44.二十四のパンと感謝のカタチ。〜大阪four de h 〜



最近のパンクラブの企画力・機動力は目を見張るモノがある。

すっかりパン好きの間で定着した「パンのお話会」。

(過去のお話会の模様はこちらこちらこちら


まさか…大阪でやってしまおうだなんて!!

しかもあのアッシュで…!!

なんと大それたことをっっ!!(笑)


そう、3月来訪時にみんなで惚れまくったあのアッシュ

事務局のサウナのように猛烈な熱意(たぶん)に圧されたシェフ、

快く引き受けてくださったそうな。

その時は信じられなかった。

確かにきさくなシェフだった印象が強かったけれど、

そこまできさくすぎたとは…(笑)。



ちょうど2ヶ月前。

試食会に参加した友達から「大阪、決まったらしい!」とたれこみが。

その瞬間、格安バーゲン航空券を押さえた私。


6月18日は大阪に行く」

パンに関しては岩よりもハードな頑固者の私。

もう、何が何でも参加するって決めていた。

…例え抽選でハズレたとしても…

床掃除でも、トイレ掃除でも何でもやるつもりだったから!

宅配業者装ってでもアッシュに潜入するつもりだったのだから!(笑)

実際は先着順だったのでその心配はなし。コスプレも無用だった(笑)






フール・ドゥ・アッシュは大阪のど真ん中、本町にある。

今日は日曜日、本来はお店の定休日。





今日はわざわざパンクラブのためだけに22種類ものパンを焼き、

併設のレストランを開放し

さらに、出してくれるパン以外の、お持ち帰り用のパンの分も

事前に予約受付しわざわざ焼いてくれているのだ。

これだけの広いお店であれだけ手の込んだパンたちをたった一人で焼いている、というのに!


…パンクラブ、いいのか?!

なんつー果報者! いや、果報部!(笑)

(参加者であるあんたが一番果報者だろってのに…)


参加者が続々集まってくる。今日の「果報者たち」は30人。

既知の関西パン友たちの多くが参加して「やっぱりキタネー」と再会を喜ぶ。

北は東北、南は九州から来るツワモノも数名いらっしゃる。

つくづく思うが、パン好きに県境はない。


…というのは分かるんだが、どーにもこーにも東京の「いつものメンツ」、多すぎ(笑)。

どこでやってもパンクラブはパンクラブだわ(笑)。

いつもとあまり変わらないような顔ぶれに苦笑いしながらスタートを待ちわびた。






天野シェフの紹介から始まったお話会。

ただでさえ少ない睡眠時間だというシェフ、

この日のイベントのために、二日徹夜だとか…。あわわあわわ。

それなのに、それをみじんも感じさせない滑舌のいいトークをしてくださった。


「予定」では、22種類のパンが登場する予定なのだ。

まるでコース料理のように次々とパンが運ばれてくる。

何回かに分けて、シェフがパンに関するコメントをしてくださった。



私たちにできることは、シェフが焼いてくださるパンを味わうこと。

ただそれだけだった。

ただその場に座って、パンが運ばれて来て、パンに悶絶して、


…ただそれだけの…

…それだけのためにここにいるなんて?!

そんな夢のような、

夢なら醒めてほしくない、

夢よりも素晴らしい3時間の「アッシュ」は始まった。




***





今回のお話会は、いつものとは違ってひたすら「パン」を頂くというもの。

余すところなくアッシュの美味しいところを全部頂いてしまおうというもの。

だから、パン以外は出て来ないと思っていたら…あぁ! まさか!

全員にキールロワイヤルがふるまわれた!

さらに…30人分の「ひとこと自己紹介タイム」の間につまめるものを、

と用意してくださったのがこれ!



バゲットアンシェンヌとリエットのカナッペ

きのこと玉ねぎのキッシュ


自己紹介、ちゃんと聞きましたよ、聞きましたとも。

でも私の口にはリエットもキッシュも…♪

サンドイッチにも使われているこのリエット……脂肪が少なく肉の味が濃い。

その分、下に敷かれたバターの脂肪分の存在意義が明らか! 脂肪バランスは計算尽くなのか!

キッシュも温かくて美味すぎーー! 結構臭みのあるチーズが使われているみたいで、香りが強い!




完璧すぎる前菜…。

自己紹介が一通り終わった後に、パンとシェフのお話が始まる。

(予定では)22個のパン…。

幸か不幸か、私たちはパンクラブの試食会常連組、

「少量他品目を食べるペース配分」みたいなものはばっちり心得ている(笑)。

少しずつ、でも十分に味わえたと思うまでかじりつこう。

一つずつ、一つずつ。






1 パン・ド・セイグル

2 バゲット アンシェンヌ

3 黒小麦の全粒粉のパン(特別追加:画像無し)




前回の来訪時に、一番出会えて良かったと思ったのがこのセイグル。

75%も配合すると、ライ麦特有のえぐみが出てくるため、そのえぐみを通常よりも多めの水分で抑えているという。

このライ麦パンは常温で放置すればするほど馴染み、熟してくれる。

前回買ったとき、私は最長5日放置した。5日! かつてこれほどパンを放置したことはなかった私。

味が落ちるどころか、日増しに美味しさが強くなっていく、恐るべし生命力のパンだった。

「いったいいつになったら味が落ちるんだよーー」と、不安になるほど(笑)。

一人で勝手に旨くなってくれる、とても手のかからないおりこうさんなパンである(笑)。





なんとシェフ! できたて当日のセイグルと、3日目のセイグルを食べ比べさせてくれたのだ。

見た目は変わらなくても、食べたら一口瞭然。酸味が丸くまろやかになっている方が3日目だ(右)。





バゲットアンシェンヌには、自家製のフランボワーズジャムを塗って。

もともとパティシエであるシェフ、最初はコンフィズリーを開こうと思っていたという。

このジャム美味しすぎますーー!!

種のツブツブを食べるジャムといっても過言じゃない。

…こうして、私たちをKOさせるシェフの「反則技」の数々は始まった(笑)。



4 セーグル・フリュイセック

5 パン・ド・セーグル・ノワ

6 セーグル・パンプルムース




−グルを使った練り込みパンたち。このセ−グルを使えばどんなどーやってもどーころんでもたちまち絶品に。

…いや、違う。ひとつひとつの具が本当に行き届いているからゆえの美味しさなのだ。

例えばセ−グルノワには、あり得ないほどのくるみが。

しゅこしゅこっとした独特のすべるような歯ごたえの胡桃にまで、敬意を払いたくなる。


パンプルムースも前回感動したひとつだ。シェフのお気に入り…ということで私も便乗して買わせて頂いたものだ。

シェフは、「苦み」とか「酸っぱい」とか、通常、人がパンに求めないようなひとくせある味のパンが好みだという。

このパンプルムースも、グレープフルーツ皮のコンフィで、あえて「苦み」とライ麦の甘さの融合に挑戦。

…見事にそれは融合されてしまったのだ。翌日には生地にグレープフルーツが馴染んで、さらに甘さと苦みの核融合…!





前回も震えるほどに感動した、"食べる宝石箱"フリュイセックは、

生地に対して1対1の割合でフルーツ&ナッツを練り込んでいる。

その高配合率は、おそらく普通のパン屋ではまず見かけないものだろう。惜しまなさすぎ(笑)。

何種類ものフルーツが入っているので、どこをカットしても、違う表情を見せるのだ。

噛み締めた数だけ、全然違う味わいが展開される。食べ切ってしまったときのせつなさと言ったら…。




シェフは今回、極力焼きたてのものを食べてもらうようにとのことで、

パンの内容、出すタイミング、すべて考えてくださったらしく、

ほとんどが焼きたてで出されたのである!

そう、最初のライ麦パン系(熟成した方が美味しいタイプ)を除いて…。

そこまでしてくださるなんて? 私たちが何をしたというの?!(笑)




7 パン・トマト

8 桜えびのフィセル




ドライトマトでは塩っぱくなるとのことでセミドライトマトを。

まろやか〜なクリームチーズに骨抜きにされ、あわや全部食べそうに。…き、危険! まだまだ先は長い!


桜えびのフィセル、まさに海老せんべいの味! …といったら失礼か。

周りで「ゆかりせんべい」との声が続出。…恥ずかしながら、私は「ゆかりせんべい」を知らなかった(笑)。

少し安価の桜えびを使っているけれど、その香りの薄さをフォローするために、たくさん入れているそう。

…というか、これも入れ過ぎて採算とれないようなことになってませんか?(笑) すばらしく海老臭い〜。





9 ロリビエ




出べそ登場、グリーンオリーブのフィセル。焼きたて! 熱いっす!

フランス産の美味しいオリーブが手に入ったと言うことで作られたこのフィセルは、

皮が極力薄めに作られており、カリカリッと香ばしい。

最初は5粒入っていたというオリーブ。しかし、シェフの「性格なんですよね」、

6個、7個、…現在8個にまで増量してしまったという(笑)。

…シェフ! …その性格に恩恵を受けているのは私たちですからっ!

 



…なんとなーくだけど…こちらのシェフ…。

この採算度外視の「美味しさ至上主義」なところ…。

もしかしたら、私のよく知る「シェフたち」になんだか似ている? 似てない?

その読みは、パンが登場するたびに確信に変わって行った。




10 パン・オ・フロマージュ




黄金の鯛焼きじゃあございません。グリュイエールチーズとエダムチーズが練り込まれたパン。

これも焼きたて…脂、脂浮いてますから〜♪

照明が暗くて、どうにも美味しそうに撮れなかった画像だけど、ここからはがんばる。

こんなに美味しいパンたちなのに、画像で失敗してたら何の報告にもならんからなー(笑)。

このチーズパンも、最初は20%の配合率だったというのに、「性格ですから」現在40%(笑)。

お値段据え置き、さあどうだ!




11 ゴルゴンゾーラ ノーチェ




ゴルゴンゾーラとくるみの生地に、それだけじゃつまらないので

チョリソーまで入れちゃいましたという、ちょい辛、ピリリな大人味。

もーーー、この「さっくりさっくり」した食感の生地がたまらないの。

全体的に水分の多いしっとりした生地が多いアッシュのパンだけど、

これは他とは違った、水分は多いけれど「さっくりさっくり」感がある、ちょい臭、ちょい辛なパン。




12 マンゴー・フロマージュ




これはすごい! もう、ほんっとにスゴイ。

ドライマンゴーの練り込まれたパンに、クリームチーズも、フレッシュマンゴーも載ってしまったという。

以前はフレッシュマンゴーは載っていなかったらしい。なんて贅沢なマイナーチェンジ!

これも「性格ですから(笑)」。マンゴーはやっぱり生に限るわぁぁ。




13 リュスティック・カカオ




普段アッシュのパンを食べられる果報者、地元関西組が「進化してる! これも! あれも!」とわめいている横で(笑)

私もようやくこれに関してはその「進化」を明らかにキャッチできた!

前回食べても美味しかったのだけど、今回は遥かに遥かに絶品だった、ネオ・リュスティックカカオ。

以前に増してカカオの香りが強い。よっぽどいいカカオを使ってるらしい。

…なによりこの海綿体のようなねちねちとした湿り具合。ねちぃ〜ん、ぴとぴと…。…たまらん…。




14 黒ビールと黒糖と胡桃(特別追加)




当初22種類と予定されていたパンに加えて、なんと「新しく作ってみたんです」という試作品が2品追加されてしまったのだ!

シェフ、やりすぎ! 凝り過ぎ! もてなし過ぎ!(笑)

そのうちの一つがこれ、黒ビールと黒糖、胡桃の入ったリュスティック。

これがーー!!! ほんっとーーーーに美味しかったの!!!

もしかしたら本日のNo.1かも知れない(もちろん、絶品過ぎる24のパンたちだ、どんぐりの背比べではあるのだが)。


黒ビールの香りは素でももちろん香るのだが、黒糖の甘さの力を借りてよりはっきりくっきり「黒ビール」を表している。

黒糖が黒くしみ出したべとべとな端っこ部分にチェキ!!

ここに全ての美味しさが凝縮していた(真ん中部分は甘さ控えめで相対的に淡泊)。

よくあるでしょう、あの甘じょっぱい、昔ながらの駄菓子のような! 黒糖くるみはどことなくレトロちっくで。

この美味しさにしばらく唸っていた私。お持ち帰り分も追加購入。…定番化もきっと間近?!





ようやく折り返し地点も過ぎたところで、お楽しみ「スペシャルパン争奪クイズ」!

自分以外の全員がライバルよっ。パンをかけての真剣勝負!

今回の商品パンはこの3品!




つい先に悶絶しまくった「#14 黒ビールと黒糖と胡桃」

採算度外視すぎてすぐにお蔵入りになった(笑)伝説の「セ−グル・マロン」

「#3 黒小麦の全粒粉のパン」!





クイズは完全に個人戦。2択の質問に、挙手で答える。

分からなかったら周りにつられて手をあげるもよし(笑)。

クイズは天野シェフにあれこれインタビューしながら作ったと言う、

門外不出(?)の、パンクラブオリジナルの超〜マニア臭い難問。

(おそらくクイズの詳細はパンクラブHPでアップされることでしょう(笑)端折ります)

1問クリア! 2問クリア! 3問クリア!

…たしか、4問目くらいで脱落ーー。あぁんバッカーん!




でもでも、見事商品獲得したパン友さんにこっそり賄賂を頂いた(笑)。激しく感謝。

胡桃パンと見間違うほどのすごい栗度!! しかもほっこり甘くて美味ーー!!

こりゃぁ赤字になりますわよーーシェフーー(笑)。




15 クロワッサン・スペショー




来たーー!! 焼きたてのほっかほか、しかも一人まるごと一個。

前回食べて、とにかくシェフに直接「美味しかったです!」の一言を伝えたくてたまらなかったクロワッサン。

驚くほど中はもちっとソフトなのに外はごくごく軽やか。

ここのクロワッサンは、バターを生地で包むのではなく、生地でバターを包むという。

今日のは24層だけど、ベストな層数を求めてあらゆるパターンで折っているらしい。

…つまり美味しさは日替わり?(笑)今日は前回よりもかなり軽いふわっとした口当たりだった。




16 パン・オ・ショコラ




もちろんこれも焼きたて、しかもまるごと一個大放出!

(後半、まるごと一個で出されるパンが多かった! もーー、太っ腹! 太い腹!)。

最近、パンオショコラにはまっている私、

クロワッサンに比べて、板のようにバキバキっとハード。だけどもろくもはがれおちるはかなさ。

一枚一枚の味が濃厚で、はがれてしまった層も十二分すぎるほど美味ーー!!

でもやっぱり、一気に層をバキバキバキーーっと噛み崩す瞬間がサイッコーに気持ちイイーー!!


ふと、隣で友達がはがれおちた薄い皮に、フランボワーズジャムを塗っているではないか。

…ピーン!…

そうだ! その手があったか! フランボワーズとチョコレートは、ケーキでもよく見られる絶好の組み合わせ。

よーし、パンオショコラにフランボワーズを塗ってまえーーー!!!

きゅーーーんっっ…超絶品!! ただでさえ絶品ものの限界を越えたり!(笑)

シェフ、勝手なアレンジ失礼しましたぁっっ!




17 松の実のデニッシュ




まさか一番大どんでん返しをくらったのはこのデニッシュだった!!

最初、見た目的に小さくて薄くて地味〜と侮っていたのに、、、

粉糖の甘さが効いた松の実の下には、嘘みたいにラム酒の芳香がぷんぷんのクレームダマンドが敷かれていたのだ!!

ぶわっ、ぶわっと、絶え間なく香るダマンド爆弾!! 吹き飛ばされないように踏ん張るのが精一杯!!

ハゲしくうまいーー!! ハゲウマーーー!!! 興奮し過ぎて薄ら涙目!!。





18 栗のブリオッシュ




サクリホロロとした口溶けの良いブリオッシュのドームの中にはほっこりとした蒸し栗が。

なんか、栗がトレードマークのお店なんだろうか?! 栗が心底美味しい店なのだ〜。

白状すると、これが出された時、まさに私は「#17 松の実のデニッシュ」に悶絶中。

ブリオッシュの淡い甘さにパンチを見出せなくて、実はそれほど印象に残らなかったのだ。


…しかし! 後日家で焼き戻して食べたところ……思わず嗚咽を漏らした。

この栗の味わいがとーーっても郷愁を誘うものだったのだ。

故郷の名店・六花亭の喫茶室で必ず食べる大好物の栗のプディングの味に限りなく似ていた。

栗とバターと卵のしっとりしたプディングは、肩の力を抜いてくれるような、ほっこりとした優しい甘さ。

それを思い出していた。もちろん、全く同じ味ではないのだけど、思い出すのはそれだったのだ。

…場所は違っても、形は違っても、愛しい味のイメージは同じなんだな。





19 アワイ




パイナップルとココナッツのデニッシュ。

おそらく誰もがこれが登場するのを今か今かと待ちわびていた。

「アッシュの中で一番時間と手間がかかっているパンはどっちでしょう?!」

さきほどの「スペシャルパン争奪クイズ」の中で出された問題で、その正解がこの「アワイ」だったからだ。


中に入れるパインはひとつひとつ皮を剥いて、実を1週間漬け込まれたもの!

カスタードクリームはパインジュースを1/3になるまで煮詰め、ココナッツミルクを混ぜ合わせたもの!

…つまり…つまり…今、私たちが食べているこのアワイは、

シェフが一週間前から私たちのために仕込み始めてくれた…ってこと?!

そこまで手間ひまかけてくれたこのパインの美味しさと言ったら…!! 絶品!

一週間じっくり時間をかけてもこの美味しさを説明できそうにない無能な自分を呪う!





20 パン・オ・レザン ヴァン・ルージュ




これも前回食べて、「なんでもっとヴィエノワズリーを買わなかったんだろうーー」と地団駄踏まされた逸品。

赤ワインを使ったパンは巷にあれど、まさかカスタードクリームにまで赤ワインを使っちゃう店がどこにあろうか、と!!(バンバン!)

前回食べた時よりも、よりできたてに近かったようで、まだクリームと生地に境界線がある感じ(前はもっと一体化していた)。

この生地の「ふにっ」「ふにっ」としているのにコシがある。…うーん、なんていったらいいのかな、矛盾した食感なんだ。

これも食べ出したら止め時がわからない、ノンストップパン…。

(というか、そもそも全部のパンを「寸止め」するのはほんっとーに辛かった!)

あと何個くるんだっけ? 私たちはまだ登場していないパンの数を数えながら、

「全部食べ切っちゃえるか…いや…まだ止めておくか…」

そんな「腹計算」をしながら、理性と欲望の狭間で苦悩を続けていたのだ。





21 ララビカ

22 木いちごのデニッシュ




ついに佳境に突入…。苦めのコーヒーの生地にチョコレートチップが入ったブリオッシュ。

甘いものが続いていたので、こういう渋〜いものが入ると「おぉ?」っと意識が向く。


いや、でも個人的にはやっぱり甘いものも好きであるーーっ。

木いちごのデニッシュは、まさに先ほどパンオショコラで遊んでしまった

「チョコ+フランボワーズ」の絶妙コンビネーションが味わえる逸品だったのだ。

解凍途中の冷え冷え〜みたいなフランボワーズのフレッシュな爽やかさがものすごーく新鮮に感じられたし、

自家製フランボワーズジャム(「#2 バゲット アンシェンヌ」に塗って食べた、あれ)の下には、

薄いチョコレートが敷かれている細やかさ! …ほんっとに絶品。

(そのくせに、画像がきれいに撮れなくて申し訳ない…心から陳謝…!)




23 クロワッサン・ザマンド・テ・ベール

24 ブリオッシュ ア・ラ・クレーム




ついに…最後の2品…。

一度は食べてみたかった、アッシュの抹茶のザマンド、テ・ベール。

焼き立てのほやほやでゆるゆる、ほにょほにょ、手に持つとクレープのようにしなだれる柔らかさ(笑)。

でも味はしっかりストロング! 抹茶の苦みがかなーり効いている!

抹茶は香りのいいものほど値段が高く、他の材料に比べても品質と値段ははっきり相関関係があるらしい。

ここまで香りよく、苦みが効いている…ということは…採算取れてるのー? 心配ーーっ。




ブリオッシュ・ア・ラ・クレームは、カスタードがたっぷりサンドされたブリオッシュ。

クリームはバニラがかなり効いた、パティシエのクリーム。パン屋のそれとは違う(笑)。



***



あっという間に駆け抜けた24のパンたち。

24種類も一気に食べて、かすんじゃわないだろうか」

そんな不安もなかったわけではない。


心理学では、いくつも呈示されたものに対して、人間の記憶というのは

最初と最後が印象に残りやすいということが証明されている。

(初頭効果と親近性効果。ちなみにその提唱者の名はアッシュという。…どーでもいい話でスンマセン)


…しかし今日は、その学説を大きくくつがえしてしまった…この店においては。

一つ一つのパンにストーリーがあり、それを目と耳と舌と、そして心で反芻しながら味わった。

24個を一気に食べ続けたというのに、一つとして自分の中で味わい損ねたものがなかった。

一つ一つに発見と驚きと感動と…感謝があった。




予約注文しておいた「栗とエメンタール」と「ポンム・エ・キャラメル」。

やっぱりこの店は栗が主役! もちろんリンゴもね!(笑) どちらも入り込んだ具のひとつひとつに仕事を感じる絶品たち。



私たちはこの一人のシェフに、想像以上のもてなしを受けてしまった。

休み返上で、徹夜でこれだけの素晴らしいパンたちを準備。

しかもほぼ焼き立て。一番美味しいところだけを余すところなく。

私たちはたったあれっぽっちの会費しか払っていない。

採算ゼロなのは火を見るよりも明らかだった。


次々出されるパンたちに悲鳴をあげながら、

私はつい先週のことを思い出していた。

そう、ここの職人も、あそこの職人も、解せないほどに…。


「どうして?

どうしてそこまでやってくれるんだろう?!

どうしてそこまでやれてしまうのだろう?!

この人たちは!」





予約注文以外に多くできたので急遽追加販売!

もちろん私が迷わず追加購入したのは黒ビールのパン! あぁ、これを家でもゆっくり味わえるんだ〜!

−グルフリュイも加えて。時間が経った方が美味しくなるという、土産には超理想的なパンだから!



その答えは、会の最後のシェフからの御挨拶にあった。

今回引き受けるきっかけとなったのは

パンが好きである私たちへの恩返し…だというシェフ。


なんてことを!

感謝しなければならないのはこちらの方なのに!


その嘘みたいな本当の言葉を、思い出すだけで今でも胸に熱いものが込み上げる。

本当に泣きそうなほど感激した。



感謝の気持ちを、こういうカタチで表そうとする。

「性格なんですよね」と、

惜しみなく材料を使う美味しさ至上主義。

懲り過ぎたこだわり過ぎたパンを作るがゆえ、

「普通のパン」を買いに来たお客には逃げられてしまう(笑)

悲しきマニアックさ。


…そうか、だからあんなにアッシュのパンは感動するほどに美味しいのか。

アッシュさんは私が惚れるパン屋さんたちと

「同じオーラ」を持っているということ、

今回初めて知ることが出来た。

このイベントだったからこそ知ることが出来たんだ。

それが一番嬉しかったことかもしれない。



シェフに感謝。

スタッフのみなさんに感謝。

助っ人さんに感謝。

パンクラブ事務局に感謝。

パンを好きな仲間たちに感謝。


そして、パンという存在自体に心からの感謝を……!!



私も感謝を「カタチ」にしていきたい。私に出来る方法で。

そう、この世にパンがある限り…。



* イベント前日エピソードはこちら *