54-2.秋を愛でて萌ゆる関西ショートステイ 〜オータムヌードでGAMA#3〜




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「次にGAMAに来るのは来年の夏かな」

そう思って和歌山を後にしたのは今年の7月の灼熱の時。

一番忘れられない夏の日を過ごしてからまだ少ししかたっていないのに

どうしても秋のGAMAを訪れたかった。

夏だけではないGAMAに会いたかったのか

冬眠(笑)に入る前のGAMAパンを食べておきたかったのか。


いつだってGAMAに向かう道のりは

楽しいピクニック気分なんかじゃない、

それこそ「お遍路さん」なのだ。

灼熱の太陽の下であったり、超ローテンション状態であったり

そして今日の私も、GAMAに行かずにはいられなかった。


ほんとうはこの日は行ける見込みも五分五分だった。

…でも、来れることになってしまった。

そのことがどういう理由であれ、

理屈抜きで、GAMAが私を引き寄せているんだなぁ…と後からわかる。

私がGAMAを必要な時だったんだなぁ…とそのときわかる。

それはあくまで結果論。


そんな秋の和歌山での奇蹟のような一日、そのごく一部分。




朝、大阪のホテルを出た時はいい天気だった。

「これはGAMA日和だなぁ」

夕べとことん飲んだ酒が少し残ってる。

チェックアウトぎりぎりまで眠り、

昨日hで買ったパンを少し齧りホテルを後にした。


そのまま難波駅まで向かい、

南海電車のホームで551の豚まんを買い(2個入り)

ホームで電車を待ちながらかぶりつく。

1個以上は食べきれない。残りはいつ食べようか?

カバンの中に詰め込んで電車に乗ること60分。

目が覚めた時にはもう手前の駅だった。





大阪の市街地と和歌山の山奥では気温が違う、

さらに天気まで違う!!

どんよりとしたドブねずみ色の空。


ちょ、ちょっと小粒の雨が降ってますけどぉ?!

傘持って来てないし、…駅の周りにも傘売ってそうな店一軒もないし?!

大判のストールを持って来たのは助かった

けれど、雨はたちまち土砂降りに!!

途中まで歩いたけれど限界、とりあえず民家の軒下に非難!!




画像では見えないが、土砂降りである)

せっかくGAMAさんの電話番号も登録してあったのに

携帯は故障中で誰のヘルプも求められない。

村びと(笑)も歩いていないし…絶体絶命?!

GAMAさんには「行けるかもしれないし行けないかもしれない」と

言ってあったしほんとにこのまま引き返さなきゃならないかと思った。


でも山の天気は気まぐれ、15分くらいしたら小雨になってきた。

これなら歩ける! 歩いてやるーー!





夏とはまるで風景が違っていた。

思っていた以上に「柿」だらけだった、さすが和歌山!(笑)

夏は路上に野菜の無人直売があったけれど

歩けば柿に当たるってな具合に柿がいたるところで直売されていた。

でも人っこ一人会うことはないのがすごい(笑)

こんなにたくさん入って、どれも100円、さすが和歌山!(笑)





いつもの坂の上の売店で、これも三度目になるけどビールを購入。

今日は「これが飲まずにゃいられねぇ」な気分だったので

今日は250ml缶だよ(笑)いつもより大きいよ(笑)





思い描いた「紅葉」ってやつはこの長い長い道のりの中ではほとんどなく

あるのは「枯れ木」と「柿」(笑)。

カ行がやたら多い秋の橋本である(笑)。





またも柿! ほんとに柿しかないなぁ。

初めは、荷物になるから帰りにここで買おうかなと思ったが

この調子ならこの先にもきっと柿はいくらでも転がっているはずだ(笑)





お! 甘いみかん?! みかんもあるのか。




…と思ったらやっぱり干し柿しか売っていなかった(笑)

ほんとに柿一色だなーー(笑)





ようやく子安地蔵まで到着(だいたいここが1/3くらいか)

子安地蔵の裏の坂を下れば「山田」になるのだが

うぁ! あの鬱蒼とした緑が全部刈られてる! 枯れてる!

これが秋の山田か…。まるで違う風景だよ!!


普通、こういうのを見るとメランコリックになりそうだが

なんだかこの季節の変化っぷりが面白くて(笑)元気になってきてしまう。

癒しは必ずしも緑色とか青色とかではないらしいぞ(笑)。





でも画像的には「夏」にくらべると格段に分が悪く(笑)

柿しか被写体がないのだ。

しゃーないなぁ、柿でも撮るか、柿!





もいっちょ、柿!

さっきの雨の水滴が付いて光っている。





さらにドアップ、柿!!(笑)


まったくどうでもいい余談だけど

柿ってものすごく生命力が強いらしく、雑木・雑草のようにどこでも生えるらしい。

突然自分の家の庭に生えて来たってことはよく聞くし、

どう考えても「人の手で植えてないでしょ」みたいな場所に

生えている柿を見ると、柿ドロボーも免罪かななんて思ったり(笑)


GAMAさんちの目の前の崖の絶壁にも柿が生えているんだが

いつかあの柿をもぎとりに行くのが夢。リビタンDのCMに使えるかも(笑))




ついこの間来たばかりだからだろうか、ものすごくさくさくと進んでいく。

あぁ、たぶん今が秋だからだろうか、水を汲む必要もない、

立ち止まったらたちまち体が冷える寒さだから立ち止まれない。

あぁ、それでか(笑)。





おぉ、もうここまで来たよ、GAMAラスト看板。

心無しかこの看板も秋はなんとなく寂しげ(笑)。





ところが! ここからGAMAさんまでの一本道は紅葉ロード!

曲がったとたんに赤と黄と緑のアーチ!

脇を流れる渓流沿いにはそこだけ全く違う世界だった。





ざわざわと風に揺れ、渓流の音が絶えまない。

あぁ…やっぱりここだけが別世界だ。

ここまでの道のりになかったものが、すべてここに凝縮していた。

一歩進んでは足を止め、一歩進んでは覗き込み、

もうGAMAさんは目の前なのに、なかなか進めないの!





そうしてアフリカンアフリカンしたリズムが聞こえるところまで辿り着いた。

あら、先客がいらっしゃるのか、行列でもしているのか?





時計を見ると1時。

1時半くらいからのオープン、ってことをすっかり忘れていた。

これでも「あぁ、遅くなってしまった!」と思っていたのに

店の前では今か今かとオープンを待つ人が何人か集まりだした。





パンの焼ける匂いが漂ってくる。

いや、パンの匂いというか…もっと違う別の匂い。

あぁ、GAMAエキスな匂い!説明にならない匂いの例え(笑))

その匂いの中でぼーっと待っているのもよかったけれど

私は熊のようにのそのそと周辺を散歩した。





来た道を少し戻り、しげみに足を踏み入れ、渓流の脇に立ち、上を見上げる。

空を見上げる…というよりも木々を見上げる。絶壁を見上げる。

先ほどの大雨が緑を濡らし、じめっとした空気が立ちこめている。





ざわざわ…っと風が木々を揺らす。

空が狭い。緑が緑色を失う。心が少し不安定になる。


心が不安定なときほど、ひとりっきりになりたくなるのはなぜだろう。

「ひとりでも平気」と、自分の中の強さを試したいのかもしれない。





戻ってみるともうお客さんが中に入り始めた。

わわ、もうこんなに人が…。先越されてしまったわ。

こんなに人がここにいるのを初めて見た(笑)。

ほんとに週末は行列ができるんだなぁ…こんな山奥の山田の奥で!(笑)


mi_waさん?!」

突然声をかけられて驚いた。

よく知っている関西のパン友達がいた。

パン仲間御一行で和歌山パン屋さんめぐりをしているらしい。

ひゃーこんな山奥で会うとは思わなかったねぇ!





今日も絶好調のGAMAパンたち!!

もう季節は秋なのに、陽気テイストのがりんこパンたちが私を誘う。

「飲め飲めー」と(笑)。

あたぼーよ、もちろん飲むともさ!


「さっき大雨降ったとき『mi_waちゃん近づいてるな』ってわかったわ(笑)」

そういうGAMAねーさんとGAMAにーさん。

ぎゃははーわかってくれてる(笑)。

ビールもちゃんと用意してくれてる。

まだ3回目だけど、ちゃーんとわかってくれてる。

もちろん中条指定で!!





雨と落ち葉で荒れまくった(笑)中条に

いつものようにゴザを敷いてもらって、ここが私の定位置。

さすがの私も「水着もあるよ?(笑)」の誘いには今日は乗らないぞ(笑)。





そしてある意味融通のきかない頑固な私には

季節が変わろうともパンを食べる&ビールを飲む以外に

中条の楽しみ方を知らん!(笑)





まだ温もりが残るパンたちを、たちまち山の冷気が冷まそうとする。

わわわ、やめれー。食べさせてください、温かいうちに!!





ドライバナナとシナモンの食パン。

GAMA真骨頂のこの焼き色は(笑)

決して「焼き過ぎ」ではないの。

いや、たぶん他のパン屋なら焼き過ぎなんだろうけど(笑)。


でも、ここはGAMA。

GAMAパンはこれがなかったらGAMAパンじゃない。

だって、この黒いがりんこ部分に美味しさが集中しているんだもの。

果糖が焦げたカラメルのような甘い甘い皮…!!


中はむっちりと舌にぴとぴとと吸い付くむちむちっぷり。

…あぁ、このむっちりしとしと…!!

酸味もあるのに、この甘さは一体なんだろう。

焼きバナナでありながら酸味があるなんて!(笑)


コドモの頃の焼き芋を思い出す。

落ち葉を集めて薪をして、その中に放り込んださつま芋は、

外が真っ黒だけど黒い皮の裏側ほど、とろけてねっとり甘い…。

そうか、あれも季節は秋だった。


焼く、というのは、すごい事だと思う。

新しい香りを生み、新しい甘みを生み、新しい味を生み出す。





いつも必ず買うのがよもぎベーグル。

(お徳用パック3個入りで購入。前日でも十分すぎるほどウマー)

普通のよもぎ入のパンとは全く違うのだ。

よもぎ臭さよりもそれ以上に奥行きのある甘みというか…説明にならない「旨味」があるのだ。

GAMA出汁とかGAMAエキスって言葉でごまかしてしまえ(笑)





なんつってもこれだね! フォカッチャ!!

トマトとニンニクがガガガガ−ーっとのって、

こぼれるにんにくをすすりながら食う。

オリーブオイルが焼けてカリカリ、そしてじゅわわわ!

にんにくオイルで濃厚になった口の中をビールで洗い流す!!

うわーーん、最高っ! 秋なのに夏に逆戻りするーー!






大阪から来たパンめぐりご一向さんたちが

引き上げる時、そのまま私も乗せてもらって帰ろうと思ったが

…やっぱりまだここにいたい。まだもう少し…もう少し…

彼らを見送ってから、私はまたひとりになった。

そうして中条を引き上げ上のカフェスペースに移動した。


そういや上(カフェスペース)は初めてかも、いつも中条だったしね(笑)。

前回、水着を借りて裸になったあの夏(笑)、

今度はちゃんちゃんことマフラーを借りてぐるんぐるんに巻かれていた私(笑)。

温かい梅番茶をいただきながらあんなこと、こんなことを語り始めたら

時間の感覚がどこかへ行ってしまった。

ゆるゆるした時間は都会のそれとは違うから。

昼が短い山奥の空には、もう夕暮れ色に染まり始めていた。





だんだんテンションが変な具合に上がり始め

いろいろつまみを出して来て食べる飲む(笑)

私もちょうどいいもん持ってるんだよー、そう、今朝食べ残した豚まん!(笑)

まだ余熱が残っている石窯に豚まん入れて温め直し!

かなり放っておいたけれど、火は消えているのでああいう真っ黒けにはなりません(笑)。

1/3に分けて食べた石窯551豚まん、うまかったな(笑)






すっかりとっぷり夜である(笑)。

真っ暗になってもアフリカンアコースティックは

いつまでも暗闇の中で響き続けていた。


ちょっと扉を開けた瞬間「ハル社長」が

タッタカターーと脱走したので(笑)私は追い掛けて表にでた。

周りには光も街灯もなく、視界にはなにも写らない。

ただ陽気なリズムと、星空と、遠くでちりんちりんなるハル社長の首輪の鈴の音。


「ハルさーーーん! 戻っておいでーー」

目には見えないけど、彼が遠くで遊んでいるのが聞こえる。

ちゃんと戻る場所が彼にはある。

彼の名前を暗闇に呼び掛けることで

私は今日、ここに、自分が存在している奇妙な巡り合わせを実感していた。





ここで起こったこと、話したこと、過ごした時間の事は

ここで書くことではないけれど、今でも思い出しただけで胸が熱くなる。

ここに来る前までのいろんなぐにゃぐにゃしたことたちが

本当にどうでもいいことのように、まるで他人事のように感じられた。

私の心にはもう、GAMAさんでのひとときしか残されていなかった。


私はこの秋色の山奥で、水着にこそならなかったけど(笑)

心が裸になった。

ここ数年の間、閉ざして来た心の一部分を裸にしてきた。


そうしてむきたての卵のようなつるつる心を

GAMAに置き去りにしてきてしまったから

その後の数日間は私はまるで抜け殻のようだった。

それこそ「心ここにあらず、GAMAにありき」だ(笑)。



私がどうしてこの遠く離れた山奥のパン屋さんに

無性に惹かれて引き寄せられるのか。

パン以上に、私の中でなにか「絆」みたいなものを感じた、

あの感覚が間違いじゃなかったことを改めて確認した。


ここに尋ねてくる時の私は確かに心がよたよたへろへろしている時だったかもしれない。

だからこそ、力をもらいに、何かを確かめに行くのかも知れない。

それは自分の中にある、そしてこの山奥にある「生命力」みたいなもの。

その繊細な私たちの生命力は今、カタチは違えど「パン」に向かっている。

私は「パンに向かう今の自分」を残したい。残し続けたい。

そして、次に会う時は「新しい私」。きっと……。







夜行バスで帰るのは体力的に無謀と判断して、昨日キャンセルをした。

久々の新幹線終電で帰ることにしたわけだが

最終で帰るにはGAMAさんとこを7時半に出なきゃならない。

ぬわーー間に合わない?! やばい!!

千鳥足(笑)でよたよた難波の駅から地下鉄に乗り換え、新大阪に滑り込みセーフ。

その日のうちに東京に帰ることが出来た。


19時48分御幸辻発。

これがGAMA便 最終電車。

…自分のための備忘録に(笑)。