6-1.博多グルメ私的満喫と業務執行の両立に関する報告書 〜福岡出張レポ・前編〜




念願の福岡出張をものにした。


福岡の仕事の依頼が来た際、

一度は暗礁に乗り上げたものの執念(?)でゲット、

2泊3日の福岡へGO!

PRI.mi_wa初の出張レポ?)


福岡には1年くらい前にグルメ旅に来たときに、

さんざっぱらおいしいものめぐりをした。

屋台はしご、水炊き、ラーメン、そして、パン。

その美しい(?)思い出を胸に私は1年間過ごしてきたといっても過言ではない(笑)。


出張に際し、再度うまいものリサーチに力が入る。

パンはもちろん(ESSAYで福岡パン篇を参照のこと)、

それ以外の「福岡うまいもん」もしっかり抑えておかねば!

あー忙し忙し(仕事は?!)。



***



朝一番の飛行機で福岡へ。

前夜は終電まで仕事、そこから仕度をしたため、

結局1時間しか睡眠時間をとれなかった。

が、飛行機でもあまり眠る暇がなかった

(機内サービスで一度目が覚めてしまうのだ★)


到着後、本当は行ってみたいパン屋さんがあったのだが、

バスでのアクセスは難しく、

レンタカーを借りようにも徹夜明けの身ゆえリスク回避!

とりあえず天神まで出向いてみる。

明け方に食べたのは冷凍庫に残っていた

コンビニおにぎり(笑)1個なので激しい空腹と疲労でへろへろ、

とりあえず勝手を知るイムズのジェラールミュロで

サンドイッチをゲットし、血糖値を上げておく。


とりあえず飢えをしのいでおいたものの…。

パン屋さんを2件ほど行き、ちゃんとした食事をしないまま時間が過ぎていく。

(こういうときの私って内心すごく焦っている(笑))


パン屋めぐりは不思議なもので、すぐに空腹になってしまう。

パンだけ食べてもそのほかの栄養素が欠乏しているから

栄養不足が空腹中枢を刺激するのだ。

「チャント メシ クエー」と。

それに徹夜明けの体でぶっ続けで歩くものだからへろへろ。




そんなときにたまたま出会ったのがこの珈琲美美だった。

たまたま通りかかった時、焙煎珈琲のいい香りが鼻腔をくすぐったのだ。

福岡のお店情報をあらかたリサーチしている間に名前は目にしていた。

リサーチをしながら名前だけは頭にインプットしておけば、

たとえ見知らぬ街でも、たまたま通りすがったときに

「あ、この店聞いたことがあるな。入ってみよう」というきっかけになるのだ。


でも、きっとそんなリサーチをしなかったとしても、

その店の名前を漠然と覚えていなかったとしても、この店に出会った気がする。

この偶然の出会いは、今回の福岡旅行(もとい福岡出張)で

一番の収穫だった気がしてならないからだ。


扉一枚向こう側では、表の国体通りの雑踏とは裏腹の、

純粋に珈琲を楽しむための静かな空間が待っていた。

黒く艶めいた珈琲豆の色に調和した木造の店内は、

いい具合に年月が染み込んでいる。


カウンターに腰掛け、氷無しのアイスコーヒー「マザグラン」をオーダー。

マスターは帆布のようなざっくりとした生地の白い服に身を包み、

寡黙に豆を選びはじめる。


私は食い入るようにマスターの仕事を見つめてしまった。

ひとつのアイスコーヒーを入れるだけなのに、

なんと数多くのステップを踏むのだろう!

豆を選び、豆を挽く。一滴一滴静かにドリップする。

カクテルシェーカーに砂糖2杯と抽出した珈琲を注ぎ、

大きな氷の固まりにシェーカーをあて、回転させて冷やす。

氷は珈琲の熱でみるみる溶けて、シェーカー型の穴を広げて行く。

そうして冷やされた珈琲は、やはり冷やされたグラスに注がれる。

仕上げはベールのように濃厚なミルクを注ぐ。




さっきまで熱湯であったはずのコーヒーは

舌を刺激しない程度に冷えている。

その味わいはまさにアイリッシュコーヒー。

ほのかにラム酒の香りがする。

…なんて深い香りなのだろう…。

こんなに香り高いアイスコーヒーは初めてだ。


一杯の珈琲で、先ほどまでの疲れが癒され、

興奮のあまりに徹夜明けの惚けた脳は覚醒された。


自分はパンを求めて福岡に来た、なる話を自己紹介がてら話す私。

図々しくも博多のおすすめのお寿司屋さんまで教えてもらってしまった。

一人で来る旅先で、こういう会話が出来るのは何よりも土産になる。

見知らぬ土地で心の寄り処的なものができた気になる。

この短い滞在中で、また私はここに立ち寄ることになる。


***


店を出て、目の前の警固神社で行われている

「九州うまいもの試食会」に顔を出してみた。

「美美」の奥様に教えて頂いたのだ。

ローカル雑誌主催のイベントなので、

おそらく地元の人しか知らない小さな頒布会のようなものだ。





東京でも「九州展」みたいなものはよく開催されるが、

そういうメジャーな店ばかりが集まるものではなく、

本当に地元の人しか知らないような選りすぐりの銘品が集められ、

試食後にベスト3を投票する、というなんとも美味しい会である。


どれもこれも甲乙つけがたい美味揃いだったが、私が選んだ3つはこれ。


  
 


パンしか食わないのにご飯のお供を選ぶ私だった(笑)。


***


…いちおう、今回は「出張」である。

しかし「移動のため」とかなんとか理由をつけて朝から福岡インした私。

本日も一応「仕事」があるのだが、ものの30分で終わらせてしまった。

会社の連中にはこのHPは絶対知られちゃいかんなぁ(笑)。

多少の良心は痛むものの、薄給の恨み、ここで晴らさせてもらうべし(笑)。


一度ホテルをチェックインしてから再度外へ飛び出す。

ホテルのすぐそばに「テムジン餃子」を発見したからだ。

こちらではメジャーな餃子のチェーン店の大本山(?)。

博多の餃子を最初に経験するのなら、

マニア向けなレア店よりも、かえってこういう大衆さが良いかと思って。




17時の開店と同時に飛び込む私。

んもう、腹ぺこなのだ。なにせ昼はパンしか食べてないから(笑)。

まずはキーンと冷えたビールをぐびぐびぃっと飲み干す。

ぷはーー! 至福♪




パリパリな鉄鍋餃子を想像していたものの、くにゅっと柔らかいものだった。

妙に肉が生臭くてニンニク臭〜い種の味は実にジャンキー。

かえってこういう方が、ある日突然「テムジン食いてー」と思わせる味かも。

地元の人には「懐かしい味」であり、

福岡出張のオヤジさんたちには「また食べてみたい味」なのかもな。

これはこれで美味しかった。

でも今度は「パリパリ」な餃子を食べてみたいと心に決める私であった。


***


空腹は収まった。あとは2度目の夕食のためにも歩いてお腹をこなそう。

「美美」のマスターに教えてもらった舞鶴のお寿司屋さんに行ってみようと思う。


出張の多い上司に言わせると、

旅先でうまいものを食べさせてくれた店に、

あるいはタクシーの運ちゃんに

「いい店知らない?」と声をかけて情報収集した店へ行くのは、

実に「オヤジ的」な飲み方だそうだ。

どーせ私はオヤジギャルですよーだ。

…ギャルというのも年齢的に厳しいが(笑))


 


春吉橋の向こうに見えるキャナルシティ。

取りあえず覗いてみようかと歩き出す。

博多名物、中洲の屋台が開店準備を始めている。




キャナルシティは、立ち止まることなくほぼ素通り。

食い気に走り過ぎている私は、

ありふれた雑貨屋ごときでは足を止められない(笑)。

そうそう、ここには東京ドームシティの「ムーミンベーカリー」の支店があった。

雑貨コーナーにはお馴染みのニョロニョロトングはあったけれど、

肝心のベーカリーはなかったぞ? カフェだけなのかな。


中洲のヤバい通りを抜け、ふらふらとリバレインを素通り、

さらに中洲の先端まで歩き、そこから西へ…。

延々と歩き続けた。しかし…どうも気分が「寿司」になっていない。

道産子の私は、どうも地元以外で「寿司」という感覚にピンとこないらしい。

いや、それ以上に、炭水化物以外のものが食べたかったのだ。

パン好きの宿命だ…。年から年中炭水化物過多なので(笑)。


せっかく教えてくれた舞鶴の寿司屋の店先まで辿り着いたのに、

とても雰囲気のよさそう店構えに味のある大将の姿も見えたのに、

…どうしても「寿司」じゃなかったんだなぁ…今の私には。

(どのみち予約しないとダメだったのだろうけれど…)

結局、天神までとぼとぼ戻ってきてしまった。

さすがにずっと歩きづめなので疲労がピーク。

お腹も空いてきた…。どこかに座りたい…。

そして…。




結局同じところに戻ってきている私(笑)。

時計をみると、ノンストップで2時間歩いていたことになる。ひゃー。


…心の叫びに耳を澄ませてみる。

もう、どこでもいいよ、「屋台でおでんが食べたいよぉー!」

おぉ、そうか、今の私は「寿司」ではなく「おでん」が食べたかったのか。


1年前に博多に来た時は、警固神社辺りの屋台と、天神中央公園の屋台をハシゴした。

明太子の卵焼き、うまかったなー。

テーブルコショーのたっぷりかかったラーメン、うまかったなー。

ニンニクの効いたモツ鍋、うまかったなー。


というわけで、中洲の屋台で、半ばキャバレーのポン引きに合うオヤジのごとく、

呼び込みに安易にひっかかり適当な店で腰を落ち着かせる。

本音を言えば、若い元ヤン的な兄ちゃんの屋台よりは、

泉谷しげるのような酒癖悪そうな風貌のオヤジがやっている店の方がよかったのだが(笑)。




おでんとビール。そして枝豆。

そう、これが今の私が食べたかったもの!

疲労のせいかもしれない。

何を血迷ったかラーメンに入れるべき紅ショウガを

たっぷりおでんに投入してしまった私(笑)。

どう考えても大ぼけな私の失態に、屋台の兄ちゃんは

「それが今の流行りの食い方ですよー」と調子のいいことを言ってナイスフォロー?

さすがにおかわりのおでんを頼む時には汁を変えてもらった…。


ぬるく強めの風が吹く中洲の夜。

会社帰りのおじさんも、観光客っぽい老夫婦も、学生風カップルも、

みんな小さな灯りの中で博多の夜を楽しんでいる。

博多の夜にはこんな小さな灯りが無数にあるのだろうな。


中洲ゆえか、観光向けか、支払いは意外と高くついてしまった。

「お姉さん、紅ショーガおでん、うまかったでしょ、また寄ってよ!」

「ぎゃはは、めちゃくちゃビミョーだから! 絶対お客に勧めない方がいいよー」

そんな捨て台詞を投げかけながら店を後にする。


台風が近づく博多の夜風に、むき出しの素肌を気持ちよくさらけだす。

ホテルまでの足取りは一日の始まりのように軽やかだ。


明日は(いちおう)仕事。

まだ2日もある福岡滞在、美味しい出会いは後編に続く。


〜後編へ〜


〜福岡パン篇はこちら〜