90-1.ぐるり中国瀬戸内ふれあいパン紀行 〜vol.1 石見銀山→広島〜

中国四国地方

「この世パン」サイトを立ち上げてから、中国四国地方へパン屋さん訪問するのは初めて。

しかし実は中国地方も四国地方も、学生時代によく旅をしたエリアだった。


学生時代のマブ友のいる高知へ行こうとも思ったのだが

向こうの都合につき今年は断念。

しかし…それでも四国に行きたい。中国地方も行きたい!


昨年のちょうど今頃、一度「出雲中国地方ツアー」なるものを計画したことがある。

そのときに、まだ世界遺産になる前のマイナーな石見銀山の存在をしり

なんとしてもここに訪れてみたいと思っていた。

(残念ながら、もう世界遺産になってしまった後の訪問だったが、、、)


そして、まだ訪れていない岡山のパン屋さんたち。

四国しまなみのパン屋さん。広島のパン屋さん。

瀬戸内をめぐる旅への憧れは尽きない!


毎日毎日が思いがけない出来事で埋め尽くされた、

(毎度ながら)超・濃密な5日間の旅。

パン、景色、そして人との出会いふれあい。

そして「田舎で生きる」ということ。

では、たくさんの画像とともに、旅の記憶をひも解いて行こう







1日目* 出雲 石見銀山





10時台に出雲空港到着。

実にシンプルな空港で、滑走路のすぐ横に民家が点在していてなんとものどかな風景。

一日数便だけなら、飛行機が家のすぐ横をかすめて行っても大丈夫なのかしら。


空港バスで出雲市駅まで。

石見銀山のある大田市行きの特急まで1時間あるので、駅前で蕎麦を食べてみた。


出雲そばと言えば、割子そば。

三段重ねの丸い漆器に蕎麦が入って600円。安!

注文を受けてから蕎麦を切り茹でている模様。

コシはあるけれど、タレがちょっと好みじゃ無かったかも。

とりあえず空腹をお蕎麦でうめることができて






特急は山陰の地図通りの海岸線をたどって行く。

日本海が車窓にパーッと広がる!

岬に立つ白い風車がカモメのように綺麗!!!


そういえば、5年くらい前に出雲大社や松江などこのエリアの旅行に来たことがある。

今回は出雲大社はスルー。縁結びよりも、今は銀山よ!!!(?)



大田市駅に到着。

石見銀山のある大森地区までのバスはさらにまた30分後、、、

いったいいつになったらつくやら。ロスが多いなぁ、と都会人間の私は少々焦る。

バス停のベンチでマニキュアを塗りながら(爆)、バスを待った。



バスは30分くらいで代官所前へ。とても山の中。

バス停の前のガソリンスタンドでレンタサイクルをしているようで

そこで電動チャリンコ(初!)を借り、代わりに荷物を預かってもらった。

いや、予定ではチャリンコを借りる予定はなかったのだけど、

荷物をどこかに預けたかったからだ。

結果として、ここでチャリを借りて大正解!

石見銀山のエリアは、徒歩ではかなりのハイキングコースだったのだから。



電動チャリってはじめて!

うわーーーなんてラクチンなんでしょう!

勝手に加速するから慣れるまで恐いけど。





奈良井宿や妻籠宿などのような、山あいの古きよき日本の宿場町の町並み。

人々が肩を寄せあって暮らしているような







まだ世界遺産になってから数カ月、これから観光化が進むであろうけれど

まだ、このときは静かな静かな、美しい風景が守られていた。


…いや、、、世界遺産になってから、すごい混雑と聞いていたのに

妙に今日は静かだ。平日だから、といっても

それにしても、こんな客足が少ないなんて。





おなかぺこぺこなので、間歩(銀山の入り口)に行く前に

腹ごしらえにこの町の老舗パン屋さんに寄ろうと思っていたのに

うわぁ、今日って定休日?! うわーん。残念。


しかも、エントリーしていた出雲蕎麦の「朝日庵」もやはり定休日。

重なるもんなんだなぁ…あれれ。





そこで、こちらは開いていました「御膳そば」さん。





やはり三段重ねの割子そばを注文。

さっき食べた店よりも細めんで、出汁は少し辛めで美味しい。

ワサビがかなーり効く。

それにしても蕎麦ばかり連続で食べることになろうとは…(笑)

あ、蕎麦茶のようなオリジナルのお茶がとても美味しかった!





蕎麦屋の目の前にある、羅漢寺五百羅漢を見物。

拝観料が500円もする。

500もの仏様を拝めるのは興味深かったけれど

外から風景をとるだけでも十分だったかも、と…。








自転車を走らせ、石見銀山・龍源寺間歩へ。

道中、かなりの距離がある。

この石見銀山をすべて見て回る徒歩コースはだいたい6時間くらいだそうだ。

4時の広島行きのバスに乗らないとならないので

私には3時間くらいしか時間がない。

自転車はやっぱり正解だったかも!





本当にのどかな風景ばかりが続き、

自転車を止めてはぱしゃりぱしゃり。





龍源寺間歩にやってきた!

そう、この入り口

この間歩の写真を去年ネット上で見つけて以来、

ずーーっと訪れたいと切望していた場所だ。


ここも入場料がかかるのだけれども、

せっかくここまで乗ってきた自転車は、入り口に止めておかなきゃ

ならないのだろうか…とほほ、出口はずいぶん離れたところにあるらしいし、

またここまで取りに戻らなきゃならないんだろうか


と思ったら、なんと自転車ごと入らせてくれた!

これは、今日が空いているからのようだ。

すごーい! ラッキー! 空いている水曜日に来て正解!





間歩の入口付近はまるで冷蔵庫のように寒い。

一気にカラダの汗が吹き飛んだ。


自転車を押しながら洞窟を進むのは結構大変。

狭いし暗いし。最後はゆるい坂をのぼり、出口へ…。

昔は、この洞くつを、一日30センチとかずつしか掘り進めなかったというから驚き。

どれだけの人と労力を注ぎ込んだことだろう…。







間歩を抜けてから、森林の中の遊歩道を自転車で駆け抜ける。

森、小川、神社…ふわぁ…気持ちが良すぎる!!!





とても自転車じゃなかったら行かなかったであろう、

ちょっと離れたところにある製鉄所跡かなにか。

城壁のような風貌で、圧巻…!





なにかちょこまか動くと思えば、あれは野生のサル?!

うわーー。すごい!


今回、「石見銀山に行くんだよ」とお友達に話したら

「だったら群言堂にいけるのね! うらやましい!」と言われた。

有名な群言堂、もちろん私も行きたいと思っていたのだが





ぐわ!

ここも定休日?!

うわーー、、、そうなのかぁ…。




(画像は、雑貨屋さんのお向かいの町家。群言堂さんの寮、なんだそう)


代わりに別のお土産屋さんで物色をしていたところ

そこの店番の女の子と話が盛り上がる。

彼女いわく、「なんで水曜日にいらしたのか」と(笑)。

「群言堂の休みの日に来るなんて、もったいなさすぎる!!!」と(笑)。


うわーー、、、そうだったのか、、、

どおりで、いくら平日だからといって今日の石見銀山は妙に空いていると思ったわ。

水曜日はパン屋も蕎麦屋も群言堂も休み。

うーん、日曜日に大阪パン巡りに出かけるようなものだったのか(全滅)




そろそろバスの時間、自転車を返さないと…と

走り出したところで、猛烈な土砂降りが!!!

あまりに酷い土砂降りで動けず、しばらく軒先きで雨宿りしていたが

止みそうに無い。ちょっとぬれるのを覚悟で自転車に乗った。


私はずいぶん「晴れ女」だよなーーと思うことが多いのだが、

こうやって、一通り観光が終わったあとに土砂降りに遭うことがある。

これも、ある意味「晴れ女」の所以なのよね〜(笑)。



たっぷり3時間、ほんとは温泉郷にもいきたかったけれど

それはいつかのお楽しみに

さらば、石見銀山。


直行バスに乗り、約2時間半後、広島に到着したのは7時頃だった。







1日目* 広島 夜のこてこてグルメ


今夜の滞在先は広島。

今回は4泊5日の長丁場なので、一泊当たりは3000円台で抑えたい。

会社の補助金(一泊当たり3500円×2泊分)や、格安宿を使えば

平均3000円台はクリアできそう。

今夜は、6800円の某ビジネスホテル−3500円補助金=3400円の宿泊。

ここが、かーなーりー満足度高いホテル。

綺麗だし、行き届いているし、大浴場がめっちゃきれい。

やっぱ宿代は6000円くらい出さなきゃいい宿泊れないよね(笑)


広島自体は、以前、下関から東京まで18きっぷ旅をしたことがあり、

一度宿泊をしたことがある。

7年ぶりくらいの来訪だが…こんなに都会だったかーー。

なんか、ブティック巡りでもしそう。。。

(案の定、秋物のコートを買ってしまった! バカー)





さて広島といえば!

まぁ、お好み焼きが定番でしょう。

しかも、観光客しか行かない場所と言えば、ここでしょう(笑)。

札幌出身の私がラーメン横丁に行かないのと同様で(笑)。

いいんです。もう、パン屋さん以外のグルメ関係は

調べる時間もパワーもなかった丸腰の私にはこういう施設が助かるんです(笑)。


雑居ビルの2〜4階には、似たようなお好み焼き屋さんがひしめきあっている。

決め手がないので迷う!

どこも似たような人入りで、そんなに大差ない感じがする。




しかし、その中でも待ち客がいる店が人気ありそうだなと勝手に決めつけ、

母娘2人で切り盛りする店へ入って行った。

先客さんたちのお好み焼きが実に旨そう!!!





デラックスお好みや着は、少し小さめのサイズにしてもらったけれど

中身は充実!

まず皮を焼き、ソバやキャベツ、とろろ、モヤシを載せ、

肉、海老、いか、卵を順に焼いてプレス。





うーーーん、焼き上がりを待つ間にもうビールなくなっちゃいました(笑)。





お皿をもらおうと思ったけれど、

本場の食べ方は、鉄板から直接へらですくって食べるんだそうな。

うん、うまい。まぁ味はあまり甘くなく、濃くもなく、

好みの味とはちょっと違ったけど(私、甘党)、

お腹すきまくっていたのであっさり平らげた。

そういえば私、昼から今日は蕎麦もんしか食べてませんけど!(珍)





まだまだ行けそうだと思い、徒歩20分くらいのところにある川沿いの

オイスターレストランをハシゴしてみた。

川沿いに、おしゃれな出店が数店出店しており、

その一つが牡蠣を専門にしているフレンチ風(?)のバーだった。





このロケーション。。。

まるでセーヌ川沿いみたい、オシャレ度高すぎますけど!

生ガキは季節ではないらしく、すべて熱の通ったもののみ。

残念!

ブラウマイスターと牡蠣のカクテル、牡蠣のこんがり焼きサラダ仕立てをオーダー。

カクテルは生クリームかなにかでまろやかに仕上げられているので

少量でもこってり満足度が高い。

ていうか、そもそもこのロケーションで牡蠣とビールを飲めることに酔いしれる私。




…しまった!

こんがり焼きがこんなにすごい量とは!!!


バター等でこってり焼かれたぷりんぷりんのデカイ牡蠣が6個も載ってる(汗)

下に敷かれたサラダがそのまんま生野菜、

とはいえ、それが逆に食べていてしんどく。。。

うわーん。空腹だったらどんなに嬉しかったことか!

お好み焼きの後ではヘビィすぎる。

食傷気味でホテルまで歩くことにした。





どうでもいいひとりごと。

広島の八丁堀

ネットで乗り換え情報を検索するときに、決まって広島の八丁堀が出て来て

毎度迷惑していたのだが(笑)、

まさに、広島の中心街である。なるほどなぁ。かなわないなぁ(笑)







2日目* 広島パン屋さんめぐり(短縮版)


東京で台風が接近しているだなんてシンジラレナイほどに暑い灼熱の広島。

今日の旅のプランは、広島から18きっぷを使って岡山へ向かう。

それまでの道中にひとつ、どうしても寄りたい「温泉」があるのだ。

それ以外は成りゆきまかせ

とりあえず、午前中は広島パン屋さんめぐり!


広島は、行ってみたいパン屋さんが多い。

…というか、多かった。

最近、気になっていた広島のパン屋さんが移転やら閉店やらで

どこに行こうか決めかねていた。


ひとつだけ、絶対に行こう、行きたい、行くべき、

そう決めていた石窯のあのパン屋さんがある。

その他にもいくつか場所だけは調べつつ、

なりゆきまかせでいってみましょう!









その昔、広島旅行したときにもやはり立ち寄ったのはこちら(笑)。

広島といえばお膝元ですからねぇ〜。

まだ10時の開店前で、モーニングしか営業していない。

といいつつも、ホテルのモーニングを食べるかどうか迷うなら、

迷わずこっちに来るのがパン好きというものでしょう(笑)。





モーニングセットは、パン3つにサラダ、ハムエッグ。

(本来これはスープセットなのだが、スープをコーヒーにチェンジしたからスープ無し(笑))

ライ麦パンにはハムエッグを載せて一気食い。

うーん、これこそ王道の朝食♪


しかし! ブルーベリージャムがついていたが、

いったいこのジャムは何につけて食べよと言うのだ(笑)。

残るパンはレーズンパンとコーンパンなんですけど…(汗)


たまにこういうとき、「一般」と「パン好き」の差みたいなものを感じるわ。

パンの味を損ねてまで塗り物しないもの。。。

なんか、そこはしっかり啓蒙してもらいたいものでアリマス、アンデルセンさん!

(と偉そうに(笑))





バスセンターから、海田方面行きのバスを(なんとか)見つけ、東堀越へ。

駅からすごく遠いのでバスで来て正解だった。

バス停からはものの1分だった。

…このことを教えてくれた友のおかげだ。





一見、その店は古びた町のパン屋さんだった。

前の代から続いているような年季の入ったエントランス。

しかしここには…大きな石窯があるんだという。


パンはざっくりと2系統。

石窯で焼くパン。こちらはあの富ヶ谷の風貌に実に良く似ている。

もうひとつは、その他の惣菜系、デニッシュ系のパン。

そちらは普通の窯で焼いているそうだが、

いやいや…そっちはそっちでめっちゃ美味しそうだ。

フツーのパン屋さんよりも遥かに美味しそうだ…。

(今回は石窯パンばかり購入して、ベーグル1個だけしか買ってないけれど…)





荷物をひいていたせいか、

すぐにお店のおっかさんに「遠くからいらしたの?」と聞かれた。

とてもとてもとてもフレンドリーなお店のかたがたで、

友達の紹介でこの店に来てみたことを話し、

自分がどこに住んでいるかを話したらすぐに店長さんを呼んで来てくださった。


…恐縮!



実はこのあと、今日の焼きをもう終えたばかりの石窯をじっくり見学させていただき

パンについてあれこれ話してくれた。


富ヶ谷の某店をとてもリスペクトしていて、

あそこのパンを憧れ、目指しているんだそう。

きらきらと熱く語ってくれる姿に、私は胸を打たれた。

焼き上がりの栗の渋皮煮入りカンパーニュが並べられたときの

その美しさにめまいを覚えそうになった。

もうひとつリスペクトしているフランスのポワラーヌのパンへの

憧れがカタチとなった「D」の文字の入ったパンたち。

…この店のパンたちは、もう食べる前から私を虜にしていた。


…でも、そのときの石窯やパンたちを画像におさめることはしなかった。

それは無粋なことのように、そのときは思われたから





テラスで買ったパンたちをコーヒーとともにいただいた。





どのパンも、少しツンとした酸味のあとに、ゆっくりと旨味が広がって行く。

ライ麦のサンドイッチには、ルッコラとハムとチーズ。

最初は具自体の組み合わせの美味しさに感心していた(没頭していた)けれど

次第に、どんどん生地の酸味と旨味が主張して来て、

後味はチーズをも勝るコクの強さに驚かされた!





これはこの日の夜に撮ったものだけど

栗の渋皮煮のカンパーニュは圧巻!!!

いったいどれだけ入っているのか数えきれない栗の渋皮煮。

まるまるとした栗をふんだんに抱え込み、

純粋に栗の甘さがいかされた渋皮煮。

しっかり焼かれているのに、なるほど焦げ臭い…とは違う、香りの良さ!



「店長が新聞でコラムを連載していたんですけどね、最終回が今朝だったんですよ」

と、おっかさんがテラス席の私に新聞を持って来てくださった。


モンゴルでの生活のこと。

モンゴルで羊を一匹さばいたときの、恐怖と欲望と感謝の念。

命を奪うからこそ、食の享受を受けることへの感謝を忘れないこと

だから、小麦に対して失礼のないような、いいパンを焼くことへの決意。

そのようなコラムを読み、なんだか泣けて来た。


さっき、窯の前で店長がお話してくださった

「長い休みの後や、朝一番の火を入れた最初のパンは緊張する」という話。

失敗したらパンたちに申し訳ないって

そのセリフがこのコラムとリンクして、私までなんだか感謝を覚えた。


この店の作る美味しいパンへの感謝。

お店の方の心づくしに感謝。

出会いに感謝…。

パンにも、コーヒーにも、水にも感謝したくなった。


テラス席からはおっかさんが接客する姿が見える。

ひとりひとりとゆっくり会話をしながら、パンを売る。

その姿をみて、「私の好きなパン屋像」が目の前に具現化しているよ

そう、胸が熱くなっていた。



もう、広島はここ一軒で十分。

そう思い、そのままその足で広島駅へ向かった。





ここまでの道のり




vol.2へつづく*


2007.9.5〜9