90-3.ぐるり中国瀬戸内ふれあいパン紀行 〜vol.3 岡山のパン屋さん〜





* vol.1(出雲・広島編)はこちら *

* vol.2(石風呂・尾道編)はこちら *




3日目* 岡山のパン屋さんめぐり



岡山のパン友さんがホテルまでわざわざ迎えに来てくださったのは

午前9時過ぎだった。

ホテルのロビーで、置かれていたのは岡山のタウン情報誌のパン特集。

おおお…これから行こうとしているパン屋さんも載っているが、

こんなに岡山県内にはパン屋さんがあるの?! すごい…。

意外と岡山県ってパン処なのかしら。





パン友さんのクルマが最初に立ち寄ったのは、

岡山城を眺められる、とある公園。

この公園は、岡山の某有名通販パン屋さん(後述…)が

酵母を育てている舞台である公園、だそうな。

ほほう、そりゃパン好きさんには、

城が見られるに留まらず興味深いものです!(笑)





「最近岡山市内に来たら必ず立ち寄るのがここのパン屋さん」

そうパン友さんが次にクルマを止めたのがこのお店だった。

コロンバージュさんというパン屋さんで、

豊富な種類のおしゃれなパンたちが並ぶ対面式のパン屋さんだった。

岡山ではまだ対面式は珍しいんだそう。


ここで、マンゴーのパンプリンを購入、軽く朝ごはん代わりに





「これ、すっごくお気に入りなの」と

パン友さんがくれた、小さな無花果入りの胡桃パン。

無花果にバニラの香りが効いていてめちゃくちゃうまーーーい!!

びっくりした! ほんとに意表をつかれました!







今回、私の目的のパン屋さんは2軒。

いずれも山間部にある、山奥の石窯のパン屋さんだ。

余裕があれば、倉敷にあるパン屋さんにも1軒寄りたい。

そのプランでパン友さんが時間配分を考えてくれた。


岡山の次は、一気に特急で愛媛まで行こうと思っていたのだが

まさか、パン友さんが「余ったからこれどうぞ」とくれたのが

なんとまたまた18きっぷ1回分(笑)。

わはは、こうなったらこれ使わなかったら嘘でしょ、ありがとう!


…となると、岡山まで15時に戻って来ないと…

これだと倉敷は厳しいかも知れない、と思われる。

さてさてどうなる



クルマはぐんぐん山の中へ入って行く。

峠を超えて、もうここはどこなんでしょうという状態ですが(笑)、

かなり岡山市よりも北部の山間部にきているようだった。





11時ちょっと前に到着したのは、知る人ぞ知る、

プレミアムチーズを作る、吉田牧場さん。

そう、あのパン屋さんや、あのレストラン、ここのチーズを使っているお店は

必ず「吉田牧場の、」と商品名に銘打つ。

それぐらいに稀少価値のある、名チーズを産み出すんだそう。


パン友さんのアドバイス通り、事前にチーズを予約し(完全予約制)、

11時のオープンと同時に到着したわけだ。

牧場…といっても、視界に入る分には牛さんは見えないので

あまり牧場感がない。こじんまりとした山あいの農家、といった風貌だ。

ここの小さな工房で、名作チーズが作られるんだって…すごい。





栗が道ばたに落ちていた。

ふとみあげると、見事な栗の木がそびえていた。





私がいつもいつもお世話になっている恩人の庭先にも

見事な栗が実っていたっけ。

きっと今頃、栗を拾って、ひとつひとつ剥いているに違い無い。

ああ、お手伝いに行きたいな

そんな、この場所とは関係なさそうで、

でもどこか関係がありそうなことを思っていた。





予約していたラクレットチーズとカマンベールをいただいた。

ほんとに少量生産の手作りチーズ。

奥さまは、「いつもよりも小さくできてしまって」ということで

グラム単位で値段を再計算された。

こちらは全然気にしていないのに…細やかな配慮だ…。


買ったときはまだ若い感じだったので、これからゆっくり熟成して

大事に頂いていきたい。ここでしか買えないプレミアムチーズ

(後日、ゆっくりいただいているが、特にカマンベールが美味しい〜。

白カビの酸味と、臭みが抑えられた上品なまろやかさが、とにかく「綺麗」な味だ、の一言。

それはラクレットにも共通する。ピュアだけど、気品のある味わい…)







吉田牧場さんからほど近い場所にあるパン屋さん。

それが、県外のパン好きさんにも有名な「焼き屋」さんだ。

このお店は前から名前を知っており、いつか訪れてみたいと思っていた。

富ヶ谷の某店出身とのことで、大きな石窯のあるパン屋さん。

どんな場所にあるのだろう、どんなパンたちが





やはりこちらも、相当辺鄙な(失礼!)場所にある!

それなのに、ひっきりなしにクルマが訪れる。

どうやら先ほど読んだあの雑誌の影響みたいだ、とパン友さんは語る。





小屋の裏側には

うわぁーいい景色! この風景、この高原。

なんていうか、天が近い感じがする。

東京では台風だというのにこのお天気

我ながら、その晴れ女っぷりに呆れ返る次第である(笑)。





焼き上がるパンの量に限りがあるので、早めの来訪が鍵みたい。

手書きの看板がお出迎え。

さてさて、おじゃましまーーす





小さな小屋の中央に、どーんと石窯が!

小屋全体がむんむんと熱気を発している。

爽やかな素敵ご夫婦が二人でパンを焼いている。

はぁーーーいい香り!!





パンの種類は少ないけれど、どれもほどよい大きさで、

外はバリッとハード、もちろんすべて焼き立て!

焼き菓子も美味しいとのことで、スコーンやグリッシーニも購入♪

(画像はありませんが、かなり個性的なスコーン。ぎゅっとパンを押しつぶしたような食感で

ソフトなんだけど妙なコシがあり…ほのかなゴマ風味で、ゴマゴマくどくなくて旨い!)


ここの近くにある極楽庵のベルナルドさんの自家製ジャムやピクルスも売っており、

ここで買った「梨とマンゴーのジャム」は生姜が効いて個性的!





焼き立てのパンたちは、バリッとクラストがハードで、

中はむっちりと理想的な食感。

胡桃とレーズンのオーソドックスなパンはレーズンの粗野なほどのジューシーさが際立つ!





季節限定のかぼちゃパン。

これも外はパリッと、中はムチッと。

最初はあまりかぼちゃの風味がキャッチできないのだけど、

そのかすかな味わいが次のひとくちをいざなうというか

食感のすばらしさも手伝って、途中でやめられない!

特にこのかぼちゃパンはじわじわと、積み重ねで旨さを感じるタイプのパンだから

ついつい食べ過ぎてしまう。

こういうウマさ「寸止め」なパンも好きだなぁ〜。


こんな山奥なのに、ひっきりなしに訪れるパン屋さん。

あともう少ししたらあのパンたちはみんな売れてしまうだろう。

すごいことだよな…考えてみたら…。







そしてお次は

もう一軒、目当てにしていたパン屋さんがあった。

それが「雪bolo」さんだ。


もともと、パン友さんに教えてもらったパン屋さんだったのだが、

どうやら…、そこでパンを焼くお姉さんは、

数年前、私の行きつけの某パン屋さんで働いていたそうで!

その後、この土地に家具作家の夫とともに移り住んで、

最近このパン屋さんを開いたんだそうな。


予約のメールを送った時には特になにも触れずにメールをしたのだが

「とても山奥でビックリすると思いますよ!」との

お返事メールにも、特に何も触れられていなかったけれど



クルマはどんどん山奥へ。

不安になりそうなくらいに山奥へ進んで行く…!

ま、まじでこの先にパン屋が?!

というか、そもそも、人が住めるんですか?!

こんな山奥に! よっぽどクルマの腕がなきゃ、絶対崖下に転がり落ちるって!(笑)


「本気で田舎暮らしを決意しないととてもじゃないけれど無理だよね」

焼き屋さんでも十分にびっくりしたけれど、

もっともっと山奥があるんだわ…、

上には上が、奥には奥が(笑)。


おそらく対向車が来たら動けなくなるような細い山道を

うんうん進むクルマ。…この風景…この山奥っぷり…

私は、ひとつの風景と重ねあわせていた。

「あの風景」と同じだ


こんな場所に人が住めるんだと、都会暮らしの自分には想像できないような場所。

だけど、私はこんな風景を以前にも知っていた





うーーーわ!(笑)

ギャグのような山奥(笑)。

一体なんの冗談かというくらいにホンッとに山ん中!

家の前までクルマでは入れないくらいの傾斜の坂があるので

崖(笑)の上にクルマを止めて、坂をくだっていった。

ビーチサンダルの私は転げ落ちそうだった(笑)。





年季の入った古い家屋と、隣にはかわいらしいパン小屋が。

ここがパンのアトリエ、石窯のある小屋だ。

ソウルフルな絵画をバックに、ほんものの石窯が次から次へとパンを焼き出す。





パンたちは、店での直売も行っているけれど、

主に移動販売をしているんだそう。

今日は移動販売の日で、予約しておけば、ピックアップは可能とのこと。


こんなハードなパンたちが地元の人たちに受け入れられるのか、と

外部のものからしたら心配になるところだけど

意外にも地元のお客さんにかわいがられ、

パンを楽しみにしてくれるファンが多いそう!


さっきの焼き屋さんにしてもそうだけど、

なんだか…こういうパン屋さんが増えるのってすばらしいよね。

都会で腕を磨いた職人さんが、田舎へ移り住んで、

美味しいパンを広めてくれること。

味を教えてくれること。


なんか…今回のパン旅のテーマだな、これは…

パンの旅は、いつも何か学ばされることが多いよ…。





パン友さんはこちらの常連さんだけど、今日連れて行くのが「私」とは伝えていなかった。

しかし、お姉さんが私のことを「mi_waさん」と呼んでびっくり!!

うわ! ばれてましたか!(笑)


そう、以前勤めていてお店で私のことを知っており、

今回、わざわざ東京から来ることでピーンときたらしい(笑)。

うわーうわーうわー(照)


そういえば、やっぱり見覚えのあるお顔…。

こんな場所でねぇ…人生、何があるかわかりませんね!(笑)

思いがけない再会(?)に話が弾み、パンを食べることを忘れそうになる。

店長やその他のスタッフたちの話…。わーん。

彼らはみんな相変わらず元気ですよぉー。





用意周到すぎる(笑)パン友さんが用意してくれていたのは

なんとビールと、岡山乳製品シリーズ(笑)。

ほんじゃ遠慮なく

まず手を延ばしたのは当然ビール(笑)。

ああ、山を眺めながらのビールは最高!!!(涙)





こちらのパンは、ほんっとにかっこいい。

どうしてこんな山奥に…と、ギャップを感じずには居られない。

それくらいに、ここのパンはかっこよくて、美味しそう。





表面にガーリックバターを塗ったガーリックエピも焼き立て!

うわぁ…なにこれ…!

ほんっとに美味しい。というか、、、ここの生地、ただ者じゃないって!!!

ひとくち食べた時から、彼女の尋常じゃ無い腕前に腰抜かしてしまった。

甘みが強い!! じわじわくる甘みが、強い!!!



さらに、追い討ちをかけるように、パン友さんが半分くださったバゲットが

あまりに美味しすぎて、私は叫んでしまった!

だって、だって…!

ぎゃーー好みの「ド」ストライクなんですけど!!

私が都内で一番好きなあのシェフが作るカキ餅のような、

甘い甘いスルメバゲットのように

ほんっとに甘みと香ばしさがイーブンに広がって…昇天しそう!!!



画像には残っていないけれど、スクエア型のパイのような

オレンジスコーン(これをスコーンと呼ぶところがある意味個性的である…)も悶絶…!!!

だって、パイみたいなのに、驚くほどバタ臭さがなくてしつこくない。

ほどよい甘さで、そこに「スコーン」と呼ぶ所以か? と。

いや、やっぱりこれはパイだろ(笑)、旨いってばーーー





胡桃入りのカンパーニュも、クラストのワイルドな焦げた甘苦さがたまらない。

もちろん、この生地も、口の中で転がすほどに甘みが増し、胡桃のコクが余韻を延ばす


もうもう、何を食べても悶絶、、、




トイレもこりゃまたワイルドで(笑)

すごい、本気で田舎暮らしを覚悟しないと住めないだろうに

冬はどうするの、雪が降ったら閉じ込められないの?


しかも、彼女はもうすぐ産休に入り里帰りする予定。

想像以上に田舎暮らしは大変だろうし、

思い通りにならないことが山ほど有ろうと思う。


でも

この場所を自ら選び、ここで新しい命を育てて行こうという彼らに

尊敬の念しか思い浮かばない。

この風景の中で育つその子のことを思うと

私はもうひとつの「私の中の風景」に重ねあわせ、感慨深くなる。


どうか、元気に育ってね!







もうすっかり満足してしまい(どっぷり浸かったもんなぁー)

行こうと予定していた倉敷のパン屋さんはまたの機会に

そして岡山へ戻り、電車の時間まで少々、もう一軒寄ることになった。





そう、岡山といえばこのパン屋さんを思い浮かべることも多いでしょう、

略してナショデパさん。外枠はガレージのような小屋なのに、

不思議にそのスタイリッシュな白い工房の内装がマッチしている。


15時頃だったけれど、もうパンは数少ない。

まぁ、東京でも食べる機会はあるから…と、

小さな500円のスライスだけを購入。





この袋がほしかったです!(笑)




パン友さんに駅まで送って頂き、お別れをした。

ほんとに…この岡山パン巡りは、彼女の力を借りなければ

こんなに充実しなかったかも。

パン屋さんに行くだけ、足を運ぶだけだったら独りでもできるけれど

そのパン屋さんへの思いや、エピソ−ド、交流。

そういうものの力を少しお裾分けしてもらいながら、

私も素敵な時間を共有させてもらえる。

ただの「旅人」としてではなく、その土地に住む人の目線でも



ほんとうにありがとうございました。

このお礼はいつかまた、東京で…!








パン友さんからもらった18きっぷを手に、

次に目指すのは、今夜の宿泊地、愛媛県の今治市。

そう、しまなみ街道の四国側の入口の町である。


岡山を15時過ぎに出発、瀬戸大橋を通り超え、四国in!!

車中には、お遍路さんの乗客も目立つ。





途中、ナショデパのカンパーニュ(アールグレイ生地にドライメロン入り)や

焼き屋さんのゴマスコーンを齧りながら

「いい加減に着いてくれ」と発狂しそうになりながら

日の沈む瀬戸内を車窓に眺めていた。


今治到着は19時40分頃。

ああ、、、疲れた…。

年々、カラダに堪えるよ、18きっぷ旅(笑)。






これまでの道のり




vol.4へつづく*

2007.9.5〜9