2日目前編:台湾朝飯と九イ分

朝の定番、台湾風豆乳スープ


窓のないホテルは朝がわかりにくい。でも1時間の時差なら普通通りに起きられる。 このホテルに宿泊するのは今日だけ。明日からは別のホテルに二泊する。とりあえず身支度をし、 ホテルのフロントに「14時には荷物を取りに来るのでそれまで預かって欲しい」とお願いした。 とくにカギをかけないで放置するのは不安がないでもないが、 「そこに置いとけばいいですよー」みたいな適当さが逆に旅の縛りがなくていいかもしれない (案の定、ホテルに荷物を引き取りに来れたのは16時頃だったのだから)。


ホテルの朝食なんて食べるわけがない。朝食を求めてさぁ、でかけよう!  今回の旅で参考にしたサイト(台北ナビという、台湾旅行者が絶対お世話になるサイト)で、 いくつかの飲食店をプリントしてきたのだが、朝ご飯用に2軒、リサーチしてきた。 そのうちの一つが、「お粥横丁」と呼ばれるお粥屋さんが集まったところ。 さて、そこにはどうやって行けばいいのか?


地図を見ながら道ばたに立っていたら、めざとくタクシーに停車されてしまう。 結局タクシーでお粥横丁まで行く。うーん、朝っぱらからタクシー使っちゃったよ、 なんか、自分の旅としては反則か?(笑)今回の旅ではタクシーに何回お世話になっただろうか!  10回くらいは乗ったかも(笑)。普段の旅なら絶対乗らないのに、 「安ければ乗る」というこの自分の身のひるがえし具合が情けない(笑)。





ナビで調べたお店は、どーも観光客向けの日本語がかかれ、カフェテリア形式でなんだかとてもつまらない。 「言葉が通じなくても入りやすい」と解説が書いてあったけど、不自由なほど旅は面白いんじゃない?  こういうときは日本語を避けたくなるのがあまのじゃくな私。 一通り横丁の店を覗いてみて、一番地元客で賑わう活気のある店で足が止まった。





どこの店も「豆漿(ジャン)」という文字が書かれている。あちこちでこの文字の看板を見かける。 これが、台湾ならではの豆乳スープ。 台湾の人の朝ご飯には、冷たい豆乳か、温かい豆乳スープが必ず飲まれるらしい。 これに揚げパンとかをずぶずぶ浸して食べるのがこっち流。 おぉ、揚げたて&焼き立ての饅頭が美味しそうだぞ!





たくさんの調理人たちが、それぞれの仕事をしながら次々とお客さんをさばいていく。 テイクアウトとイートインでは、並ぶ列が違うらしくて慣れない私はまごつくが、 イヤな顔せず伝票を一枚ぴらりとくれた。これに書いて出せ、ということか。





まったく意味が分からない! けど、とりあえず温かい豆乳スープらしきものに、 一番具が多そうなモノ(一番値段が高いもの?)と、唯一イメージが沸いたネギ入り卵焼きをオーダー。 あぁ、揚げパンを頼み損ねた!(けどもう一度列に並ぶ気にはなれず、諦めた)





豆漿は、まさに豆乳そのまんま。ところどころ湯葉状にどろりと固まっていたり、揚げパンが入っていたり、 きな粉ピーナッツみたいなものも入っていたり、薬味も全部入っている。 全部ミックスさせて温かいものを口に滑らせると、これが非常に美味しい!! もちろん、卵焼きも全くクセがなくて美味しい。





嬉しいのは、量が少なめであること。 欧米に行けば、どこもかしこもとんでもない量で料理が出てくるので一人旅には正直つらい。 でも同じアジア人。あれこれちょこちょこと食べられる楽しさをわかってるわねー(笑)、 とりあえず主食らしい主食を食べ損ねたけれど、つかみはOK!  「台湾はどこで何を食べても美味しい!」は本当かも知れない?!



水代わりにがぶがぶ飲んだマンゴージュース


これから目指す九イ分行きの直行バスは隣の駅から出る。そこまで一駅歩こう。 日傘なしではとても歩けないほどに日差しが強い!!  こっちの人も同じく日傘を挿している。こっちの人もやっぱり日焼けは気になるのだろう(テレビでもやたら日焼け止め化粧品のCMを見た)。 日傘率、めっちゃくちゃ高。ヨーロッパとかで日傘を挿している人はほとんど居ないのでとても抵抗があるが、 さすが日本とあまり変わらない台湾! 歩きやすいぞー(でも暑すぎるぞー)。





途中、ジューススタンドを発見。マンゴージュースを飲む最初のチャンス!! ミキサーにマンゴーとシロップを加えてシェイク(ココナッツも少し入れていたように見えたが)、これで70元。 日本でなら安い! …と思うが、のちのち「こっち価格」ではかなり高いんじゃないか、と思うようになる。 なんせ、タクシーの初乗り料金だからなぁ! シロップを入れているわりには、マンゴー度が高くて美味しいよぅーー! この先、私はやたらマンゴージュースを飲むことになる。果物の中でも特に大好物のマンゴー!  嫌いになるほどマンゴーを食べて帰るのも今回の旅の目的だから!(もちろんライブもね(笑))



郊外の人気観光地・九イ分(チョウフェン)でプチグルメ


たった3日間の短い旅行なので台北市内観光は全くする気がなかったが、 逆に郊外の方が魅力的なところが多そうなのだ。行きたいところだらけだけど、まずは台北からバスで東へ1時間ちょっとかかる九イ分に行こう!

この九イ分という町はかつて金鉱がありゴールドラッシュに湧いた町だとか。 一度は寂れたものの、今は「千と千尋の神隠し」のような古き良き時代の雰囲気が残されている町。





九イ分には、忠孝復興駅から直行バスが出ている。比較的簡単にバス停は見つかり、路面バスに乗り込む。 やっぱり運ちゃんは何げにいい人だった。バスのサスペンションは最悪で、バスのせい、というか道路のせい、という気もする。 それでも道中居眠りをしていた私。ふと目を覚ましたら、ぐっと郊外、山の中にいた。 台北から1時間弱の瑞芳という町は、鉄道の駅も走っており、駅前は飲食店でにぎわっていた。 ここからぐわっと大量の乗客が乗り込む。これだけの人が九イ分に向かうのだから、現地にはどれだけの混雑か、ちょっと不安。





山をぐんぐん登り、到着したのは、昔懐かしい(地震でも起きたら一発で崩れちゃいそうな)家屋が点在する風景。 …そして、ものすごい観光客だった。バスの運ちゃんが「あっちが入り口だよ」と指差す方向へ行くと、 そこがメインである土産物屋でごった返す路地だった。ぎゃー、暑苦しい!(笑)





今回、私が持って来たガイドは、行き方は書いてあったけれど、一体どこに何があるかは全く書いていないもので、 とにかく人の波に流されながら歩いた。よく写真に出てくるあの階段を見つけるまでは帰られない!(笑)





土産物屋を覗きながら、なんとなくだが台湾の名物料理や郷土料理が分かる気がした。 いくつも同じような店がしのぎを削っているからだ。 練りものの店や、魚団子の入った麺の店、一見リンゴ飴に見えるが実はミニトマト飴とか。





まずはヤシの実のストローが刺さったジュースを発見。手始めにここから攻めてみますか!





お店のお手伝いをしているのか、小学生くらいのお嬢ちゃんがカンカンと釘で穴を開け、ストローを刺してくれた。 これで50元(180円くらい?)。小さいクセにどっしり重たいヤシの実。ヤシの実そのまんまの味は、まずくはないが、正直すごく美味しいというわけでもなく(笑)、 甘くないココナッツミルクと言う感じ。やっぱりなんらかの手が加わっている方が飲みやすいかも(笑)。冷えていたのが救い。





お次は、九イ分名物のタロイモ団子を食べなきゃ! あちこちで試食を出しているので試してみたが、なんといってもぜんざいで食べてみたい! いろいろ店が軒を列ねる中、独特のリズム感の呼び込み、そして家族総出で家庭内手工業的な雰囲気でやっているお店でチャレンジ!





台湾では「もちもち」した食感を「QQ(きゅーきゅー)」と言っているらしいのだけど、 まさにこのカラフルな芋ダンゴはQQ!! たったの35元、温かいのか冷たいのかを選べる。 日本語の出来る、さわやかなお姉ちゃんがたっぷりとQQした芋ダンゴと豆、かき氷を盛ってくれた。


「芋圓」は、もちもちダンゴと豆が実にカラフルでまるで宝石のよう! ほんのり甘い汁とかき氷が入っているのだが、 豆も餅もどちらも出来たてで熱いままで入れているものだから、この氷と汁はそれを冷やすためのものって感じ。 あっという間に溶けてしまった。この「QQ」具合は、白玉粉よりももっと歯ごたえがある。味はあまりしないかも。 むしろ、小豆の甘さが一番よくする。



お土産屋ストリートをようやく通り抜け、上に登って来てみたが、一向に「写真の階段」は見つからない。 上に行けば行くほど、観光客は少なくなり、一般の人の民家が立ち並んでいた。





ようやく人込みから逃れ、一人になれて息をつく。 猛烈な日ざしを避け、軒下に逃れ一息つく。 段々とした斜面に立つ家から海を眺めると、学生の頃に18きっぷ旅をした尾道の町歩きを思い出した。 奧に一人で入り込むほど、どんどん楽しくなってくる。こういう一人歩きが好き。





海と山を眺めていると、今度は父方のふるさとの日本海の漁村を思い出す。 あちこちを旅すると、いろんなノスタルジーが増えていくんだ。





坂に飛び出すようにバルコニーがせり出している。こういうスタイルの茶屋がいくつもあり、 海を眺めながら食事が出来るらしい。どこかで私もお茶を飲みたくなってきた。




茶芸館で「癒される」を体験





少し来た道を戻ると、日本人ウケ(特に女性)しそうな、とてもセンスのいい茶芸館があった。 「九イ分茶房」という、女性オーナーのお店。姉妹店の「天空之城茶房」も、人気があるようだった。 実際に古いというよりも、古さをデザインすることで作り上げたような、クラシックなインテリアだ。 おそらくガイドにも載っているであろう雰囲気はあるけれど、思い切って入ってみる。





センスのいい茶器や茶葉たち。店の中に小川と蔦が絡まる壁があり、店主の趣味の良さが随所に感じられる。





いくつかの個室に仕切られているので、落ち着く席。私は二組分のテーブルのあるテラス側の部屋を選ばせてもらった。





入った時は、この部屋は私のみ。光が射し、レトロな扇風機の風が実に気持ちよかった。 あの暑さの中から避難してきた私には、ものすごくいい空間だった。





お茶はすごーく高い! お湯代が100元くらい(人数によって増える)、お茶っ葉は500元〜。 まだ学生さんのような若いお嬢さんが日本語で丁寧に説明してくれた。 お薦めされるままに、700元のお茶っ葉にしてみる(なんちゃら烏龍茶…なんだが、ばかだねー覚えてない(笑))。 これにタロイモ饅頭もつけてみた。





やかんに湯を沸かし、茶器にお湯を注いで温める。 茶葉を入れて少し蒸らし、一杯入れて、その一番湯は捨てる。 そうして、丁寧に入れるお茶。でも、特に厳密に時間が決まっているわけでなく、好みの濃さでいいらしい。





いい茶葉というのは、何度繰り替えしても、何度でも美味しくお茶が出るそうだ。 何杯でも楽しんでください、とのこと。でも、ひとりなのでさすがに全部は無理だろう(笑)。 残ったお茶葉はもちろん、持ち帰りができる。よーし、ゆっくり楽しみますか!





イモ饅頭は、ハイカラな洋菓子的なお味。タロイモの味はほとんどしなかったが、生地のバターの香りが美味〜。





とにかくセンスの良い空間。茶器。2杯も別のお茶を出してくれる行き届いたサービス。優しいスタッフ。 風と日陰の気持ちよさと、さっきの雑踏が嘘のような一人きりの空間。 これはまさに「癒し」だった。お茶は難しいことはわからないけれど、 お茶を楽しむその時間に「癒し」があれば、万事OKってやつだ。


私は、この空間とお茶に、十分すぎるほど癒されたわけなのだ。 「これが茶芸館の醍醐味かー」…分かった風なことを呟いてみる私である。


母への土産も見繕う。それにしても高級茶葉ってやつは高いなー。1000元もしたぞ。 でも、きっとそれだけの価値があるんだろうなぁ、私にはまだまだわからないことが多いけど(笑)。





「写真の階段」を探しがてら、またうろうろ歩く。 どんどん袋小路に入って行く感じ…。遠くの山から、盆踊りのような音楽が流れてくる。 お寺から聞こえるものなんだろうか。山の斜面に見えるあの茶色い建物のようなものは、 どうやらお墓っぽいのだが、実際はどうなのだろう。





観光客のいない、生活感の溢れる路地に迷いこむ。 生活臭があちこちから漂ってくる。時折、ものすごく異色な臭いがする。 …まさか、これが? まさか、この臭いが? 私が食べてみたいと思っている…。





ひとまず、商店街に引き返してみよう。階段はきっとあるはず!



念願の!! 「臭豆腐」モーレツ初体験!!


お土産ストリートに戻る(いったい何周目だ…)。 さっきも猛烈に臭って来た、あの臭いの物体が売られている屋台を発見、「臭豆腐」!!





近くに寄るだけで、ものすごい臭いがする! うわぁ…これはほんとにすごい。 納豆とかゴルゴンゾーラとかの比じゃないな、何かが腐りまくった臭い? 暑い時にこの臭いを嗅ぐと、吐きそうになるっていうのは分かる気がする…。お店の人、すごいなー(笑)





でもチャレンジだ、たった20元、揚げた臭豆腐には酢漬けキャベツとチリソース、少し甘い醤油タレみたいなものが かけられる。口の近くに運ぶと、ぷぉ〜んと鼻をつく。そう言えば飛行機で会ったおじさんが例えていたっけ。 …「便器」?(笑) うーん、遠からず(笑)。


しかし、食べてみると、ごくごく普通に美味しい揚げ豆腐と変わりない。にんにくが少し効いていて、チリソースや酢漬けキャベツがさっぱりさせてくれてよく合う。 あれー、ちゃんと美味しいよ!


…が、しかし!! これは食べ終わった後が凄かった。口の中にしばらく「あの臭い」が停留するのだ。 口の中は、…そうだなぁ…例えるなら、「忘れたころに取れた、歯に挟まった食べカスの、あのどーしよーもなく腐った臭い」(笑)。 歯槽のう漏のような臭い? 口臭の臭い?(笑) しばらくそれがずーーっと臭うのだ。 ふとしたはずみで「あの臭い」が口の中で復活する。まるで腹の中からも込み上げてくる感じ(笑)。 すごすぎる、この臭豆腐の「臭」パワー!!(笑)



ようやく見つけた「写真の階段」


何度も往復し、ようやく問題の階段を見つけた!! やったー!!





なるほど、千と千尋の神隠し! 夜に来たらもっと雰囲気があっただろうに! 私は見たことがないが、「非情夜市」という映画の舞台になったところらしい。 あまりにがんばって探したので、感激するというよりはむしろ「なーるほどねー」くらいにさっぱりした気持ち(笑)。





それにしても、観光客が多いので、なかなか良いショットが撮れないぜ。あ、私もか!(笑)





ようやく目的も達せたので、バスに乗り込み瑞芳へ、そしてそこから鉄道で台北を目指す。 きっぷ売り場のおじさんは、御親切にも(大きなお世話とも言う)、2分後に発車の台北行きの電車のきっぷを売ってくれた。 ぎゃー、ホームまで走れっていうのかー。走りたくないっすー(笑)。


台北まで約40分。週末の鉄道もバスも、観光客でごった返す。席には座れず、車内の廊下に座り込む。 日本じゃこんなお行儀の悪いこと、とてもじゃないができないね。





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