51-3.期限切れ直前18きっぷ 名古屋経由信州の旅 〜塩尻・小淵沢 編〜



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松本から塩尻まで国道で1本。

それほど遠くないのに車線1本なので渋滞…。えーん、進んでぇぇ。

これじゃ次のお店でゆっくり出来なさそう。


塩尻の駅から徒歩30分くらいのところにある「きんぴら工房」さん。

平出遺跡公園の中にあるようだが、カーナビを過信し過ぎて思いっきりスルー。

ずいぶん遠回りをしてしまった。わーん。

ぶどう畑の中を進み、細い林道を徐行運転。果たしてこの先に?





ここも本当なら徒歩で来たかった。

東京とかの都市なら、たいていのパン屋さんは「○○駅から徒歩××分」という表示なのに、

信州のパン屋さん情報をリサーチしていたらどこもかしこも

○○インターチェンジから車で××分」てな表示ばかり。

駅から「徒歩」という店はなかなかないのだ。たとえそれが徒歩30分であろうとも、

徒歩でいける限りは、車でなく、てくてく歩いて来られたら面白かっただろうにな。

18きっぷはのんびり旅行と思われそうだけど、意外と時間との戦い。

制約が大きすぎてなかなか難しいのだ。





きんぴら工房さんは、林の中に埋没するような造りのログハウス。

まっすぐに伸びた木々が猛々しい!!

首を思いきりのけぞって上を眺めてしまうのだ。

こういう木々を眺めていると、かつて訪れた屋久島の森を思い出すなぁ…。





ここはパン屋…というよりも、

自然食品のお店の中でパンを売っている、という感じ。

まさに雑貨屋感覚。

パンも日持ちするタイプのものが多いのか、

前日ものや、袋入りになっているものも多い。





「どいなかぱん」。地元産ライ麦全粒粉50%。胡桃とレーズンがたっぷり入って甘さと穀物の風味のバランスが○!

ざらざらとした粉の味わいがとても滋味深い。

しかし、どいなか…って…駅から徒歩圏でしょ?(笑)確かに田舎の味がします?!



ここのおじさんがえらく愉快な方だった。

ちょっとした掛け合いが面白く、ついつい私も話し掛けてみたくなる。

何を話したか、だいぶ忘れてしまったが、私は笑いっぱなしだった覚えが…。


「パンのサイトで以前取材を受けませんでした?」

こう尋ねた。


「あぁ、パン・食う・LOVEの人ね?

あ、違うの? パン食うラブ…パンクラブ…」

そ、それ、今後使わせてもらいますーー(笑)。メモメモ(笑)。





「ここあごまパン」。人気の品だとか。ほのかな甘さのココア生地に、ゴマがトッピング。

洋風なんだか和風なんだか微妙な味わい。



あちこちのパン屋さんを目指して旅をしているという話をすると

「あー、うらやましい。(店をやってると)遠くに出かけられないよ、とほほ」

そんなことをおっしゃるおじさま。





ベーグルは、たまたまポツンと棚に置かれていたので聞いてみると、

商品として焼いたのではなく

「お昼になんかはさんで(自分用に)食べよーと

思っていたのに作り損ねちゃった」そうだ。

代わりに私が買って食べることになった訳ですか。


表皮にヒキがあって、穀物のツブツブ感が強いわりには伸びやかな生地。

これも滋味深くて美味しい!


画像にはないけれどおじさんのオススメは「くるみケーキ」。

「これなら東京で店だしてもやっていけるって自分では思っているのだけど(笑)」

わはは、まんまと買わせていただきますから〜。


その言葉は果たして本当だった!

しっとり目の詰まったバターケーキで、ラム酒の香りがぷんぷん!!

胡桃ケーキというよりは、ラムケーキ+胡桃入り、という感じ。

開封したら即食べ切ることをオススメ〜!



慌ただしい来訪だったけれど

この愉快なおじさんの営む、林の中に溶け込んだパン小屋に立ち寄れて正解。

また来られることがあったら、悩んでやめた「するめコッペ」を食べたい。

私、道産子ですからね、きっと口に合います(笑)。







さて、塩尻から高速に乗り、茅野へ急ぐ。

下で行くとまた渋滞にひっかかりかねないからね、

たまの高速道路をぶっ飛ばすのは相当ストレス解消。

そうね、年に1回くらいはやらんと(笑)。


諏訪サービスエリアでトイレ休憩。

諏訪湖を眺めてちょいと一息。


ここで、これから目指す長坂のパン屋さんに電話を入れる。

数年前から年に1回、某所でお会いする方で、かつて京都にお住まいだった時に

お世話になったことのあるパン職人Kさん。

近年長坂でパン屋さんをオープンされたので一度尋ねてみようと約束(?)していたのだ。


昨日、「明日行く」ということを電話しておいたのだ。

「おひさしぶりです! 某所でお世話になっていたmi_waです!」


なんと、長沢の一つ手前の小淵沢駅まで迎えに来てくれて、

さらに私が車がないために諦めかけていた「あの店」にも連れて行ってくださると!!

うあーーん、本当にありがとうございます、ほんとにお言葉に甘えます。





時間さえあればこの体から発する異様な硫黄臭を何とか消したかったが…。

諏訪SAにはなぜか立ち寄り湯があるのだが…無念!

臭いままでお伺いすることをお許しくらさい〜!(笑)


無事、茅野で返車を済ませ、本日最初の18きっぷ使用、JRに乗り込む。

長野から山梨に突入だ。

いよいよ、この2日間のパン旅もクライマックスを迎えようとしている。


茅野16:40発 → 小淵沢17:02着



本来、小淵沢から小海線に乗り換え、甲斐大泉駅から徒歩15分程度のところにある

Gというパン屋さんにも行きたかった。

徒歩圏、というのも惹かれた理由のひとつ(笑)。

時間がなくていけなかったが、「歩いて行こうと思っていた」と言うと、

Kさんは「徒歩15分っていっても、すごい坂登って行くんだよ? 大変だよ?!」とな。

うーん、地図では標高はわからんからなぁ(笑)、難易度高い、徒歩での信州パン巡り!(笑)

でも後日、うちの近所の自然食品屋にGのパンが卸されているのを発見。

おいおい、これってラッキーなの?(笑)




小淵沢の駅についたのは夕暮れで空が染まり始めたころ。

ライトバンで迎えにきてくださったKさん。

ごぶさたしています! 大阪でお会いした以来ですね!!





車はのどかな風景を進んで行く。

今日は雲で覆われているが、八ヶ岳連峰が美しいそうだ。

天気のいいときなら富士山も見える、すばらしいロケーション。





そう、そのお店は「バックハウス・インノ」。

お店についたころにはもう日が暮れかけていた。

ヨーロッパの田舎を思わせるようなロッジ風の建物。


本当に里の奥地にあり、知らない人はまず来られない場所だろう。

…私、あわよくば歩いて来ようと思っていたんですけど…やっぱ無謀だったようだ(笑)。

ほんとに連れて来てくださってありがとうございます、

Kさん、同業他者なのに!(笑)





諏訪SAのトイレ休憩時に、閉店18時にはどうにか間に合いそうだと判断し、

パンの取置きの電話をしておいた。

もうパンはほとんどないんだろうなぁと半ば諦めながら。

案の定、もうあのパンもこのパンも売り切れてしまったようだが

残っているパンを全部電話で教えてくださり、

18時過ぎてもまだおりますから」との優しい言葉。





お店に入ると、高い天井で吹き抜けた空間に石窯が鎮座している。

思わず、写真撮らせてくださいと言わずにはいられなかったお登りな私(笑)。


工房にはまだ仕事をしている二代目、店には二代目の若奥さんと先代の奥さんが。

若奥さんが、とても丁寧にパンと、自家製粉のパンについて説明をしてくださった。

自家製の小麦を自家製粉するのはとても手間がかかるため、

曜日限定、受注生産、しかもかなりのハイプライス。

それでもお客さんからのリクエストは多いらしい。

ひとくちの試食だけだったが、私も近くに居たら絶対にリピートするだろう。

たまの贅沢に…。





試食だけで買って来なかったことを後悔しまくり、

忘れられないほど美味しかったのがこのバゲット・オ・ルヴァン!!!

おかきのように甘い甘いガリガリクラスト、

そしてねっちりとした、濡れたようなクラムの甘さ…!

うああ、こんなところでこんなパンに出会えるとは…!





お目当てのフルーツ練り込み系はもう残っていなかったけれど、

ひとくち試食させてもらえたものは、まさに期待通り、期待以上。

うぅぅ、これはまた来なきゃ行けませんか!(笑)





こういう山奥の天然酵母を謳うパン屋さんのものとは少し違う、

洗練されたパンが多い、と思った。

オリーブのパンにしても、クリームチーズと黒胡椒のライ麦パンにしても、

水を使わずビールだけで作ったパン・ア・ラ・ビエールにしても…。





粉の味わいが強く、時間と手間をかけなくては出せない味。

どのパンも、ひとくちで呻く美味しさだった。

私は帰りの車中で、声を押し殺して悶絶していたのだった。







すっかり日も暮れて到着したKさんのお城、フェアリーさん。

カントリー調の雑貨に囲まれたかわいいお店だ。

24時間一緒(笑)の奥さまもとってもきさくで、

電車の時間まで楽しい時間をゆっくり過ごさせてもらった。


Kさんは、「うちは地元の人たちのためのごくごく日常的なパン屋さん。

だから他の『こだわりの…』なパン屋さんとは違うからがっかりしないでねぇ」


そんなことをおっしゃる。

確かに、食パン、バゲット、メロンパン、ごくごく日常的に食卓に並ぶ

デイリーなパン達が多い。もちろん、価格もとても良心的。


いやいや、私は「こだわりのパン屋さん」のためだけに来たんじゃないんです。

知っている方が、パン屋さんを開いたというだけで、

いてもたっても居られないじゃないですか!





おいおい、ここまで来ちゃったよーてなくらいに

なんとしても食べたかったくりーむパン。この店の看板商品である。

これだけはちゃんと予約した。「一個、取置きしておいてくださいね」

確かに「わざわざ」ここまで来た、という感じなので

もし好みと違ったら私は落胆しちゃうんだろうか?(笑)

食べるまで変な緊張でどきまぎしてしまった。


外からは全くクリームパンに見えない、こんもりとしたカタチ。

自家製クリームが入っているのだが、果たして果たして…。





わわわ! なんなの、このクリームの溢れ方は!!

まるでシュークリーム!! わわ、垂れる!!

こんなに白いのに、どうしてこんなに卵たっぷりの味がするの?!

卵の風味に、絶妙な甘さ加減。この色なのに、全然乳臭くない。

まさに私の好みの「卵風味のカスタードクリーム」だったのだ。

これは本当に衝撃的で、「ほんとにほんとにほんとに美味しいーーー!!」と喚く私。


前はもう少しミルキーだったらしいのだが、何度か改良を加えてこの味になったそう。

自然の卵黄の色は、そこまで本来黄色くはならないそうだ。

ほへぇ〜そうだったのか…。白い=ミルキーというわけではないのか。

後からクリームを注入するからシュークリームに似ているわけだ。

いやー、半分食べ切ったけど、残りは冷やして食べてみたい。


「あともう2個欲しい!」

「さっきのお客さんの引き取り分で最後だよーー

だってmi_waさん、一個しか取置きしてないんだもん(笑)」


私のバカーーー(笑)。





京都在住中に出会ったあんこ屋さんのあんを取り寄せて

デニッシュに巻き込んだ最近売り出し中(笑)のパン。

おわ、わざわざ味見させてくれるの、いいんですかー、いただきますぅ。





はいはい、舞台裏だけじゃなくて、皿に盛られたきれいな姿も載せますよぅ(笑)。


ご近所で「その日食べる分だけ買う」くらいしか買っていないのに

たくさんのお土産、たくさんのご厚意を本当にありがとう。

また、遊びに来ますね。そのときはクリームパン3個! いや、5個ね!(笑)





駅まで送ってくださり、再び一人になった私。

いよいよこの電車に乗ったなら、私は帰路につくことになる。

夏の終わりを告げる虫の音が、静かなプラットホームに響き渡る。


各駅停車の18きっぷでも、たったの2日間でも、

これだけのことを楽しめる。そう、初めて知った「信州は近い!」こと。


たくさんのパンと、人々との出会いと、ご厚意に胸をいっぱいにさせながら

パン臭よりも硫黄臭さに時折めまいを起こしながら(笑)

早く服を脱ぎ捨ててお風呂に入りたいと願いながら(笑)

鈍行電車に乗り込んだ。



長坂19:06発 → 甲府19:38着

甲府19:45発 → 大月20:33着

大月20:50発 → 新宿22:18着




* おしまい *