2.クロワッサン・オ・ザマンド




クロワッサン・オ・ザマンドはパン屋で出会える最も贅沢なヴィエノワズリー。


「ダマンド」「オザマンド」「アーモンドクロワッサン」

店によっていろんな呼び方があるけれど

基本はクロワッサンとアーモンドクリームのマリアージュ。


オザマンドの美味しい店ならきっとクロワッサンも美味しい。

けれどクロワッサンが美味しくてもオザマンドが美味しいとは限らないのは不思議。


ただでさえ店の数だけ異なるクロワッサン。

これにクレームダマンドがますます話を複雑にする。

味、量、はさみ方、かぶせ方。

シロップに浸しているかいないか。

トッピングは粉糖かアーモンドスライスか。

要素が多い分、クロワッサンよりもずっと複雑にしてしまう。

無数の組み合わせは、オザマンドの世界をますます奥深いものにしてしまう。



例えば絶品クロワッサンのブーランジェリーのダマンド。


その美しいクロワッサンの層の重なりを

クレームダマンドは惜しげもなく黄色く覆い隠す。

たっぷり染みこませたシロップをじゅわじゅわと蓄えて

ぺちゃっとつぶれクロワッサンの膨らみのなごりすら残さない。

酔いそうなほどにラム酒の香りを発するクレームダマンドを

生地の存在感を忘れさせるほど贅沢に挟み込む。

一度火の通されたクレームダマンドはぷつぷつと粒状に凝固し

舌にぴたりとはりついて濃厚な甘みを刻みつける。

時に粉糖が甘みを加速。

「リッチ」というコトバの意味を再確認させられる。



例えばヴィエノワズリーも上手なパティスリーのダマンド。


粉糖とアーモンドスライスを

まぶされたクレームダマンドは

クロワッサンの原型を守るかのように

さくさくの食感すらも守るかのように

堅く焼き固められている。

時に垂れ流れてクッキーのように固まった「端っこ」で

「おまけ」をもらえたような得した気分。

はさまれたクレームダマンドのまろやかさと

さくさくのクロワッサンの食感をダブルで味わえば

「パン」というコトバはどこか彼方へ飛んでしまう。



巡っても巡っても

食べ比べても食べ比べても

ひとつとして同じものに出会うことのないオザマンド。

もう、知らない頃には戻れない。





お気に入りクロワッサン・オ・ザマンドたち

* こちらの更新は2005年で終了しております *


メゾンカイザー@白金高輪

画像のもの。パンだなんて名乗るのは反則(笑)

パリでもたびたび見かけたこのぺちゃんこタイプは

たっぷり浸されたシロップのせい。

ラム酒の香りとたっぷりの中身はさつまいもあんのような黄金色のクレームダマンド。

なるべくたっぷり入っているものを選んで。

厚めの、べちゃべちゃになったものほど美味しいはず。


ユイズィーヌラビラント@白金高輪

発酵バターをふんだんに使ったハラハラクロワッサンは「素」でも絶品。

たっぷり覆ったダマンドの「縁」を味わったあとはとろりと濃厚なダマンドに遭遇。

くらくらするほどの香りの高いダマンドはちょっとはちみつっぽい風味。

バター、アーモンド、粉糖…。すべての要素が「活きている」。

食感、味、ルックス、全てにおいてパーフェクト。


キリフレッシュ@広尾

驚いた。カイザー以上のクレームダマンドはないと思っていたから。

ルックスはあまり美しいとはいえない大柄タイプ。

しかし、カイザーに匹敵するほどの洋酒の効いた黄色いダマンドがたっぷり!

これはクロワッサンが原形を保っているので、ざくざく食感を求める人にもオススメ。


ムッシュソレイユ@西荻窪

これもラム酒ぷんぷん系。

比較的クロワッサンが原型をとどめているのは

フィリングが控えめのせいか。しかし少量でも十分すぎるほど美味。


VIRON@渋谷

贅沢な香り、お値段はどこよりもハイクラス。

何層にも巻かれたクロワッサンと、ハードに焼き固められたダマンドゆえ

そのフォルムが崩れることはない。歯を立てバターの芳香が広がるダマンドを攻略すると

たっぷりと湿った甘いダマンドがスポッとあらわれる。アーモンド、洋酒、

濃厚であるのに上品。ぬちっとした内部と香ばしい外部を味わえるのが至福。


ミュゼ・ド・テオブロマ@代々木八幡

ほのかに洋酒が香る。

美しく原型をとどめている、眉目秀麗ダマンドの典型例。

さくさく生地としっとりフィリング、カバー部分のバランスが


ヒルサイドパントリー@代官山

発酵バターの香りがぷんぷん。

原型をとどめているにも関わらずシロップをたっぷり

染みこませている。そのギャップにメロメロ。


ラ・バゲット@新宿

バターが味濃くしっかりハード系。

厚めにかぶさったクレームダマンドと対等に主張する生地。

クロワッサンの「焦げ味」もポイント。


グードファリーヌ@杉並久我山

かぶせたダマンドがたっぷりはみ出た

「おまけ」部分いっぱいの逸品!

はさまれたダマンドの量、甘さ、風味、すべてが完璧!!

アーモンドがまるごとごろごろ入っているのもお宝的。


パティスリーペルティエ@赤坂

銀座では買えない、私にとっては貴重な一品。

バターを贅沢に使った小ぶりなクロワッサン・ペペを贅沢に覆い隠す。

ダマンドを挟んで、たっぷりのスライスアーモンドとジャムで焼き固める。

ラムの香りがぷんぷんのザマンドが美味! 意外とほろほろ食感。


Nicolas@茨城水海道

ここのクロワッサンは、層が「生焼け?」と

勘違いしてしまうほどに厚く、バターと粉の風味が強い。

これにクレームダマンドを厚めにかぶせ、ラム酒を効かせたダマンドを挟む。

粉糖、ダマンド、アーモンドスライス、…オザマンドに求める全てを兼ね備えつつ

やはり一番のキーポイントは生春巻き的パリザククロワッサンにあり。


Zopf@千葉松戸

胚芽クロワッサンで作られたビックサイズのオザマンド。

絞ったらしとしと滴ってくるのでは? と思うほどにじとじとぺっちんこ。

シロップをたっぷり吸い込んだ層を齧ると、断面には歯形がくっきり。

まるでミルクレープのよう。そしてほのかに香る紅茶フレーバー…。

極め付けはパリパリ小気味よく割れてくだけるアーモンドスライス。

クロワッサンであることをすっかり忘れてしまう、極上ヴィエノワズリー。


ル・クール@千葉鎌取

こちらのクロワッサンもやはり一番好きなクロワッサンだ。

(一番がたくさんあって困る)このザマンドは、まずはクロワッサンの美味しさを語りたい。

そのバターの濃厚な香りに翻弄されながら、洋酒の香りにまた翻弄される。

なんとなくもろさがあってくしゃっと噛み潰す、もろいザクザク系。

ショコラザマンドも絶品である。こちらはココアが振り掛けてある。


ブノワトン@伊勢原

私が一番好きなクロワッサンを作る店のザマンド。

惜し気もなくあの美しい層をぺっしゃんこにしてしまったこれぞ究極のザマンド。

たっぷりクレームダマンドをかぶせ、さらに挟み込む。

…オレンジピールとレーズンとともに!!

鮮烈なフルーツの香りと洋酒の香りがむせ返るほどにぶわっと溢れ出す。


セ・トレボン@福岡

とてもサクサク。へたしたらハラハラ。

アーモンドと粉糖が確実に仕事をしている。

なんとフランボワーズソース入り。甘酸っぱくて鮮烈!

2004.6更新:上記のオザマンドはプチサイズのもの。

フルサイズのものはアーモンドスライスがたっぷり!


サイラー@福岡

サイラーキプフェル という難しい名前だけどオザマンド♪

三日月型のクロワッサンの中も外をもクレームダマンドで包み込み

シロップでぺっちゃんこのフォルム。生地もクレームダマンドも、

バターとラム酒をまるごといただいているような錯覚に陥る。

感動的なほどにリッチ! こういう「クレームダマンドを食べる」タイプの

オザマンドは、冷凍して半分解凍させたものを食べるのも至福。


アンシャンテ@札幌澄川

通常粉糖やアーモンドスライスが来るところに

アプリコットジャムがたっぷりかかっている個性派。

通常のダマンドにジャムのねっとりした食感までプラス!


ココペライ@札幌

小ぶりで巻が固いクロワッサンをハードにダマンドが固める。

はみだしクッキー部分があるのは私の好きなダマンドの必要条件!

粉糖の甘みも加わり、決め手はバターが極めて濃厚に香る内部のクレームダマンド。


ぱぴ・ぱん@名古屋

小ぶりできゅっきゅっと凝縮された完成形。

端っこはカリカリっとハードを楽しめ、ザマンドをサンドした部分は

シロップでフニフニフニとしたソフトな歯ごたえ。

「しっとり系」と「ザクザク系」の両方を兼ね備えた絶品もの。

ショコラもピスタチオも、普通のザマンドも甲乙つけがたい。全部食べてみて。


たま木亭@京都

焼き色が濃いめでココアでもかけられている? と思いそう。

上部のダマンドはうっすらながら、トッピングのアーモンドが効いている。

なによりもクロワッサンのバターの美味しさに瞳孔が開く!

内部のダマンドも少なめであるのにどうして、アーモンドがよく香る。


ezu bleu@京都

真っ白に粉糖で覆われている可憐なルックス。

カスタードクリームがまろやかでラム酒の香りもプンプン。

特筆すべきはミルフィーユさながらのサクサク食感!