14.上京物語


地方から友人が2人、上京して来た。

いわゆる「パン友」ではない。タダの食いしん坊である。

週末どっぷり東京観光、…いったいどこへ連れて行けばいい?

フレンチ、イタリアン、ラーメン、スイーツ、お江戸の味あれやこれや。

結局は行き慣れたところばかりを連れ回したような感じだったけれど

食べたものをすべて羅列しよう。


でも

私が留めたいのは

どこで食べたかではない。

なにを食べたかではない。


そのとき、どんな気持ちで、どんな空気で過ごしたか。

ここに詳しく書く必要はないよね。

カタチにしなくてもいいよね。

ひとつの絵が、

オブラートで包んだ言葉が

あの時間を蘇らせてくれる。

かけがえのないあの時間を。






仮名A子と仮名B美。

そしてmi_waパン。


新幹線と飛行機でやってきた二人と私が

集合したのは有楽町の某パティスリー。

東京駅から近いので、ちょうど良い集合場所にだったからだ。

東京もギンギラギンに灼熱で、今日一日が体力戦になることは目に見えていた。






A子はスイーツにうるさい。

B美も味にはうるさいがノンジャンル。雑食。

そして私は、味にはうるさくはないが雑食。

値段を考慮しなくても、「こんなもんかー」とのっけから辛口。

うわー、この2日間、こいつらの味めぐりに付き合うの、不安だわ(笑)。


A子は今日一日、ひとりで「たいやき屋めぐり」をするらしい。

食事もとらずに、ひたすら「たいやき」だけを詰め込むつもりらしい。

あれこれ東京の「たいやき屋」を山ほどピックアップしてきたというのに

地図も持たずに丸腰でやってきた。


バカじゃん?! そんなん、パン好きではありえない(笑)

とりあえず、ルートと経路をざくっと組み立ててはあげたものの

「絶対これは全部は無理だな…」と私は読んでいた。


私たちは夜、六本木で合流することを約束し、二手に別れた。

迷子になったらメールしなよ! と送りだした。

だいじょうぶかな、A子…。






イタリアン好きのB美のために

イタリアン専科の友達からあれこれおすすめを聞いたりしていたが

…東京でイタリアン…

よっぽど行きたいお店がなければ、どうなのかな

ピンとこなかった。


B美は、イタリアンだけじゃなく、蕎麦も行きたい、ラーメンも行きたい、

あれもこれも…と、食べ物のことしか全然考えてない。

そのくせ、「全部mi_waちんに任せるし」ときたもんだ!

ひえーーープレッシャーなんすけど…。


お昼はどこへ行こう、あれこれ考えていたが

ふと前夜に思い出して決めたのが、とあるフレンチのお店。

昼間には絶品の海老フライを出す。

というか、本当は夜に連れて来て極上のフレンチを食べさせたかったが

昼の海老フライ、これを食べさせたかった!

(というか、自分が久々に食べたかったともいう(笑))






神保町まで移動し、某大手出版社の地下のこの店へ。

ここは昼は洋食屋チックだが、夜は本気の、すさまじい料理が出る。

あー久々にあの料理たちを食べたい、、、

DIARY2005年2月12日参照)






海老フライを頼むだけでは飽き足らない、

雲丹のコンソメジュレを前菜替わりにオーダー。

雲丹の中の冷たいジュレが絶品〜!!!

すみずみまでほじくるようにして食べる。






そして…海老フライ! というか、欲張ってミックスフライ!!

海老フライを口にした瞬間に、二人同時に悶絶嗚咽、阿鼻叫喚!

記憶以上に、異常に美味しい…!!!

B美ほど、美味しそうにものを食べる人は見たことがない。

たぶん、旨そうに食べる選手権でぶっちぎり優勝だろう。

ああ、ここに案内してよかったー。


えびのでかさだけでなく、衣がとにかく旨い。旨い。タルタルがこりゃまた…。

蟹クリームコロッケも、ホタテフライも悶絶。

ただ、私はご飯はほとんど残した。


…なぜなら…この後…お昼ご飯のハシゴをするのだから(笑)。









せっせと灼熱の中、お茶の水まで移動。

老舗の雰囲気ある蕎麦屋はこのエリアにはいくつかあるのだが

味にうるさいB美を連れて行くなら、ここなのでは?






そして…昼ハシゴ(笑)

天ぷら蕎麦…は胃袋の都合上さすがに回避して(当たり前だ!)

シンプルにざる蕎麦を。

うひゃーなんて太っ腹な盛りだろう。

蕎麦の香りは思ったよりもほのか(集中力を要する)。

でも最後に飲んだ、とろ〜んとした蕎麦汁に納得。

ていうか…げっふんげっふんなんですけど…

息を吸い込むのも辛いわっ。






上野に移動。

B美が上野でやっている美術展にどうしても行きたいというので

今回のコースに組み込まれていたのである。

B美には今回の上京のメインイベントらしい。

しかし土曜日の上野の博物館は大変な混雑。

ゆっくり落ち着いてみられやしない。さくさくーっと見て後にした。


上野…と言えば。

そうだ、あのスイーツのお店が近い。

何度も行っている、あのお店なら迷わずたどり着けるはず。

ちょろちょろ散策をしながら、辿り着いたのは上野桜木の人気店。

ここのソルベで汗を吹き飛ばそう!

DIARY2004年7月1日既出)






ベンチでソルベを食べながら、

しばしカラダも心も休息を。

屋外だからと、炊かれている蚊取り線香の匂いが

「夏休み」気分を盛りたててくれる。

蚊取り線香の匂い、取り囲む緑、蝉の声…。


この店のスイーツは、実はそれほど好みの味ではないのだけど(笑)

並木に囲まれた和みのロケーション、

そして心を尽くしたサービス。

とにかく「来て良かった。また来よう」

そう思わせる何かがある。






もうだいぶ日も傾いて来た。

蒸し暑さだけはあまり変わらないけれど、もう日傘も必要ない。

海老フライと蕎麦

彼らはもう消化してしまったのだろうか(笑)

私たちはちょっと早めの夕食をとっておくことにした。

目指すは新宿。

…ジャンルは、ラーメンだ(笑)。






ラーメン専科の友人にあれこれ店をピックアップしてもらっていたのに

結局行ったのはやはり「地方の人でも知っているくらいに有名な店」(笑)。

地方のB美でもよく知っている(ゆえに、行ってみたいと言っていた)

お馴染みの超有名店。






B美は、基本を食べておかないと、という。

しかし、ここのラーメンを数口食べて、

「こんなもんか」というB美。

うーわ、まじで?

おきに召しませんでしたか…。



…私は…

絶対食べようと思っていたメニューがあった。

夏限定の冷ラーメン。


その名も「冷印度麺」。

冷やしカレー麺と読む…(強引だな)







なんと!

翡翠麺に、イタリアンテイストな野菜、

そして…上に乗るのは……


カレーアイス!!

カレー味のアイスである。

カレー味のアイスを、溶かしながら、麺に絡ませながら食べるのである。

想像しただけでも身震いがする…人もいるだろうか?


しかし私は、この麺の存在を教えてもらった瞬間から

「ゲテもの」狙いで絶対食べようと思っていたのだが

…ところがどすこい、これが絶品だったのである!


そもそも、カレーアイスが乗っていても乗っていなくても旨い。

(身も蓋もないことを…)

翡翠麺はまるで冷麺のようにコシがあり絶品!


…といっても。ラーメンといっても…ラーメンじゃないよこれ(笑)

単純に美味しいパスタじゃないですか(笑)






別行動のA子からはメールで動向が伝えられる。

…やはり…かなり苦戦しているもようだ(笑)。

当たり前だろうに、慣れない東京、路線もわからず

道もわからず、しかも夏期休業にぶちあたったりと散々の模様(笑)。

かわいそうに…。


でも、私たちは私たちでとことん東京を満喫するのである(笑)。

お次は表参道ヒルズ♪

どこの店が見たい、というのではなく、

この建造物自体にとても興味があるらしく、

下から上までスロープを歩いた。


食べることしか頭にないB美は、某高級ジェラードの店で足を止める。

うーわ、食べるの? ラーメンはだいぶ消化できてはきたけど

ここのジェラード、800円近くするんだよ?(笑)






お店のお兄さんがお薦めしてくれたそのまんまを選ぶB美。

ミルクジェラートに、ハチミツ胡桃。

スプーンを二つつけてもらってつついてみると、、、


うぁーーー!!! なんじゃこりゃ!

めちゃくちゃうますぎぃぃーーー!

またも悶絶嗚咽、阿鼻叫喚。

アイスも旨いが、このハチミツがあまりに美味しくて美味しくて。

アイスとともにとろけながらスロープをよたよた歩いた…。

はぁ…なんかすごい。当たりすぎ。本日。









これはイメージ画像(笑)。

A子がひとり待つ六本木のワインバーにいったが

東京タワーものぼりたかったなー。

しかし…ワインバーで待つA子は満身創痍、

「たいやき屋」巡りは、ノルマの半分も達成できないまま

暑さと極端な方向音痴でカラダの方が根をあげたらしい(笑)。

…愛すべきバカだわ…


A子のお手製の絶品「さつま揚げ」を肴に

貸切り状態の小さなワインバーのカウンターでワインを傾ける私たち。

なんだか…いいね。この時間。

なんだか…奇妙な図なんだよね。


そうして、丑三つ時になってからタクシーで六本木を後にした。

A子、大丈夫?!

ふらふらじゃないか。ちゃんと宿にいける?!


キーワードは「3700円」。

あたしも確かに悪かった。それについては謝るけどさー、、、

…愛すべきバカな子(笑)…









翌朝!

3人揃って北上するのはもちろんこちら。

時間が止まるあの2階で遅めの朝ご飯を食べましょう。

さすがに「歩いて行こう」とは言えず…。






大好きなクロックマダムにB美も私も悶絶。

実は今週月曜日もRZに来ている私だが(笑)

今日は、食べるものすべてが美味しかった。

いちじく豚も、週替わりの豚バラ肉の香草焼きスープ仕立ても、パテカンも。



どうして「私たち」がここに通うのか。

それは誰の目から見ても

私たちにとってもごく単純であり

単純でいいの。

単純さを楽しんで欲しい。

純粋に楽しんで欲しい。

私はただそう思っていただけ。



余談だけど、

このとき素敵な出会いがあったことも書き留めておかなければ。

私のサイトの読者さんで、それがきっかけで

とあるパン屋さんと出会い、そこで今は働いているというお嬢さん!

僭越ながらあたしがキューピッドってこと?!

あああ、、、ほんとに嬉しかったよ。

絶対、近々会いに行きます。待っててね。


サイトをやっていてほんとによかった。

パンを通じて出会いがある。

それは私だけでなく、光の向こう側の誰かも巻き込んで

巡り巡って、私にも出会いが戻ってくる。

そう、A子やB美だって「ここ」があるから出会えたんだもん。






どうしても連れて行きたい店があった!

そう、何がなんでも「お江戸」を味わってもらわなきゃ帰さないからっ!(笑)

半ば無理矢理連れて行ったのは


そう、浅草。

こてこて? いーじゃないの、こてこて!

ビバ! こてこて!





浅草寺でお参りをする私たち。

私のお願いごとは至極シンプルで欲張りなことなんだけど

二人は何をお祈りしたのかしら。






まだRZでのランチがお腹に残っているから

腹ごなししようよー入ろうよー

…そう二人を引っ張って行ったのに

「混んでるからやだ」

あっさり却下(笑)

うわーん、花やしき初体験の目論みが…。






そういえば、合羽橋におしゃれな蔵造り風のカフェができたらしい、

そこ行ってみようと導いた。







ここでは…そうだなぁ…。

語るなら…「サービスとは何ぞや」だな(笑)。

A子と私は考えていることが全く同じ。

「人だよね、人、、、」

B美は相変わらずどこか「別の世界」にいた。

「なんのこと?」

あなたってばいつもそうね!






そしてそろそろお腹もこなれて来た時間。

よし、行きますか!!

「お江戸満喫ツアー」、最終章!






そう、自信持ってお薦めできる、この店!

DIARY2006年7月2日登場)






二人ともどぜう鍋は初めて食べるんだそう。

ふふふ…食べてみ?! どーよ?! うまいっしょ?!

もうもう、ほんっとにどぜう鍋は美味しくて美味しくて。






もっと驚いたのは、親子丼がめちゃくちゃ、ありえないくらい美味しかったこと。

うーーわ、今まで「玉子丼」しか食べてなかったけど

卵自体の甘さに、タレの甘みと鶏肉の甘みが三位一体となってまろまろ〜〜!!


味だけじゃないよ、古き良きものがここにはすべてある。

給仕のおばちゃんたちの愛すべき

「いらっしゃいましー」

もう、これに尽きるよね。この店の良さは。

2人がこちらの期待以上に、どぜうに喜んでくれて感無量。

私の役目はここまでよ…。






ここから先に残っているのは一枚の写真だけ。






フランスの街角で飲んでいるようだ。

そう私たちは思った。

バゲットを肴にビールを飲んだ。

純粋に、バゲットが美味しいと、しみじみと味わいながら。



夜の丸の内を歩きながら、

自分の青春時代を懐古した。

学生時代なら当たり前だった、無邪気なあの頃のこと。

あのころならいつもそばにあったもの。


忘れてしまっていたこと。

やり残して悔やんでいたこと。

オトナになってからもう手に届かなくなってしまったこと。

もう手遅れだと思っていたこと。

「もう、いらない!」なんて思っていたこと。


キーワードは”Hello,agein”


この年になって得られるとは思っていなかったもの。

…友達っていいな。

友達になれてよかったな。



今回、私のエゴで、潰してしまったひとつのプラン。

それだけを今でも悔やんでる。



…でも、私は純粋にこの2日間を、

mi_waではない私に戻って楽しみたかった。

おバカで奇妙で愛すべきタメトリオで楽しみたかった。

だから、ありがとう。

心から、ありがとう。



いつか私の大切な場所に連れて行くよ。

願わなくても、私が叶えてみせるから。


2006.8.19〜20