64.丸の内VIRON@パンのおはなし会




もうすっかりお馴染み「パンのおはなし会」。

どんどんエスカレートしていくこの会ももう8回目。

「そろそろネタも切れるころでは…」

そんな懸念も吹き飛ばされたのは、

仕事中に飛び込んで来たパンクラブの一通のメールから。



「今回のおはなし会はVIRONで…」

な、なにィ?! VIRON?!

そ、そんな恐れ多い、あのVIRONでやるというの?!

しかも、二号店の丸の内TOKIAのブラッセリーを

私たちパン好きたちに貸切りで開催するだなんて…。

…ついに…パンクラブもここまで来たか…

もう、行きついてしまった感もある(笑)。



VIRONという店への思い入れは並々ならぬものがある。

渋谷にオープンした2003年のあの年のことは忘れられない。

近年フランスからいくつもの名店が日本のパン業界に新風を巻き起こし、

初めてPARISへパンめぐりの旅に駆り立てられたのもこの年だった。


VIRONのレトロドールで受けた衝撃がまだ新しいうちに訪れた本場で、

「これはVIRONと比べてどうだ、あれはVIRONと比べてどうだ」

パンの楽しみ方は、VIRONに出会う前、後とでは180度も変わっていた。

そして、HPを開設したのはその直後である。


以来、VIRONほど足しげく通う店は他になかったように思う。

憧れのプチデジュネに、何度友達を連れて行っただろう。

すべてのパンを食べ尽くし、何度も何度も繰りかえし食べた、通った。

それまでパン不毛地帯で近寄らなかった渋谷に足しげく通わされたのも、

すべてはVIRONに寄るためだった。


一時、パンが荒れたように思えた時期もあったが、それはとても辛かった。

また再び以前のようにパンが戻った時には、誰かれ構わずその喜びを伝えたくなった。

丸の内に二号店ができたら、今度は立ち飲みにも通うようになった。


少なくとも「東京でどこがオススメ?」と聞かれれば

一にも二にもVIRONを推薦しておけばまず間違いなかろうかと(笑)。



…って、VIRONを語り出すと一向に「おはなしの会」のはなしに進めないので

このへんにしておきましょう(笑)。






平日の午後だというのにパン好きみんな大集結!

最初にパンを買っておこうと思ったが、買うのを踏み止まった。

その決断は後になり正解だったことを知る。

…だって! トップの画像の通り、次から次へとパンが飾られ運ばれてくるのだから…!!


社長さんとシェフの紹介、ひとこと御挨拶のあとは

料理とパンが止めどなく運ばれてくる。

パンの説明はシェフから、料理の説明は社長さんから。



あぁ、耳を傾けながら口を動かすのはなんと難しいことだろう!

(これはいつもおはなし会のときに悩むことなのだが(笑))

あまりに多くのことを語って頂いたので全てを書き残すことはできないが

(聞きそびれていた方が多いので。わー罰当たり。堪忍やー)

溢れんばかりのパンと料理の画像でフォローしたい。



実は私、VIRONで社長とシェフのお話を伺いながら料理を食べるのは初めてではない。

以前、渋谷の方でとあるイベントに参加したときに

料理の美味しさにも瞠目&悶絶、そしてその太っ腹っぷりに仰天したことがある。

今日は…あのときを上回ることになるなんて、思いも寄らなかった…!




冷製の前菜盛り合わせ、アセットソシス(画像奥)。

…リエットやパテ、ハム、ピクルス、パンの"お新香"たちがめじろ押し!!

さらに、パプリカと生ハムのピペラードが乗ったカナッペ(画像右)。

そして止められないVIRONの代名詞、バゲット・レトロドール…!

(画像にはないけど、レトロドールよりも好きなトルナーデも一緒に!)

普通はこれくらいで十分すぎるボリューム。

最初から飛ばしては絶対、絶対、絶対にヤバいのに(笑)

どうして止められようかっ!





しゅるしゅるっと口溶けるフロマージュのような

白いジャガイモのピュレとコンソメジュレの上に乗るのは…。

くわー! ウニ! ウニーーっ。





そう! VIRONと言えばこの白レバームース!!

(画像は4人分)

以前いただいたときに、舌よりも先に脳みそがとろけるくらいに

美味しかったのがこれ。

しかも今、私が一番食べたいのが"白レバーの焼き鳥"なので(笑)

DIARY2006/4/12参照)

実に実に私の中で旬であり…(笑)。

これをレトロドールに合わせていただけるなんたぁ、罪?!(笑)


もうもうもうもう、言葉を失う美味しさ!!

猛烈に押し寄せるレバーのまったりとしたコクに

不思議とキャラメルソースが旨さのアクセルを加速する!!

臓物愛好家にはほんっとに涙がでるほどに美味しすぎる…!!

いや、これなら臓物嫌いでも絶対嗚咽できるはずだ。

なぜなら、臓物につきものの臭みやクセがほとんどなく

…かといってレバーの味わいがきちんと存在する、

臓物のコペルニクス的転回を見事に実現したムース!

(って分かりにくいなー)





青青としたオリーブも「あぁ、オリーブってフルーツなのよね…」と

再確認させられるほどにフレッシュで絶品!


これはもう少しあとに登場した、フランス産ホワイトアスパラ。

ホワイトアスパラ、高いんだよねぇ〜。

なんて、ショーミな話をしながら2本ずつ(!)もいただく。

しゃきっと固めに茹であげ、クリーミーかつ酸味のきいたソースを添えて。








料理とパンに大忙しの私たち(食べるだけなのに!)の元に

スタッフの方々が運んで来たのは、

喫茶店やパーラーで見かけるような器にてんこもりの白い物体…。

フルーツパフェ? …いんや、でもフルーツ乗ってない…

ただのホイップクリーム?! いったい何に使うの?!


パンの説明をひとつひとつ丁寧にしてくださるシェフと社長、

この生クリームも、ぜひ私たちに試してもらいたい食べ方なんだそう。


生クリームとレトロドール?!

えぇー! あんこ&生クリームはよくやるけど、それはレトロドールなどのような

高貴なパン(?)ではなくコッペパンが相場のはず…。




このクリームがまたあなた!

パンの味わいを損ねない程度の絶妙な甘さ!

バターと違い塩気があまりないから

ほんのりやわらか〜く脂肪分と甘みを添える。

同じ脂肪でも、バターのそれとはまた違う!

あぁぁ、こんなにつけ過ぎちゃパン味わえないでしょーよ(笑)。


あまりにこのホイップ&パンのやさしくやわらかい組み合わせが新鮮で

来るパン来るパン、ホイップクリームを付けた。

意外にセ−グルにも相性がよかったし

イチジクのパン(後出)との相性はレトロドールを上回る!

クリームの減りは早く、たちまちパフェの器の底が見えた。


「他のテーブル、きっと余っているから分けてもらう?」

そう画策してみたものの、あれま、

どこのテーブルも生クリームがほとんど売り切れ(笑)。

誰もがこの食べ方にハマってしまった模様(笑)。








料理が1つ出る間に、パンが3種くらい登場する…

これはほんの序の口…。

フーガスオリーブと、レトロドールのリュスティック版、プーリッシュ。


「フランスに忠実なパン屋」

それを目指し、VIRONにあるものは、

フランスでも一般的に作られ売られ食べられているもの。

だからここにはメロンパンもあんパンもない。

(食べたければ、地下の「みんなのぱんや」に行けばOK!!)


VIRONのフーガスシリーズは、

トマトもフロマージュも、このオリーブも全部大好き!

特にこのオリーブは、お酒を飲むホームパーティーでは欠かせない。


「アンチョビを詰めたオリーブは、普通はパンの具材には

贅沢すぎて使わない、だけど美味しいから使う」

そうおっしゃるシェフ。

ずいぶん採算に合わないようなことをやっているらしいのだ、この店は!


「儲けがでないんですよね(笑)」

このセリフもこの日、何度も聞いた。

うわぁ…。もっと言って! もっと言って!

このセリフ、私、大好きなんです。

だって、大好きなあの店と同じ匂いがぷんぷんするんですもの!





ここからはクロワッサンもの3連発!

エシレを使ったクロワッサンは、VIRONならではのデカサイズ。

向こうでは当たり前のサイズだけど、日本ではあまり一般的じゃないサイズ。

(日本人はちっこい食べ切りサイズがお好みだからね。かくいう私も…)


日本で使うには、あまりに高価なエシレ。

普通のバターの4倍もするというのになぜエシレにこだわるか。

それは、「美味しいから」というだけではないのだそうだ。

このエシレだけは冷蔵の状態で空輸されるからなのだ。

他のバターは空輸の時に冷凍をするので味が格段に差が出るそうなのだ。

ふわーーー…。そこまでこだわりますか!

初めてみた、5キロサイズのエシレの木製バスケット。

うちの部屋にもひとつ置きたいー!





VIRONが以前よりもますます美味しくなったと感じるのが

ハード系よりもむしろヴィエノワズリーだ。

VIRONのパン・オ・レザンも何度も食べているのに

こんなに悶絶するほど美味しかった覚えはないの…!

ラムの香りがぶわっと立ち込めるレーズンを包み込む、リッチなパティシエ−ル…!

鳥肌がぶわぶわ立って来た。ぷるぷる…!




いんや、これは悶絶経験あるぞー!(笑)

大好きなショコラ・フランボワーズ!!!

ここより美味しいショコラフランボワーズ、他にあろうか? 否!(笑)

ツブツブほろほろに焼き固まったダマンドに甘酸っぱいフランボワーズと

絶妙な量(ここはあえて、多すぎないところが絶妙!)のショコラの

完璧なまでのトリオ……いや、クロワッサンを合わせてカルテット!








VIRONの粉は、一般のパン屋さんにも販売を開始したのだけど相当お値段は高いみたい。

この先、レトロドール粉を使ったパン屋さんも出てくると思われるけれど

今はまだ、扱うのが難しいこの粉と格闘、

試行錯誤を繰り替えしているころでしょうね(笑)

そう、語るは社長さん。


レトロドールのパンが食べられる機会が増えるのは

私たちにも歓迎だけど、なかなか難しいんだろうなー

シェフも、バゲットレトロドールを完成させるのに難航して

渋谷VIRONオープンの3日前(!)にようやく納得できるものが出来たそう。

間に合わなかったらどーするつもりだったんだろう!


ちなみに、この小麦粉の袋に目をつけたデザイナーさんが

リサイクルして作られたショッピングバッグが店頭に売られている。

すごーーーく欲しいのだけど、今はまだためらっている。

紙製だが丈夫。…しかし唯一の欠点は「水」に弱いという(笑)。








本日のメインディッシュ!!

なんとブータンノワール!!!

私、ブータンノワールには目がないのだ。

とにかくこれが好きで好きで…!


付け合わせには、なんと焼きリンゴ。

これがほんっとーーーーに美味しくて、

きっと臓物系が苦手でひるんでいる人にも

焼きリンゴがフォローしてくれるという嬉しい一皿。


このブータンノワールは、驚くほど血の生臭さがなくて

(もっと、鉄分臭いブータンノワールに遭遇することがある)

実に食べやすい。いや、食べやすいというのはこの際、褒め言葉である。

クミンで生臭さを抑えているという話だけど、クミン臭さも(思ったより)あまりしない。

お互いをいい具合に相殺しあって、「濃厚なウマさ」だけを残した感じ! 絶品!





こんな一皿が出て来ちゃー頼むしかないでしょ、ビールだよ、ビールぅ!

私、この後会社に戻らなきゃならないんだがな(笑)、まぁいいっか。

今日は宴なり! 知るか知るかーっ。





ブータンノワールに合わせるならこのガリっとハード&むっちりクラムの

パン・ド・カンパーニュ・ルヴァン。





ソースを吸わせたカンパーニュに焼きリンゴ、ブータンノワール、

一気に口に放り込む…口の中で広がるまろやかな大波…

そして唸る、震える、拳を握りしめて五木ぴろしー!!





お皿をさげようとしたサーヴィスさんを制止したのは、そう。

お醤油が隠し味の絶品ソースも余すところなく

パンで拭わせていただくためでございます(笑)





お料理を一通りいただいた頃にはもう腹十分、いや、十二分。

次のパンに進むのがしんどくなってきたけれど

それでも惜しみなく、登場するパンたち…。ひえ〜。

だんだんサイズが大胆に、デカくなってきているのは気のせいでしょうか(笑)。

(語るのも大変になってきたので詳細は端折ります、申し訳ない!)


ブリオッシュシュクールやセ−グル、コンプレ…

家に持ち帰ればいいのに、一口ずつだけでも食べずにはいられない。

生クリームをつけて食べるセ−グルの美味しさにも瞠目!


木枠に入った6セレアル4グレイン、

この木型は、一つあたりのコストも結構かかっているそうな。

だからというわけじゃないが、食べ終わっても捨てられないよねー。

ショーミな話!(笑)





−グル・フィグなんて1/2個も割りふられてしまって、わんわんわわん!

トルコ産の白イチジクまで大盤振る舞い、

あああ、シェーフ! シャチョー!(笑)

このイチジクを1/4カットして混ぜ込んでいるそう。





最後の最後に、大好物が登場するあたりが憎いあんちきしょー!

コンプレノア。そう、VIRONでレトロドールよりも一番愛食しているもの。

実は先週も買ったんですが(笑)。また来たかー(笑)。

きっちり1/2個…。あぁ、ほんとに最初にパン買わなくてよかった…。


そして最後の最後の力を振り絞って食べるはショーソン・オ・ポム!

紅玉の酸味を最大限に引き立てる甘さのブレザーブに悶絶、

ざっくりざくざくのバター香ばしいパイ生地に全身総鳥肌!! 鳥ボボ!!!

いくら鳥肌が立っても寒くないのはなぜでしょう?!(笑)


VIRONのパイ生地がどうしてこんなに香ばしく、美味しいかの秘密をシェフは語る。

VIRONのフィユタージュは、専用の冷蔵室があるから

生地にバターを折り込むのではなく、

バターに生地を折り込むのが作業的に可能なんだそう。

常温ではバターが溶けてしまうから、冷蔵設備があってこそ。





そうそう、おはなし会恒例のクイズ大会もあったのだが…。

ここはサクッとでよいですか?(笑)

えぇ、そうです、私は何問目かで敗退しましたからね(笑)。

賞品の特製カスクルートを作る料理長のお姿を

指を加えて眺めることが精一杯だったわけで。とほほ。





さらにデザートのミルフィーユとコーヒーまで…。

食べて笑って震えて悶えて…の、濃密すぎる2時間半は終了した。





はぁぁ…。

もう、みなさんにはお分かりだろうが、

これだけのパンをVIRONで買おうものなら、一体いくらになるか、ってことだ。

それにプラス料理。うーーーん、太っ腹すぎて



絶え間なく解説してくださるシェフと社長、

最高の料理を提供してくださる料理長、

常にテーブルを巡回してこまめに働いてくださるサーヴィスの方々…。

この会を通じて、彼らのスタンスは一貫していた。


「パンを美味しく食べてもらいたい」

その一心で、この場に参加できた私たちに

受け止めきれないほどのもてなしをしてくださった。


彼らの一貫したスタンスはもちろん、

このたった一日限りの会に限ることではない。

徹底したフランスへのこだわりも、

粉の一般販売のこともそうだけど、

「もっと日本に美味しいパンを! 本物のパンを!」

その情熱と信念が痛いほどに伝わって来た。



もともと大好きだったVIRON。

名前を聞くだけで胸が高鳴るVIRON。

これからもずっと私たちの憧れであり、

先駆者であり、

スタンダードであってほしいVIRON。



だけど

前よりずーっと「身近」に感じられるようになったのは

「もうけがなくて困っちゃうんですよね(笑)」とか

「でも美味しいからやってしまうんですよね」

そういう「とほほ話」をされることに一番弱いのかもしれない。

(この店に限っては「売れないんですよね、とほほ」なんてセリフはありえないけど(笑))

そういうざっくばらんさにイチコロなのである。



それも全てはこの「おはなしの会」があってこそ。

参加する前からこうなることはわかっていたことだけど

感謝の念を改めて…。



「フランス行く必要なんてないわ。だって東京にはVIRONがあるんだもん」

もう、VIRONのない生活なんて想像できやしない。戻れない。