えーん、美味しいですぅぅぅとお礼を言ってしまう(笑)。





取材も終わり、シェフと少しお話させていただけた。

粗挽きの粉なんですよ、と実際に見せてくれる気さくさ。

クロワッサンがおすすめなんだとか!

しかーし、今日はもうなくなっていて、こりゃ明日また来るしかないだろう。

明日は朝から晩まで用事があるから行けるかどうか微妙だが…。

「絶対明日来ますっ。クロワッサン買いに来ますーー」

私に二言はありません。来るっつったら、来るんです!(笑)


次の目的地へ行くために、車の中でそれ齧れーー。





シェフお気に入りの一品というパンプルムースは、

グレープフルーツピールがごろんごろん入っているライ麦パン。

これがものすごーーく苦い! 鮮烈で苦い。でも甘さもきちんと兼ね備えていて…。

翌日食べたら絶対甘さが馴染んでいるんじゃないだろうか。

絶対子どもは食べられないなぁ(笑)、でも酸いも甘いも噛み締めたオトナならクセになるぞ。





生ハムのエピが絶品!!!

エピ好きの私でも、生ハムを使ったものは初めてかも?!

生ハムがものすごーーく臭くて口の中が「肉臭」に振り回されるほど(笑)。

もちろん、クサ美味しい。これが「臭いもの好き」にはたまらないのだ〜!

これに白髪ネギのぴりりと辛くも甘い香りが中和して…おいし〜!!!


 



でかいバゲットアンシェンヌは持ち帰りしがたいので、チビサイズのカスクート。

これには無塩バターがはさまっているんだけど、これもナイスーー♪

そもそも、こういうふうにバターだけはさんだカスクートって、もっと他にも出してほしくない?

バター切り売りとかしてくれても嬉しいかも(笑)。世の中のパン屋さん様!


そしてこれは唯一買ったヴィエノワズリー、「パン・オ・レザン・ヴァンルージュ」。

ぬわんと、レーズンを赤ワインで漬け込んだだけじゃなく、カスタードクリームまで

赤ワインを使用してしまったとか! まるでベリーにみえるけど、レーズンなのだ。

(画像ではやっぱりレーズンに見えるなぁ(笑)。ほんっとーに真っ赤なんだってばっ!)





そして買うまでに悩んだ時間が一番長く、買って一番良かったと思うのがこれ!

「グロ・パン・ド・セ−グル」。


今日買ったパンたちは夜にクール冷凍便で東京に送ったのだが、

このパンとシュクレクールのセ−グル、そして下にあるセ−グルフリュイだけは

少しだけ切り分けて滞在中もじっくりいただいた。


とにかくこのグロは絶品だった!!

サワー種の酸味がコクとなるあの変移を、口の中で存分に味わえる。

強い強いコクがじわ〜っと溢れてくる。それが、翌日、翌々日、いや、5日以上はもった。

日増しに旨味が熟成されていく…日増しにライ麦の香りが強くなっていく…。

もう、買いたての時の味は忘れてしまったほど(笑)。





そして! 当店人気No.2のセ−グルフリュイセック!!

とりあえずクルミとイチジクは入っているのだが、

この黄色いのはグレープフルーツピール?

他の軟らかめの果肉も入っているのだが…これはりんご?

(もしかしたら日によって変わる?)

そのフルーツの大きさといったらすごいもので。

「塊」がごんごんごんっと入っていて、宝石を詰め込んだ岩、みたいな(笑)。

ややえぐみすらあるピールが入っているので、塊で食べると目が「★」になる瞬間も。

スライスして食べる方がいいのだけど、

どうもこういうパンを塊でかじりついちゃう悪いクセ(笑)。


しかーーし!

このフルーツパンを「ちゃんと」スライスして翌朝、翌々朝、起き抜けに食べた時の

悲鳴をあげそうなほどの美味しさは!! フルーツがライ麦生地にじんわりと馴染んで

やわらかくやわらかーーく優しい甘さになっていたの。

ものすごく美味しくて、全部冷凍輸送しなくて本当によかったーーって心から思ったっけ。

(*そして後日、冷凍したものを焼き戻したときもとろけるようなフルーツの甘さに酔!!)


この時点で私は決めていた。

明日はなんとしてでもクロワッサンをゲットしに行くから!

(まさか滞在中、3回も行くことになるとは知る由もない)


大阪のパン好きたちを魅了するこのフタツの新しいパン屋さんたち。

同じMK出身の二人なのに、全然カラーが違う。全く違う。

東京にはMKのお店は数あれど(うちの会社の周辺のデパートなんてMKだらけだ(笑))

こんなに独自の道を行く、素敵なパン屋さんがあるのは大阪だけだもの。

共通してシェフが男前なのもうらめしや(笑)。







この後、南港で行われているMOBAC(モバック)ショーに行くのだが、

途中車で通りがかった「パンデュース」。

今日はもうパンは買わないけれど、お店だけは覗いておこうと思った…が。

あれれ、臨時休業? もしかしてモバック行っているのかな?

…と思ったら、体調不良でダウンとのこと…。

パン仲間たちの間でも、この日お店に行ってこの臨休にぶちあたった人続出。

パン好き、やることみんな同じ(笑)。


* つづく *