14-1.3月関西パン紀行 〜バールでランチ&たま木亭〜



3月上旬。

関西に3日間行ってきた。


今回の関西行きを決めたのは二ヶ月前。

航空券バーゲンフェアの発売と同時に決めた。


私は関西には出張だろうとプライベートだろうと新幹線は使わない。

マイル集めの亡者の私は、すべて伊丹空港発着というわけだ。

半年前の夏にParisに行くために55000マイルを使ったというのに、

もう35000もたまっている。

おいおい、1年に1回海外に行けちゃうよ。

大丈夫かなぁ、航空会社…。サービスしすぎじゃないかい?



準備期間の長さに比例して、現地で会う人の数も増えてくる。

パン友に加えて、学生時代の仲間にも会う今回の関西行きは、

一人になった時間は、行きの飛行機くらいだった気がする。



***



8:15発の飛行機に搭乗予定。

しかし、私はその時刻を品川の駅のホームで眺めていた。

別に寝坊したわけではない。

すっかり1時間勘違いしていたのだ!

8:15をさす時計が目に入っても、まだピンと来ていなかった。


「朝の連ドラが始まる時間だ…録画忘れたよ、とほほ」


そんな悠長なことを思っていた。

その直後にはっと我に帰り、大慌て。

新幹線に切り替えるにも時間がない。

泣く泣く正規料金で大阪へ飛び立つはめに…。

(泣くに泣けない!!)



***



空港には、今回はじめてお会いするパン友ご夫婦が出迎えてくれた。

3月にしてはおかしいほどに寒く、雪の舞うような日だったので

「公園でパンとお惣菜でランチ」プランはキャンセル。

しかし、しっかり代替案をプランニングしてくれていたのだ。




空港から車で大阪市街へと入っていく。

この方の行きつけのパン屋さん(私も以前別店鋪にお邪魔したことがある)で

パンを調達、やはり行きつけであるバールでパンを広げさせてもらい、

フードもいただいた。もちろん、顔が効くからゆえのこと。真似しちゃいけない(笑)。




ナポリのバールに魅せられたマスターが

この“気軽な社交場”を開いたのは97年のこと。

しかし、その年数以上に、イイ感じに年季が染み込んだバールだ。

昔ながらの喫茶店的無機質なショーケースや、くたくたなメニュー。

壁にはイタリアの風を送り込む写真の数々。

ニスが少しはげかかったテーブルやイス。

とりたてて“おしゃれ”な店ではないが、

“おしゃれすぎない”のが“かっこいい”のだ。

宇野さんは、どことなく俳優の田辺誠に似ている。

…私の主観だが(笑)。




運転してもらっているのに「とりあえずビール!」な私は

遠慮がなさすぎて罰当たりきわまりない。

見て! この最高の泡を!


 


前菜の盛り合わせをオーダーし、

お手製のクリームチーズ(レーズン入り)とパンを広げる。

前菜の皿に盛られたトマトが、固いクセに妙に甘く、なんと美味しいこと!

これも実は“持ち込み”だったと聞いた。

その目利きっぷり、しかと確認させてもらった(笑)。


レストランに行っても、パンさえ美味しければ、

前菜だけで満足してしまう安上がりな私。

(というか、パンを食べ過ぎて満腹になりメインが億劫になる(笑))。

ひとつひとつの素材が良く、パンに合う前菜があれば、

本当にそれだけで満足だ…。




結構臨界点に達していたんだけど、パスタも登場!

オリーブオイルとガーリックとフレッシュトマトとチーズ。

シンプルなのに、シンプルだから美味しい。

パンを食べ過ぎなければよかった…、とイタリアンのお店ではよく思う。

どうして美味しいものはいつも「主食」なんだろう。

栄養素さえ違えばパスタもお米ももっといっぱい食べられるのに…。


もちろん〆は自慢のエスプレッソをくいっと飲み干して。

イタリア…パン巡りはもちろん、いつかはこれを生で体験したい。



このあと、恐縮ながらも京都まで送り届けて下さった。

道中、いろいろな興味深い話を聞かせてもらった。

私はどちらかというと、(パンに関しては)人に教えることの方が多く、

「話し手」であることの方が多いのに、

この方は私を「聞き手」の側に回らせてくれる。

ひと回り上の世代の「食の楽しみ方」を語ってくれた。


私はまだ、いろいろ食べ歩き、食べ比べてみることに

愉しみを感じる「過渡期」の世代。

今はまだまだこういうスタンスでいたいと思っている。

でももうあと数年したら、落ち着いた「食の楽しみ方」にシフトしていくのかな。

…そんなことを思いながらお話を興味深く聞いていた。


美味しいランチ。ごちそうさまでした!



***



その日の夜は、学生時代の仲間と飲んだ。

彼らは皆、関西在中。

学生時代の仲間と酒の肴に交わすのは

決まって「あのころはバカやってたよね話」。

いつもだいたい同じネタで、「まだそのネタでひっぱるか!」と

マンネリを感じる部分もあるが(ひどいな(笑))

いつまでも変わることなく盛り上がれるのがなにより嬉しい。



***


京都泊、2日目の朝。

ホームページを持ってからというもの、

どうにも「家」を留守にするのがそわそわ落ち着かない。

旅先であってもネットカフェで「家」に帰ろうとしてしまうのだ。




丸太町近くのc.coquet(シーコケット)」というカフェは

朝早くからMacが使える。

意外と朝からやっているカフェやパン屋さんが多くない中で、使える存在。

トップの画像はその店内。コーヒーとクロックムッシュのセットは650円。

ほら、Macの中には見覚えのある赤い画面! 


黄檗にある「たま木亭」での待ち合わせは11時。

それまでの時間をまったり朝コーヒーをいただいていた。

…と言えればかっちょいいのだが実際は

時計とのにらめっこで必死こいて書き込み!)



***



今回の関西パンめぐりでは、行きたいお店はたくさんあった。

それは関西に限ったことではないけれど。


しかし、私の本音は「あまり多くは回りたくない」。


仲の良いパン友には日頃よく話していることだが、

このHPをご覧になっている方には意外に思われるかも知れない。


一軒一軒の感動が薄まってしまうのがイヤなのだ。


何度かリピートしているお店をはしごするのは楽チンだ。

例えば東京でなら代官山などは、パン屋が密集していてもはしごができる。

ちゃんとそれぞれの店の良さを味わっているから。


…しかし…

新しく訪れる店を丁寧に味わい、心と舌に刻み付けるには

一日3軒が限界、と思っている。


だから逆に、東京や、それ以外の愛着のある土地(実家の辺りとか)に

パンを買いに来るお友達がたくさんのお店を

一日に回るのを見たり聞いたりすると、複雑な気持ちになる。

それが自分にとってお気に入りのお店だったらなおさら。


「すっごくこの店いいんだよ〜」


そうお勧めしても、一日一軒行った場合と、

朝から晩まで多く回られた場合とでは

どう考えても「不利」だと思う。フェアじゃない。分が悪い。


「たいしたことなかったなぁ」


そんな風に思われたならもろくも傷付いてしまうのだ。

(もちろん、嗜好に合わなくて「たいしたことがない」のなら別の話だが)


しかし、今回はたくさんのお店が予定されている。

少し不安だった。


どこまで感動を味わえるのか。

テンションをキープできるのか。


せっかく関西パン友たちが私達のために

自分達のお気に入りも折り込んで

経路をプランニングしてくれたとしても、

私は彼女達が普段味わっている美味しさを

同じように「フェア」に味わえるんだろうか?


とても不安だった。



***





京阪で南下し、黄檗駅で下車。

めざすは「たま木亭」。

自衛隊基地を囲む長い塀に沿って歩いていくと見えてくる小さな青い看板。

店の前にはパン友が手を振っている!

いやいや、ひさしぶり〜 …でもないか。

1ヶ月前にも東京で会ったものね。

東京からも相方が本日から遅れて合流。

皆がそろったところで賑やかに店内に流れ込んでいく。


狭い店内は、焼き立てがひっきりなしに登場、

ぼやぼやしているとお目当てのパンはさっさとかっさらわれてしまう。

こちらのお店は、変わったパンが多い。

形が、ではなく、具の取り合わせの奇妙なものが多い。

餅と山椒をクレープで包んだ「行者餅風クレープ包み」や

「みたらし」なんてパンもある。豚の角煮入りのパンまで!

醤油やオイスターソースとか、普通ならパン屋さんにはなさそうな

調味料が厨房に並んでいるんだろうなぁ…。




しかしこの店のすごいのは、

「一見ゲテもの」を「マジでゲテもの」で終わらせていないところ。

ハード系がしっかりと水準以上であるし、

甘いパンはただ甘いだけではない。

きちんとほっぺたを落としてくれるほどにとろけさせてくれる。


例えば、ブリオッシュカネルの濃厚な美味しさには首がのけぞった。

表面の粉糖が時間とともにじわじわ染み込み出して、

甘さだけに傾倒しそうなところを、

シナモンの香りがしっかり輪郭を出してくれているおかげで

生クリームとバターと砂糖が遠慮なく甘さを発揮できる。




私は今回は「守り」に入った。

「ゲテ」には手を出さなかった(笑)。

オーソドックスにベーコンハースなどもセレクト。


焼き立てをちぎるとぼわっと湯気が立ちこめる。

薄めのカリッとしたクラストと柔らかな生地に包まれているのは

たっぷりのジューシーな角切りベーコン…!!

脂身も赤身もバランスよく入っていて、非常に胡椒が効いて辛いほど。


脂をじゅわっと染み込んだ内側はむちょむちょして

まるで溶けたチーズを食べているかのようにまろやか…!!

この「むちょむちょ」は私がベーコンエピで一番好きな部分である。

エピよりその部分が多いわけだから、泣かずにはいられない!!



勝手なイメージだが、店主の知名度の高さ、

ハードソフト、弱点のなさ、

きっと関西のパン好きさんなら一度は「巡礼」に行く店?

神奈川伊勢原のBをもっと庶民的にしたようなイメージかな(笑)。

あえていうならば、弱点は「交通費がかかる」ことかもしれない。






初っぱなから「わざわざ行く価値のあるお店」にぶち当たるmi_wa。

一同電車で京都へ戻る。夕方までたっぷり時間はあるけれど、

この「初っぱな」のテンションはどこまでキープされるのか?!

「多く回ると感動が薄れる」のジンクスを撃ち破れるか?!(笑)



京都市内へ続く