59-1.2月関西出張 パンとロングステイ -AREA1- 京都&奈良




2006年2月。

前からこの週末に大阪に来ようと決めていたのだけど

私の「パン運」というのは恐ろしいもので

本業の出張が直前に決まり、土曜日から火曜日まで滞在できることに!

本業自体は本来1泊で済むのだが(笑)ここは欲張らせて頂こう、ロングステイ!

本来は1泊だけだったからあまり予定を立てていなかったけれど

今回は大阪に留まらず、あれこれ行けてしまった。

時系列ではないけれど、エリア毎にまとめてみよう、関西3泊4日のロングステイ。

まずは、2日目に訪れた京都から。




京都(1) パン de プチメック



1泊目は温泉付きビジネスホテル、2泊目からはいつも泊まっているホテル。

連日のオリンピック観戦のせいで、睡眠が断続的。

せっかく旅先だというのにチェックアウトぎりぎりで目覚め、慌てて宿を出た。

朝ごはんも食べ損ねて、今夜の宿に荷物を預けてから京都を目指す。

とくにプランも立ててない、余裕を見せながらのパンめぐり。


余裕? いやー、どっちかというと

「昨日のパン(それについては後述)」をたくさん東京に送ったので

あまりたくさん買えない、食べられない。

そんな気持ちが逆にのんびりさせちゃったのだろうか。


まずはやっぱり京都といえば本命・プチメック!

前回の京都のときには時間がなくて諦めたけれど、久々のプチメック。

あらま、もう1年以上経ってるんだな。

(前回来訪時はこちら





週末だけのオープンになってしまったせいか、それはそれは大変な込み様だった。

私がパンを選んでいた時はまだよかったけれど、席についてパクついていたときには

店内は寿司詰め状態。それでも次から次へと焼かれるパンたちは回転よく、景気よく。


おかげさまで焼き立ての、最高に美味しいパンに出会えちゃったのである。

それが、この渋皮つき栗と柚子のパン!!

カリッカリの薄皮クラストとむっちりみずみずしいクラム

しとしとした生地を余すところなく柚子色に染めているのに、とても自然な甘さ!

実はこういう「上手い」食感のパンって、そうそう多くない。





イートインに選んだのは、ランチ向け…というか、いかにも「さぁ飲みねぇ飲みねぇ」と

酒をあおられるようなパンなのである。いいじゃないの、ここはプチ・フランス。

フランスではみんな昼からカフェでビール飲んでるしね。


プチメックでは絶対食べると決めているサンドイッチたち。

今日選んだのは自家製テリーヌのサンド。テリーヌ…というか、パテ。

脂肪がごろんごろん入ったパテはめちゃくちゃこってり、こてこて。

すかさずビールでそのコクの延長線上を楽しむ。ケヶヶ、ろくでなしー。

眠くて、少し酔っ払っていたので画像が悪いのはお許しを(笑)





店に入った瞬間に私を射止めた(というか、「さすがプチメック!」と唸らされた)のは

このタルティーヌ、エスカルゴ&きのこのブルゴーニュ風!

パテといい、エスカルゴといい、もうパン屋の枠を飛び出してビストロの領域にも足を踏み入れているなぁ!

苔のように青青としたパセリに食欲をそそられ、

オリーブオイルとニンニクの強烈な”あおり”に、まんまと飲まされる。

はいはいはいはい!(笑)


画像にはないけれど、カレーパン1号もやっぱりパン屋の粋を超えているよ。

「辛すぎて美味しいんだかなんだかわかりません」てなコメントが

ついていたけれどそれって謙遜? 自信?(笑)

ルゥが辛すぎてここがパン屋なんだかカレー屋なんだか

フランスなんだかインドなんだかよくわからん!(笑)

けど美味しいの! すっごく美味しいの。





外国の観光客が、お店の人に交渉して壁に落書きを始めた。

そう、壁をみるといろんな国の言葉が書かれている。

外国人にだけ許される特権?! うわー、いいなぁいいなぁ。





みかけをカッコよくすることはできても、中身まで伴わせるのは難しいこと。

完璧なまでにおしゃれで、プチ・フランスで、徹底的で。

だけど肝心なのはやっぱり中身。

この店は、この店のパンたちは、中身までが完璧だから悔しくなっちゃう。

このパン・オ・ルヴァン・カンパーニュだって…悔しいくらいに完璧なのだ。

みかけも、中身も、徹底的に。









突発的な京都来訪だったので作戦ミス。

ていうか、定休日くらい、ちゃんと把握してなさいよ、私!(笑)

でも内心、これ以上たんまり買うわけにはいかない懐事情。

ベーグルを買えなかったことに安堵を覚えてみたり。







京都(2) 人形とパンのコラボ@東風さん





京都に来るたびについつい足を運んでしまうのはここ、一乗寺。

これまでの来訪ストーリーはこちらこちら


ちょうど一週間くらい前に、BBSに「東風さんで人形展やっているんです!」という書き込みがあった。

あまりにタイムリーなその情報に、なにか運命的なものを感じたのかどうなのか。

そのときすでに「時間があれば京都行っちゃおうかなー」なんて目論んでみたんだ。






店内にはパンと人形のオブジェがぶら下がっていた。

今、人形作家のにしおゆきさんの個展をやっているとのことで

人形とパンのコラボがたくさん飾られているのだ。

手作りに囲まれていつも以上に心がほかほか、湯たんぽのような暖かさ。




お店でゆっくりしている間、幾人ものお客さんが来てはパンを買って帰る。

ほとんどが馴染みのお客さん。彼女とお客さんのほのぼのとしたやりとりを見るのが好き。

お客さんが帰ってはまた喋り、お客さんが来たらまた私は隅でワンちゃんと待つ。

昼下がりのお店にはもうパンはあまり残っていなくて繁盛繁盛!





さーて、大好きな雑穀パンといちじくパンを…と思ったけれど

うぅぅ、今日はもうパンはあまり買えぬのです、ちいこいパン3個で堪忍やー。

わざわざここまで来ておいてこれだけという客も酔狂のような気もするが(笑)

いつでも来れそうな気がしちゃうんだよね。





おもむろにかじりつくはあんパン。

あんなに食べた後なのにどうしてこう、食べられちゃうのだろう。

やさしいやさしい甘さは、喉を通り過ぎたころにどんどん美味しさが膨らんでくる。





これがコラボのパン! パンの中に人形が入っているの。

ちょうど、その人形作家のにしおさんがお店にやってきて御挨拶。

すんません、私買ってないんだけどね(笑)東京で個展やる時はぜひおじゃましますね〜。







京都(3) こせちゃは京都パンめぐりのルーツ





東風さんから歩いて数十分の修学院近くにあるこのパン屋さんには

私には思い出がある。

まだ学生の頃、友達と京都のお寺に泊まりに来た時。

レストランには一軒も入らず買い食いオンリーでお腹パンパンになったあの旅行。

パンはもちろん好きだったけれど、パンのためだけに旅行するなんてそのころは考えてもいなかった。

近くのお寺を拝観したときに、ふとパン屋さんの看板を発見した。

そう、こういう看板だったと思う。





その時に買ってかじったパンの美味しさが忘れられなかった。

天然酵母パンって美味しいんだ!

あの時食べた小さくて素朴なころころしたパンが食べたい。

お店が一時休業、味も変わったとか耳にしたけれど、

もちろん、あのころの私とも違うけれど、やっぱりもう一度訪れたかった。

旅先で食べるパンの美味しさを初めて覚えた店だから。





記憶におぼろげに残っているパンはなかったけれど

新しく出会えたのは美味しい美味しいクリームパン。

この歩きながら全部食べ切ってしまったのはほんとに思い掛けないこと。

だって、このクリーム…!! 理想をそのまんま描いたようなクリームだったから。

「タマゴの力で固まりました」的な、タマゴが濃くてしっかり固めのクリーム。

噛み切るようにして食べるクリームは、余計な脂肪が無くて引き締まっている感じ。

あぁ、またこのクリームパンのためにここまで来ること、たぶんあるな。

きっとある。






今夜の飲みに差し支えるし今回の京都はこれまで。

それにしても、1年に何度も関西に来るけれど、

京都でも大阪でも、ほんとにいつも同じお店に来ているな。

関西では不思議とそういう「開拓欲」がない私。

「また来るよ!」っていう欲だけは人一倍あるんだけどな!

だからきっと次回の京都も、顔ぶれは一緒。

ESSAYでお馴染みの店ばかりになることをご了承いただきたく(笑)。







…ところがどすこい。

3日目の朝は私は奈良まで行っていた。

今回のロングステイで唯一の初来訪のお店。

大阪での友達とのランチ約束の前に、ぴゅんっと奈良まで行っちゃおう。

…あぁ、言い訳のようだけど、仕事はランチの後に行くから!

ボス、堪忍やー。




奈良 豆・豆・豆のパン屋さん


天王寺からJRで30分くらいの大和郡山。

もう数駅で奈良というこの立地。

ここまで来ておいてパン屋さん一軒だなんて至極もったいないけど

今朝はあいにくの雨。ゆっくり散歩も出来ない分、お店でゆっくりしてしまおう。




JRと近鉄を結ぶ昔ながらの商店街は、昭和から時が止まってしまったかのような

ノスタルジックな町並みだった。





床屋さんはまだわかるけど、洋傘修理屋さん?! ひゃー時が止まったというか

タイムスリップしたかのような…。

路地裏からマルコメ坊主くんとかがぴゅんっと飛び出してきそうな。





そしてここが豆パン屋アポロさん。

もとクスリ屋さんだった建物を改装したというこのお店、

あえてこののんびりしたひなびた町でパン屋さんをやりたかったのだそう。

このお店のHPを見て、「この町を愛してる」というその言葉に引き寄せられてしまった。





道路に面して工房があり、だんなさんがパンを焼いていた。

奥の店内には、奥様がパンを並べていた。

雨の日の平日の朝、お客は私のみ。

ストーブと壁にはお嬢ちゃんが描いたお絵書き。本棚にはたくさんの本。

私の子供の頃も絵をたくさん貼ってもらっていた。

本もたくさん並んでいた。きっと、どこのおうちの子供もそう。

だから、誰もがここでは子供がえりしてしまう気がする。





お茶とパンをいただけるテーブルとイス。

パン屋さんというよりも、カフェというかアトリエというか

キッチンがあるからか、お茶の間におじゃましたような感覚も。

ほとんどのパンには「豆」が使われている。

食事パンも菓子パンも固いパンにもやわらかいパンにも!





奥さんが豆のスープを作っている間に見ていた本棚。

うあー! 「いじわるばあさん」だ!(笑)

このお店になんてしっくりくる本でしょう。

このお店の方の子供の頃からそばにあった本なのかな。

私が子供の頃、ピアノの先生の家での待ち時間、いつも読んでいた。

待ち時間が長いほど、嬉しかったことを覚えてる。





スープが来る前に私はそれを夢中になって読んだ。

そうそう、子供には難しい時事用語とかがいっぱい書かれていた。

今ならもちろん理解できるブラックユーモアだけど、

はて。子供の頃の私はどこまで理解して笑っていたのだろうか?


豆と野菜がたっぷり入った豆乳スープがとても美味しい…!

思わず作り方を尋ねてしまった。さすが豆パンの専門店!(笑)





ひよこ豆のカレーパンとアポロあんパン。

どちらにもひよこ豆がぴょこぴょこ入っている。

昨日食べたカレーパンともあんパンともまた違う。

たっぷり入ったルゥもあんも、手作りでしか出せない優しくて確かな味わい。

おとぼけた見た目とは裏腹にしっかりスパイシーなルゥ!


こんなに「豆!」を意識させられるあんパン。

くるみがこりこりっとアクセント。

豆、ときどきクルミ。ときどきパン。でもやっぱり、豆。

どちらもとっても美味しかった。


懐かしい町並みに懐かしい小物たち、懐かしい豆のパン。

逆にそれが新鮮に感じてしまうのは、もしかしたら今の自分には

遠ざかっているものだったからなのかもしれない。

失ってしまっているものだったからなのかもしれない。

懐かしいものを再現した、というのではなく、もっと自然な自然な流れで。

古き良きものをそのまま持っている人たちだから生まれた空間のような気がする。



パン屋さんってほんとうに面白い。

異国であったり、過去であったり、未来であったり。

世界旅行もタイムトラベルもできちゃうのだから。

だから、私は時間がある限り、パン屋さんを旅しちゃうんだろうな。






とりあえず、つかの間の子供時代の私に別れを告げ、私は大阪へ戻る。

オフィス街のビストロで、オトナのランチをするために。

ランチでも仕事前でも、きっとビール飲んじゃうだろうな、ろくでなしのオトナな私は。

オトナの女同士で、オトナだけの愉しみ方で…。




* 大阪&神戸編に続く *