62-1.春の3泊4日九州北部パンドライブ 〜その1 福岡市内〜
62-1.春の3泊4日九州北部パンドライブ 〜その1 福岡市内〜
04年福岡パン出張の模様はこちら
全国あちこちに魅力的な街はあれど
博多ほど食いしん坊なら誰もが憧れてやまない街はないような気がする。
もつ鍋、水炊き、ラーメン、寿司、明太子、屋台ごはん…
何日あっても何食あっても足りないのが福岡グルメ旅。
そう、もちろん、パン好きの欲望にもちゃんと応えてくれるのがこの街なのだ。
過去2度の福岡来訪で、さらに福岡パンの魅力にとりつかれた私。
2006年のカレンダーを見ながらいつも再訪のチャンスを狙っていた。
マイルの関係上、去年の12月にはもう決めていた。
そうだ。3月に連休をとって福岡に行こう!!
まだ行ったことのない長崎も行ってみよう。
パンだけでは飽き足らない私の欲張り3泊4日九州北部旅行。
ESSAYでは前半のパンめぐりを、後半のこてこて観光はPriv.mi_waで。
今回も濃密に、飽くなき欲望と情熱の旅を…。
今回の旅行は、いつも以上に画像がイマイチなものばかり。ご了承くださいませ
*
そういえば前の福岡出張のときも同じ時間帯のフライトだった。
今回も一時間しか睡眠が取れなかった…全然学習できない私である。
でもでも久々の福岡。
前回は出張だったので仕事に邪魔されまくったので(←その発言、問題あるぞ?)
今回は行きたいところ、やりたいこと全部やってしまうのだ!
到着後、まず訪れたのは天神大丸の地下。
カイザーの福岡店を視察。…って偉そう?(笑)
大丸の地下はパン屋さんがいくつかひしめきあっているが、やはり別格。
なるほど東京と同じようなラインナップだが
ひとつだけ福岡オリジナルのパンを発見。
その名も「パン・ド・天神」。
ライ麦のソフトパンで、生地に生クリームを練り込んだとか。
最初はピンと来ない味なのだが
確かに後味に生クリームのコクがもわわんと残るというか。
他のパンたちもいかがなものか試したいのはやまやまなのだけど
福岡に来たら福岡のパンを食べるべし!(笑)東京でまた会いましょう〜。
*
今回の福岡来訪を決めたのはもう4ヶ月も前の話なのだが
そのころから、うちのBBSでは福岡のパン好きさんからの書き込みが増えたり
当サイトが福岡のフリーペーパーに紹介されたり(!)と、
かつてないほどの「福岡旋風」が巻き起こっていたのだ(笑)。
「3月に私、福岡行くんですけどぉぉ…」
なかなかweb上ではそうも言えないので、
向こうからDMをもらえた時にはもうガッツポーズ。
ここまで盛り上げてくれた彼女達にぜひとも福岡で会ってみたい!
そこで、今回は2人お会いすることになった。
先に1人、後からもう1人合流することに。
待ち合わせ指定場所はもちろん、こちら。
福岡と言えば、まっさきにここのことを思い出す。
そう、セ・トレボンだ。
この店でパンを食べながらまだ見ぬ彼女を待とう。
…って!!!
今日に限って、突然の窯の故障でハード系のパンが全滅なんだと!!
うああああああ…
今日に限って今日に限って今日に限って…。
モノの見事にハード系がなかった。
私を魅了して止まないバゲットやリュス、そば粉のパンなどことごとく…。
あったのはヴィエノワズリーやソフト系、惣菜系オンリー。
うへぇ…。ショックでなんか戦意喪失。
でも、とりあえず席でコーヒーを飲みながらパンを食べるとするよ…。とほほ。
そうして選んだのはパン・オ・レザン。
…やや! やっぱりめっちゃ旨い〜…。
プリンのように厚く固まったカスタードがふにゅうっと巻き込まれていて絶品だった。
なおさら惜しまれるはハード系…。
今日に限って今日に限って今日に限って…。
そこに現れたのは、初めましての"長女(仮名)"さんだった。
どことなくうちの叔母に似ている彼女とは、
あっという間に打ち解け、車であちこちへと連れて行ってくださった。
福岡は、都会だけど良いパン屋さんは点在しているのでめぐるにはなかなか骨である。
もちろんそれが楽しかったりもするのだけど今日はほんっとに車で助かった。
雨だったし、私は睡眠不足でよろよろだったし。
それに車という閉じられた空間では一気に初めまして同士の距離も近づくってモノですから。
*
福岡パンドライブ、最初はサイラーさん!
前回、前々回に続く3回目の来訪なので、
ちょっと余裕をかましてほとんど画像のこってません(笑)。
前回「こんなに美味しいエピは食べたことがない!!!」
そう言わしめたあのエピはなかったのだが、残念、もう売り切れ。
同じく絶品だったガーリックバターのプレッツェルを失礼、車の中でがぶり!
むむぅ〜ん…♪ 旨し旨し〜♪
今回は抑え目のテンションで買ったけど、
この店はいつだって期待を裏切られることがない。
*
BBSで福岡旋風が巻き起こっていたときに、
サイラーさんの近くに美味しい天然酵母パン屋さんがあるという情報が書き込まれた。
場所を具体的に調べてはこなかったのだが
ほんっとにたまたま通りかかったのだ! あぁ、ここだよ、ここ!!
パンがメインのお店ではない…とは調べていたのだが
ほんとに、インテリアと雑貨の一角でパンが置かれているという
なんとも不思議な取り合わせのお店だった。
聞くところによると、こちらは実はカーテン屋さんだったのだとか。
オーナーの趣味でパンも焼きだしたのだそう。
パンは一見すると(いや、食べてみても)ホシノっぽい感じに見受けられる。
(実際違ったとしたら申し訳ないが、例えるとわかりやすいでしょう?)
どれも手作りの素朴な色つやで美味しそう〜♪
で、やっぱりクルマの中でがっつくわけだよね?(笑)
焼き立てのクリームパン!!
このクリームパン、めちゃくちゃ旨い〜!!
少しサクッと固めに焼かれた皮が旨い(薄いので「皮」という感じになっているのだ)。
クリームはとろんとろんに溢れて来て、いたずらな甘さがなくていくらでも食べられそう!
チーズエピは、独特の規則正しい肉厚のルックスでこりゃまた美味。
かぴかぴに焼き固まったチーズ部分が煎餅みたいで香ばしく
生地の目が詰まっているからひとかけらでも食べ応えあり。
クロワッサンは中身を食べるもちもちタイプ。
さくさくハラハラとは真逆だけど、こういうのも味が濃くて大好きなんだよね〜。
BBSでのおすすめタレコミに感謝。
なんか今回の福岡はほんと、いろんな人に助けられているような気がするなぁ。
*
さてお次は初めて来訪のお店。
クルマは高級住宅街っぽい町並みを進んで行く。
ここは神戸でいうと苦楽園といったところか、あの街並みとかぶる。
ブーランジェリーレストは、バカナルやムーミンカフェなどでお馴染みの
シェフが立ち上げたお店。住宅街の中にひっそりとある洒落た店構え。
想像通りオシャレできれいなパン、ディスプレイ、お手本通りなパン屋さんの内装。
ムーミンやバカナルにもあるカスクルートや、
ムーミンでは一番好きな黒パンもあったりする。
…けど、ほとんど買い物はしなかった私である(笑)
オザマンドは珍しいくらいにダマンドが大量にかぶさっている、
さながらメロンパン状態(笑)。贅沢だなぁ〜。
シロップ味というくらいに味がくっきりはっきり甘い。
…さすがに軒数をたくさん行ってしまうと
パン屋さん羅列状態になってしまうなぁ(笑)。
ここいらでちょっと、思い出に残るようなことしませんか?
ちょっと遠くに行ってみませんか?
ねぇねぇ、ぜひこのお店に行ってみたいんだけどぉぉぉ〜。
*
そのベーグル専門店は、えらく郊外にあるらしい。
住所だけでは全然想像もつかないけれど、新幹線停車駅の博多南というところは
おそろしくのどかなところらしい(笑)。
だって、店の目の前には田んぼが広がっているというのだから!
"長女"いわく、「たどり着けるかなぁ、迷わなきゃいいけど」
行ったことのある友人に電話して道を聞きながら目指した。
指示通り市街地からまっすぐ一本道で進む。
一向に田んぼなんて現れる様子もなく、いつまでも「田舎」っぽくならない。
本当にこの道であっているのか? そ、そんなに田舎なの?(笑)
突然風景は田園地帯へと突入!
この変貌っぷりは意表を突かれた。
竹林や山河、田園が車窓に広がって来たのだ。
辿り着いたNANA CAFEは、本当に田んぼのド真ん前!!
支店が博多南駅にあるらしいのだが、こっちに来て大正解!
今日はあいにくの雨模様だけど、
これ、晴れていたらどんなに緑と青のコントラストがきれいだろう!
お店には何種類ものベーグルと、いくつかのパンがあった。
カントリー調の屋根裏部屋的なログハウスは
ベーグルやベトナム雑貨が置いてあれどどこか和風というか家庭的というか。
人様のお宅にお邪魔しているような錯覚。
たぶんそれは他のお客さんと一緒に囲炉裏を囲むテーブルのせいなのかも。
ベーグルを焼いているのがうちの母より少し若いくらいのお母さんだからかも。
こんなのどかな場所にあるのに、お客さんがぽつぽつやってきてはたくさん買って行く。
私はあちこちの「のどかな場所にある」パン屋さんを訪れたが
どこもちゃんとお客さんというのは来るもんなのだなぁとつくづく思う。
このお店のベーグルのラインナップはかなり個性的で(笑)
選ぶのにどれだけ苦労させられたことか。
これは高菜とクリームチーズのベーグル!!!
しかも、この高菜。「みきえおばあちゃんの手作り」なんだそう。
「これ、みきえおばあちゃんって人が作っている高菜なんですか?」
「そうなんですよ〜炒めるところまでやってくださってるんです。
…うちの義母なんですけどね(笑)」
まさに家内制手工業!(笑)
ベーグルにしておふくろの味が味わえるなんて!
いやはやこれは美味しいです〜。みきえおばあちゃん、旨いよ〜。
ベーグルサンドを2種、"長女"と2人でシェアをした。
ひきはあるけれどふわふわなベーグル(!)だけど、
この挟んでいる具がとっても美味しいのだ。
手作りのスモークベーコンで、香りがとてもいい!
そこにトマトとレタスとドレッシングが絶妙なバランス。
とても美味しい"サンドイッチ"だった。
デザート向けにピーナツバターとバナナのサンドを。
これももしかしたら手作りのピーナツクリームかもしれない。
えらく塩気が効いていてちょっと攻撃的ではあるけれどピーナツチャンクが大粒で入っている。
バナナも不器用なほどにこれでもかと入っている!
窓の向こうの田園を眺めながらゆるゆるとした時間が流れる。
長居したせいか、お茶をもう一杯サービスしてくれたりと
ほんとに家庭的なまったりとしたお宅。…もといカフェ。
ここまできてよかったね! ありがとう、"長女"さん。
*
もう1人の福岡パン娘と合流するために博多に戻る。
いったい彼女はどんな人なんだろう…と、
止めた車中であれこれ妄想を繰り広げる。
あぁ、ごめん。結構はちゃめちゃな想像してたかも(笑)。
ところが現れた彼女は私たちの予想を大いに裏切るキュートなお嬢さんだった。
あはははーごめんごめん(笑)
では彼女を"次女"と呼ぶことにしよう。
なんだろうね、このパン好き特有の共鳴性って。
パン好きさんと初めて会うたびいつも思うのだが、
共通のものを愛する者同士に時間とか距離とかって関係ないんだよねぇ。
あ、でも、同世代っていうのが一番大きなポイントかしら。
とっても微妙なお年頃の私たち(笑)、
これから行くパン屋さんはもう目と鼻の先なのに、
恐ろしいほどマッハに意気投合。
そのパン屋さんは、いつもBBSで熱く福岡パンのことを報告してくれる
3人目のパン娘(残念ながら旅行中につき今回は会えなかったが)が
いつも書き込んでくれていたパン屋さん「豆の木」。
"次女"は、その書き込みを見て初めて豆の木さんに行き、
すっかりはまってしまって、今では立派に常連さん。
で、そのパン屋さんはどこにあるかというと…
な、なんとこんなところに隠れているのだ(笑)
こんなの絶対見落としちゃうってばーーー(笑)
コインランドリーの中にあり、通りから看板が隠れて見えないという
恐ろしく不利な立地にあるパン屋さんだった。
いや、きっとコインランドリーのお客さんにはいい待ち時間にはなると思うけど(笑)。
常連の"次女"のおかげで店長さんとも楽しくお話ができたし
なにより彼女が熱く熱く本人の前で「ほんっとにもーーー美味しい、大好き、最高ーー!」と
熱弁をふるうその姿が笑えた…じゃなかった、感動した(笑)。
あまり多くは買わないで申し訳なかったのだけど
どのパンもてらいのない誠実なパン。
とくにクリームパンはしっかり甘めのカスタードで
美味しかったなぁ…。
なにより嬉しかったのは"次女"が私たちにくれたザマンド2種。
どちらも予約しないと店頭には出ないシロモノなのだが
私たちの分までしっかり作ってもらっていたのだ。う、嬉しい…!!
カリカリ系のザマンドで、かかっているクレームダマンドの量も適度で
見た目も麗しゅう♪ 特にショコラザマンドは車中で大騒ぎだったよな!
そうそう。福岡で忘れてはならないのがパティスリー・フレ。
もう数日で惜しまれつつ閉店してしまうこのお店に、
寄れたらいいなとは思っていた矢先に"長女"がなんとマカロンや焼き菓子を贈ってくれたのだ。
フレのマカロンは食べるのは2度目だがものすごくものすごく好き!!!
まるごと一人占めできるなんて…あぁぁ、どれだけお礼を言っても足りない気がするよ…。
この同世代3人娘は車中で何度大爆笑しただろう。
あぁ、時間が本当に惜しかった。
本当に今回、イイ奴らに出会えてほんと良かった。
ありがとう、福岡。ありがとう、福岡のパン好き娘たち!!
*
前回の福岡出張のときに、ひとつの珈琲店との出会いがあった。
(博多グルメ記録はこちら)
せっかくお薦めしてもらったお寿司屋さんを
店の前まで行ったのに「寿司モード」に切り替えられなかった私は結局入らず終い。
だって、私は福岡が寿司のウマイところだなんて全然知らなかったのだから。
寿司が旨いのは故郷の北海道、道産子の特権、とまで思っていたのだから。
(といいつつ私はハタチになるまでお寿司が大嫌いだったのだが?(笑))
今回は気合いをいれて予約、パンもたくさん食べたけど
気持ちは切り替え寿司モード。舞鶴の吉富寿司さんの格子戸をがらがらっと開ける。
店主の趣味の良さが細部に渡るまで現れている店。
カウンターで1人腰掛ける。
あれだけパンを食べてもなお「飲むパン」を頼むか、私。
どれもこれもがひと工夫された江戸前寿司。
斬新であれど、でも実直というか…
たった指先サイズなのに、これだけでどんな大きなお皿の料理よりも
語るドラマがあるなぁと思わされる。
穏やかそうに微笑みながら寿司を握る大将。
時折ひとり客の私にも一声をかけてくださりながら。
穏やかそうでありながら、厳しさも少し垣間見れる。
愛想がありそうで、なさそうな、つかみ所のない卓越した雰囲気を持つ大将。
私は寿司職人の仕事を見るのが好きだ。
パン職人の仕事と同じくらい、眺めていて一番飽きないのが寿司屋だ。
次に何が出るのかが、目の前で見てわかっているはずなのに
いざ一貫ずつ差し出されるたび気持ちが引き締まる。
この緊張感、私は嫌いじゃない。
心して食べよ。
ひと握りひと握り、心して食べよ。
1人で来ているからこそなお感じるプレッシャー。
ここ最近、お寿司という食べ物にとても惹かれているパン好きの私だが(笑)
100円のパンだって、1万円のお寿司だって、感じるものは同じ。
作り手のドラマを感じながら食べるモノというものが
本当に好きなんだなと思えてならない。
…って、なんでもパンに結び付けて考える私は不謹慎なのかしら?
そう言えば…「おまかせ」のお寿司をひとりで食べるのは初めてだ。
そろそろお腹的にもストップをかけた方がいいかもと思い
つくしのお寿司を最後に締めてもらった。
予算は多めに見ておいたけど、どきどき…果たしておいくら?(笑)
ビール1本つけて5800円。
…ほっ(笑)
内心、もう少しストップをかけるのを遅らせてもよかったかもしれないな、
「おまかせ」はもう少し慣れるのには修行をつまなきゃ(笑)。
もちろん、この店を紹介してくれた珈琲店にも足を運んだが
あちゃー7時閉店だったっけ? 店の前で大きなため息をついた。
後にも先にも、あそこ以上の珈琲には出会えていないのに。
こうして、またひとつの街に、多くの心残りを残しながら
短すぎる福岡の一日は締めくくられた。
だからまた私は誓うのだ。
また次の福岡で…。
*怒濤の2日目に続く*