88.8月長野信州パンドライブ





8月中旬。

どんより曇り雨雲の関東地方を飛び出し、めざすは長野県!

レンタカーを借りて懸念だった長野パンツアーを決行!


しかしちょっとフツーのパンツアーとは違うのは

同行者がパン好きではなく、別ジャンル専門ということ(笑)。

というわけで、同行者の行きたい店と私の行きたい店をうまく折衷させながら

回るコースが決定した。


ひとくちに長野といっても、長野は北海道の次くらいに広い県。

私は今回、諏訪エリア(あわよくば松本)だけをエントリーしていたのだけど、

まさか同行者が上田もエントリーしたので

当然あのパン屋もリストに追加(笑)。

そんなこんなで、無駄になるとはわかりつつも(笑)

いくつか候補をピックアップしつつ準備はちゃくちゃくと


おおまかなルートはこんな感じだ。



首都圏上田市松本経由して塩尻諏訪市岡谷市(なぜか再び北上して)長野市。



どう考えても一日では無理でしょう(笑)。

どこまでいけるかわからないけれど、

今回、どうしても会いたい人もいる、それが目的の旅。

ぎりぎりまでがんばってみよーー!



*過去の長野県パン旅はこちら*


2004年7月上田

2005年9月信州



上田に到着したのは11時過ぎ。

道中、高速道路では何度か霧やら小雨やらにはばまれ、

「まだ酒を飲まないうちに少しでも戦力になれば」と、

私も少し運転させてもらったが、同行者のドライビングテクニックの前では、

なんだかおこちゃまのろのろ運転、これじゃいつ着くことやら(笑)


もう、完全に運転任せちゃっていいですね?

じゃ、がまんせずに飲みまーーす(違)。







上田といえば! ルヴァン信州上田店に到着!!!


ぺかーとお天気、気温もぐんぐん上昇、

やっぱりあたしってば晴れ女なのよねぇ〜(自画自賛)




同行者はここで私を降ろし、自分の目的の店へ向かう。

つまりルヴァンでは一人ランチなのである。

目的が同じなのは場所だけ、店は別。

なんという合理的な時間と胃袋ペースの配分かと(笑)





3年ぶりの上田ルヴァン…。

前に訪れた時は、まだオープンしたてで2階のカフェもなかったし、

レストランもできていなかった。





パンの売り場スペースは変わりない。

ああ、今回こうしてまた再訪できるなんて…私には嬉しい誤算だった。





パンをいくつかお取置きしてもらいつつ、

私は奥のレストランへ。





LEVAIN TABLE(ルヴァン・ターブル)。

ルヴァンのパンをいただきながら、

野菜を中心とした料理とお酒を楽しめるレストラン。

いつかディナーに来てみたいと思っていたけれど、

ランチでも十分にそのエスプリを楽しめる。





奥のテーブル席はヨーロッパの田舎風の素朴なレストランという感じだけど

小さな日本庭園が眺められたり、

入り口の横の障子からは間接照明が温かく色を灯し

うちわがテーブルに置かれ、

どこか風鈴の音色が似合いそうな

木と土の温もりがする日本らしい隠れ家…。





箸置き…いや、フォークレストはパンのかたち。





最初に出されたのはカンパーニュ。

しっとり、ネチッと歯にくっついてくるような粘り気が

いかにもルヴァンらしい。ああ、ルヴァンだなって。





お惣菜3点盛りは、麦や豆やひじきのタブレ、かぼちゃとチーズのサラダ、

そしてイタリア風オムレツと、サラダ(地産の葉野菜って感じ)。

どれも味付けは濃過ぎず、素朴な味わい。

からだにいいものをとっているという感覚はもちろんだけど

ここだけで終わらずに「これならおうちでも生かせそう」と

次につながる感じのお料理って大好きなんだ。





メインはフリットやパスタも選べたのだけど、

あえて今後のルートも考慮して(笑)、スープにしてみた。

スープといっても、これはボリュームのある一品。


夏野菜のピストゥーは、たっぷりの野菜と豆を煮込んで仕上げにパルメザンを

ふりかけたもの。少しバジルの香りがする、私の大好きなスープ。

ほんっとうに野菜の出汁が染み出て美味しい…!

毎日これを食べたい。毎日パンと一緒にいただきたい。

これを日々の食事としている地方の人々の暮らしをうらやましくすら思えた。





もうおなかいっぱいだったけれど、

「残ったらお持ち帰りクダサイ、デザートがわりにどうぞ」と

差し出してくれた、ルヴァンといえばのメランジェ…!

実はもう自分用に買っていたのだけど、

これならあのパンをいますぐかじりつかなくて済むわ(笑)


私は富ヶ谷のルヴァンをよく利用するけれど

富ヶ谷にくらべれば不思議と都会的で上品(逆説的だけど)、

ブドウの甘みがじゅわっとあふれでる。

こちらのメランジェも実に美味しい…。



ルヴァンターブル。

いつかまた、ディナーできてみたい。

そう、冬の寒くなったころに、

心もカラダもあたためてくれるような

そんなお料理をいただいてみたくなる。







連れが戻ってくるのにまだまだ時間が残っているので

もう少しルヴァンを堪能させてもらおうか。

そう、もうひとつのルヴァンの楽しみ方を


初めて足を踏み入れる、二階のカフェ。

カフェというか、休憩所的な雰囲気で、履物を脱いで座敷きにあがるのだが





わぁ…!

なつやすみ…!


…ってとっさに思った私だった(笑)。





前回、ルヴァンと一緒にお向かいのお蕎麦屋さん(おお西さん)に

おじゃましたときに、屋根裏にもあがらせていただいたが

そのときのように、ハリがたくさん出た木造家屋。

時の流れを深く刻み込んだ木のぬくもり、

そして畳…!





アイスコーヒーには、おしぼりと無花果のパンが添えられていた。





誰もいないのをいいことに、私は足を子供みたいにのばして、

扇風機を一人占めしてくつろぎはじめてしまった。

あぁ…夏休み…。

この時間がずーっと続けばいいのに





購入したパンの一部、

もちろん大好きなルヴァンのクロワッサン。

ぎゅっと詰まったふくらまない生地は

最初はもそっと無味に鈍く、

しかしじんわりじんわりとその旨味に気付かされる。驚かされる。

ゆっくりゆっくり、おいしさのスロースターター。

一度この粉の力強さを味わったなら、もうなんだか戻って来られないような





私が上田ルヴァンで一番好きなのはなんといってもスコーンだ。

たぶん、日本中で一番好きなのが上田のスコーン。

時々、富ヶ谷でも「上田のです」とおいてあることがあった。

何が違うかって…うまく説明できない。

色だけでも十分に説得力があるように思うけれど

あまり砕かれていない胡桃の乱暴なほどの粗野なコクと

レーズンの甘酸っぱさ、そして、砂糖やバターでは説明できない、その独特の甘さ。

なぜだろう、こればかりは東京でも、他の場所でも

味わえない、出会えない気がする、ここだけの味





窓に腰かけ、外を眺める。

贅沢なほどに長く感じられたその時間、

ぼんやりと、古き良き日本の夏を、ひとりじめしていた。


ほどなくしてお腹を満たした連れが迎えに来た。

また来られる日を心待ちにしながら上田を後にした。






けっこう上田で時間をとってしまったので

予定が押し気味!

次に予定していた塩原(あわよくば松本)は通り過ぎ、

上田から高速に乗り、一気に諏訪までやってきた。


さぁ、パン好きの私の本領発揮?!(笑)





諏訪の1軒目は、諏訪湖ICから車で5分くらい、

小さな山をバックにした立地にあるパン屋さん、こころ屋さん。

カフェも併設したこちらのお店は、

感じのよいご夫婦が営んでいる。





ちょうどお嬢ちゃんが稽古から帰って来たところで

お客さんである私たちにも挨拶してくれた。

なんか…こういうところで育つお子さんってうらやましくなるなぁ〜。





パンはどれもやさしい白めの焼き色。

評判の食パンをお取置きしておいたのだけど、

この食パンはふんわかとやわらかく、それでいてコシもあり、甘みが強い。

他のパンもそうだけど、「ハイジの白パン」的な、

口の中でくちゅくちゅ噛み締めてころがして、

甘みがじんわりくるようなやさしい味わい。

実はこういう食パンって、典型的なナマ食向け!

トーストもいいけれど、ナマでむちゅむちゅ噛み締めるのが絶対おすすめ!


これを厚切りにして作ったフレンチトーストは意外と甘さ控えめだった。

人気商品だそう。





なんかすごい構図だけど(笑)

今回お世話になったクルマとベーグルをチェキ。

このベーグルは軟らかめで同様にやさしい穏やかな味わい。





個人的にお気に入りは信州みるくブール。

何度も書いているけれど、これこそまさに「ハイジの白パン」で(笑)

地産の小麦に、長野産牛乳だけで練りこんだ生地。

砂糖は使って無いそうなのだけど、ふんわりとした甘みの

余韻が実に良くて、むちゅむちゅ食べ進んでしまう!

「こころ」な焼き印につい、ほほもゆるんでしまったよ。






お次は、以前友達におすそわけしてもらって食べたことのある

ブーランジェリーTomoさん。

その時の美味しさが印象的で、期待しながら入店してみると





ほんっとにその期待を上回る素敵なパンたち!

どうしてこんな場所に(というと失礼だけど)、こんなにおしゃれで手の込んだ、

高い技術を感じさせるような店があるんだろうーーっとびっくりしてしまった。

種類も豊富、使っている素材も多岐に渡っていると思う。


東京で評価の高い数々のパン屋さんにも負けず劣らず、

十分中央でも評価されそうな、なのにこの場所で

信州らしさでいえば他に魅力的なパン屋さんが多い長野だけど、

都会的な美しく美味しいパンを求めるなら、きっとここに違いない。





というわけで、延々迷った末に(ほんっとにすぐに決められず、イイ意味で迷った!)手にしたパンたち。

レモンチキンのデニッシュと、モッツァレラとベーコンの入ったパン。

このフォカッチャのような生地にチーズとベーコンの入ったパンが

ものすごーーーく美味しかった! 散らされたローズマリーの芳香に加え、

中にもなにかフレッシュハーブが具として入り込み、

熱々にチーズを溶かして食べたらもうひとつのお料理のごとく

「美味しいものを知っている人の作るパン」。そう思わされる。

(後述のレモンチキンも同様…)





パン好きにはたまらないハード系もばっちりと(笑)。

クープが鋭いノアレザンに、

いろんな種類のフルーツがミックスで入ったパン。





店頭で粉を飛ばしながらかじりつくのは低温長時間発酵のバケット。

ガリッとひとかじり……

…おっいしぃーー!!

甘みが後発でじわじわくるスルメタイプ。

ということは、きっと数あったリュスティック系も美味なりね?





あまりに種類が豊富で延々迷った挙げ句に選んだのは

レモンチキンのデニッシュ。

これ、ものすごく美味しい…!!!

ジューシーで肉汁が滴るレモンチキンとお野菜、

それをデニッシュで包み込んでパン粉を振り掛けているのだけど

香ばしさも、肉の旨味も、デニッシュのバターのこってりした甘みも

すべてひっくるめて立派なひとつのお料理

あっという間に食べ切ってしまった。

わぁん、これは途中で止めるの無理!





そういえば、今回3軒ともクロワッサンを買ったのだけど

ルヴァンのザクザクみっちり系も大好きだけど

こういう王道のクロワッサンも大好き。

たっぷりのバターがさくさくはらはらに姿を変えた、

はかない食感のクロワッサンも好き。


はぁ…ほんっと美味しかったTomoさんのパン。


*余談*

ふと、あちこち地方のパン屋さんにいくと

自分の中で「いいなぁ」と思う店にふた通りあるなぁと思った。

「東京っぽくて良い」という店と、

「東京には絶対ないから良い」という店と。

この感じ方が失礼にあたらないか不安だけど、

この地元のパン好きさんが東京に来たとしても

「なんだ、うちの地元の○○パン屋さんも負けてないもん!」って

誇りを持てるような店が全国各地にたくさんあるといいなぁと

ふと思った訳で…。







さて、お次はクルマを諏訪湖の北、岡谷市まで走らせて

この岡谷に来たのは、唯一無二の目的があったのだけど、

胃袋タイミング的には、今すぐしっかり食べたら後が楽な予感、

先に、本日唯一の折衷メニュー(?)を食べにいくことに。

(しかしあとでこの順序を悔やむことに…!)





ぐぐーんと峠をのぼり、かなり標高の高いところまでのぼったところにある、

ドライブイン的な目立つ店鋪。

親ゆずりの味一番というラーメン屋さんである。





店の裏にはテラス席があり、オープンエアでラーメンが食べられるという!

ここから眺める諏訪湖の絶景よ…!

すごい…! ここは昼もいいけど、夜は夜で夜景もキレイなんだそうな。





なんとかこれまで「いつ運転を変わってもいいように」と

飲むのを我慢していたが、んーーーーようやく解禁!(笑)

ぐびぐびぐーーーぷっはーん! うっまーーい!

景色も美味しい! 空気も美味しい! なによりビールが美味しい!





ラーメンは、店名のとおり、先代の味を息子さんが受け継いでいるそうで、

1965年(私が生まれる前だわー)からスープベース注ぎ足し続けているんだそう。

峠のラーメン屋さんらしく、山菜、きのこがふんだんに使われている。


定番の「峠ラーメン」は、出汁がきいた醤油ベースに

山菜、きのこに、ニンニク、それに青のり入り!

ちょっと薄めのふきのとう入り「塩嶺ラーメン」に比べて、

味がはっきりしていて美味しい。

ぴりぴり辛くて、ニンニクけっこう香ります。


さて…ようやく次に訪れるのは…





住宅街の中にある、ほんとにフツーのお宅。

そのお庭には、かわいらしい手作りの工房と、看板が


そう、知る人ぞ知る、通販ベーグル専門のあーちゃんのベーグル屋さん


実は前にもDIARYで書いたが(DIARY2005年10月18日参照)、

彼女のことを知ったのはかれこれ7年くらい前、

光の線が結んだ、不思議なご縁。

共通の知人がたくさんいるのに、お互い何をしているのか知っているのに、

お互いの味の好みを熟知しているのに、

…そして間違いなくいろんな場所ですれ違っているのに。

近くて遠い、遠くて近い、深い奇妙なご縁。


いつもうちのHPを見てくれて、

私も彼女の現在、これからのことをとても気になっていて

お互い良い刺激を与えていた(と思ってます)

ようやく、ようやく、満を持して会う機会がきた…!





お父上が作ったという看板。

わぁん、、、ほんとにナマでこの看板を見る日が来たんです!

もうすでに感無量。変な緊張感

でも、まさかと思うけど、予定より到着が遅れたから出かけちゃっていたら



誰もいない工房、しかしそばにお父上らしき人がいらっしゃった。

「たったさっきでかけてしまったんですよねー」

ええええええーーーー、、、、

ま、まじですか、、、、

その場にへなへなと座り込んでしまいそうになった。





お代と引き換えにベーグルを受取り、

もしやふともどってきたりしないかと、未練がましく、

駐車場でベーグルをクルマの中でかじっていることにした。

同行者は、私のあまりの落胆ぶりに

「そんなに会いたかったの?」と驚いていた。





未練がましく、看板とベーグルをチェキ(笑)。

ああ、、、食べるのはこれが3度目のあーちゃんベーグル。

つやっつやの表面に、強烈なヒキ。

そうそう、プレーン一本勝負なのだけど、

じわじわと「粉」の甘みが湧いてくる、余韻のあるベーグル。

…美味しいよーー美味しいよーーー。

本人を目の前にして、それをどんなに伝えたかったか。

ああ、ほんっとに残念すぎる



いいかげんそろそろ行こうか、というときに

同じ駐車場に、女性がクルマを止めて家の中に入って行った。

さすがに年代が違うので本人じゃ無いが(彼女は私と同じ歳のはずだし)、

なんと、その方があとから駐車場に戻って来た。


「もしかして、mi_waさんですか? 私、母です」


わぁんーーー! お母さまですか!

お母上から、ぎりぎりまで待っていてくれたけど出かけなければならず、

いかに残念がっていたかを伝え聞いた。

そして、たくされたモノを受取り、しばし御両親とお話をさせてもらった。


本人と会えなかったけれど、

なんだか私は胸が一杯で、

風が少し強くて、

空気が少し冷たくて、

夕日がまぶしくて、


泣きそうになっていた。





絶対また来ます。

夕日の駐車場に誓って、ご両親に別れをいって出発した。









時間的にもう長野は諦め(いや、もともと無謀すぎ(笑))

同行者のリストにある塩尻の某店にて最後の夕食。

私は胃袋的にビールとつまみのみ(笑)。


そして、まだ名残惜しいままに、東京を目指してクルマは出発した。

途中、忘れてはならない、立ち寄り温泉。

バイブルはもちろんわれらの癒しのアイドル郡司さん♪わかる人にはわかる)





山梨は甲府で一度高速を降り、

実に渋ーーい共同浴場で締めくくり。


期待通りの期待以上の楽しい長野ドライブ、

ほんとにありがとう。

一部、叶わなかった計画もあるけど

いや、かなりこなした方だと思うよ!

上出来よ、上出来よ?!


お風呂上がり、私はもちろん、缶ビールも忘れずに!(笑)

なんせ15時間近く、ずっと喋り倒して喉がからっからなんですからね!



2007.8.18