111.北の大地、秋の十勝、3日間




今年も帯広に帰る季節がやってきた。


*去年の帯広はこちら、2007年10月



毎年、北海道のどこかの町とひっかけて

パンめぐりをしてきたけれど、今年は帯広直行直帰。

ゆっくり祖父母の側にいようという決意のつもりだったのだけど

結局なんだかんだと美味しいものめぐりをひとり繰り広げる、いつもの帯広



朝一番の帯広行きの飛行機に乗り、

空港でそのままレンタカーを借りた。

11月だというのに北海道はすでに零下!





昨日は全道的に大雪だったらしいが、十勝は基本的に雪が少ないエリア。

少し心配だったがやはり今朝はすでに雪はすっかり溶けていた。


午後には車を返して、祖父母の待つ家に帰ります。

その前に…今回は「ひとり牧場」初体験?!





帯広空港の近くの中札内村には、立ち寄りのできる牧場がいくつかある。

(というか、牧場だらけである)

最初に立ち寄ったのは、「想いやり牛乳」で知られる想いやりファーム。

代々木上原にあるカンブツカフェさんで、一度こちらの「想いやり牛乳」で作られた

ソフトクリームを食べたことがあったのだが、

すっごくお値段の高い牛乳。とても手のかかる、貴重な牛乳だそう。





牛さんがモ−たくさん!

ストレスのかからないような飼育方法で、

あまりたくさん生産できないんだそう。

あわよくば「乳搾り」も体験してみたいなーと思ったのだが(笑)



事務所の方に行ってみると、牛乳とソフトクリームの販売をしていた。

ほんとに事務所の中でやっているので、フツーに事務仕事をやっている

その横でソフトクリームを食べるというなんとも奇妙な空間であったが(笑)


「ソフトクリームは11月24日を最後に冬季休業します」

とのこと。うわー、あと2日? じゃあ食べます(笑)。





寒いけどついついソフトクリームを食べてしまった。

砂糖などは無使用、牛乳そのまんまのソフトクリームなのである。

「東京のカンブツカフェさんでいただいたことがあるんです」

そう伝えると、事務の女性はとても喜んでくれた。

牛乳ももちろん購入750mlくらいで1000円くらいする! ひぃー)

さて、次の牧場をめざします!





はい、ここは有名ですね!

生キャラメルで有名な花畑牧場。

人気過ぎて、千歳空港では2時間待ちの行列ができるほど。


今回は、キャラメルが目的というよりも、

実は「ホエー豚の豚丼」が目的だったのだ。

うちの母によれば、今ホエー豚が人気で話題だそう。


ところが

なんと、現在豚丼は、冬季休業に入ってしまっているそう!

うそー!! なんでなんで?!

遅めの朝ご飯と思って、朝からほとんどなにも食べてないのにーーっ。

くぅぅ…。そのためのレンタカーだったのに(笑)。





くやしいのでキャラメルを購入していく(笑)。

さすがに牧場ではこんなにたくさんありました★

作っている作業風景も全部見学できるが、たくさんのスタッフを

使っているのに、手作業ゆえに生産が追い付かないんだなぁ。すごい。





チーズ工房なども見学して、さて、パン屋さんめぐりでもしましょうか…。

あう、おなかすいた。。。








車を走らせること1時間弱。

芽室に到着。ここには、ますやのパンが経営する石窯のパン屋があるそう。

(帯広の老舗パン屋。私も赤ん坊のころからここのパン食べてました) 手作りの風車が目印。





パン全般としては、地元の農産物を取り入れたパンが多く、

…といっても、(パン好きの視点からすれば)まぁ「ますやのパン」と

大きくかけはなれたものはないのだが、

その中では石窯のピッツァが美味しそうなのだ。

しかし…次々売れているので、ラスト1枚、これだけしか買えず。





雪がまだ残るベンチに腰かけて「ジャーマンピザ」をかじる。

うっわー。じゃがいももソーセージも美味しいー。

いや、生地自体ももっちもち甘みが強くてうまい!

やっぱり、十勝はじゃがいもとソーセージを選んで間違いない。

すでにお昼すぎていてものすごい空腹、というのもいいスパイスだったみたい。

ピザ、もう一枚くらい食べたかったなぁー。







続いて、帯広の隣町の音更町へ。

以前、帯広パンめぐりをしたときに残念ながら定休日で

買えなかったパン屋さんへリベンジ。


*そのときの模様は、2004年秋





それが「のんびり屋」さん。

ルヴァンでの修行経験がある、というだけでも期待が高まるが

それ以上に、このロケーションがすごい。

十勝川温泉街からもやや離れた場所にある住宅街。(といっても密集したような場所でなく)

きなりのログハウスで、マイペースにパンを作り、売るスタイルだ。




まだパンは十分残っており、あれこれと選ぶことができた。

クロワッサンは、この手のルヴァン系譜のパン屋さんとしてはかなり巨大で(笑)

ちょっとびっくりしたが、やはりバターよりも粉の存在感がある、

しっかり味わう系のクロワッサンだった。





つぶつぶたっぷりのエピ!

かなり表皮はハードで、中もそれほど水分が保有されている感じではないけど

スナッキーで美味。胡桃がころころ入っていたように記憶してる。





「これは絶対はずせない!」

そう確信して選んだアップルパイがずばりビンゴ、とても美味しい…!

甘さ控えめに煮たリンゴがたっぷりと惜しみなく入り、

パイもバター控えめの、そう、あの系統のノンシュガーパイとかが

好きな人ならたまらないハードなパイ! 美味しいーーー!





ルヴァンルヴァンと連呼して申し訳ないけど

はじめて来たお店でも、「きっとこれは美味しいハズ」という

読みがあるのは時としてメリットだ。

そう、私が大好きなかぼちゃパンは、きっと美味しいに違いない。

そして、やはりここのかぼちゃパンも、美味しかった。





そして見た目もやはり美しかった。

むっちりと詰まった中身を大事に守るかのごとく外ががっつりハード。

ハードでも、やさしさを兼ね備えている。

かぼちゃの自然な甘さと、むっちりと抵抗するかのような口当たり。


4年ごしでようやく来られたパン屋さん。

どうぞ、これからものんびりとパンを焼いていて欲しい。この場所で変わらずに。




本当は、エピが美味しいはるこまさんへと向かおうと思ったが

もうあまり時間はない。音更町にもう一軒、行こうと思っていた

パン屋さんがあるのでそちらを優先した。





「くるみのランプ」はまだ比較的新しい、今風のパン屋さんだ。

とてもおしゃれな外観で、とても大きい。そして天井がとても高い!





パンのラインナップは、ハード(といっても、馴染みのない人にも食べやすそうなとっつきやすそうな)

とソフトがバランスよく、おしゃれに並べられている。

購入したのは道産小麦のキタノカオリを使用したベーグル2種。

りんごとシナモンのベーグルと、ブルーベリーベーグル。

あまり膨らみ切っていないところが逆に密度濃くて具を楽しめる。


他には明太フランスと、ノアレザン。

ノアレザンは、カンパーニュ生地に、白ワインとはちみつに漬け込んだレーズンが

入っているのだが、香りが高くて美味。生地はさっくりと表皮が食べやすく。

人気店というのもうなずける。この時間ではあまり選択肢がなかったもの★



すっかり予定より遅く三時ごろ返車、

それからたまたまこの連休に埼玉からひとりで来ていた

叔父に車で帯広まで迎えに来てもらい、

そのままデパートで買い物に付き合う。





…明日の晩酌用に購入したのはビール♪

十勝の地ビール2種。モール温泉ビールというのが十勝川温泉らしい(笑)。








祖父母の家に到着後、寝たきりの祖母の顔を見てから

祖父を連れて行きつけのジンギスカンの店へ。

帯広に来たら必ず行く、子供の頃からの味。





祖父はサクッと食べるとすぐにひとりで帰ってしまった。

叔父と私はゆっくり、ジンギスカンを引き続き楽しむ。

ここのジンギスカンは、1人前300円台(笑)。

二人で5人前近く頼んだのだが、あっさり食べ切れてしまうのだった。

やっぱり美味しいーー! ジンギスカンはやっぱり道産子のエナジーである。



祖父に車で迎えに来てもらうのは悪いなぁということで

徒歩で30分かけて叔父と並んで歩いて帰って来た。

こういうのもとても珍しい(というかはじめて?)。

あと5年で定年を迎える叔父と、将来のこととか

いろいろなことを話ながら零下の北海道の夜道を歩いた。






翌朝!

私はひとり、帯広駅横のホテルに二泊していた。

ランチを食べてからまた祖父母の家に行く予定だったのだが

そのランチの店がこちら!





ずーーっと昔からいきたくてたまらない、

オーベルジュのシェフが独立して出したフレンチレストラン。

これも母からの情報である(笑)。


町の中心地に立地するのだが、カジュアル路線のカフェも併設し、

本格レストランスペースとは区切られている。

カフェの方では、クレープや日替わりランチなども出しているらしい。

私はもちろん、レストランの方で。





お野菜が中心のランチコース。

1800円なのに、にんじんのムースのアミューズからスタート!

にんじんの甘いほわっとした香りが実に美味。





お野菜とホタテのテリーヌのサラダ仕立て。

ソースは魚介系。これも、きちんと丁寧に下味がついていて

仕事のていねいさが伺える一品!





1800円のコースなのに、スープまでついてくるとは…

これも、甘みがじんわりしみる、かぼちゃのスープ。

どれもオーソドックスな素材なのに、きっちりおさえてくる





メインは、肉と魚から選べるが(2800円のコースなら両方)、

これは鯛のポワレ。

一見、シンプルに見えるが、上には牡蠣のソテーがコバンザメ!(笑)

さらに下敷きになっている野菜は、およそ20種類くらいも!

どのお野菜にも、ひとつひとつに味があり、どうしてこんなにたくさん入っているのか

感動以上に驚きが隠せない。洞爺のガルグイユーを彷彿させるほど(おおげさ(笑)





デザートは、今流行りの(笑)、塩キャラメルアイスクリームにガトーショコラ。

この塩キャラメルアイスが絶品すぎて、思わずうなってしまった。

聞くところによると、塩が馴染むのに一週間かかるそう。手がこんでる



あまりに充実した内容に感動して、ギャルソンさんに思わず

「お野菜たっぷりで感動しました!」と伝えた。

すると、やはり野菜をたっぷり食べて欲しいという気持ちで、

いろいろ工夫しているそう。だって…こんなにたくさんの種類の野菜を

ひとつのコースで食べられることなんて、そう滅多にないもの




明日帰京するからお土産が買いたいということで

叔父がまた迎えに来がてら、街に来た。六花亭で待ち合わせし、

あれこれお菓子を買い、ソフトクリームとコーヒーを飲みながらひといき。





あ! どうせ車なら、ここにも寄ってくださいな!

歩いてもたいした距離じゃないんだけどね。寒いから。


札幌にもある、十勝ベーグルの本店。

微妙に中心地から離れているのだが、この店が道内で商売を広げている。

店構えは、帯広では珍しい木造の小民家風の建物。

冬は寒かろうに?!(笑)


サンド類がとても美味しそうだったが、持ち帰りに2種ベーグルを。





赤ワインのベーグルと抹茶ホワイトチョコのベーグル。

薄皮(というかクラムとほぼ一体化)のタイプのベーグルで

チンすれば粘り強くうねる生地。B&Bっぽいかな?





隣には、昔からこの場所でものすごく人気のあるまんじゅう屋さんが。

ここは何度か来ているのだが、来るたびに店構えがでかくなってる気が(笑)。

ここの大判焼はほんっとーに美味しい。

生地がはんぱなく甘くてホットケーキのよう。

甘いものが大好きなじいちゃんへのいい土産になるのだ。





叔父と夕食の買い出しをしてから家に戻る。

…またジンギスカンか!(笑)

いや、今夜は、道産子の定番、冷凍ロール型のジンギスカン。

そう、そもそも道産子はジンギスカンは「家で食べるもの」。

外では滅多に食べないもの。家では、この冷凍のロール肉。

タレつきは邪道(と、本気で昔は想っていた…)。

これにベルのタレをつけて食べるのだ。おいしーい。


また、近くの温泉に寄ってから帯広のホテルに戻った。

食べて飲んで温泉入って…そんな毎日を過ごしている、結局(笑)








翌朝。

早めにホテルを出て、家に戻って来た。

叔父が昼の飛行機で帰京するので、その見送りのためだ。

祖母をみんなでお風呂に入れて、それがひと段落ついたら

私は叔父を車に載せて、空港まで送る。

本来なら、祖父が車で往復してくれるものなのだが

もう、いいかげんあまり車の運転をさせたくないという気もあり




そのまま、温泉に立ち寄った。

これは市内にある有名な公衆温泉。

近いのに一度も行ったことがなかったのだが

うう、あっという間に湯冷めしてきた、、、寒いのよ、北海道!





昼にはひとりで、祖父母の家の側にある、いつものラーメン屋。

ここの味噌ラーメンは、典型的な道産子ラーメン。

もやしとタマネギを脂でじゃかじゃか炒めて、

濃すぎるくらいの味噌スープ。にんにく効きまくり。黄色い縮れ麺。最高。

味噌ラーメンはこうじゃなきゃ。





夜、空港行きのバスを待つ間、駅から徒歩圏にある

十勝ビールの地ビールレストランで2杯ビールを飲み、

カラダを冷やす(笑)。なにやってんだか…(笑)




今年も、帯広に来ることができた。

実は、毎年「これが最後になったらどうしよう…」と

不安でいっぱいになる。

それでも、奇跡的に今年も来られた。

きっと来年も、再来年も来る。きっと来られる。


時の流れは、いつまでも私を子供にはさせてくれないし

残酷に人を老いさせていくけれど

変わらずに待っていてくれる肉親と、変わらぬ味と風景。

ここに来ると、私はやっぱり「子供」であることを

イイ意味で痛感するのだった。


「また来年もくるからね」

東京へ帰る私は十勝の大地に別れを告げた。

2008.11.22〜24