117.パンと向き合う、ひとり旅。〜関西3DAYS〜



ふりかえれば前回の関西来訪から早半年以上経ってしまっていた。


4月に関西行きのチケットをとったのに祖父が倒れてそれどころではなくなり。

6月にチケットを振り替えたものの、

今度はなんと例のトンフル騒ぎが勃発!

会社からも珍しくお達しが。

「不要不急でなければプライベートの旅行は慎むべし」は、

とっくにマイルの特典航空券を予約済みだった私には

ヒジョーにプレッシャーに!

周囲に「関西に行ってくるねー」とも公言しにくく、

直前まで出発を悩んでいた。

極秘に秘密裏にコトを進めていた。(大げさな)


幸い、出発の週はじめには「騒ぎの沈静化」が見られ、

満を持して関西へと旅立った。(それでもマスクはたっぷり持参(笑))


今回のテーマは

今回、あまりビールとかラーメンとかいわない(笑)。

パンで行く。そう決めていた。

関西の中でもさらに郊外のあのパン屋さんへいきたい

関西のパン屋さんの中で、ずいぶん前から行かねばならない、

そうずっと思いを秘めていた店にいきたい。

そのためには








初日。

空港からまっすぐ向かうのは、もちろん本町。

今回、有休をとって土日月の3連休にしたが、

そうなるとネックになるのはhの定休日。日月休みゆえ、

土曜日にいくしかないのだ☆




半年ぶりのh!

パンのラインナップもさることながら、

新しいスタッフさんの顔ぶれもまぶしく、

相変わらず「突然ですね!」と驚くシェフの反応も可笑しく、

とにかく、痛烈に「ごぶさた」感を味わっていた。


スタッフさんが急遽戦線離脱することになったり、

そういう話をいろいろ聞いていると、本当に辛かった。

遠くにいる、たまにしか顔を出せないイチファンとしては

どうすることもできないし、無力でしかない。


そんな中で、カウンターごしに、かねてからよく知る顔を見たときは

ほんとうに嬉しかった。話には聞いていたけれど、本当に嬉しかった。

私がいつだったか「週末だけでも往復夜行バスで手伝いにきます!」なんて

冗談(いや、本当はかなり本気だったりしたが…)を言っていたが

それを実現(というのも変だが)してくれた、そんな気持ちになってしまった。

ありがとう…おかしいかな、なんかありがとう、という気持ちで一杯になってしまった。


今夜はここの近くのビストロで食事をする予定なので、

また閉店間際にでも挨拶にきますね!



たっぷりパンを抱えてはいるが、むむむ。どこで食べるべきか。

大阪駅で12時に待ち合わせしているので、

心斎橋のデパ屋上に行く時間はない。

…そうだ、靫公園に行って、10分だけがっつくか!





そうして、5月にしては妙に暑い中、靫公園へダッシュ。

某パン屋さんの側にいながら寄ることもせず(笑)

公園の入口の側のベンチでパンをがーーっと広げてがーーっとかじりついた(笑)。


ひとくちずつ、確実に「んわー」「んまー」「んはー」と

悶えていたのだが、あまりにばたばたしていたので

コメントも画像も今回は少ない…☆

でも相変わらず、グレート・ジ・アッシュですから(笑)


ちなみにこのキャトルフロマージュは、

昼時のhに訪れる、パン好きな周辺OLさんたちの嗅覚を

とりこにしていたパンだ。みんなトレーにこれを乗せていた。

中には嫌がらせのようにクサい、クサ旨い、ブルーチーズがどっぷり(笑)。





マンゴーフロマージュ'09。

いったい何度目のマイナーチェンジだろうか(笑)


小さな花美のフリュイセック

お嬢ちゃんをモデルにした真っ赤なフリュイセック。

以前友達にお土産をもらって食べたがこれまた鮮烈!

パン素人さんいわく「なんでパンが赤いのーー?!」(笑)

なんで、っていっても、それがhだからしょーがない(笑)


リリッシュ・カフェ

名前がうろ覚えだが…これも人名イマジネイションズ。

ビエノワに、マカダミアナッツ入りのコーヒークリームが入ってるが

hにしては意外とシンプルだなぁと思っていたが、スタッフに強烈プッシュされる。

嘘だと思って食べてみたらこれがほんっとーーに美味しかった!

このクリームはいったい! マカダミアのしょりしょり小気味よい食感、というだけでは

説明できないクリームの美味しさは!!





リエナのカリントウ

hのお得意、人名字典パン(笑)

黒ゴマあんこ入りの煎餅とかを思い出してしまった。

カリントウって…(笑)





清貧になれないミエル

きた! ネーミングでさまようミエルシリーズ(笑)

ところが、今回買ったパンの中で一番美味しさのインパクトが大きかったのはこれ。

胡桃、エメンタール、ピーカンナッツ、ハチミツのライ麦パンだが、

まるで料理にいろんな調味料を入れてひとつの味に整うように、

すべての要素が「深い」味わいへと集約されていくような…。





黒ごまとホワイトチョコ

知らなかった意外と合うこのセリフ、hではもう暗黙の了解ですね(笑))


ほにゃらら紅茶と薔薇

うわー名前失念(笑)まさかこんな名前じゃないですから(笑)。

最近、hで薔薇ものをよく食べるせいか、感覚が麻痺してきたぞ(笑)


ラ・トゥルト・ドゥ・ミワ

以前は週末限定だったのに最近毎日焼くようになったという…(泣)

後日いった友達の話では、なんと、フルーツ入りのバージョンも出ていたそう

わぁん、食べたい!(泣)






そのまま大阪駅へ。パン友と待ち合わせ、まず向かうのは摂津本山。

旅先で知り合った女の子が勤めているパン屋さんへ。

駅からは少し歩くが、公園を目の前にしたロケーションの良さがポイント!





店名のロゴが印象的な内装。

舌なじみのよさそうなパンたちが並ぶ。





イートイン席に座ると、目の前の公園のまぶしい緑と光りが差し込んでくる。

お値段が押さえ目なパンが多いし、

きっと学校帰りや野球の練習帰りに寄る子供もいそうだなぁと

そんな風景が連想された。


天然酵母のレーズンパンや、

クリームチーズの入った表面がバターで甘く仕上げられたパンなど

いただきながら、そのスタッフの女の子の上がり時間を待つ。

優しい風味のパンたちは、きっと子供達や近隣の方々にも

抵抗なく受け入れられているんだろうな、そんな風に思わされた。




パン友とはここで一度別れ、

旅先(しかもパン屋)で知り合った女の子と1軒だけ寄り道してから

再度夙川の某店で落ち合うことに。





二人で向かったのは、芦屋のkaopanさん。

木製やアイアンのキッチン雑貨が似合いそうなお洒落な店内に

濃い目に均等に焼き色がついたきれいなパンたちが並ぶ。

ふあぁぁ…。モロ好みの世界…。





お茶(正確にいうとフルーツジュース)とともに、席でパンを少し広げた。

天然酵母のクロワッサンは、玄人好みのじょりじょりぎっしり系!

控えめの量であるハズのバターの香りがふわっと香り、旨い…。





どのパンも、酵母の香りが確かに感じられ、見た目よりも個性が強い。

フルーツならフルーツ、スパイスならスパイス。

食べたいと思って選んだ素材が繊細に、でも確かに香る。

ここのパン、ほんと美味しいーー。






続いて夙川。

通販オンリーから、カフェありの通年営業になってから

2度目の来訪になるが、トイレは直ったかな(ひとりごと猛省)。





先にいってもらっていたパン友と再度合流し、

3人で野菜のプレート(パン付き)をシェアする。

あ、私は特別ドリンクをよろしく(笑)


遠くでねずみ色の空がごろごろ鳴っている。

ひと雨くるか…いや、私が外を歩いている限りは大丈夫だろう(笑)

(説明しよう。私は異常な晴れ女。私が外を歩いている限りは雨は降らない、天気予報も覆るのだ!)


案の定、電車に乗ったら雨がぽつぽつ降り始めた。

どうしようもなく、私はこういうところにばかり運を使い果たすのだ(笑)。







さて、今回泊まった宿についてご紹介しよう。

いつもだいたい、泊まるのは、カプセルホテルやサウナ、

新今宮界隈の超安宿(地元の人には当然反対される、、、でも懲りなかった私。

最近はさすがに身持ちが堅くなった自分(笑))


しかし今回泊まったのは、カプセルホテルの進化系なるホテル!


カプセル部分を、巨大化して「キャビン」にしたもの。

飛行機のファーストクラスをイメージしたというコンセプト。

館内の撮影は禁止だったので興味があれば調べてもらいたいが、ここがかなり面白かった。

カプセルを個室化したような感じだったのだ。


メリット

・安い! キャンペーン中につき3980円で泊まれた。

・なんば駅の真上! いつも使っていた心斎橋のカプセルはアメ村のど真ん中で

駅からも遠く不便だったけど、ほんと、駅近はいいわー。

4月オープンだから、めちゃくちゃ新しくてデザイナーズホテル調で、おしゃれで綺麗!

・お風呂などの共有スペースがとても綺麗。サウナ完備。化粧水とかもちゃんとある。

・女性フロアはMAX12名までなので、お風呂とか込み合わない。

・造りが完全に男女別になっており、ロビー以外ではまったく遭遇できないようになっているから安心!!


デメリット

・所詮はカプセルの進化版。個室はアコーディオンカーテンでのみの仕切りなので、

音がもれまくり、うるさい。「音」に関するプライバシーはゼロ。(カプセルだから当たり前)

・窓がない(カプセルだから当たり前)

・個室に鍵がないので、貴重品はロッカーに入れるなりめんどくさい(カプセルだから当たり前)

・トイレとお風呂がやや遠い。


要するに、デメリットは、カプセルホテルのデメリットとあまりかわらないのだ。

カプセルやユースに慣れている人なら、おすすめですぞ。



…ところが、ここで、いったんベッド下の鍵付きロッカーに財布を入れてトイレにいき、

そのまま外に出かけてしまった、、、本町の宅急便屋で財布がないことに気付いて真っ青!!!

今から宿に戻っていたら約束に間に合わない!!!

そこで私は超非常手段に出たのであった…。

あんなに恥ずかしい思いをしたのはこの先ないかも?!






そんなこんなでがっつり汗(含・冷汗)をかいたあと、

友人2人が先に待つ、某大阪のフランスへと…





堺筋本町に現れたPetit Paris、le noeud papillon。

以前夜中に訪れたDAIGAKUの姉妹店である。


気軽な普段づかいも、しっかり決めたい時にも、

様々なオケージョンで使えるビストロ、

しかも本気でフランスの食スタイルを再現しようという店は

大阪にはまだまだあまり数多くなく(意外にも)、

胃袋系な大阪人たちの熱い視線を集める店なのだ。





それにしても…がっつり肉を食べた! って感じだなぁ(笑)。

メインもあれこれ頼んだが(タジンが激ウマだった)、

突筆すべきはやはりこちら。

ハム、パテ、テリーヌなどパン好き、フレンチ好き、酒好きを軟体動物化する

シャルキュトリーの盛り合わせは1260円。これで1260円?!





デザートも3種類くらい一気に頼む私たち。

どこに入るスキマがあったのだろうか?

これはパリブレスト。古典的なデザートもしっかりあるところがニクイ。

(というか、デカい)






さて。翌朝は京都方面へ。

当然のごとく、立ち寄るのは岸辺。

朝食はここ以外知らない。知ろうともしない(笑)。





「ゆっくりしていける?」ということだったので、

お言葉に甘えてめちゃくちゃゆっくり滞在したのだが、

そういうことだったのか…。

のんきに「いつものジャガバタ」など食べている場合ではなかったのか!

(いや、でもやっぱりジャガバタが一番好き…(笑))





次から次へと「●●焼き上がりましたー」の応酬。

ちょ、ちょっと待て。クロックムッシュが巨大すぎる!!!

全部は無理−! …といいながらも、半分は食べた。まじで半分いった。

だって、、、ものすごく美味しかったのだ悶。止められなかったんだ悶。

わかってはいるわけですよ、シュクレのバゲットに、ペシャメルソースに、ソーシスでしょ。

美味しくならないわけがないのに、予定調和とはいえ、でも、流されるままに半分





さらに本日限りのスペシャリテは続く

ひぃぃ…。じっくりあめ色に炒められたオニオンと辛いほどにたっぷり乗ったアンチョビ、

そしてオリーブ…! 画像の角度ではわかりにくいが、ストライプが描かれているのだ。

見た目通り、味が濃厚(特に塩気が)ゆえ、ここでひとつ困ったことが

「朝からビール飲みたくなるようなもの、食べさせるなんて?!」





この画像とは関係ない話だが、後日パン友が大阪出張土産といってくれた

ソーシスピマンテを久々に食べた。

そのとき、私が友達にこのパンをお土産にし、彼女にとってはシュクレデビューだった。

あの頃の感動をなんら裏切ることのない美味しさに悶えることしかなかった。

シュクレがこの場所に現れて数年たつけれど、

このパンを食べるのも今年で3回目の夏。


来年も、再来年も、その場所に有り続けるということ、

新しいことを産み出すのも大事だけど、守ることの難しさもほんと痛感する。

そして、守り続けてくれることに感謝と畏敬の念を覚えずにはいられない。

…なんだろうなー、いろいろおセンチな気持ちになってしまったのだ。





店内に異臭が立ち込めた、その犯人はこちら(笑)。

前回、再現されたあのpain des ami

これに、ラベンダー(!!!)やカシス、カシューナッツが。。。

パンでかつてかいだことのないラベンダーの香りが、

私の嗅覚の中で異臭騒ぎを起こしたが(笑)、食べてみるとこれがまたシュクレ風予定調和(笑)。

香りはラベンダーなのだけど、味がしっかりカシスやナッツでまとめられているので

なんていうか、大丈夫なのだ。てか、美味しいのだ(笑)。


そういえば、私の中で実はラベンダーというのは「パリの香り」なのである。

ふと、このパンを食べたときに、鼻腔で広がったラベンダーの香りに、

まっさきに思い出したのが……


(ほんとに申し訳ないが)

……うちの洗濯石鹸の香り(笑)。


パリでいつも買って帰って来ているハーブの香りの洗濯洗剤の代替に、

イメージが近いラベンダーの香りの洗剤をしばらく使っていたので、

ラベンダー=パリ、そんな図式が私の中でできてしまっていたのだ。


皮肉にも…シュクレパンが「ラベンダー」で私の中のパリを呼び起こす(笑)。

前回訪れたParisでは、通りがかりのMONOPRIXで重たい洗剤を買って。

もうその頃の洗剤もほとんど残っていない。

Parisが自分の中で夢物語のように走馬灯のように浮かんでくるよ。

…やっば…。おセンチモードに入りそうだ、自分。






さて、場所は変わって京都!

…といっても、かなりノープラン。

とりあえず、「昼にラーメン屋さんに行く予定なんですけど、mi_waさんもいかがですか?」と

誘ってくれた子がいるので、お昼の時間だけピンポイントでご一緒することに。

やっぱりラーメン行くのか、私(笑)。





三条の駅から近くの劇場型ラーメン店で、白雪とかなんとかいう鶏のラーメンを。

めちゃくちゃおいしかったーん。

んで、それで解散(笑)

会っていたのは正味30分…。






アテも無い、ほんとにアテのない京都の町をふらふら…。

シュクレとかアッシュとかいっちゃうと、これがまずい。

その後にパン屋に行く気がなくなっちゃうのだ(笑)。

「(パン的)肉食系女子」を、草食系に変貌させちゃうというか、

牙を抜かれちゃうというか、、、





とりあえず、1軒パン屋に入ってみた。

千本丸太町の緑のファサードが目印。





小さな小さな空間に、ぎゅっと詰め込まれたパン屋さん。

ここまでぎゅーっと密集させると、やっぱりわくわく感が否応にも高まりそう。

(画像は濃厚にドライバナナの入った、むぎゅっなベーグル)


そういや、昔、某有名パンカフェ(私も行きつけの)が、

あえて小さなお皿にテンコ盛りに料理を盛る、それが美味しそうに見えるから! と

話していたのを思い出す。


…あー、なんか今日は、なんか上の空かも、自分(笑)。

違うことばかり考えてたりするわ。






本当に何もプランがないまま…といいつつ、「千本」にやってきたのは、

やはりこの店に来なければ、だった。

この店に限っては、地図がなくたって住所を忘れていたってわかる。

だって、臨時休業や閉店の憂き目に何度あったとはいえ、

足を運んだ回数は相当な頻度だったと思うから…。


(といいつつ、筋を一本間違えたせいで、延々店を見つけられなかった、、、恥)





思い出がいっぱいつまった、あの、ゆるゆるcafeへ……

昼間に来るのは初めてだが、…いやぁ、、、昼間もすごい…(ゆるさが)。

夜のあの奇蹟のような幻想的な世界は思い出のままに、

私は今日、昼に来られたことは正解だったように思う。





サンドイッチのセットをオーダー。

私が知る限りで、ここ最近食べた中で、

一番感動した「パンのお料理」だったように思う。


なんてことはない、お肉と野菜をソテーして乗せただけに「一見」見える

オープンサンドだって、しばしため息を漏らされた。

キャラウェイのパンに、シンプルにコンテを乗せて焼いただけ、

ハチミツを塗っただけ。

ただそれだけなのに。ただそれだけのことなのに…。


なにかが違う。ものすごく違う。

すっかり、自分が最近、パンの楽しみ方、味わい方を忘れてしまったかのように、

なぜか反省する気持ちになってしまった。


どうしたらこんなスープが作れるのだろう?!

家で思い出して再現してみようとしたものの、

全く別物のスープに仕上がり悲しくなった。


ドイツパンをこうして食べる時にいつも思う。

自由に食べればそれでいい。とも思う。

食べ方に「絶対」なんてない。とも思う。

けれど、「それが美味しい食べ方だ」と一番自分がよくわかっていたと思っていたことを、

まるではじめて食べた時のようなショックを覚えた気がして…。

自分はどこか何か、鈍くなりつつなっていないだろうか、そんな気がして…。



ビールも2本飲んでしまった。2時間近くもいてしまった。

といっても誰としゃべったわけでもなく(完全放置プレイ)、ひとりで。


相当、おセンチだったのである。

このまま京都駅に戻り、そのまま電車に乗って大阪へ戻ってしまうくらい、に。

しかしこの数時間のまったり京都滞在はある意味、

今の自分には贅沢な贅沢な、時間だった。






夜、大阪に戻り入った関東煮のおでん屋に入ったが

高いわりにはイマイチ満足度は低く(高いのがネック)

ネットカフェにちらっと寄り道してから、さっさと宿に戻って来た。


お風呂に入り、共用のテラスで電話などしながらひといき。

御堂筋に面していて、夜にルームウェアでだらしなーくソファに腰掛けて

通りを見おろす…というラグジャリー感がたまらない。

日曜の夜は昨日ほど女性客も少ないようで、さらに快適だった。


今日はほとんどの時間をひとりで過ごし、少しそれも「おセンチ」さにつながっていたんだと思う。

なのに、夜が昨日より静かであることが逆にくつろぎになるとは。






最終日は、朝からレンタカーを借りた。

目的地は、奈良県と滋賀県(笑)。

どう考えても無駄なルートになりそうだったので、

スタート地点は近鉄藤井寺。来たこともない町でレンタカーを借りた。


最初にセットする目的地は、奈良県奈良は宇陀市大宇陀!!

そりゃ奈良観光も、他にもいきたいパン屋さんもあるけれど、

最終目的地の滋賀へいって空港に夕方着くには寄り道する余裕は全くなし。


自分で大阪を車で運転することははじめてだが、

大阪から奈良県に向かう道中、ほんとスクーターが多くて難儀した。。。

考えてみたら、狭い道でスクーターがじゃんじゃん通る道を運転するなんて

はじめてかもしれない。ぐわー、巻き込み注意!!!

ある意味スリリングなドライブとなったのだ。





昼前に到着した、宇陀市大宇陀。

古い町並みで、すんごいのどかな所なのだが、お花見の観光名所でもあるらしい。


ここに八王子「ぶーるぶーる」さんで修行した女性が焼くパン屋があるという!

これまでも散々「なぜこんなところにパン屋さんが?!」というお店を

あえて選んで訪ねて来たが、ここも相当「なぜこんなところに…」な場所だった。


古い木造の小民家を改装した「ANANDA」さんは、

古い商店や、老舗の葛屋さんのある町並みと違和感なく溶け込んでいた。

まるで、何年も昔からそこにあるかのように。





ほら、フリュイ! リュス! うわーん! (ただし、ご本人は産休のため、ケーキ職人さんがパンを作っていた。残念)

ホワイトチョコとマカダミアナッツのパンや、クロワッサンオザマンド。

新たまねぎのリュスティック(季節でいろんなリュスに挑戦しているそう)

ケーキもパンもやっているお店で、パンもさることながら、

「なぜこの場所にこんな(素敵な)ケーキが?!」という方が驚きかも。





どこかでパンにかじりつきたい…そう考えながら周辺を散策。

老舗の吉野葛のお店を何軒も見かけた。






ふと見つけた神社の鳥居。階段を登ると

町が一望! しかもベンチもあり、町の展望台的な場所だった。

これはいい場所を見つけてしまった!





そよぐ気持ちいい風を全身にあびながら新たまねぎのリュスを齧る。

ふはぁ。。。気持ちがいい。。。

ふはぁ。。。たまねぎの甘さがここちいい。。。





懐かしのフリュイを、奈良の奥地でかじりつく。

なんか…不思議な感覚だ。

はじめて食べたのが半蔵門で、次に水海道。守谷。八王子。

そして、今、はじめて訪れる見知らぬ土地でフリュイを食べている。

クランベリーと胡桃をリュスティック生地で巻き込んだ、

決して珍しい組み合わせではないものなのに、

やっぱりこれはひとつの「文化」なんだと思う。

ひとつのところでとどまらず、次第にその「文化」が伝播し


小学校のチャイムが鳴った。

チャイムの音色は風に乗り、小さな町の中で鳴り響いた。伝播していた。






車は滋賀を目指して約2時間半…!

途中、伊賀とか甲賀とか、忍者の里的エリアを経由して





ついに到着してしまった、滋賀県日野町の大地堂さん!!

国内唯一の自家製ディンケル小麦を使ったパンを焼く、すごい情熱的なお店。

ずっと来たい来たいと思い描いていた(でもなかなか難しい立地ゆえ)


畑のまん中にあるのかと思いきや、意外とお店自体は古い瓦屋根の蔵が立ち並ぶ

住宅街の中にあった。その町並みは、まるで武家屋敷を歩いているかのよう。


販売スペースには、店主の女性がひとりでパンを売っている。

店内には、ドイツやフランスでの研修時代の日記やアルバム、

パンや小麦に対する熱い思いを書き綴ったパンフレットなどが

たくさん飾られていた。


試食などしながら、共通の知り合いのパン屋さんの話などを持ち出し、

驚かせてしまったかもしれない(笑)。

他のお客さん御一行が来なかったら、もう少し話をしていきたかった!





パンを5種類くらい買い込み、鹿肉のリエット(なんと地産! ひぇぇ)も買い、

「近くでどこか食べられる公園とかないか」と聞いたら、

教えてもらった「滝の見える神社」。





滝はなんちゃってだったけど(笑)、すばらしい風景が私を待っていた…!

神社の境内には少々朽ち気味の(笑)ベンチがあり、

そこは木陰となっており、先ほどの奈良の神社とはまた違った

マイナスイオンが満ちあふれていた!

(画像は、農家のライ麦ブロート)





神社の裏は、一面の水田。

残念ながらこれはどうみても小麦畑ではなさそうだが、

武家屋敷が立ち並ぶ中では、小麦畑は思い描けなかった。

ああ、こういうところで小麦たちは栽培されているのね。

この風景を見るのと、見ないままで食べるのとでは、全然来た甲斐が違う…!





大地を目の前に、渾身のパンたちをいただくことにしよう。





豆乳ディンケルブロート、大豆とゴマのブロート、オリーブオイルの入った全粒粉のシンプルパン等

見た目はどれがどれかなかなか見分けがつきにくいが、

味が全然違う! 味がどれも強烈に個性的で、一度食べたら忘れられない。

共通して言えるのは、そのねっちりとした水分のたくわえかた、

酸味がまろやかに、力強いコクへと変貌する、そのプロセス。


スライスして、口に含むたびに、冗談抜きに気を失わんばかりに

美味しさに目眩がした。ここのドイツパンが、私の中で最高峰になってしまった。

本当にここのパンは…美味しい…!!

素直に、「パンが美味しい、パンが美味しい」

言葉にするのが無意味なくらいに。食べてこそわかる。「来てこそ」わかる。


嵐、と呼べるくらいに強風の午後だったが、

木々で守られたこの空間は、その風すら心地よく、

目の前に広がる田畑がまるごと美味しさを後押ししてくれた。

長年来たかったお店に来られた達成感、それももちろんある。

それ以前に、こんな素直な感動を与えてくれるパンに

また出会えたことに、心の奥底から幸せな気持ちが溢れて来た。





帰宅後、このドイツパンたちを、私は大事に食べた。

京都で味わったように、

美味しいチーズを買って来て、軽くトーストして食べた。

ハチミツを塗って食べた。

鹿肉のリエットがなくなるまでパンに塗って食べた。

パンの美味しさを取りこぼさないように、

より美味しさを引き出すようにして食べた。

食べ切ってしまうとき、いつも以上に切なさを覚えた。






今回の関西旅は、個人的な思い入れのある旅だった。

ひとりで過ごす時間が多かった旅ではあるけれど、

それすらも意味のあるものとして

数は回らずとも、いつも以上にパンと純粋に向き合えたような。

私は私で、変わらずにパン好きであり続けたい。

そんな意味のある、3日間の関西パン旅。


…もちろん邪念もたくさんあるけれど(笑)

2009.5.30〜6.1