39.海のパン屋『春?』篇 〜続・4月北海道・雪景色現実逃避行〜
39.海のパン屋『春?』篇 〜続・4月北海道・雪景色現実逃避行〜
* 1日目札幌篇はこちらから *
* 2日目洞爺篇はこちらから *
こてこて札幌グルメの1日目と、夢のようなフレンチの2日目。
そして…締めくくる3日目は、このパン屋さんしかないでしょう!
初めて「海のパン屋」に訪れたのは「冬」だった。
季節の移り変わりとともにこのパン屋さんに
訪れるのがすっかり定着して来たのだ。
そのために北海道に帰って来ていてる…と言っても嘘じゃない。
だから、今度行くときは絶対「春」だ!
…そう思っていたのに、まさか4月にこの雪景色とは大誤算だった。
しかも、今日もあいにくの天気。風はびゅーびゅー、みぞれ雨。
それでもあの店に行きたい。あのパンたちに会いたい!!
*
昨晩は実家でゆっくり過ごしたので、
一人ホテルに泊まっていた連れにはうちまで来てもらうことに。
パンの予約は1時過ぎ。だからまだ出発するには時間がある。
そこで…。うちの近所のパン屋さんをぜひぜひ紹介しておきたかった。
うちの近所は札幌でも有名なパン屋激戦区。
そのうち、二軒をご紹介。
一昨日の朝に訪れた「北地蔵」の姉妹店、「地蔵商店」。
(ムーラン・ド・ギャレットは少し遠いので今回は割愛)
全国パン巡りするようなパン好きさんたちになら有名だろう。
本来は珈琲豆とパンを売る店なんだけど、
自然食品屋さんの中にパンが売っているというごちゃごちゃ感が好きだ。
私がよく買うのはここのベーグルやあんパン。
そして、冬季限定のこのりんごパン!
昔っからこれがとにかく好きで、帰省する度に買っていたのだけど
最近はごぶさただったからなー。
ブリオッシュほどリッチじゃないけどソフトなコシのある生地に
包まれているのは、極力砂糖の量を控えているという紅玉煮。
甘さ控えめで、ホッとする味。
まだベーグルをそれほど知らなかったころ、
ベーグルと言ったら私はここでよく買っていた。
ベーグルというにはあまりに小さい、ぷちベーグルなのだけど、
小さいながらちゃんとむちむちパンパンとしていて
ベーグル特有のじわじわとくるクセのある粉の甘みが湧いてくる。
うーん、好きだわぁーやっぱりこれ♪
「帰って来たなぁ」って実感するもの。
*
画像はないけれど、もちろんすぐ側のブルクにも御案内。
パンのお味で言えば個人的にはブルクの方がお世話になっている。
本格的ドイツパンの店であり、なにげに「すごいパン職人」を何人も
輩出している、サッポロの老舗パン屋である。
小さい頃はバターパンを始めとする菓子パンやら総菜パンやら、
そういう日本ナイズドされたパンばかりを食べてきたの。
この店のドイツパンを食べ出したのも大人になってから。
「こんなそばにこんないい店たちがあるところで育ったんだなー」
いつもながら、帰ってくるたびにそう思う。
今回買ったパンたちも美味しかった〜。
…しかし、少し申し訳なかったのは、
このあと「海のパン屋」に行くということ(笑)。
二軒ともせっかく良い店なのに霞んじゃうのは致し方ない。
海よりも深くゴメンナサイ(笑)。
*
昨日に引き続き、mi_wa母がなんとついてくることに。
3日間ずっと3人一緒ということか(笑)。
私が徹夜明けで北海道に来たこと、
仕事が忙しすぎていろいろと余裕がなくなっていること。
あまり良い状態じゃない現在の自分のこと。
下手したら今夜も飛行機到着後に会社に直行しなきゃならないこと。
夕べ家でいろんな話をしたら、「少しでも疲れない方がいいわよ」と
運転を引き受けてくれることになったのだ。
すごくありがたかった。昨日もあんなにたくさん運転させたのに。
今年の正月は母とは別々に過ごしたので
案外「娘恋し」「母恋し」だったのかもなぁ(かーー照れるなぁ)
…もちろん、mi_wa母も「海のパン屋さん」の大ファン!!
昨日に引き続き「丘〜をこ〜え〜ゆこ〜うよ〜」な
雨にも負けないドライブになった。
高速で飛ばしてあっと言う間の忍路到着。
なぜだか私が運転するよりもずーっと早く到着したような気がするんだが?
あいにくのこの天候、暴風雨。さすがに外でがっつくわけにも行かなくて
今回は海の景色はこれだけ。ざ、ざんねん…。
しかも、「冬」に来た時とほとんど景色が変わらない大誤算!
…ほんとにこれは4月の風景なんだろうか(笑)。
こんな天気でもお客さんはひっきりなしに訪れる。
私たちも予約はしたけれど、ものすごーく時間帯がよかったのか、すばらしい品揃え!!
初めて来たとき(真冬の2月)か、それ以上の品揃えに感動!!
あぁ、こういうときに予約を控えておけば…って後悔するのだけど、
この店で予約無しに来るのはギャンブラー。
でも今日は強い見方、母もいる。予約していたパンにプラスアルファ買える。
うちの母、ここのパンが大好きで自分用にクロワッサン3個も買っている。
そうそう、初めて冬に来た時に食べ損ねたんだったね。
でも母! 3個は買い過ぎですから!(笑)
お客さんが並んでいるので、じっくり長居することもかなわなくて、
奥さんに話しかけることすらできなかった。残念賞〜。
でも、今度またいい時期に来たいからそのときは…。
*
びゅうびゅう吹き荒れる風の中、車に急いで戻る。
今日は忍路の港の方に車を止めた。
さぁ、車の中だけどどんどん広げちゃおう!
私も連れもmi_wa母も夢中になってパンをぱくつく。
まだクロワッサンが暖かいの!! 早く食べて! ほらほらーーっ。
今日は特別に塗りタマゴがつやつや黄金色に輝いている。神々しさすら感じちゃう。
ざくっっっっっ……。
……んんんんんーーー!!!
んま! んま! んますぎるぅぅ〜!!!
うんっもう〜、言葉にならない美味しさ!!!
バターのウマさ、粉のウマさ、それだけじゃ説明が全然つかないウマさ!
何かを足すことも、引くことも全く考えられないくらいに
…たぶん、クロワッサンの行きつく果て、みたいなものを
感じちゃえるくらいに…本当に美味しすぎ。
これで悶絶しない人、人としてどうなの? ってくらいに(笑)。
連れも母もあまりの美味しさに、言葉を探すけれど
もれるのは嗚咽だけ。そう、車内は嗚咽だらけ(笑)。
もちろん買います、私がこのお店で一番大好きなフルーツのロデブ。
でかいけど、高いけど、重いけど、しっかり3人それぞれ1個ずつ買う!
人にパンを薦める時、私はとにかく薦めまくる。
「これは絶対買え、ほんとーーーに旨いから。騙されたと思って!」
「私を信じて!」と懇願する。
…でも、薦めると同時に不安になることってない?
意外とそうでもない、と思われたらどうしようとか、
記憶は美しすぎたんじゃないか、とか。
でもでも、このロデブを一緒にかじりついた時。
そんな不安が全く意味のないことだと確認する。
これも言葉にならないほどの美味しさがゆるぎなくそこにいる。
一口瞭然。食べればわかる、伝わる、その感動。
オレンジがオレンジ以上に放散するオレンジ香と甘みを、
隙間なく埋め尽くすカレンツと胡桃を、
覆い尽くす甘苦いその猛々しいクラストを。
とにかく、このパンを食べてもらえて本当に嬉しかった。
なんだろ、自分が食べるよりも、パンが大好きな人に
「本当にここまで来て良かった」と思ってもらえることがなにより嬉しかった。
季節のパンだろうか? 初めての「じゃがいものパン」。
ツブツブのジャガイモ入りのもっちりフォカッチャだ。
オリーブオイルの効いた軽やかなパン。がっつりパンに疲れた時に旨い(笑)。
今回も購入、チェリーとカシューナッツのパン。
チェリーって、いつも思うんだけど、口に含むと
その酸味にじわわわ…とだ液分泌しませんか?(笑)
梅干し級に、パブロフの犬級に、私はだ液分泌しまくるのだ。
連れはしっかり買った「酔っぱらったフルーツパン」。
私は今回買わなかったらmi_wa母がクルマの中で
「買わなかったのー?! なんでー?!」と私を責める(笑)。
(いや、単に予算オーバーかなぁと思ったもので…)
ひとかけらもらって食べるとやっぱり後悔するの。
確かに高いけど、本当にこれは価値があるなぁ〜って。
こんなにワインが香る絶品パン、たぶんどこを探してもないと思うから。
こちらはフルーツは入っていない、プレーンなロデブ。
ついつい練り込みパンばかり買って来てしまうので、
ぴとぴとした甘い旨いシンプルなロデブの存在が逆に新鮮なのー。
すべてのパンをクルマの中で切っては食べ、食べては悶絶し。
運転席からくるりと「次は次はー?」と振り向くかわいい母にパンを渡し
自分も写真を撮って切って食べて。
連れと顔を見合わせて嗚咽。
他の人が見たらなんて言うだろう、この光景は!!
秋に続き、クロワッサンを一個ペロリ、パンオショコラも一個ペロリ。
ここに来ちゃうと、どうやっても途中で食べるのを止められない!!
夏が来る前に、春を愛でにまた来たい…。
ホントに来ちゃいそうで恐いよ、自分。
この店に惚れ過ぎて。
*
飛行機は夕方なので少し小樽でお茶でもしていきましょうということに。
母が15年くらい前に訪れたことのあるという
張碓のオーベルジュ「セ・ラ・セゾン」に立ち寄った。
こちらのオーベルジュからは海が見える。
外装はわりと安っぽい感じなんのだけど(笑)、
すごくロマンチックな内装で、外とのギャップが大きい。
もうお腹いっぱいとはいえ、私はサラダランチをしっかり頼んでしまった。
だってー、パンも食べたら野菜も食べなきゃでしょ。
パンだけじゃ絶対すぐお腹空くもんっ。
料理に時間がかかっていたようで
最初にコーヒー、次にサラダ、最後にパンが出てくるというまるっきりコースを逆走(笑)。
サラダもまぁまぁだったのだけど、やっぱあんなにパンを食べた後じゃヘビー。
言わんこっちゃない。二人ともあまり助けてくれない(笑)。
最後に登場した自家製パン。
もう持ち帰りにしようと思ったのだがせっかく焼き戻してくれたし
3人で分けて食べることにした。
ぬわんとこれがびっくりするほど美味しかったりする。
むっちりと中が詰まって、カリカリッと薄皮のウマさ。
鉄板に塗られた油の匂いがクラストについていて、そこが妙に旨い。
…パンって別腹?(笑)
*
この3日間、天候には全く恵まれなかったけれど
私にとっては、かけがえのない時間を過ごせた。
札幌グルメ再確認、洞爺での夢のひととき、海のパン屋の悶絶ドライブ。
なによりも、「不思議な3人」で過ごした最高に濃厚な時間。
こんな時間を過ごせるなんて、3日前までの「余裕無しな私」には想像できただろうか?
たとえ明日から同じくフルマラソンな日常に戻っても
忘れない。この先ずっとずっと忘れない。
あの時間。