70.北海道06夏 〜海のパン屋&札幌パン〜




8月の北海道。

2年前の8月は記録的な猛暑で

クーラーのない我が家は、東京で過ごすよりも

しんどかったのを昨日のように思い出す。

…今年も相当熱かった北海道。


書き出すといろいろ感傷めいたことを連ねそうなので

今年はさくさくさくーーっと。

爽やかに北海道の風とパンを

さくさくさくーーっとお送りいたします。


札幌に帰省しても、いつも同じような店ばかり訪れていたが

最近、あちこちに気になるお店が新しく生まれているので

今回はほとんどが「新規開拓」。

そして、今後も通いつめるであろうと思われる美味しさにいくつか出会えた。


…でも。

北海道に渡れば、行かなくてはならない店がある。

あの風景を見なくては、私の夏@北海道は終われない!








今回の帰省はほんの3日程度だったので

家のクルマを借りて毎日のように一人パンドライブを決行。


最初に訪れるは、羊ヶ丘や札幌ドームからほど近い、

インテリアショップの中にあるma douce bakery

カフェもあり、ベーカリーもあり。

インテリアショップとしても、わざわざここに足を運ばせるだけのものがあるのに

ベーカリー、さらにはそのパンを使ったサンドイッチも食べられる

カフェまであるので、これは今度母も連れて来なけばと思う。

(今日は早く自宅に帰らなくてはならず、カフェは断念。次回次回!)


地球にやさしく、カラダにやさしいパンを。

このコンセプトを元に、

女性パン職人がひとりで焼き上げるパンの

完成度の高すぎるルックスに軽いショックを受けてしまった!

レーズン酵母と道産小麦「ハルユタカ」を使ったハード系のパンたちは

どれも黄色みがかった焼き色が端正で美しい。

例えるなら、「ルヴァン」のパンが無骨で野性味ある天然酵母パンだとしたら、

女性的で、美しくやさしく、それでいてやはり芯は強そうな。


あぁ、食べる前から「ここのパンはすごいかもしれない」と

種明かしされてしまっているような…。

もうオープンして2年も経っているというのに

今頃のこのこやってきた私。うーわ、もったいない…。





ちょうど焼きたてのあっつあつ(ホントに熱かった!(笑))トマトベーグルや、

ゴルゴンゾーラ入りのひとくちパンなどをクルマの中でむさぼる。

どの子もガリっとハードで、口の中にズサズサ突き刺さる。

そう、口の中は「美味しい裂傷」だらけ…。


なかなか手こずるハードっぷりであるが、中はむっちりとつややか…!

何をつけずとも十分すぎるほどに甘い香ばしさに加えて

絶妙な酸味…! うわ、うわ、うわ、、、すごい美味しい…!

(ハードなパンがやや苦手なうちの母はこのトマトベーグルが大変気に入ったそう。

レンチンすれば、ハードな表皮も食べやすくなって、濃厚なトマトの香りに没頭できるのだ)





店内は撮影禁止だったので

気合い入れてパンを撮影してみた@自宅。


トータルコーディネイトされた(ある意味完成された)インテリアの中でも

ひときわこのパンたちの美しさが際立っていた。

それ以上に…私が惹かれたのはその味わい。

そして、笑顔でパンを作る女性の優しそうな人柄。

このレーズンパンも、レトロバゲットも、いずれも本当に美味しかった…!!


「こういうパンがサッポロでも食べられるようになったんだなー」と

しみじみ嬉しく思えた。






別の日の夕方。

時間が思いがけず取れたので速攻家を飛び出した。





こちらも、絶対に帰省時に訪れると決めていたお店。

「パンの店 アンジュ」は、ロープウェイ市電のすぐ近く。

うちからそれほど遠くはない(でも歩いて行くには遠すぎ)。

今回あまり時間がないのでクルマで行ってみたが、

ほんとに「住宅」の中に埋没したようにある店なので

見つけるのに町内をぐるぐる回ってしまったのだ。


こちらの御主人、私がParisでも訪れたことのある(2003年

フランス大統領御用達パン屋さん「ルネ・サントワン」でパンを焼いていたそう。

(*バゲットコンクールで優勝した店は、その年1年間は大統領にパンをおさめる、のである)

もう、それだけで「レッツらゴー」だったのだが

そんなこ難しい経歴(?)を知らずとも、

誰もが「美味しい!」と思えるようなすばらしいパンばかりだったのだ。


パンは長い平台のテーブルに並べられている。

ハード系ばかりではなく、メロンパンやロールパンなどもあったり。

時間は夕方だったのでもうデニッシュやクロワッサン類はなかったのだが

どんな時間帯に来ても焼き立てが食べられるように

パンの焼き上がりが毎時間毎に記されている。おお、これはありがたーい。





そして私がクルマの横で「焼き立て」をかじりついたのは

ひとくちサイズのパン、ポンム・ド・テール。

バゲット生地の中に、熱々ほくほくのじゃがいも(たぶんキタアカリ?)が一個包まれている。

少量のマヨネーズも入っているのだが、これがんもぅ……悶絶だったのである。

適当にマヨ+じゃがいもをぶち込んだから旨い、というのではない、

きちんと計算がされた上での美味しさなのである。


あ、そういえばつい最近もジャガばたで悶絶した私だが(笑)。

道産子の証なのかしらねぇ。

藻岩山を見上げながら一気に食べ切った。





自宅に持ち帰って母とパンを広げる。

これ以外ににもバゲットなども購入したのだが

本当にどれもこれもがうなる美味しさ! もう、期待通りとはこのことか。

一見、なんのへんてつのないバターロール(レーズン)でさえ、

トップにじゅわっとバターが溶け込み、砂糖と混じりあって得も言われぬウマさ!





先ほどポンム・ド・テールで悶絶したが

実はさらに悶絶したのはこちら、ツナパンの方である。

玉ねぎのみじん切りと合わせたツナ、その汁が染み込んだ生地!

うわーーん、小さいから母と半分で、もうなくなってしまった…。





そして…今回、一番は(まだ一番があるの???)間違い無くベーコンエピ。

生地へのベーコンの脂の染み具合、移り具合が絶妙で

ベーコン自体がなくてもきっとこの脂+生地の旨さだけでいくらでも食べきれる。

焼き戻さなくたって、ちょっと放置してヒキがでてしまったって、きっと絶品。


はーー、、、昨日のマデュースに引き続き、

また札幌で「帰省するたび行く店」が増えてしまった。

長く帰省は出来ないサラリーマン稼業の私としては

結構、これって酷なのである(笑)。






このあと、クルマをついつい山の方まで走らせてしまった。

そう、毎度毎度のやぎのパン屋さん。

(過去の訪問はこちらこちら





いつも歩いて来て、歩いて下山(!)するので、

クルマで来ることが逆に新鮮に感じる。

想像以上に、近いのである。家からでもほんの10分?

ほんの10分なのに、なぜこんな山奥になってしまうのだろう?!





森の中に入り、クルマを止めると目の前に突然やぎさんが

ゆうゆうと横になっていたりする。


やぎさんの口元って、なぜいつもにっこりとしているのだろう(笑)

思わずこちらもつられてにっこり。





ここはいつも動物がたくさんいるのだけれど

猫ちゃんが丸太の上にうわわーーっとたむろっていた。





カフェのすぐ横にいるこやぎちゃん。

人なつっこくて、後ろ足だけでたって、こちらに突進してくるのだ。

あー、いいなぁ、やっぱりここはいい。





もう夕方、夕食前なので今日はオープンサンドはパス。

パンとバターとジャムとコーヒーだけにしておきましょう。





山羊乳酵母のパンと、ルヴァーヴのジャム。

ふーっ。美味しい…。





今日はクルマでさくっと来てさくっと帰ったけれど

また登山気分で訪れたい、やぎのパン屋さん。








番外編。


高校時代の仲間たちと飲む。

クーポンで安かったフツーの居酒屋風だったのに

それが予想外に美味しい美味しいくし焼きを食べられたのが嬉しかった。

腹の中に2人目がいるにも関わらず、友達が乾杯のビールを飲み干すのを見て

「妊娠=禁酒」ってわけじゃないのか、と知ることができて嬉しかった。

みんな、このサイトを"たまには"見てくれてるようで嬉しかった。

相変わらず気の置けない仲間で嬉しかった。


札幌で飲むならサッポロビールだわね(笑)。








自宅の周りにも、たくさん新しい店ができているのだが

その中でも特に近い場所にできたパン屋。

パン屋…というか、パンもおいているパティスリー&サロンドテのようである。

場所はすし善本店の目の前。クルマで通った時に目を惹いた赤いファサードが目印。


パンのラインナップは

なんというか、ホテルメイド的というか、デパートの地下パン屋さん的というか。

とっても庶民的(もちろんお値段も庶民的)。





その中で唯一美味しかったのはクロワッサン。

これはオススメできるかもしれない。

サクッと、中はヒキがよくのびやか。甘さより塩気がほどよく効いた食事系。

パンの中でクロワッサンが一番好きな母は、

「わざわざ街までいかなくても近くにクロワッサンが買えるところができてよかった」

よかったね。




***




さて…。

「海のパン屋さん」は、行って帰ってくるだけで確実に一日使うので

そのための「一日」を確保しなくてはならなかった。

わざわざ有休をとって、一日多く北海道に留まったのも

すべてはこの日のため。


北海道ではこの夏一番の灼熱の日。

あの青い海と青い空、そしてパンが私を待っている。



*「海のパン屋さん」来訪ストーリーはこちら*

04年「冬」

04年「夏」

04年「秋」

05年「春」



パンの焼き上がり時間は12時頃だったので

少し早めに家を出て、朝パンをどこかで食べてから向かおうと思った。

国道5号線をひたすら乗れば小樽へ辿り着く。

小樽に行く途中、富丘にまだいったことのないパン屋さんが

あることを思い出し、寄り道をしてみた。





住宅街の中にある、かわいらしい店構えのパン屋さん。

姉妹でやっているそうで、雑貨屋さんとパン屋さんをミックスさせたような、

ほんわかした空気につつまれたお店。





ベーグルサンドは、その場で作ってくれる。

はちみつで作られたマンゴージャムとクリームチーズは夏のフレーバー。

こちらのベーグルは、もしかしたら焼き戻した方が

美味しくいただけるタイプかもしれない。

(この時はすっかり頭の中から抜けていたのだが、帰って来て思い出して愕然。

私、今度小樽行く時は絶対某ベーグル屋に行こうと思っていたのに、完璧に忘れていた(笑))





評判のクリームパンは、ぽてっぽてのぽわぽわクリームが入っている。

すっごく優しいクリーム。これは子供にも安心して食べさせられる。

このクリームは、卵たまごしているというよりは、

ミルクフランスのミルククリームからミルク臭さを除いたような(わかりにくい例え(笑))


ご近所の子供がママに手を引かれてお店に入って来た。

あぁ、そういう感じがこのお店によく似合う。似合い過ぎる。

お店の雰囲気もパンも、お姉さんもほんわかやさしくて。








久々の夏の忍路。

海の青と空の青が同じくらいに青い。





少し前に母が行った時に「少し新しくなっていたわよ?」と言っていたが

なるほど、素敵な車庫ができていた。

でも、やはり変わらない佇まい。

平日とはいえ、夏休みだからだろうか、

お客さんがひっきりなしに訪れる。

こんな辺境の土地にも、パンを求めて訪れる。


クロワッサンとフルーツロデヴだけは予約していたが

し、しまった…。今年の夏こそ食べたいと思っていたトマトのパン!

奥の方にあるのに、全部予約取置きらしい。

がーんがーんがーん…。





でもでも、クロワッサンはしっかり確保っ!

この海を眺めながら、このクロワッサンを食べること。

ただそれだけのことを、同じことの繰り返しでも

何度でも「初めて」の気持ちになれる。


「こんなに美味しいクロワッサンは食べたことがない!」と。





同じくらいに大好きなパン・オ・ショコラ。

クロワッサンを一気に食べ切り、

さらにパン・オ・ショコラも食べ切ってしまった。

でも止められなかった…止められるわけがなかった。


北海道と言っても、今日の日射しは特別だった。

内地と同じくらいに照りつける。

汗が額から垂れ、全身汗だくだったけれど本当に爽快だった。

海が、太陽が、パンをさらに美味しくしてくれているようだった。





パンパヴェ。バタールみたいな感じだが

ここのパンはクラストの味が違う。

窯の違いを痛感させられる。





そして

このパンだけは。

クルミ+オレンジ+レーズンなんてどこにでもあるパンなのに、

フルーツのロデヴだけは、

ここでしか食べられない味って絶対に保証できる。

これだけのために北海道に来ても絶対後悔しない。

どんなに美味しいパンに出会っても…オンリーワンでナンバーワン。




北海道に生まれてよかった

そう思う機会は何度かあったし

北海道に帰りたくない

そう思う機会も何度もあった。

特にこの8月の北海道には…


それでも、このパン屋さんを食べに「帰る」ことができることが

今は一番幸せ。

パンに幸せを分けてもらえる、私は幸せ者なんだと。







*余談*


海のパン屋から高速で家に戻り今度は父にクルマで空港まで送ってもらった。

思いのほか時間がかかったので、空港では30分くらいしかなかったのだが

はたと思い出す。

「今回の帰省、ラーメン食べて無いし!」(笑)




空港の中に道内の有名ラーメン屋が集まっている「北海道ラーメン道場」なるものが

あるので、そこで適当な店に入って「味噌ラーメン」を選んだ。

(もう絶対味噌以外食べようと思ってない、私は生っ粋の道産子!)


ところが、そうそう簡単に出て来なかった。うーわ、時間ないし! もう搭乗手続き間に合わないし!

出て来たラーメンをなんと3分で食べる羽目に(笑)。

熱いラーメンを一気食い……ほんとにこれはモーレツ拷問(笑)。

暑い北海道の締めは、熱いラーメンで…とほほ。


2006.8.5〜7