2.茨城どぶ汁日帰りツアー




2004年新年最初の連休、突然思い立ってアンコウ鍋を食べに行った。

帰省の際の飛行機内誌に載っていた記事の影響である。

冬の味覚、アンコウ鍋!!

それは北茨城の郷土料理だと知り、

「茨城」のキーワードに弱い私は(笑)、

一応メインはアンコウ鍋、サブメインに水海道のNicolasさんと決定。


もちろん青春18きっぷを使って。

うちからなら片道4時間で行ける、十分日帰りもできる!!

かつて喜多方(福島)まで喜多方ラーメンを食べるためだけに日帰りしたこともあるし、

食べ物のためなら近い近い。さっそくプランニング。

決めてから出発までの一週間は仕事そっちのけで情報収集に明け暮れた。

…仕事しろ!!




旅の道連れはご近所パン仲間のMちゃん。

朝は6時最寄り駅で落ち合い、日暮里乗り換えで常磐線に乗り込む。

彼女とは過去に松戸のZopfさんに3度も一緒に行っているので、

もっとも「常磐線をともに乗車している人」と言える。


早朝の常磐線、ボックスシートはいやがおうにも旅行気分が高まる♪

ついついホームの売店でお菓子なんかを買いたくなる…が、イカンイカン!

空腹で行くのだ。ぐふふ。…というわけでお茶だけ購入。



〜往路〜


6:49 日暮里発 → 8:52 水戸着

9:06 水戸発 → 10:14 大津港着


昨晩は2時間しか睡眠時間がなかったにも関わらず、

テンション高く、おしゃべりに夢中。

意外に早く着いた気がする。



茨城県と福島県の県境の町、北茨城市はあんこうの産地。

もっと南の大洗でもアンコウ鍋は食べられるけれど、結局はここで水揚げされたものを

運んでくるというから、どうせならここまでくる方が正解と思った。


お店が開くのは11時30分なので、それまで温泉に浸かることにする。


バスを見たらなんと1日たったの2本!(笑)

横には、同じように驚いている老婦人がいた。

我々が目指す「天心の湯」の近くにある

「五浦美術館(岡倉天心記念美術館)」へ行きたいとのこと。

東海村から来たというその老婦人とタクシー相乗りをすることに決定♪



駅から車で約5分くらいのところにある「天心の湯」。

白泥の湯や昆布の湯など、露天風呂が3種、内風呂が2種くらいある温泉施設。

休日の昼間は1000円の入湯料だった。

景色は囲いのせいで残念ながら見られなかったが、

超空腹状態でのお風呂はなんて気持ちいいのだろう。


脱衣所で地元のおばあさんたちの会話に耳を傾ける。

なまりがけっこうきついみたい。

こういう場所での会話って聞き耳を立てるのが好きな私だが(笑)、

きまって話題は「健康」だったりする。


○○いいわよ、全然違うんだからさ。やってみなさいって」

「△さんとこのだんなさん、腰やっちゃったてさ」

もちろん「どこそこの娘さんが嫁行ってどうのこうの」的な話も格好のネタだ。

場所は変われどどこ行っても同じ光景が繰り広げられる公衆浴場の図。


「天心の湯」から10分ほど歩くと、五浦海岸に出る。

観光に来たなら絶対に名勝地は欠かせない!

(しかしせっかくいい写真は「我々」が写っているので紹介できず(笑))。


 


風が強い! でもその分荒れ狂う太平洋の並が美しい。

次から次へと押し寄せる白い水しぶきが勇ましく、風に打たれながら力がわいてくる感じだ。

眼下の潮騒は、ある日本絵画を思い出させる。

いつまでも眺めていたい景勝だった。




空腹はピーク!

最寄りの五浦観光ホテルから電話をし、タクシーを呼ぶ。

その間にちょっとした茨城土産を購入(笑)。




タクシーに乗り込み、ほとんど初乗り料金で目的の店に到着。

タクシーの運ちゃんは「予約したかい? いつも混んでる店だからねぇ」と親切なアドバイスを。

「今通ったところにもうひとついい店があるんだけどねぇ」

「えぇぇ?! そっちにしよーかな! なんて店ですか?」

「天心丸って店だよ」

「あーーー、そっちも候補に入れていたんですよ〜どーしよどーしよ…」



しかし、結局その「魚力」という店に落ち着いた。

海岸沿いにある眺めのよい店で繁盛店である。



実際にこの町に来てみると、アンコウ鍋ののろしがちょこちょこ見られたし、

多くの民宿兼食堂でアンコウ鍋が食べられるらしい。

この店は、よくあるグルメ旅番組とかで取り上げられるらしいがそんなことはどうでもいい。

(テレビで紹介される店はパン屋にしろレストランにしろ大したことがないことが多い)

この店に決めたのは、アンコウ鍋を食べる店を決めるのに情報が少ない中、

内容が濃いHPを持っている貴重な店だったからだ。

ネットリテラシーの高い私はそういうのに弱い)



店内には、観光客や地元の行楽客が多く詰めかけていた。

意外とアンコウ鍋を食べているグループはなく、

魚力定食という海の幸満載のボリュームある御膳が売れているようだ。

メニューは丁寧にアンコウ鍋の食べ方が書かれたものがある。

これを片手に鍋を進めれば「にわかあんこう鍋奉行」になれそうだ!



まずはこれだね♪

アンコウ料理の一種である「友酢あえ」1600円とビールを1本。

ビールは私の一番好きな瓶ラガー!!

ぷっはーー。がつんと炭酸が身体に染み渡る!! 温泉上がりの空腹時には最高だわーー。


そして。この友酢あえに箸をつけてみる。

大好物のあん肝と、アンコウの煮こごりのようなものと、

キュウリやわかめをゆず味噌につけていただく。

まずはあん肝から(もちろん味噌をつけない!)


ぎょへーーーー!!

う、う、う、うまーーーーー!!!


めっちゃくちゃ美味! 美味すぎてろれつが回らない。

全く引くことを知らない濃厚なコク。

こんなに臭みのない新鮮な「コク」はかつてない経験。

居酒屋や料亭でいただくあん肝もそれなりにおいしいと思っていたが、

ここまで新鮮な状態でいただくことはなかったんだ、ということが初めてわかった。

逆に、煮こごりの方は淡泊すぎて、あん肝だけを注文しておけばよかったと後悔。



そうこうしている間に鍋が登場。


「どぶ汁」というのは、漁師が漁船の上で賄ったアンコウの食べ方のひとつで、

吊し切り(アンコウはぬるぬるしているのでまな板じゃ切れないから)した

アンコウの7つ道具(アンコウ全身。捨てるところはなく全ての部位を食べる)を

鍋に入れ、そのアンコウ自体の水分で野菜や味噌とともに煮る、というものらしい。


こちらのお店では「アンコウ鍋のどぶ汁仕立て」というわけらしい。

あん肝と味噌を溶いただし汁は、いかにも濃い口〜という色合いだ。



ものすごい新鮮そうなアンコウ。

身だけではなく、皮(写真では海苔に見えるやつ)も目玉も臓物も全てが乗っている。

いやーー、しかしなんとまぁ、ブサイクなお魚なのだろうか(笑)。


隣の観光客らしきご夫婦のダンナがなぜか我々くらいに興奮している。

「さっきまでぴちぴちしてたんだろうなぁ! みてみ、この色!!」

おじさんたちは今夜旅館でアンコウ鍋が出るそうなので

今は我々の奉行っぷりで予習というわけらしい。

「2回に分けて入れるんだと、やりすぎるとしょっぱくなるんだと」

「もう残りの具を入れた方がいいねぇ」などと

横で説明書きを読んでくれる始末(笑)。


我々だけでなく周りのお客さんも巻き込んでのアンコウ鍋が始まった。



具は2回に分けて入れる。野菜は先に、骨の付いた肉も早めに入れる。

あん肝で延ばされたこの味噌は、本当に濃い。塩辛い。しかしハマる味!!

最後の締め用にご飯と卵を追加したが、やっぱりこれはご飯のおかずでしょう。

この濃厚な味噌味にご飯の相性といったら、最強!!

ヴィロンのバゲットにエシレバターのようなものだ(笑)。



しっかし本当にアンコウという魚はグロテスク。

ルックスだけでなく、骨までもグロいときたもんだ。

ひれの骨はまるでジェイソンの爪のごとし!

食べている部分はほとんどが「くにゅくにゅ」「こりこり」で

いかにもゼラチン質がとれそうな感じ。

アンコウ自体は、思った以上に淡泊な味わいである。

だからこそ、この味噌出汁の濃厚さとバランスがいいのかもしれない。

野菜も豆腐もわかめも、この味噌と合わさってすっごく旨い!


しかし、2人前でこの量はヘビーだ。

「具を全て食べたら残り汁で雑炊を」のために、超必死で食べた。

最後は無我夢中で(笑)。こんなに必死に鍋を食べたのは久々だ。

(自宅で鍋パーティーをやった学生時代を思い出す…)


ようやく具もなくなり、間髪入れずにご飯投入! 卵も投入!



スープが煮詰まったせいで、この上なく塩辛い。

しかし、この雑炊は旨い…旨い〜!!

口をすすぐお茶もビールももう飲めないくらいにお腹いっぱいなのに

鍋底をしゃもじですくう手を止められない。

いやーー、全てはこの雑炊のためにあったのね、という感じだ。



ごちそうさま。

もう何にも入りませぬ。お茶すら無理!!


お会計は、アンコウ鍋6000円(二人前)+ビール+ごはんと卵+友酢あえで一人4500円。

スーパーで売っている中国産アンコウでだってアンコウ鍋はできるかもしれないが、

本当に一度は食べてみるべき、この新鮮なアンコウ鍋を! 貴重な体験だった。


地元のお客さんもとてもきさくで会話が弾んだ。

うちの娘も東京でねー、なんていう話も。

各駅停車で4時間かけてアンコウ鍋目当てに来た、といったら驚かれたりもした。




出発時間が14時なので、急いでタクシーを呼んでもらい駅まで乗り付ける。

タクシーの運ちゃんはこれまたよくしゃべるおっちゃんだった。

「あんたらアンコウ鍋臭いねぇ(笑)。俺は食事もまだだってのによー」と。

崖から大津港にさしかかる道から眺める風景は十分に旅情あふれる。

おそらくこれといった名所があるわけでもないのに、

昔ながらの港町の風景がとても新鮮なものに写る。

この風景を眺めて、改めて「思い切って来て良かった」と心から思えた。


駅で上り電車を待つ間、どうしようもなくのどが渇く。

あれだけ塩辛いものを食べたから、今夜はきっとカラカラで目が覚めそうだ。

そして、ノスタルジーなデザートを入手。

行楽お決まりの「セブンティーンアイス」(笑)。




〜復路〜


14:07 大津港 → 15:38 土浦(JR常磐線)

16:15 土浦 → 16:45 取手(JR常磐線)

16:55 取手 → 17:27 水海道(関東電鉄)630円




行きの列車は朝もやを眺めていたが、もう夕焼けの車内。

帰りの車中はずっと眠っていた。取手まではもう近い。


帰りはもちろん水海道のNicolasに寄る。

しっかり予約を入れて置いたが、閉店ぎりぎりになりそうだ。


Nicolasさんがきっかけで水海道までパンを買いに行くようになったが、

やはり遠くて毎度毎度ちょっとした旅気分だった。

しかし、もしかしたら、この旅のおかげで

「(北茨城に比べりゃ)水海道なんて近い近い!」って思えるようになるかも?


そう思っていたのも乗り換えるまで。

どうしてもこの関東電鉄の30分がすんごく長い(笑)。

待ちきれないせいだろうか。早くあのパンを食べたい!!


Nicolas到着!!

ちょっと配置換えもして、前回とはまた違う品揃え。

奥様も超かわいい二世たちも、Nicolas氏も笑顔で迎えてくれた。

そしてパン・パン・パン!









ゆっくりしすぎて(といっても30分だが)上り列車に遅れそうになる!

駅まで二人で全速力で走った。アホすぎー!

本当に駆け込みセーフで列車に飛び乗る。

夜のローカル線のいいところは、ガラガラでパンを広げちゃっても恥ずかしくないということ(笑)。

戦利品のパンたちを堪能。人目気にせずつまみ食いが止まらない。




写真もパチリ。フリュイは何度食べても胡桃の旨さに悶絶。

米粉ベーグル3兄弟や胡椒&くるみパン。たまりまセブン。

あぁ、やっぱりここまで来る甲斐があるパン屋だわ!!



こうして一日がかりの茨城縦断ツアーは終わった。

取手のスタバで一息ついて旅を振り返る。

旅の道連れのMちゃん、楽しい美味しい一日をありがとう。



〜ひとりあたりの収支〜


JR交通費 2500円

水海道往復 1240円

現地タクシー 1330円

入浴代 1000円

六角堂入場料 200円

アンコウ鍋 4500円

セブンティーンアイス 150円?

納豆あめ 400円

Nicolasパン代 ???


合計 11320円+α



***


余談


会社の同僚に日立出身の人がいるので

「4時間かけて行ったよ」と得意げに報告したら

18きっぷ? おまえ何歳サバ読んでるんだよ」

きっつーい一言(笑)。

「いーや、あたしゃおばあちゃんになっても18きっぷでグルメの旅したる!」

そう、高らかに宣言したのであった。