12.春の3泊4日九州北部旅行・パン無し編 〜その3 島原雲仙長崎〜
12.春の3泊4日九州北部旅行・パン無し編 〜その3 島原雲仙長崎〜
* これまでのあらすじ(旅の前半…パンメイン)はESSAY62-1と62-2 *
水と歴史の町・島原プチ散策
旅の3日目。長崎県は島原半島の島原温泉で夜明けを迎える。
有明海に臨むこの旅館の露天風呂からは日の出が眺められるのだ。
ちゃんと日の出、日の入りの時間を毎日書き換えて表示してくれる、
サービスの行き届いた旅館だった。
朝5時半ころ起き、お風呂に向かうともうすでに他の宿泊客が入浴をしていた。
みんな日の出を拝みにこの宿に泊まるんだろうな。
ちなみにこの日の出ショットは、もちろん風呂場に持ち込んだカメラなんだが
当然みなさんの前では取り出す訳にはいかない。
どこで撮るべきか? 怪しまれぬようにするにはどうすべきか?
この露天風呂には、サイダー泉(炭酸泉)というお風呂もあり
これが木陰に隠れてちょうど1人でカメラを構えるには都合がいいのだが
…お湯ではない、水なのである(笑)
やむなく水に浸かりながら(その効用はよくわからん)無事撮影(笑)
まだまだ行水するには寒い季節。倍の時間をかけてお湯に浸かり直したのは言うまでもない。
*
12時ちょうど発の雲仙行きのバスまでの小2時間、
島原観光をしてみた。2時間でも十分回れるくらいのこじんまりとした町だ。
島原は雲仙普賢岳の麓の町で、水の美味しい町としても知られている。
町の至る所にわき水が出ている。水にちなんだ名所も多い。
水の美味しさをいかした名物料理もあるようなので時間が許せば食べたい!
雲仙岳をバックに、高台から町を見守る島原城。
私も日本全国のあちこちのお城を観光したけれど
その中でも展示物はなかなか興味深かった。
「人無惨なり、島原の乱1637年」
……に関するあれやこれや。
たぶん、日本史を専攻していたものならきっと面白い(笑)
余談だが、私の友人に「お城マニア」ってのがいて(笑)
その人は、同じ「お城マニア」な人々と、全国のお城をひとつひとつ訪ねるそうなのだ。
決してハシゴをするのではなく、年に2〜3回、ひとつずつ。
私たち素人と見るポイントが違うのだ。石垣の組み方とかまで細かく鑑賞するんだそう。
(語り出すとやっぱり「パン語」と同じようにマニアックである…)
うーん、パンと同じく一生ものの趣味ですなぁ。
保存地区に指定されている武家屋敷。
このエリアは特別にこのような風景が残されているが
他のエリアはごくごく普通の地方都市ののどかな風景である。
庭先に柑橘系の木がごく自然に生えていたりする風景である。
次に訪れたのは、水の町ならではの「鯉の泳ぐまち」。
家並みに沿った水路に鯉が放流されているというなんとも風情のある路地…
のはずなのだが、その場所に滑稽な風景が。
な、なにやってんですか?(笑)
どうやら「鯉の泳ぐまち」を撮影しようとテレビのスタッフさんたちが
取材に来ていたようなのだが、肝心の鯉が影に隠れて出て来ないようなのだ(笑)
みんな、鯉を呼び出そうと悪戦苦闘しているのだ(笑)。
こういう図を撮りたかったのでしょうね(笑)
*
さてさて、もうバスの時間まで残すところ1時間。
どうしても食べてみたかったのは島原名物の「具雑煮」。
薄味のだしに、お餅とか野菜やお肉などがざくざく入った鍋物なのだが
そこの元祖であるお店を探していたが見つからない。
もう諦めようかと思った時にふと発見!
おぉ、これかー。貫禄はあるけど思ったよりも小さい店構え。
こちらは、どうやら二号店だったらしい。
他のお客さんが「タクシーの運転手さんに『姫松屋さんに行くなら二号店の方がいい』って
聞いてきたんですよ」と言っていた。本店はいかにも観光客団体様も入れる「大箱」らしく
味も若干落ちるらしいのだ。おぉーー私ってもしかしてラッキー?
ものの5分で出て来た具雑煮。
島原の乱の時に、天草四郎が島原城で籠城する時に、兵糧として貯えさせた餅(保存食)を
他の具と合わせて煮て、3ヶ月に渡る戦いの栄養源となった料理だそうな。
韓国のトックのような平べったい餅がいくつかと
シロナ、かまぼこ3種類、アナゴ、ごぼう、卵焼き、
シイタケ、凍豆腐、れんこん、鶏肉、春菊の計13種類の
食材がざっくざっくと入っていて、なんとも贅沢。
そしてとても美味しかった!
*
駅へ向かう商店街に、なんとも風情のある門構えの邸宅があった。
喫茶店なのかなと思ったら、100年以上の歴史のある商品屋敷を
一般に公開している「水屋敷」と呼ばれる「一般の邸宅」なんだそうな。
入り口にはあれこれ能書きがたくさん書かれていた。
「見学だけの方はお断りです」
「狭いので団体様はお断りです」
「提供に時間がかかることがございます、お急ぎの方は御遠慮を」
ちょっと厳しいことがあれこれ書かれている。
私は「時間がない」にあてはまるなぁ(笑)。
まぁ駅までダッシュすればバスに間に合うはず。
もうひとつの島原名物「寒ざらし」をいただいてみたいのだ。
うわぁ…。
縁側のいちばん居心地のよさそうな場所に座り
庭を眺めさせて頂いた。
入り口には厳しいことが書かれていたが、
それだけマナーのなっていないお客さんが多すぎたそうで
やむなく掲げているそうなのだ。
あの掲示板はこの静かな時間を守るためには当然の事だと思う。
一日4000リットルも湧き出るという庭の池には
鯉やら金魚のほかにも川魚のハヤが自生しているらしい。
よーく目をこらすと見えてくる。
島原名物の「寒ざらし」は、甘いシロップに小粒の白玉だんごを入れたスイーツ。
しこしこした白玉がつるんつるんと口に滑り込んでくる。
甘過ぎず、思った以上に爽やかなデザートで美味しかった。
この風景を眺めながらいただくのはまた格別なり。
あぁ、よい時間をありがとうございました。
(こちらの二階にはオーナーの招き猫コレクションがあるのだが…
かなり個人的な趣味と相違があり(笑)さっくり見学させて頂いただけに留まる(笑))
庶民的な商店街を駆け抜け、駅へ向かう。あと5分でバスが来る!
駆け足の島原散策だったけれど満足満足。
…ふと足を止めずには居られなかったのは喫茶店の前に立つ「辰夫」!(笑)
硫黄臭ただよう雲仙めぐり
島原からバスで1時間弱。目覚めるとそこは雲仙だった。
雲仙と言えば、平成2年に噴火をしたことが記憶に新しい。
普賢岳などいくつかの山を総称したのが「雲仙岳」というそうな。
雲仙の観光案内所の前から、またバスに乗り換え仁田峠を目指す。
うねうねと徐行しながら山頂を目指す。
私にはとても運転できそうもないカーブの数々!
これをバスで行くのはある意味スリルが…。
さらにロープウェーに乗り、山頂の展望台を目指す。
もやがかかって遠くまでは見えないが、スカーっとする景観!
すぐ横には、普賢岳の噴火で生まれた荒々しい「平成新山」が。
山頂はまだ赤褐色で緑がほとんどない。暴れん坊の金太郎という感じである。
不思議な気持ちがした。
噴火の災害で大変な思いをしたであろう半島の住人の人々は
この突然現れた山をどんな気持ちで毎日眺めているのだろう。
観光客である私の無責任な視点からは
そこにあるべきものとしてある、自然なカタチに見えた。
この半島の人たちはこれからもこの山を受け入れ、この山とともに暮らして行くんだなぁと…。
さてと、ロープウェーに乗ってバスに乗ってまた戻りますか。
温泉でも入ってゆきますか!
温泉地によくある光景だが、ここにもあります「雲仙地獄めぐり」。
一面にもうもうと立ち込める噴煙と硫黄臭。
そして決まって温泉卵を売るおばあちゃんとかいるのよね(笑)。
でもでも、温泉卵は6個1組からの販売のようで。私、一気に6個も食えんとです!(笑)
お土産屋さんの食堂で一個だけ売っていたのをすかさずゲット。
ほのかに香る硫黄臭、うぅん、単純に卵は旨いですな〜。
日帰り湯をやっている旅館や共同湯などたくさんあるのだが、
一番すぐそばにあった富貴屋旅館というところのお風呂に決める。
1000円とはちょっとお高めだが、タオルも全部込みなのでむしろ妥当かと。
誰もお客さんがいないことをいいことにぱしゃりぱしゃり(笑)。
山を眺めながら、地獄の煙りもうもうを眺めながらしばしの極楽。
むむ、この露天風呂、地獄巡りしているお客さんから見えるぞ(笑)。
mi_waパン、ピーンチ!(←は?)
風呂上がりにビールを飲みながらマッサージチェアに体を任せる。
ぎゃーーん! ふくらはぎを揉まれて激痛。
昨日はほとんど歩いていない。今日午前中に歩いただけでもうこの筋肉痛?
明日が思いやられるし!
雲仙から長崎まで直通のバスに乗る。
また1時間ちょっとのバス旅だ。
地平線に沈む夕日をぼんやり眺めながら眠りにつく。
目覚めたら、そう。初めての長崎だ。
*
ハイカラ夜風・長崎の夜
初めての長崎。
市電が走る、海と坂と文明開化の町。
うぅ〜ん、ロマンですねぇ。ロマン!
旅はロマン第一主義の私にはうってつけである。
ホテルはグラバー園の近くのモントレ。
札幌や大阪のモントレには泊まったことはあるが
どこよりもびったりじゃないか、西洋くさくて(笑)。
まずはグラバー園に行ってみた。
ライトアップが見たかったのだが、あれー季節が違うの?!
敢え無くすでに「閉館」。
そこで腹ごしらえをすることにした。
ちゃんぽんはすでに夕べ、島原ですんごい旨いやつを食べたばかり。
あれが美味しかった、という思い出を守るために(笑)
あえて長崎では別のものを食べることにしよう。
グラバー園のすぐ側にあるあまりに仰々しいちゃんぽん御殿(笑)
これはちゃんぽんの元祖のお店なんだが、
ツアーで必ずコースに組み込まれて連れて行かれるであろう店。
(私はナンダカンダ言って「元祖」「老舗」が好きであるのか…)
一面ガラス張りのフロアは圧巻。
夜景が美しい〜が、1人私は皿うどんとジョッキを注文。
ロマンか? これが(笑)。
私は実はいわゆる「あんかけのかた焼きそば」があまり好きじゃない。
ひとくちふたくちならいいんだが
途中から油に酔ってしまい、最後まで食べるのがしんどいのだ。
だが…名物と来れば食べないわけにはいかないのである(笑)。
だされた皿うどんは、やはり「かた焼そば」であり
…しかもこれ、1人前かよ!(笑)
最初はもちろん美味しく食べられるのだがいかんせん多すぎます、あっぷあっぷ…。
同じく1人で来ている女性が何皿もお一人様で注文している姿をみて
負けてらんねぇ〜と思ったがやっぱり途中で断念(笑)。(←戦うなって)
当然向かうは稲佐山からの夜景!!
これを見るために一泊したのですから。
ここに来ずして帰るのは函館に来て函館山に登らないのと同じ。
ロープウェーで山頂まで登り、眼下に広がる夜景を眺めた。
(一人旅ってこれがイヤなのよね、本日二度目の一人ロープウェー…(笑))
坂の町だから光が立体的であり函館のそれとは違う。
どんな夜景でも風景でも、長く眺めれば眺めるほど現実感がなくなっていく。
ここにいること、ここでこうして百万ドルの夜景を眺めていること。
瞳のピントが合わなくなってくる感覚がある。
その理由はきっとこの先もわからない。
*
最終日。スタートはホテルの近くのグラバー園から。
夕べは空振りしたグラバー園。
なぜライトアップを見に来たかったか?
たぶん、よくここが歌番組とかで中継をするような場所だからだろうか(笑)。
「あぁ、この場所かー!」みたいな。
年末もそう言えば演歌歌手がここで唄っていたなぁ。
寒そうだなぁと気の毒に思いながら(笑)。
オランダ坂を登る。登る。登る。
かなりきつい。坂道の町には私は住めない。いつも坂道の町に来ると思う。
でも、ちょっと坂を登ったあと、ふと後ろを振り返った時の
刻々と変わる風景が表情が好き。
だから坂の町を歩くのは好き。
そう言えばオランダオランダと言うが…。
オランダ料理ってどんなんだ?
フランス料理イタリア料理スペイン料理…
各国料理はあれど、オランダ料理って思い付かないわ。
…そんなことを考えながら石畳を歩くオランダ坂。
長崎シンボルの眼鏡橋。…です!(笑)
もう、さくさく行こうよさくさくと。
だってお腹空いて来たんですもの(笑)。
買わなかったけど福砂屋さんの本店をパシャリ。
なんでもそうだけど、総本店って、好きなんです。
町中に広告、ガイド本にも必ず載っている豚まんのお店。
ひとつから買えるというのでたった一個をその場でカプリ。
むむ、ヒジョーにクセのない、クセのなさすぎる豚まん。
良く言えば「食べやすい」味である。…ってこの言葉って便利だよねー(笑)。
*
丸山町界隈をふらふらあてもなく歩いていた。
いや、食べるところをどうしようかと考えながら歩いていた。
中華街に行ってみようか、あるいは何かよさげなお店があれば…。
ふと階段を下った時に、風情のある料亭を発見した。
入り口で迷っていると、お店に入って行く人の会話がちらっと耳に入って来た。
「ここね、お客さんくるといつもお連れするんですよ」
ガイドブックを読み直した。
→どこにもこの店のことが載ってない!
→よし! ここに決めた!
(つくづくあまのじゃくなのである)
古い家屋を改装した母屋(離れもあった)、行き届いた庭園。
ああ、お一人様でも大丈夫でしょうか? 予約してないですけど空いてます?
入り口からどこかの名旅館のような趣がある。
後で調べたら結構新しいらしいが、確かにどことなく垢抜けたセンスがある。
靴を脱ぎ、建物の奥の方に通された。
和室や洋室、個室、いくつもの部屋に分かれており、
どこの席に通されてもそれぞれに面した庭園が楽しめるような
間取りになっているのだ。うあぁ〜。食べる前から「これは当たり?!」と。
私がオーダーしたのは2500円のミニ卓袱弁当。
長崎の味と言えば、ちゃんぽんや皿うどんの他に「卓袱料理」というのがある。
これは、日本と中国、西洋が入り混ざった長崎ならではの豪奢な懐石。
夜食べるとすんごく高いようだが、昼ならこういう手頃なミニ懐石のカタチで
卓袱を楽しめる店がいくつかあるらしく、できれば食べたいなーと思っていたのだ。
心静まる中庭を愛でながら、さあいただきます。
長崎の味、卓袱料理。
実に品数が多くて驚く! これでミニだなんて?
不作法ながら迷い箸になること必須。
卓袱料理に欠かせないのが右下の豚角煮。
とろとろにとろけた甘い角煮。
ちょっと変わっているのは長崎風の天ぷら(左上)。
これ、普通の天ぷらと違うのは衣。衣自体にすでに味が付いているのだが
…アメリカンドックのような甘い衣だ。
すべてきれいに食べ終え、デザートはお汁粉。
シンプルに1粒だけ入った白玉。
さらさらっと口溶けするお汁粉…絶品だった!
はぁ。いい昼食になりました。
気持ちがシャンっとしました。
*
このあとまだまだ長崎観光は続く。
最後の最後に残しておいたのは、長崎原爆記念館。
ここは広島の時と同じ。「行きたい」と思う場所ではなく
「行っておかなきゃ」
「行かなきゃ怒られるかな」(←って誰に?)
行くべくして私も行った。
旅の最後にしたのは正しかったのか正しくなかったのかは
わからないけれど、やはり辛くて切なくて
しょぼん、とした気持ちで市電に乗り戻って来た。
途中、雨が降り出して停留所まで急いだ。
でもなんとなく雨に打たれていたい気もした。
美味しいところだけを欲張るのが旅行じゃない気がした。
地震も災害も、いつまでも一向に来ない東京で
平和ボケしている自分に活を入れるのもまた、旅。
長崎の雨…だなぁ。
なんてタイミングのいい時に降るものだろう。
気分的にも。そして時間的にも。
もうすぐ、空港へ向かう時間が迫っている。
私の長崎の時間がもうすぐ終わる。
空港で夕御飯がてらに買ったのは、やっぱり名物・角煮包!!
そうだ。そう言えば長崎に来て食べた、最初で最後の「パン」。
珍しくパン抜きの修学旅行的コテコテ観光の締めくくりは、やっぱりパン…かと。
そういうオチもあってもいいかもしれない、かと。
2006.3.18〜3.21
福岡/佐賀/長崎旅行
おしまい