6.クリームパン
6.クリームパン
カスタードクリームを包み込んだパン。
…クリームパンを語るのは一言で済むけれど
自分好みのクリームパンを探し求めることほど
途方もなくて 困難で そして甘美な
旅はないのかもしれない。
でもパン好きさんならみんな知っている。
大好きなカスタードクリームを探すことは
他のなによりもパン屋さん巡りを楽しくさせてくれるということを。
そのパン屋さんが「自分の大好きなパン屋さん」のひとつに
なるかどうかを握っているということを。
*
幼いころから誰もが口にするであろうクリームパン。
私は大人になるまであまり好きではなかった。
…大人になるまで好みのクリームというものがわからなかった。
実家の近くの大手チェーンパン屋のクリームは
人工的な 奇妙に滑らかさな舌触りの
「機械の作る甘みの付いたノリ」だった。
味気なくて いたずらに厚ぼったくて
舌の水分を吸い取るほどのパサパサ生地に
甘さだけを添えるようなクリームの存在。
トラウマ…というのは大げさだけど
「クリームパンを大好きな子ども」
そんな子ども時代を過ごすことはできなかった。
*
初めて自家製クリームパンの美味しさに
目からぽろぽろウロコが落ちたのは
学生時代に通った名もなきご近所パン屋さん。
タマゴとミルクとお砂糖の三つの主役が混ざりあい
ほのかにレモンのような酸味のする新鮮なクリーム。
誰もが「なつかしい!」と言葉をもらしてしまうような
誰もが「ママの手作りの味!」と当てはめてしまうような
そんなクリームパンに出会えた。
ところどころダマが残るように
もたもたとした固まり具合
…「滑らかさ」とは対極にあるような
そんな自家製クリームを口にすると
いつも思い浮かべる光景がある。
弱火でぷつぷつと
時々ぷしゅーぷしゅーっと息継ぎをしながら
タマゴの力だけで固まろうとするクリームが
お鍋で優しく優しく炊かれているその姿を
ごく自然に思い描けるような
そんな手作りのクリーム。
…優しくクリームを包むパン生地は…
ほんのり甘みがあるくらいがいい。
薄くてたよりないくらいがいい。
クリームと馴染んでしっとりとしているくらいがいい。
クリームの重たさに負けちゃっているくらいの頼りなさがいい。
…それでも「パン」であることを
さりげなくアピールしているくらいの控えめさがいい。
*
「クリームパンを大好きな子ども」
になれなかった私の行く末は
「クリームパンを大好きなオトナ」
けれど自分好みのクリームパンを探す旅は
子ども時代へのタイムトリップのようなものかもしれない。
だって美味しいクリームパンには
なぜか「懐かしさ」がつきものだから。
お気に入りクリームパンたち
* こちらの更新は2005年で終了しております *
ベッカライダンケ@千歳船橋
画像のもの。私はこのクリームパンを目隠しで出されても
きっと言い当てる自信がある。「これはダンケのクリームパン!」と。
グローブ型の生地から濃い黄色いクリームがはみだし
力を入れなくても自ら崩れてしまうであろう、そのもろさ柔らかさ。
ほんのりとレモンのような酸味がありバニラビーンズが贅沢に効いている
極上の「タマゴ味」のクリームパン。私のダントツNo.1。
(このクリームパンを食べるオフ会を開催! 詳しくはこちら)
ブーランジェリーベー@大泉学園
ぴゅるぴゅるとした口当たりのクリームがたっぷり。
クラフティやエッグタルトを思い出すような風味で
汁気たっぷりでまるで「濡れている」クリームが印象的。
パンはしっかり焼かれ幾分厚めだけれど
これくらいクリームが入っていれは他に何を求めよう。
ヴィエイユモンターニュ@八丁堀新川
ブリオッシュ生地に包まれた一見上品なクリームパン。
バニラビーンズたっぷりで、まるでパティスリー仕込みのリッチさ。
それなのに優しさとタマゴ度ともたもた具合と…を兼ね備えた逸品。
カタネベーカリー@西原
小さな小さな手のひらサイズのクリームパン。
フィルムにラッピングされているので生地はしっとり、クリームと馴染んでいる。
たっぷり入った自家製クリームは、卵黄たっぷり、プリンそのものの味と食感。
しっかりとした甘さのクリームは、冷やすとますます美味しくなる。
ムッシュソレイユ@西荻窪
掲示板でみんなに奨められたクリームパン。
私が食べた時は、生地もしっかり厚めで食べごたえがあるものだった。
クリームの美味しさもさることながら、生地の美味しさに意識が行ったっけ。
ところが、実際はもっと薄皮&焼き色薄いタイプのクリームパンらしい。
今度はそのバージョンで食べてみたい。
サンドイッチパーラー まつむら@人形町
こちらのパン屋さんの自家製クリームシリーズは本当に好きだ。
カスタードクリームはもたもたではなく、さらさらっとした舌触りで
タマゴ度がとくに強いと言うわけでもないのに、やはり「懐かしい」。
いくら食べても飽きないしくどくない。だからいつまでも愛され続けるのだろう
ベニヤ@茅場町
これだけなぜか「糊」タイプのクリームである(笑)。
ここのクリームは、真っ黄色さがタマゴのせいなのかなんなのか
謎めいているが(笑)キャラメルクリームのようなねっとりした甘さ。
それがさらにねばねばした黒糖生地に包まれている。
むちょ〜んとした食感に激しく違和感(笑)。焼き立ては妙にハマるウマさ。
なぜ美味しく感じるのか、何度食べても謎(笑)。
ブロートハイム@桜新町
バゲットの巨匠が作ればやっぱりクリームパンもウマい。
天は二物を与えてしまった典型例(笑)。小ぶりの生地はやや焼き色が強く甘苦い。
カスタードクリームはタマゴ度高く、バニラビーンズ度も高い。
オーソドックスな「クリームパンらしいクリームパン」の美味しさを味わえる。
Zopf@千葉松戸
実は以前食べた時は好みのクリームとは相反するものだった。
しかし…まさに理想的なクリームに生まれ変わっていた。
卵黄たっぷりの黄金色、ダマができて「鍋底」感のある堅さ、
胡椒を大量に投入したかと勘違いしちゃうほどのバニラビーンズ…。
生地はほんのり甘く焼きは強め。王道のグローブ型からは黄色いタマゴ色が覗く。
たま木亭@京都
とろんとろーんとした、なめらかクリームを惜し気もなく大量投入。
バニラとクリームが効いていてかなり甘いクリーム。冷やすと甘さが引き閉まって絶品!
焼き立てで食べるのもいいけど、冷やして食べたらまた違う表情が。人気の品。
バックハウスイリエ@尼崎
めちゃくちゃ有名店だが梅田に行列ができるがやっぱり噂通り美味しい。
私はわざわざ園田のお店に行ってクリームパンだけを買った(笑)。
その時のエピソード、詳しくはこちらを。
アンシャンテ@札幌
凄腕ハード系パン職人が作ればやっぱりクリームパンもウマい。
器用な人にはなにをやらせてもウマい典型例(笑)。
ここのクリームは意外にもバニラビーンズが強く香り、
生クリーム的乳脂肪分が高そうなリッチ系。でもくどさは一切ない。
ドゥ・アンジュ@函館
パンに入れちゃうのはもったいないほどリッチな自家製クリーム。
それでいてタマゴ度も高くて申し分ない。
甘さも適度でパン生地の甘さと調和がとれている。
<番外編>
次点クリームパンたち
(近くにあると嬉しいレベル)
・エドベーカリー@飯田橋
クリームパンの王道! 甘めの生地にバニラビーンズと
卵黄の甘みが活きたかなり優等生。
・パン・ド・ラサ@世田谷梅が丘
ここも有名なクリームパンがあるが、最初はここの生地とクリームの
控えめすぎる甘さが理解できず★しかし何度目かでようやく理解。
じっくり舌で転がすようになめると(笑)なるほど美味しさが見えてくる。
・濱田家@三軒茶屋
ここの生地は大好きなソフトパン「ぱん」。
クリームも自家製で美味なんだけど量が少ないのが難(笑)。
・SAKURAベーカリー@若林
これも「子どものためのクリームパン」。
優しい…としか例えようがない(笑)。
ご近所であれば買いたい。子どもの情操教育向け。
・ぱぴ・ぱん@名古屋
自家製ぽわぽわっとしたクリームが美味!!
…といいつつ、焼き立ての状態で食べてしまったので
冷やして食べたらもっともっと美味しかったと思うの。
・イエナ@大阪
パンというか、皮? もうすでに決壊しているほどに溢れるクリーム。
こんなに入っているクリームパンはそう滅多にない。
…そう、某ケーキチェーンのジャンボシュークリームを思わせる。
<番外編>
クリームは好みだったクリームパンたち
・クリヤ@板橋赤塚
団地のパン屋さんならではの子ども向け自家製クリームが美味しい。
パン生地が願わくはカップタイプでないほうが…。
・ORANG@経堂
甘さ控えめでぽわぽわのクリーム。
・関口ベーカリー@中目黒
タマゴ度は高いのだけど、それ以上に洋酒のようなバニラのような、
香りの高さが店構えとミスマッチ。
・ベッカライ島田屋@札幌
自家製クリームの典型。オーソドックスだからこそ近くにあれば
子どもに食べさせたい(笑)