45.バカンス前カノムパンと葉山の風、あじさい鎌倉



* 第一部 葉山編 *



ゆるゆるした空気と生命力に溢れたパン。


そのパン屋さんにはいいパンを焼くために不可欠な「バカンス」がある。

夏のこの時期に一ヶ月ちかくバカンスに出かける。

出かける…というか、「帰る」といった方がいいのかもしれない。


タイに帰り、また葉山に帰る。

そしてパンを焼く。

タイごはんを作る。

また、パンを焼く。

タイに帰り、また葉山に帰る。


ゆるゆるした風と、生命力に溢れたパン。


彼らの帰る場所にはいつもアジアのゆるりとした風が吹いている。

私たちは葉山に行くことでこの風を感じることができる。



ゆるゆるした風と、生命力に溢れたパン。


それをほんの少し分けてもらいに、

その風と空気とパンに会いに葉山へ赴いた、

バカンス直前、7月上旬の日曜日。






忙しくて絶対バカンス前に行けないよーと歯ぎしりしていたのだが

急遽2日前になって予定が空き、即座に葉山行きを決行!!

「新宿湘南ライン」は池袋から逗子まで乗り換え無しで行ける素晴らしい路線。

実は意外と遠くはない?!


今回で三回目になるカノムだけど、逗子からバスで行くのは初めて。

ヘタしたら雨が降りそうな梅雨空ではあるのだけど

7月とは思えない爽やかな風が吹いている。

リゾート気分で腕を露出した服では少し肌寒い。





mi_waさん場所知っているだろうな」

私を信用していた連れと、

「バス停に着けばなんとなくわかるよ」

自分の土地勘の良さを信じ過ぎていた私。

どちらもおバカさん?!(笑)


…車で来るのとでは景色が違う。

あわわ、地図持ってこればよかったぁ〜。

お店に電話をしたりしてようやく到着。

茅葺きの蒼い壁。そうそう! ここだもん! 1年半ぶりのカノムだもん!

(*前回来訪時はこちら




今回もタイランチ食べて帰るのだ。しっかり"RESERVED"してあるのだ。

…そうだ! 前回来た時は真冬だった。

葉山に雪が降った、あの変な日だったっけ(笑)。

夏の葉山のこの風…なんて気持ちいいんだろう…!





「いらっしゃるの、3回目ですよね」

そうおっしゃってくれるものの、ホントに私と一致しているのかな?(笑)

あ、でもでも、この間のガイアのイベントの時のことも覚えていてくれていたし

(*05年3月25日DIARY参照)

やっぱり同一視されていると信じよう(笑)。

ここはあまりにも遠いのだもん。なおさら嬉しいもん。

覚えてくれていることはおかしな話だけど「客・冥利」に尽きる!





今日はバカンス前の最後の週末。

これからたくさんお客さんがくるだろう。

ぞくぞくとパンが焼き上がってくる。

それと同時に、タイランチの準備もしてくれている模様。


お兄さんのおっとりしたテンポの口調と

時折顔を見せながら会話に加わってくれるお姉さん。

会話を楽しみながら私たちはパンを選ぶ。





友達のサイトで「食べたよ〜」を見せつけられたそら豆のパン。今日はないのかな?


「そら豆のパンは今日はないんですか?」

「たぶん…焼いてないです。今日ボク、そら豆むくの頼まれてないんで(笑)」

このひとことには爆笑させられた。


「あれは、、実にいいそら豆でしたねぇ(しみじみ)」

ぎゃおう、そんなこと言われたらますます食べたかったよぉぉ。





バゲットといちじく胡桃。

私は今日初めて来た連れにいちじく胡桃とチーズオレガノ、ココナッツボールは

絶対おさえるようにと伝授(?)しておいた。

…のに、いざきてみると、あれもこれも目移りして…

結局自分ではいちじく胡桃、買ってないの! バカー。





今日の試食は黒胡椒のパン(画像左奥)。

カノムのパンは、冷めるとナイフも折れてしまうのではないかというくらいに

激ハードになる、岩石のようなクラストが特徴だけど(笑)焼きたては全く別物!

ざっくりとナイフで切り分けられたパンからは、ほくほくと湯気が立ちこめる。

そして使われるスパイスの溢れる野性味といったら!

辛いほどの胡椒に、しばらく口の中がひりひりと余韻が残っていた。





タイ食材もあれこれ買える。

バカンスでタイに「帰った」ときに向こうで買い付けてくるものだ。

だから、日本語の説明書きなどはないのでひとつひとつ使い方を聞いた。

そう、私は近頃まさに「空前のタイ料理マイブーム」(笑)。

さっそく今夜のごはんにしようかな!





ごはんがでるまでとりあえず乾杯しとく?!

私たち、どーにもいつも昼間っからビール飲んでるよね…。

でも、このいい風が吹いているこの時間に、ビール飲まずになにを飲む?!

これが飲まずにいられるかっ!(笑)


(左)静岡の地ビール「風の谷のビール」と

(右)象のマークの「チャンビル」。グラスには氷入り。

タイではビールをグラスごと凍らせた氷にビールを注ぎ、

溶かしながら飲むらしい。アルコールが薄まってちょうどよく飲める…らしいけど、

それ、超〜好みの飲み方かも知れない! ていうか、たまに家でやる(笑)。

いつまでも冷えた状態で飲めるのが嬉しいのだ。

…もちろん、最後は薄まってビールじゃなくなってたけど(笑)。



ちょうどそのころ、地元のパン狂マダム(笑)も到着。

わざわざご足労いただきまして〜。前回来訪時はお世話になりました★

彼女は地元なのでちょくちょくこの店に来ている。

だから、今日はタイランチとケーキを一個買っただけ。

「いつでも来られるから」


かーーーっ! なんつー余裕発言!(笑)

さすがマダム。(?)





じょん! 今日のタイごはん〜!!

ラタトゥイユにターメリックライス。

フレッシュハーブのサラダ。

じゃがいもとトウモロコシのオーブン焼き。

そしてソースをぬぐうためのパン(カンパーニュとバゲット)。

ハイビスカスティーとともにじょぉんと登場!!





湯気がゆらゆら目に見える焼きたてのカンパーニュの

強い酸味とそれを上回るダイナミックな粉の旨味に呻く。

ラタトゥイユは季節の野菜がふんだんに盛り込まれ、

どれも味が濃くて美味!! 枝付きオリーブが決め手かも。

私はなによりもフレッシュハーブのサラダにかなーりキタね。

塩と胡椒と油のシンプルなドレッシングで和えているだけなのだけど、

かなりしっかりと塩を効かせているからそれだけで十分おかずになる。

ターメリックライスと混ぜ合わせて、余すところなく食べた。


気のせいだろうか、前来た時よりもずっとタイランチが美味しく感じる〜。

夏の風のせいかもしれないな。この店はやっぱり夏、なのかもしれない。

たとえ夏が混んでいようとも、

たとえ真冬が空いていようとも(笑)。





お姉さんが小さなパンのかけらを神棚に載せていた。

「それ、お供えですか?」

「タイで拾って来たんですよ」

なんか、いろいろな神様を拾ってくるらしい。商売繁盛!





「焼き上がりましたよ〜取っておきます?」

メランジュの焼き上がり! うぎゃうぎゃっ、

がっつりと焦げた岩のようなメランジュ!!(メランジェ、じゃないと彼は主張)





前回来たときとまた違った中身なのかな、

チェリーのダイナミックな酸味(唾液がじゅわぁ〜と溢れるような…)に

カレンツとクルミとオレンジピール。そしてこの店のパンに欠かせないココナッツも!!

感動的に美味だった。チェリーとココナッツの組み合わせ、これまで出会ったことあるかな?

思い返しても蘇ってこない。…初体験?! きゃっ。顔が赤らむわ!(←?)





カノムのパンたち。ゆるゆるとした空気とは対照的な、ガッツリハードな野性味溢れるパンたち。

どうしてここのパンたちはこんなに野性味が溢れているのだろう。

どのパンも大好きだが、私はこの店のチーズを使ったパンたちがとりわけ好きだ。

ハーブを使ったパンたちに無我夢中だ。

なにをとっても、とにかく臭う。たとえばオレガノチーズは

洗っても取れないような強烈な匂いが手に持っただけでついてしまうほど。

カレーのパンは、カレー粉のパン。カレーパンよりももっと、リアルなカレー風味。

ひとつひとつのパンたちに、「生命」「力」を感じてしまう。





今回、唯一予約をしたバナナパンevo。

木箱に入れて焼かれたこのバナナパンは、手で握りつぶした粗いバナナがそのまま入っている。

これもやっぱりスパイス(シナモン)とココナッツが隠し味となってこの上なく美味。

南国の香りを持ちながら、まるでお餅のようにネバネバゴムゴムした生地は

日本人には懐かしさすら覚えさせるかもしれない。





とにかくタイ料理は簡単。それを最近知ってからは、なおタイ料理の魅力にはまっている。

オーガニックココナッツシュガーは、店の料理用に多めに買って来たものだったのだけど

使い切る前にバカンスに突入しそうということなので店に並べたという(笑)。

これを手に出来た私はラッキー? この砂糖を隠し味に使えばなんでも美味しくなるそうな。

ほんとかな、私でも?(笑)


プーパットポンカリー(カレー風味カニの卵炒め)の絵柄が載ったカレー粉。

そして「また買ってくるからどうぞ」とおまけしてくれたスープの素。

またバカンスでタイに行けば、新しいタイの味を仕入れてくるみたい。



バカンス明けにすぐにでも駆け付けたい。葉山に来たい。

私の中のタイ・ビッグウェーブはまだまだ引きそうもないのだから。

一ヶ月ちょっとのバカンス、楽しんで来てほしい。

そして、またゆるゆるとした空気と生命力溢れたパンとタイの香りで

私たちを迎えてほしい。

その日はまたこんな風が吹いているといいな。





* 第二部 鎌倉編 *



一緒に来た連れは、別件で慌ただしくバス停へ走って行った。

残されたマダムと私はJRで鎌倉へ流れることに。





鎌倉…といえば、もうここでクロワッサンを買う以外に思いつかない。

名前は変わってKIBIYAという名前になっていた。





それでも好きなクロワッサンは変わらないまま。

小さくて、きゅっきゅっときつきつに巻かれて、嚼めばぎしぎし鳴って。

「いつもよりも小さいクロワッサン」(につき130円→100円)。

あ、袋の店名は変わってないね。

さて、このクロワッサンはいつどこで食べようかな。

どうにも写真を撮ってから食べたい、という気持ちはお行儀をよくさせる効果あり。





マダムが連れて行ってくれたのは、駅すぐ側の中央市場。

(画像は市場内にあるパン屋さんのコーンパン。マダムはアンパン狙いだったのに

「今日はもう出ちゃったんですよー」の一言に玉砕。よくあることです(笑))





話通り、この市場はすごい〜!

野菜が安いということもあるけれど、フレッシュハーブが安くて、見るからに「強そう」!!

バジルとルッコラを買ったはいいけれど、持ち歩いている間中、ずっとバジル臭くて参ったわ(笑)。





私、これから都内に戻ってライブに行くんですけど。

野菜なんて買ってる場合じゃないのに〜…といいつつ、トマトもズッキーニも買い漁る。

たぶん、昼間にあんな美味しいラタトゥイユを食べちゃった影響だわね。





そしてもう一軒!

実は私、初めてなんです、ロミユニ!!

しっかしイイお値段だ。お値段のことはあまりとやかく言いたくないが、

どーしてもお値段から目が離れない。こんなに種類が豊富なのに

私の財力では一個しか選べません(笑)。





こういうときは、なんでも第一印象で決めるのが得。

「アマンド」のキーワードに弱い私、選んだのは梅とアーモンドのコンフィチュール。

ローストアーモンドがごろごろと入っている酸味の効いた梅ジャム。

ぎゃぁぁ、めちゃ美味しい〜。

こんなん、パンにのっけるのもヨーグルトに入れるのももったいなさすぎ。

かといって、一気に食べちゃうのももったいなさすぎ(笑)。



マダムとはここでお別れ。

私も別件で5時までに東京に戻らなきゃならない。

タイムアップまであと30分。

でもここまで来たらどーしても寄ってみたい場所がある。

鎌倉から一駅、北鎌倉で下車をする。


今日は雨。7月。そして鎌倉。

そう、初めてのあじさい寺である。





ぼむぼむぼむっと紫陽花。

ふと気付くと、「女ひとり」であじさい寺に来ているのは私だけ(笑)。

カップルや家族連れ、友達グループが代わる代わる写真を撮りあっこしている中、

私はそういや「自分の写真」ってしばらく撮ってないなぁと気付く。


…パンしか撮ってないよ!(笑)


パン好きmi_waが寂しさを覚えた一瞬である(笑)。





ほんとはもっとゆっくり見て回りたかった明月院。

6月ならもっと紫陽花は咲いていたのだろうか。でも十分に堪能できる。





紫陽花は雨が本当に似合うんだな。晴れの紫陽花って、そう言えば想像がつかないよ。





竹林と紫陽花のコントラスト…たぶん、これも初体験。

アジアのゆるゆるとした空気も好きだけど

背筋をしゃんとしたくなるような日本の古寺もやっぱり好き。





…でも、結局は花よりもこれを選ぶ。

タニシに見えなくもないのが悲しいけれど(笑)。