5.全粒粉のクロワッサン






私の中で「クロワッサン」とは区別されるのが「全粒粉のクロワッサン」。

通常の「クロワッサン」に比べ膨らまず、

ぎゅっと巻かれた小ぶりで重ためのフォルムが特徴的。


必ずしも全粒粉とは限らないし、

天然酵母とも限らないけれど、

私の中でははっきりと線引きされている。


「クロワッサン」がバターの存在で成立しているとしたら、

こちらははバターと粉の旨みのどちらもが

同じくらいのしなやかな力を持って存在している。

そんな気がしてならない。


幾分「生々しい」ほどの粉の風味を味わえるこの手のクロワッサンは

かたくかたく層を巻いたまま、膨らまない分、

旨味が通常のクロワッサンよりも遥かに凝縮されている気がしてならない。



初めて食べた天然酵母系クロワッサンは、

自然食品店で売られていたルヴァンのものだった。

「こんなに小さいのになんでこんなに高いの?」という

「はてなマーク」とともに

「こんなに小さいのになんでこんなに重さがあるの?」という

「びっくりマーク」が心に浮かんでいた。



ざくり、ざくり、ぎゅぎゅぎゅぎゅ…と

歯が軋むような歯ごたえと独特の音をならす。

幾層にもしっかり巻かれた生地の一枚一枚が

確かな存在感と歯ごたえを持って崩されていく。


砕かれた層は、いくつかの固まりになりながら、

次第に細かい「じゃりじゃり」とした粒子に変化し舌の上にばらまかれる。

まるで粗挽きされた小麦がもとの姿に戻ったかのように…。


今までに味わったことのない食感にとまどいながら

もっと混乱したのはその風味の豊かさを知った時だ。


通常のクロワッサンにくらべるとバターの量が控えめな分、

全粒粉が濃くて、香ばしくて、力強い。

だ液と混じり合わさる程に、旨味がとめどもなく溢れ出す。

砂糖ではない、粉とバターの甘さに圧倒されてしまった。


おいしさのため息のあとには必ず口の中を舌でさらってみる。

時折現れる「じょり」っとしたツブツブで余韻を楽しめるから…。


以来、天然酵母パンを得意とする店では

この手の「ぎしぎし」クロワッサンを求めるように。

もちろんこれからも求めて止まない「じょりじょり」クロワッサン。



〜注意事項〜


小さいからといって、

いくら美味しいからといって、

くれぐれも食べ過ぎに注意!!


膨らまないクロワッサンは

そう、ミルクなどと合わせていただいたら

お腹の方がみるみる膨らんでしまうから!!





お気に入り全粒粉クロワッサンたち

* こちらの更新は2005年で終了しております *


Takaraya@鎌倉

画像のもの。ここ一番最近に食べた全粒粉クロワッサン。

なんか一枚層が剥がれて美しい画像ではないのはご了承いただきたく。

ミニクロサイズだけれども、適度な塩気、ぎしぎし具合、バターの後味の良さ、

全体のバランスがとてもいい。まず間違いなく一気食い(笑)。

観光のお供にどうぞ。


PAN-YA Z'S@恵比須

ここ最近で食べた中では一番強烈に美味だったのがここのクロワッサン。

全粒粉タイプではないよう。一層一層が凝縮して厚みを出している。食感はレア。

これほどまでに強く甘さを感じるクロワッサンに出会ったことはない。

立て巻き髪ロールのように、くるるんと巻かれた可憐なフォルム。

齧った端からくるくるくる…とほどけていくような独特の巻きのゆるさゆえ

その湧き出るような甘みゆえ、途中で食べるのを止めることは不可能!


ルヴァン@代々木八幡

私にとっては元祖(笑)。粉の旨味とバターの効き方が濃厚。

酸味が強い…というか、どことなくチーズのような香りがする。

私はここのパイものが大好物である。さつまいも、りんご、黒豆きな粉、くるみ等、

いずれにせよ素材が最大に活かされ食べごたえ満点!


スピカ麦の穂@品川旗の台

これまた小さいわりにはヘビーでヘビーで(笑)。

酸味があってコクもある。粉砕度高し。

これまた余談だが、ここの「スピカ」という星形パイにもはまった過去あり。

調子にのっていくつも食べるとお腹の中で水分を吸って大変なことになる★


個性パン創造 アルル@巣鴨

ノンシュガークロワッサン。

食べたのが昔過ぎて記憶に古いが、当時はよくリピートしていた。

当時はルヴァンとスピカとここくらいしか「じょりじょり」クロワッサンの

存在を知らなかったが、優劣つけがたいほどお気に入りだった…。


ヒルサイドパントリー@代官山

じょりじょり」クロワッサンとは系統が明らかに違うが

この店の代名詞とも言える「天然酵母のクロワッサン」。

表面がパリッパリで食べている感覚は「揚げ春巻き」。

バターが濃厚なクラムはもっちもちで焼き立ては瀕死のウマさ。私は今でも大好き。


こんがりパンや@豊島要町

これもバターと粉の旨味がイーブンの「じゃりじゃり」クロワッサン。

全粒粉タイプと、そうでないタイプの2種類がある。

2年か3年か前、当時は平日の4日間くらいしかオープンしていない店で、

インフルエンザで欠勤した時に買いに行った。「今しか買いに行けん!」と(笑)。

へろへろのよろよろの、高熱な状態でも無理に咀嚼、それでも美味だった記憶が(笑)。

2004年2月…またもやインフルエンザ病床中に来店!(笑)。

記憶以上に、バターの風味が豊かで、やっぱりこの店では押さえるべき一品。


グランマ@駒沢公園

お母さんの手の温もりを感じるような優しい優しい素材で作られている。

発酵バターの香りと粉の味わいが詰まった、みっしりとした内層と

パリザクっとハードな音を立てて噛み砕ける外層。

このパリザクな食感が全粒粉タイプとはまた違った良さを醸し出している。

天然酵母クロワッサンならではのもっちり感も◎。


PAO@松戸

正直いうと、こちらで食べたクロワッサンはザマンドでだった。

「じょりじょり」系クロワッサンにクレームダマンドを被せ焼いたものだったが、

目からウロコ。「こういうのもありか!」と。

天然酵母クロワッサン特有のもちもち感とダイレクトなかぼちゃの甘みが両立するなんて。

推測ではあるが、ダマンドをはずし、

シロップを吸わさない状態でも絶対美味しい…(仮定)。

そば粉のクロワッサンも、噛み締めるとその奥から風味が湧いてくる。

層の巻き具合の美しさは必見!


東風(こち)@京都一乗寺

しっかり巻かれた層をきゅっきゅっと噛み締める。

粉とバターの風味がゆっくり込み上げてきて、

終いにはバターの「香り」、というよりも「甘み」が口に広がる。

焼き立てはバターロールのような、懐かしい風味。


<番外編>

  焼き戻し必須のジョリジョリ系

濱田家@三軒茶屋の全粒粉クロワッサンは、バターの風味がちょっと風変わり。

ちょっと脂が重たい気がするのでトーストしてあげる方が美味しく食べられる。


地蔵商店@札幌円山のグラハムクロワッサンはキャラウェイ入り!

かなりクセがあるが、焼き戻して食べるとバターの旨味が浮き出てくる。


<番外編>アンジェリーナ@練馬氷川台

もう6年くらい前になるが、過去最高の全粒粉クロワッサンがここにあった。

いわゆる「クロワッサン」と同様にハラハラホロホロ系なのだが、全粒粉の旨味が

バターの香りとともに強烈に口の中で爆発した。

食感は決して「じょりじょり」じゃないし軽い。

しかし「じょりじょり」系に負けない程にバターと粉の旨味が共存していた。

当然、口の中は「じょりじょり」粒が残り、あまりの旨さに歩行困難(歩き食い(笑))。

あれ以来、そのクロワッサンは姿を消した。

普通の発酵バタークロワッサンだって十分美味しい店なのだが、

もう一度食べたいクロワッサン、といったらこれ以外に他ならない。

幻の全粒粉クロワッサン…。嗚呼。