14-3.3月関西パン紀行  〜名物パン・リベンジ篇(イリエ&フロイン堂)〜



*2日目京都はこちらから*


関西3日目はランチからスタート。

昨日のメンバーに加えて、大阪でまたまたパン友pさん合流。

以前彼女が上京した際にお土産にもらった

大阪地下街の「パン・カンテ」のパンが美味しかったので

ぜひとも行ってみたかったのだ。

京都から大阪へ向かい、カンテで皆合流。




黄色が基調のもろ女性好みのブティック。

店の向かいにはカフェも併設、パン食べ放題のついたランチが頂ける。

開店早々につきまだハード系は少ないけれど、

私は色とりどりの菓子パン、ヴィエノワズリーに釘付け…!

普段は絶対に手を取らなさそうなくらいに

クリームや粉糖やシロップが染みたようなパンが

ここでは妙に美味しそうにみえる。





フルーツをたっぷり乗せたものも惹かれるけれど、

そういったテンコ盛りなパンは、買うよりも眺めている方がいいな。

(遠方から来たから持ち運ぶ間に決壊、シナシナになること必至)

こちらでは、スイーツパンを数種選び、ハード系はイートインで頂くことに。


ブリュレ風ブリオッシュは、ブリオッシュを器にして

ものすごくリッチなカスタードが注ぎ込まれている。

どちらかと言えば「卵寄り」のカスタードだが、

バニラと洋酒の香りが非常によく効いていてクラクラするほど美味…!

しっかりカラメルがパンチを与えてくれる。

パン屋に置いておくにはもったいないほどにこりゃ旨い!!

(器のブリオッシュは危惧通り時間とともに吸水、判定不能(笑))


 

パンが食べ放題のランチって、種類が多いほど幸せ♪


こちらのセミハード系の生地って、ほんのり甘めに仕上がっているのがいい。

特にそれを思わされるのはマロンのパンとアーモンドのパン。

普段、私や多くのパン好きが好むのは

「噛み締めてじわじわ甘さが湧いてくるパン」だろうけれど、

これらのように粉プラス何かの力を借りて

ひとくち目から「あ、甘くて美味しい!」とわかりやすいものも好き。

それが違和感なく、マロンやアーモンドと馴染んだ「甘さ」であるのがいい。

誰もが食べやすく、取っ付きやすいものになっていると思う。



***



夕方6時台の伊丹発まではまだまだ時間がある。

もっと欲張るのなら阪急電車の1DAYきっぷでも買うところだけど

大阪在中のpさんが伊丹まで車で送ってくださるとのこと。


いやはや今回の関西ツアーは本当に

現地のパン友さんたちの無償の御好意に甘えっぱなしだ。


1日目は、空港まで迎えに来てもらいランチもごちそうになった。

2日目も、一日中パン巡り同行、宿まで提供してもらった。

3日目までも、一日中パン巡り同行、送迎してもらい…。


なんと関西人とは温かいものか、と。

負けてられぬぞ、関東人。

彼らが上京の際には

「そこまでしてくれなくても」

と言わせるくらいに世話を焼き返してやる!!(笑)



***



私が今回、何がなくとも行きたかった店が2軒ある。


その一つは、関西ではひたすら有名な「バックハウスイリエ」のクリームパン。

もう一つは、全国のパン好きの巡礼地(笑)、「フロイン堂」の山食パン。


ミーハーと呼んでくれてもいい。

こてこてと言われても構わない(笑)。

関西パン旅行はこれまでも何度かしているのだが、

いずれも捕獲未遂、リベンジを果たしたい。



まずは「イリエ」を目指し尼崎・園田駅で下車。

なぜにこのクリームパンがこれほど有名かというならば、

薄い皮にあふれんばかりのクリームがたっぷり入り、

しかも100円! 私もこの「100円」というのには惹かれる。

120円のクリームパンは数あれど、

それだけのクオリティを100円で提供というのは

作り手のポリシーに他ならない気がするからだ。


梅田大丸にも時間限定で売られているのだが、

いつも30分以上待ちの行列らしい(しかもおひとり5個まで)。

一度は行列を目撃しただけ、

二度目は夏だからクリームパンだけは入荷しないとのことだった。

三度目の正直は、もう店に行くしかないでしょう!




延々歩き、ようやく到着!

…おそらく、イリエに行きたいと切望していたのは私だけ(笑)。

それなのにみんな文句言わず一緒についてきてくれた。

ありがとよーー。道に迷ってごめんよーー。


拍子抜けするほど、

ごく普通の住宅街にごく普通の佇まいの町パン屋である。

「グローブ型のクリームパン」がもっともしっくり馴染むタイプの店である。

隣に並ぶのがあんパンだったりカレーパンだったり調理パンだったり。

ある意味、王道のパン屋さんだ。


そして私は全く迷うことなく「クリームパン」だけを購入(笑)。


名物のクリームパンは、お好み焼きのヘラですくう。


う! 重っ!


クリームがよほどたっぷり入っているんだろう。

トングで掴んだらトレーに盛る前にまっぷたつに破れそうだわ。

うちの会社の近くのパン屋さんを思い出す…。

(あちらはクリームではなくマヨとチーズで重たいのだが)




店先でおもむろにかち割り試食…。

ほんっとにクリームがたっぷり。

ぼてっと溢れてくる。

黄色く「タマゴ度」の高そうな、いかにも私好み!

「クリームは手づかみで食べられないがゆえに覆っている」存在、

というほどに薄い皮、いや、パン生地。

米を食べさせるための海苔のような存在だ。

常温ではクリームの甘さがとにかく目立ち、後を引く感じではなかった。

正直「一度は食べたいと思っていたし…」という達成感だけが残っていた。


…ところが…


このクリームパンを帰宅後冷凍し、

自然解凍してクリームをしっかり冷えた状態で頂いた。

(なにせ2個買って来たから)


ぐはーーー!!

めちゃくちゃ美味じゃないですかっ!


冷凍したことでクリームがイイ具合に「ぼてっ」とした鈍い食感になり

(こういう「折れる」感じに固まったクリームが大好きなのだ)

くどく感じた甘さがきゅっと引き締まって

純粋なタマゴ度の高いハンドメイド的クリームに!!

こうなってくると生地もほんのり甘くて

クリームにしっくり馴染んでいるのも、

アーモンドスライスのアクセントも、

なにもかもがパーフェクトに思えてくる(笑)。


いやはや、2個買っておいて本当によかった。

1個じゃきっと「一回ぽっきりさん」で終わっていたかも。

こりゃまた食べたいわー。

しょうがない、梅田で並びましょう(笑)。



***



関西パン紀行も終盤。

私が切望していたもう一軒、フロイン堂のある岡本駅に降り立つ。


私は3年くらい前に、一度この店に来た。

出張中だったので時間がなく、朝一番で駆け付けたところ、

店には「パン」がなにもなかった。

午後から焼き上がるということを知らず、

クッキーとシュトーレンしかない店内で愕然。

もちろん持ち帰ったシュトーレンは、衒いのない実に忠実な美味しさで

それはそれで満足だったのだが…ずっと心残りになっていた。


その後何度も関西には来ているが、いずれも日曜日に帰京。

山食を買って帰るなら最終日にと思うが日曜定休に阻まれていた。

そのため今回は、わざわざ月曜日に有休を取り、

夕方の便で東京に戻るプランにした。

全てはこの店のために!!




泊めてもらった京都のパン友の家で朝9時に予約の電話。

本当にこうでもしないと手に入らないようだ。

現に、3時頃到着で、もう予約済みのパンしか並んでいなかった。



憧れの山食パン…!!

そして、田舎パン(胡桃レーズンの入った天然酵母パン)

くるみパン、ぶどうパン、ベーコンエピ(トップの画像)なども購入。


抱きかかえてみると、大きさのわりには意外に軽い。

(だからこそ、お値段が相当高く感じる)

パリッパリに香ばしく焼かれたてっぺんは黒く焦げており、

ナイフで切り分けるとまるでバゲットを切る時のように

カスがぱらぱらと飛び散る。地面にたくさんこぼれ落ちた。

これが家の中なら拾い集めて食べられるのだが

鳥の餌になるのかも(笑)。


外のハードさに守られるかのように、中はふわっふわ!

コシはないけれど、驚くほど軽い口どけで、まるでわたあめのよう。

ほんのりと甘さがあり、これならいくらでも食べられてしまいそう。

ただ、やはり外で食べるものではない(笑)。

これでバゲットの形だったなら、歩き食いしながら半分食べきれるのに…。

(バゲットも予約しておくべきだったかな。次回!)

そんなことを思いながら他のパン達を取り出しはじめた。



衝撃的だったのは、ここのレーズンの美味しさ!!

(あぁ、どれも写真を撮る前に食べ切ってしまった…!)


驚いた。

他店のレーズンの2倍くらいは膨らんでいるだろうか。

あと少しではち切れてしまうのではないかというくらいに

パンパンにお酒を吸い込んで、

私がかじりつくのを待ち構えている!

レーズンはお酒の香りをぷんぷんさせながら、

「ぶは!」っと吹き出すくらいに口の中でエキスを弾けさせる。

このジューシーさは、断面のキラキラ濡れたぶどうが物語る。

これだけたくさん入っているのに、塩っぱくない。

ソフトであるのにコシのある生地自体は、ほんのりと甘い。

このみちみちした食感で、ソフトパンを食べ終えた後の

「顎の物足りなさ」を全く感じさせない。

これほどまでに美味しいソフトなぶどうパン、私は他に知らない!




(あぁ、胡桃だけは写真があった…色気ないけど(笑))


胡桃の旨さも然り。

コクだけを残した理想の状態の胡桃を包む生地は、

ぶどうパンや食パンとは異なる天然酵母生地。

甘さよりも塩気のバランスの良さに注意が向くような、

胡桃のコクをキャッチして、ともにリリースするような(意味不明)。



もっと衝撃的だったのは、ぶどうパンとくるみパンのいいとこ取りした田舎パン!

ハードなライ麦生地に容赦なくぎっしりレーズンと胡桃が詰まっているが、

ぶどうパンとくるみパンで説明した要素をすべて包み込み、

強烈な個性の両者を喧嘩させることなく、前者2品とは全く別物に仕上がっている。

この手の胡桃レーズンなんて、どんな店でも置いてあるというのに、

それでもなお「ここは違う!」と思わせるのってすごい。

一番馴染みのあるパンで、私の中に明らかに差別化をさせるなんて。



感動したのは、作っているパンの種類が少ないと言うのに、

その一個一個のパンの具に合わせて生地をきちんと作りわけていること。

だから、一つとして同じようなものを買ったという印象が全くないのだ。

生地だけを使い回して、具だけで変化球をつけるなどという小細工が一切ない。

長年にわたって愛され続ける訳がよくわかる!

本当に来て良かった。ここもまた来たい!



***



空港へ向かう途中に寄ったお店も忘れがたい。

「パンの小屋」は、pさんが月曜定休のパン屋さんの代わりに

急遽代替案として連れていってくださった。

   

さすがにテンションはフロイン堂がピークだったので(笑)

こちらのパンは後日ゆっくり味わうことになったのだが

ありがちな店名のイメージとは反して(スマン)

アンティーク調のシックな内装。

雰囲気だけではなく、味も確かなものばかりだった。

バナナ、レーズン、オレンジの入ったライ麦パン

あの上品な甘さの上級フルーツパンがもう一度食べたい。



***



伊丹空港に着き、相方とスタバで荷物整理(笑)。

コーヒーすら入らないほどにお腹はパンで満たされている…。

相方とは今回、2人でゆっくり話する時間がなかったので、

飛行機の中でいつものマシンガントーク。

喋ることってけっこうカロリー使うのかも知れない?!

しっかり品川で夕食を食べてから互いに帰路についた。




***



3日間、バカみたいにパンを買ったけれど、

ひとつとしてはずしたと思うようなパン、店がなかった。

(実は今回、レポート以外にも、行った店、もらったパンがあり★)

もちろん、これが限界。テンションキープはこれくらいが良いのだろう。

どの店も、どの店のパンも、買った時の情景や気持ちや

味わった後の感動が今でもしっかり思い出せる。


冷凍庫にパンが入っていると、

たいてい1軒くらいは印象に残らないような店や、

「食べるの億劫だなぁ」と後回しになる

日陰の存在パンってものが一個や二個は出てくるはずなのに、

今回は全くそんなことがなかった!

「今朝はどのパンにしよう…あれも…これも…」

朝の葛藤タイムは、それはそれは大変なものだった。

冷凍庫の中のハイレベルな戦いがこの後2週間繰り広げられた…。


いやはや、パン好きでよかった。

旅の後にも旅の続きを味わえるのだから。

ラーメン好きではそうもいかないからな(笑)。