6.10月小樽「海のパン屋」はんぶんこ





この「海のパン屋」は、今年の 「冬」 「夏」に訪れたのだが

ぜひとも「秋」にも来てみたかったのだ。

東京に出て来てから、「秋」に帰省することはほとんどなかった。

東京よりも一足早い北国の紅葉を愛でるためにも、

そのために、わざわざ札幌に一泊だけ帰って来た。


なんとまぁ、若妻(新妻改め(笑))もたまたま帰省時期が同じだった10月末。

もちろん連れ立って、地元でもHALF SIZE遂行!!


千歳に午前中に到着、バスでたっぷり睡眠を取りながら自宅に一時帰宅、

家の車を借りて、昼には若妻をピックアップ。

街の街路樹はもう黄色く、すでに散り始めている!

こうしてドライブが始まった。




数日前、「海のパン屋さん」に取置きのFAXを流しておいた。

注文したいパンに、ひとつひとつ長いコメントをつけて。


前回「冬」に感動した「フルーツのロデーヴ」と食べ損ねた「クロワッサン」。

半月ほど前に、この店に訪れたHP読者M姉妹がおすすめしてくださった

「栗のパン」と「チェリーのパン」。

同じくHP読者の、忍路出身の方のオススメの「トマトのピザ」などを。

(これはもちろん季節ものなので当然のことながらなかった)


14時頃お伺いしますが焼き上がりの時間がずれそうならば御連絡ください」

そう書き記してFAXを送信した。



すると翌日には奥さんから電話が来た。

相変わらずおっとりした、不思議な雰囲気を持つ話声だ。


「チェリーのパンは夕方の焼き上がりでたぶん間に合わないと思いますが

前日のパンでよかったら、とっておきますよ」

「是非是非それでお願いします!」


「先日いらした姉妹の方とお知り合いなんですか? 良く覚えています」

「わぁぁ、そうなんですかーー!」


しかも、なんと「冬」に訪れた時の「クロワッサン事件」のことも

覚えていらっしゃったというのだ。両親と一緒に来たことまでも。

これにはとても驚いた。だって、もう1年くらいたっているというのに。

あの日、クロワッサンが焼けなかったのは

かなり珍しいトラブルだったらしくて(窯の火を起こし損ねたとかで)

私たち母娘のことも覚えていたようなのだ。

なんだかすごくすごく感激してしまった。


「今度はクロワッサン、ちゃんと焼き上がるんでしょーか?(笑)」

「たいじょうぶです。…たぶん(笑)」


ついに感動のクロワッサンとの初対面、と相成りそうだ!!




若妻も、ちょうど去年の今頃、初めてこの店に来て心底惚れ込んだらしい。

ロイズのお菓子をほうばりながら楽しいドライブは続く!

山々の紅葉の美しさに見とれて、

マロンのフィナンシェがあまりに美味しくて、

ハンドルを切り損ねそうになる(笑)。


さぁ、到着ーー!!

(よかった、無事故で(笑))




三度目の「海のパン屋」。

お店の前のディスプレイも秋色になっている!

お客さんはすでにたくさん来ていた。




お店の奥の「台所」のテーブルにはたくさんのパンたちが並んでいるけれど

予約のパンだけでもうたくさんらしく、

店頭に並んでいたのはクロワッサンとパンオショコラのみ。

取置きする人、していなくてクロワッサンだけしか購入できなかった人。

私たちのパンはどこにあるのかしら?

興奮を押さえきれない私たち!

予約しておいてよかったねー!

でも、このパンオショコラも買っちゃおうよ!!




お客さんがすべていなくなるのを見計らい(笑)

私たちは「予約していたものです」と名乗る。

これが私の予約していたパンたち。





奥さんは、送ったFAX用紙を片手に私と若妻のパンを集めて

次々と籠へ入れて行く。もくもくと、淡々と。

奥さんと会話を交わしたいのだがなかなかきっかけがつかめずに

会計へと流れて行く。…もじもじしている私と若妻(笑)。





二人とも購入した「ロデーヴ」は量り売り。

アンティークな秤にパンを横たわらせ、

奥さんは明細を書き込んで行く。


実は、前回「冬」に来た時は、母に全部会計を任せてしまったので(笑)

パンが幾らくらいだったかなんて実は知らない私(笑)。

400グラムくらいだろうか? 「ロデーヴ」は500円強、

その他のパンたちは300円台。

大きさを考えても、内容を考えても全然妥当だと思う!!




「ご一緒に東京からいらっしゃったんですか?」

奥さんがついに切り出してくれた。

「いえ、実は同郷で、たまたま帰省が一緒だったんです」


そこから話は思いがけず弾んで行った。

HPでここのパンのことを紹介させて頂いていること、

それをみたHP読者の姉妹がこの店を訪れたこと、

その姉妹にはまだ会ったことがないこと、

しかも彼女達に色々情報を提供してあげたのが

この店の常連である、忍路出身のS氏であること。


「なんでみなさん知り合いなんですか〜?!」

ネットをほとんどやらないという奥さんは

大きな大きな目をくりくりさせて

しきりに感嘆の声をあげていた。

「恐くないですか〜?! 会ったこともない人と話するなんて〜!」


その驚き方があまりにユニークで、これには私たちも大笑い(笑)。

「実は私たちももともとネットで知り合ったもの同士なんですよー(笑)」


それまでほとんど会話を交わさなかった奥様だけど

話しをすると、本当にくったくがなくて素敵な方!

あまり笑顔を見られない方がたまに見せる笑顔にはどきっとする。

そして、すっごくすっごくこちらまで嬉しくなる。

それが女性であろうと男性であろうと…。





さぁ、おもむろにお店の前でパンを食べはじめよう!

まずは念願のクロワッサンから〜!

すごく大きいのだけど、その豊かなバターの甘みに

次の一口、次の一口が止まらなくて

結局全部食べ切っちゃった…。

ほんっとうに美味しかった〜!!!

一層一層に厚みがあって、ぱりんぱりんという表皮と

むちんとした内部。この食感のコントラストに、

バターとお粉の甘みが加わって、悩殺されちゃう。

この「甘い」クロワッサン」は私の一番好きなタイプ…。

あー、2個予約しておいてほんとうによかったー!




これはパンオショコラ。

3個買ったのではありませぬ、3枚連写してみた(笑)。

甘さ控えめの生地が、チョコレートの甘さを引き立てて、

これも悶絶ものの美味しさ…!

めりん、とはがれる厚めの表層の一枚一枚にも味がある。

本当に美味しくて、まさかの一気食い…。

やばいよ、まさかクロワッサンものを2個も食べ切っちゃうなんて…(笑)





季節のパン、栗のパンと大豆のパン。

どちらも中は気泡が大きく、その隙間をちょろちょろと具が埋める。

栗のパンは、栗粉の風味が生地全体に行き渡って豊かな栗の風味!

そして大豆は黒大豆で、甘さがほこほこっと湧いてくる。

黒大豆納豆が大好きな私にはたまらない。





横に見ゆるは大口開けてカレンツのパン(棒状)にかじりつく若妻(笑)。

しきりに「やっぱりこの店が一番好きーー!」って叫んでる。

私もこの店が大好きーー!!





前日のものとは思えないほど、活き活きとしたチェリーのパン!

どろんとはみだしたこのチェリーは

とっても濃厚な甘みを持ったもの。

カシューナッツとの相性が抜群!!






そしてはやり私たちが一番好きなのはこのロデーヴかな!!

他のパンたちは、噛みしめて味わいが湧いてくるのだけど

このロデーヴは、一口目からオレンジの強烈な酸味がぐわーーっと

口の中をフルーツの美味しさの嵐を巻き起こしてくれる。

本当にこんなに美味しいフルーツのパン、

この場所でなきゃ絶対に味わえない…。

来てよかったよーー!




私は車を運転していたので美しい紅葉の姿を写真におさめられなかったけれど

枯れ野原の広がる海辺の風景をバックに絶品パンをいただきながら思ったのは

この店のパンたちは、春夏秋冬で一番「秋」が似合うんじゃないかな、ということ。


少し寂しいセピア色の景色の中に、

同じくセピア色の素朴な、

なおかつ力強い生命力を持って生まれて来たパンが本当によく似合う。

いずれにしても、海を眺めながら、空気を吸いながら、

秋色の景色に囲まれて、空の下で友達と感動を分かち合いながらいただくパン。

これ以上においしいパンの食べ方ってあるんだろうか?


「秋」に来られて本当によかったーー。

また「冬」にも、そして「春」にも訪れたい。

その時にはどんな季節パンが味わえるのだろう。




小樽で寄り道をしたら、すっかり日が暮れてしまった。

高速を飛ばしながらサッポロへ戻る私たち。

灯りがともり出した街を眼下に

「また来たいねー!」と。


今回、パンは半分にはしなかったけれど、

感動はちゃーんとはんぶんこ。

やっぱり同郷同士、地元のパン屋さんは格別だね!


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