108-2.08年夏、出会いと再会の瀬戸内紀行【後編】

*前編はこちらから*




夢にまでみた、この日がやってきた!

かの大好きだったバンドが生でこの目で見られる日が


空の具合はどんよりねずみ色。

降水確率も相変わらず高い。

でも絶対大丈夫。なんせ私は究極の晴れ女!(暗示)

過去にも何度も何度も奇蹟のような雨雲回避を経験してきた。

今日も絶対絶対

(といいつつ、念のため雨合羽は持参している…)





朝は当然、パン屋さんへ。

前回、広島に来た時に出会った、ドリアンさんは

なんとこの時期、夏休みだったのだ!

(それをしった瞬間、「ああ、広島じゃなくて北海道にすればよかった…」と後悔したくらい(笑))


今回、広島ではパン屋さんはほとんど行く予定はなかったのだが

とりあえず都心で朝からやっている店をリサーチ。

それで訪れたのは広電銀山町が最寄りのこちらのお店。

広島駅からも徒歩圏。





フランス風のパン屋さんで、朝からでも種類がすごい豊富!

しかも、結構具材とか工夫があって凝っていて選ぶのは悩み所。


朝なので本当はサンドイッチが食べたい気分だったが

まだ作っていないようなので惣菜系をセレクト。

あ、野外フェスでおなかすいたら食べるのもいいな、

ちょっと大きめ、カマンベールチーズが贅沢に使われた

”フロマージュプリュノー”をセレクト。

(パンを撮り損ねたのですみません、お店の棚の画像を使用します、、)





広島駅まで歩く途中の川沿いで、朝日を浴びながら

”木の実とタンドリーチキンのライ麦プレート”をがぶり。

カレーのような味付けで、食欲がわく。

それにしても朝日が暑い!

これなら、絶対雨降らないはずよー?!





”栗とバナナのタルト”は秀逸だった!

ラムの効いた生クリームに、バナナと渋皮煮の組み合わせ。

よぉ〜し! 行くぜ、広島港!!!






広電で広島港まで行き、そこから徒歩で会場まで約20分。

だたっぴろい埋め立て地から、すでにオープニングアクトの音が聞こえてくる。

私たちのお目当てのバンドは最後の方。

だから、あまり早く来すぎても体力消耗するかなぁと

開演時間ぎりぎりで到着した。




おおお、はじめてのロックフェス!!!

入口で入場券と引き換えに自分達のブースのパスをもらう。

このパスを首からさげて、自由にブースを出入りするのだ。

オールスタンディングなので、ブースで敷物をひいて場所とりをする。

その後は、その場所で何時間もがんばるなり、

お目当てのアーティストだけ見て、他は休憩しにいくのもあり。

(といっても、周りになにもないので敷地内で…となるが)


雨が一瞬ぱらっと来たが

空は太陽がまったく見えずにずっと曇り空だが

広島駅の方ではなんと豪雨という情報も入って来たが


なんと、ほとんど雨の心配なく、

太陽もほとんどでていなかったので暑さもそれほどでもなく、

最高にすごしやすいロックフェス日和となったのだ!

おおおーーー、晴れ女でそ?! 私って!!!

(と、何度も何度も自画自賛をする…(笑))


会場ではものすごくイイポジションをキープできたので

ブースではなくその場所で実に6時間も過ごした。

まったり、まるでリゾートビーチにでもいるかのような

どのアーティストもだいたい知っている大物なのだが

ゆったり遠くからのんびり楽しんだ。

なんせ6時間もあったので、ビールを6杯も飲んだ(笑)。

あまり酔わないのはなぜだろうか?


昨日出会った蜂っ子のみんなとも現地で遭遇、

「いよいよだねー」なんて盛り上がる。

ああ、こういう図を描いていたからこそ昨日、思いきってオフ会やったんだ〜





太陽が沈み、ナイターがいよいよ灯される。

ものすごい緊張(演奏するわけじゃないのに不思議な感覚)

それと同時に訪れるどうしようもない焦燥感。

始まりが迫ると同時に終わりも迫るんだよね、、、



そして、真っ暗になったナイターの中、スタート!!!

彼らだけ、なんと9曲も!!!

ほんとうに生きているうちにこの目で、

生で見られるなんて想いもしなかったから、

ほんとうに…「生きていてよかった」、このひとことにつきる。


私が人生で一番音楽を聴いていた時期、ちょうどバンドブームで数多くの人気バンドがあった。

いくつものバンドが再結成などしているけれど

彼らだけだった。こんなに復活を待ち望んでいたのは…。

きっと、この目で見るのが最後だとしても(そんなふうには思いたくないが)

きっとこの先もずっと好きだろうなぁ、と思う。


奇蹟のような瞬間。

ああ、このまま永遠に続いてくれたら…。

終わってしまうことに、この幸せな時間に終わりが来てしまうことに

涙が出そうになる。

でも、幸せ。今だけの幸せ…!!!






終了後は、興奮覚めやらぬままに八丁堀の側でお好み焼きを。

このお店は、チェックしていた店のひとつで

とてもモダンな古民家風、なおかつ個室が嬉しい鉄板焼屋さん。





とんこつスープに浸された水餃子や、モツ煮込みなどの料理も

海鮮お好み焼きの豪華なこと!

昨日の店よりも麺が好みの甘さだったので、

余計にゆっくり美味しく味わえた。





同行者とはここで別れたが、やっぱり飲みたりない。

そこで昨日の蜂っ子と合流して深夜まで飲み耽る

昼間、さんざんビールを飲んだ我々はもうこれ以上ビールは飲みたく無い(笑)

祭りのあとには、こんな小さな祭りもあっていい。










翌朝!

当初考えていた広島パンめぐりは止めにし、

今回は広島名物を食べる旅に出よう。


朝一番で来たのは宮島。

私は何年も昔に、一度宮島に来ているが、

駅前の名物穴子丼の店、うえのには来ていなかった。

(宮島内の穴子丼は食べたが)

すごいお客さんが殺到することは知っていたので、

開店時間の10時には到着、待つことなくすんなり座ることができた。

歴史があるが、小奇麗で粋な雰囲気のある店内。




最初にオーダーしたのは、「なにがなくとも」頼むべき、という

穴子の白焼き! もちろんこれには朝からでもビールでしょう(笑)


香ばしく焼かれた白焼きにすこしワサビをつけて

ひとくち口に含んだ瞬間

ものすごい衝撃!!! す、すごい美味しい…!!!

ふわぁっと穴子の甘さが広がって、コクが延々と続く。

穴子って、こんなに旨味のあるものだったの?!

タレがついていないほうがこんなに美味しいなんてっ!


おおげさじゃないけど、心底「人生で美味しかったものの5本指に入る」、

そう思った。こんなに美味しいもの、食べたことないってくらい…!!!

いつわりなくこれは、「なにがなくとも」食べるべき!!!





穴子丼ももちろん美味しかった〜。

白焼きとくらべるとやはり少しこってりしていて

もしかしたら小さいサイズの穴子丼にしてもよかったかもしれないけど

夢中でもくもくと食べたなぁ〜。


あ〜、宮島来てよかった。

(と、ここで引き返しそうになるくらいに満足してしまった我々)





いやいや、ちゃんと観光もせねば!

今日は18きっぷを使ってきたのだが、

なんと18きっぷが唯一乗れる航路が、この宮島航路。

久々の宮島〜!





え?!

ここって、奈良?





ああ、そうだった!

宮島も鹿がたくさんいるところだったんだった。

人なつっこい鹿さんたちの微笑みをチェキ!

鹿さんの顔って、美人だよね…イケメンだよね…

うっとり…(笑)





残念ながら潮は引いた状態だったけれど

やはり厳島神社は見ごたえがある。





引き潮なので、下に降りて海を歩く。

青海苔の匂いがすごい。これ、持って帰ったら青海苔つくれるかな(笑)








同行者とは広島で別れ、ひとり18きっぷで向かったのは尾道。

また今年も尾道である。かれこれ3度目の尾道。

(昨年の尾道紀行はこちらから)

何度来ても来たい町、何度見ても見たい風景がある町、それが尾道。

そして何より、食べ損ねている広島名物があるじゃないですか




それが、前回定休日だった、尾道の超有名ラーメン店。

ここは、全国のラ好きも訪れる、超人気店。

当然、すごい行列なわけで

3時という中途半端な時間にも関わらず、20人以上並んでいたが

回転がよくて30分くらいで食べることができた。





これが中華そば、510円(安!)。

背脂がぷかぷか浮いた、醤油ベースのとんこつラーメン。

これで510円ならそりゃー並んでも食べたくなるだろうなぁ〜。

まぁ、実は正直な話、醤油が濃くてあまり好みではなく、

ちょっと拍子抜けしたのは事実だけど、

ひとつなにか成し遂げたような達成感(笑)



さて、尾道ではもうひとつ目的の店があるのだ。

一昨日、岡山で知り合ったパン好きさんに

尾道にもしかしたら行くかもしれないことを告げると、

おすすめのベーグルカフェを教えてくれた。

名前だけ聞いて場所があまりよくわからなかったけど、

坂めぐりしていれば必ず通る千光寺から遠く無い、ということだけを

ヒントに、うろうろ歩き回ってみた。


しかし


何度も何度も通ったことのある道ではあるのに、

なんとまぁ、迷子になるのがたやすい町であろうか(笑)。

一向にそれらしい店が見つからないまま、

あっという間に、展望台まで出て来てしまった(笑)。

あれー?





何度来ても、何度眺めても、飽きることのない

尾道、瀬戸内の海道。

上り坂でたっぷり流した汗は、

吹き抜けるさわやかな風でぬぐわれていく。むくわれていく。





それにしても、ほんと猫の多い町だな!

こんな崖ップチにも猫ちゃんが!!!


さて、「猫」の名前のつくそのベーグルカフェに出会えるように

もうひと歩きしますか!




しかし…しかし…

想像以上に見つからない、めちゃくちゃ難易度高すぎる!(笑)

飛行機の時間に接続する電車の時間もあるし、

これ以上迷子になるようだったら、諦めて戻ろうか

坂道を何度も行き返し、わざと迷子になってみたり、

一度商店街まで戻って来てしまったりいろいろしたあげく


携帯で再度手がかりを探してみると

光明寺というお寺が目印らしい!

見つかるか?! 間に合うか?!






うわぁ! ここ?!

もしかしてここだ!

空にとても近い、猫のマーク。

ほんっとうにこれはわからないわ

目印になる、もうひとつのお寺のことを知らなければ、

これは絶対たどり着けない


汗だくだくになりながら、その小民家をたずねた。

まだ若い、とてもすてきなお似合いご夫婦が出迎えてくれた。





小民家を自分達でいちから改装し、

今年の3月にオープンさせたばかりのカフェだそう。

通された二階の客間(という表現が良く合う)には、

テーブルと座ぶとん。扇風機。そして一望できる尾道の風景!


すでにひとり客の女性が2人いた。

ひとりどうしなのに、「どうぞどうぞ、こちらが涼しいですよ」と、

親切に席を譲ってくれた。まだ肩で息を切っているような汗だくの私には

その心遣いがとても嬉しかった!





「こちらにいらっしゃる方は、不思議と雰囲気が似ているのか

みなさん仲良くなってしまうようなんです」と、

お水とおしぼりを運んで来たダンナさんがいう。

わかります…不思議なんです、ここの空間の雰囲気。





ベーグルはもう残り3種類しかなかったので、

お持ち帰り用とは別に、ここでオレンジとレーズンのベーグルをいただいた。


小ぶりでぎゅううっと目がつまったしっかりしたベーグル。

熱々に温めてくださったベーグルをひとくちかじりついて





うわぁぁ…ん!!!

すごい美味しい、すごい好き、すごい好み…!

例えるならあーちゃんのベーグルみたいに、

至極シンプルなのに、粉の甘みがじんわりと広がって

すごい深みがある…!


やられた…これはやられた。

帰宅後に食べた残りのベーグルたちもものすごく美味しい。






それに加えてこの景色だもの…。

もう、完全にこれは夏休み。

最高に忘れられない夏の、

その締めくくりにふさわしい、尾道の夏。

最後の最後にこんなすてきな出会いが待っていたなんて!





ダンナさんに「ものすごく美味しいですね!」と

感動を伝えたところ、いろいろお話をしてくださった。


奥さんと大阪に住んでいたが、どこか別の場所でベーグルカフェを

開きたいということになり、日本全国あちこちで物件を探したそう。

そこで、出会ったのがこの尾道の小民家。

自分達で改装し、ようやくオープンできたのが今年の3月だったそう。

今は、手作りであまりたくさんベーグルを焼けないけれど

キッチンを拡張して、いろんな種類のベーグルをこれから焼いていきたいと

そう話してくれた。


とってもきさくでおだやかなご夫婦とお話していると

ほんと、いつまでもゆっくりしたくなってしまう。

でも時間が…列車の時間が…



「また来てくださいね」

「かならずまた来ます!」

その言葉、きっと守ります。

ダッシュで階段を降り、目印のお寺の境内でまた振り返った。

あの窓から、きっと見えている。

もし、今度くるときまた迷子になったら、

あの窓から手を振ってもらおう。





「かならずまた来ます」

そう思いながら、駅まで走った。






尾道から、広島空港に接続する白市まで。

白市はほんっとうに何も無いローカルな駅で、

ここでバスを1時間近く待つことになった。


夕暮れがなんだかとても切なくて、

この旅が終わってしまうのがとても切なかった。

明日からの”現実”を思うと、ぎゅっと切なかった。

野外フェスも終わってしまったし、

オリンピックも終わってしまったし、

…なんだか諸々、切ないなぁ…。


そんなアンニュイな気分を払拭しようとしたのか、

本当になにもすることがなかったからか、休憩中のバスの運ちゃんを

つかまえて世間話などをしていた私である(笑)。



別れがあっても、きっと出会える。出会いがある。

運がよければまた出会える。

わからないけれど、いろんなことを心にめぐらせながら

尾道の景色を眺めていた。

白市から空港に向かう途中の山道を眺めていた。


だいじょうぶ、私はだれよりも運がいい。

きっとまた、出会えるよ。再会できるよ。



2008.8.22〜24