3.御徒町 韓国料理グルメ&散策 〜ペリカンパンをほうばりながら〜




2月に入って早々、インフルエンザにかかってダウンした。

不思議なもので、39.5度の熱に2日間もうなされている時は、

食欲は相変わらずでパンでもなんでもぺろりと食べていたのに

熱が下がったとたんに戻すわ下すわで、プチ断食状態だった。

食欲は一気に減退、引き換えにぺったんこのお腹で、にわかナイスバディ。

(もちろん「つかの間」だということは言われなくても重々承知)


しかし2月第一週末には待ちに待っていたグルメイベントが入っていた…。

新御徒町にある韓国料理屋(マスコミ露出がほとんどない超ディープな店)に行くことになっていた。

御徒町といえば、一駅隣にあのパン屋もあるじゃないか。

そりゃ、なんとしても治さねば…いや、治ってなくても行かなくては!と奮い立つ。

やっぱり全ての原動力は「パン」であるのは私らしいわけで。



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超久々の田原町。

めざすはこの店、ただ一つ。




8年くらい前に第一次パンブームが自分に到来していた頃、

当時は今ほど「わざわざ訪れたい」パン屋は少ない中、この店には幾度となく訪れた。

ちょくちょくは行けないが、その後も1年に1回くらいのペースで行っていた。

「しばらく食べていないなぁ、ペリカンのパン…」

と思い立ったら、ペリカンのパンを使う店

(例えば人形町にある喫茶去快生軒とか)を利用したりもする。



決まって買うアイテムはトップの写真の2つ。

角食(小)とロールパン(小)。

…といっても、この店にはこのロールパンと角食とドッグパン、山食くらいしかないが。




夕方閉店まぎわでは、もう棚にはほとんど品物はない。

ふふふ。ちゃんと予約しておいているので安心安心。

相変わらずの佇まいに懐かしさが込み上げる。




この紙袋。

家にもいくつもストックしているのだが、

どうにもかわいらしくてもったいなくて使えないのだ。

たぶん…今回も使えないまま捨てられないのだな。

たまっていく一方だ。


ここの小ロール、できたてほど美味しいものはない。

けっこう味が劣化するのが早いと思う。

家について改めて食べるときと、

上野まで歩く道のりでつまみ食いするのとでは

味がぜーんぜん違う(と思っているのは私ぐらいだろうか?)


…というわけで…




がさごそ…。

むふ♪

ころころムチムチ、10個のロールパン達がお目見え♪




では、おもむろに…。


むっちん、もぎゅもぎゅ…。


あぁ、やっぱり変わらずに美味しい…!!


歯ごたえ、というのか、弾力感が通常のロールパンとは段違い。

小さければ小さいほど、口の中で弾む。

皮の香ばしさを味わうにも、やはり小ロールが一番。

(中ロールは、どちらかというと給食パンを思い出させる)


よけいな塗り物のない、すっぴんなツヤ無しの表皮。

イーストの嫌味ない香りが鼻をつんとつき、

ほんのり甘い優しい味わいが口に広がる。

ソフトであるはずのロールパン、という常識を覆す、

コペルニクス的噛みごたえのせいかもしれない。

飲み込むまでの時間が長いから、甘みがずっと口の中に残るのだ。



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待ち合わせの新御徒町までの道のりには、寄り道どころがたっぷり。



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ペリカンと至近であるがゆえ、パン好きが必ずセットで立ち寄るパン屋がある。

ぶどうパンで有名なあの店だ。

ここも超久々に来たが、普通のぶどうパンはもう品切れ、

天然酵母のブドーパンしか残っていなかった。



なんとまぁ相変わらずたっぷりと入れてくれているものだ。

とはいえ、この店でなきゃ…という風には思えないので

ペリカン2回に対し1回くらいの来店頻度かな(笑)。



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もう少し上野方面まで歩くと合羽橋道具街。

時間がないので今日はちらっと流して見るのみ。

ここの近くには、どぜう料理の店「飯田屋」がある。

どじょうを初めて食べた店だ。

どぜう鍋もいいのだが、親子丼がめっちゃくちゃに美味しいのだ。



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新御徒町駅(大江戸線)ができる前までは、

「いったいなぜこんなところに突然商店街が?」という

ちょっと突拍子もないアーケードの商店街があった。

いや、まだ健在ではある。

今では立派な「駅前商店街」である、「佐竹商店街」。


多くは語らずとも、どういう商店街かは写真で良く分かると思う、

私はこの手の商店街がとても好きだ。

「よく焼き鳥だけで…」とか「よく大学イモだけで商売ができるなぁ…」と

思わされるような小さな昔ながらの商店がひしめき合っている、そんな商店街。


 


セルフサービスって…普通の食品雑貨店である。


 


ノスタルジーとはこういうこと。



へー。へー。へー。



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定刻通りに集合!

さぁ、今日のグルメはこちらのお店。




裏通りにひっそりとあるこちらのお店は、意外と歴史は浅いらしい。

しかし、民家をそのまんま店にしました、というアットホームさがいい。

入り口に入る「前」に靴を脱いであがらなくてはいけないのだ。

(かといって、玄関マットがあるわけではない!)

今日は2階を貸し切り、エスニック通の方にオーダーを完全委託、

まずはビールでスタートする。




メニューは発音からして、かなり韓国料理は好きな私でも

「なんじゃこりゃ」な不明メニューがいくつか並んでいた。

「プルコギ」が「ブルコギ」だったり、

「チヂミ」が「ジジミ」だったり、

そのへんのビミョーな差異が素人の私には「なるほど本場ぁ」感を高めてくれる。


 


笑えるのは右側中央にある「次回出品予定品」という品書き。

次回? 一見さんは食べられないってこと?

それにしては「上カルビ」とか「タン塩」とか…??

オーソドックスな「出品作」が謎めいている。


 


キムチ、茎ワカメのナムル、サキイカのような佃煮の付きだし。

チヂミ(ジジミ)はタコ入り。

もちっとした香ばしさの中に違和感のある食感はごぼう(!)によるもの。

個人的にはタレはかけない方が具材の味が伝わりやすい。

 


王豚足。通常の豚足よりも脂肪分が少なく、締まりがある印象。

通常の豚足(850円)に比べると高級(3000円)。

これは、ブタさんのつま先ではなく膝(肘?)までのあたりを使っているので、赤み部分が多いらしい。

これをニンニク味噌(くっさい)や生ニンニク、

青とうがらし(私はダイレクトに噛み潰してしまい泣きを見た)を

サニーレタスでくるんでいただく。



今度は豚バラ肉の鉄板焼、サンギョプサル。

ベーコンのように脂が流れ出すまで、縮れて焦げるまでじっくりじっくり焼く。

鉄鍋の中央から脂がしたたり、受け鉢に脂が注がれるのも独特である。



ナムル3点盛り。

海老と玉ねぎのナムルは初めて食べる一品。

玉ねぎらしさ(辛さとかしゃきしゃき感とか)がなく、

まるでハクサイのような淡白さに驚く。



皆が待ち焦がれたカムジャタン。

骨肉(ここでは豚のようだ)とジャガイモの鍋であるが、私は以前、東中野の松屋で体験済みだった。

しかし、そこのとはだいぶ違い、汁気が多く、その他の具材がたっぷりで

色が黄色く味もまろやかである。ココナッツミルクのようなマイルドさである。

しかし、この鍋も、その後に出てきたホルモン鍋にも共通して、「野生臭い」クセがある。

これはたっぷり入れられたエゴマの葉のせい。

シソにも似た独特の香りが生々しく本場臭さを醸し出している。




一通り食べつくし、骨を取り除いたらご飯、韓国海苔、ナムル等で雑炊(というかビビンバっぽく)にする。




汁を適度に吸ったまろやかな雑炊(もといビビンバ)はやっぱりエゴマ臭くて中毒性あり。




3台設置された鍋それぞれの味わいが生まれる。「ハシゴ」も楽しいものだ。




もうこの時点で誰もが腹10分だというのに、

諦めが悪いのがこのメンバーの悪いクセだ。まだ食うのか。

実はこれと同時にホルモン鍋(うどん入り)まで登場しているのだから…。


ここのサムゲタンはとにかくスープが美味…!

鶏の旨味が、旨味だけがしっかり出し尽くされている。よけいな臭みが全くない。

かといって出し殻となったはずの鶏すらも悪くない。

こういうのを風邪の引き立てに食べてりゃ苦労しないんだよな…。

ファーストフード的なものでもいいから、どこか手頃に好きな時に食べれる店が欲しいよ。

(八重洲地下街にあったのだけどもう閉店してしまったのだ)

心にも体にもほっと温かさをそえる、まさに〆にふさわしい一品だ。



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佇まいは完全な民家であるこのお店。

トイレに行く時など、人様んちを間借させてもらっている感がにじみ出まくる。

なのに、料理が本格的で手抜き所が見当たらない。

本場の家庭でごく普通に食べられているものを、ごく普通の家庭でいただく。

そういう気取りのなさがいっそう美味しさを加速してくれたようだ。


ウケたのはサービスでいただいたデザート…「雪見だいふく」!(笑)

魅力的な店を教えてくれた、この日の立て役者の方々に感謝感謝!



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すべてをたいらげ、ふと思い出した。

先日までの「戻すわ下すわ」の私のことを。

「食べ物なんてみたくない…」

「食欲とはなんぞや」

と自問していたことなど遠い過去のようだ。

…というか、このぽっこり戻った腹が全快のサインだわな(苦笑)。


さぁ、すっかり元通りに戻った私の「食欲」、

来週からは全開といきますか!