52-2.秋パン求めて鉄道の日きっぷ旅 〜三島・湯河原編〜




* 1日目:関西編はこちら *




豊橋出発、三島まで


豊橋のホテルは駅から15分くらい歩く、格安ビジネスホテル。

初めて下車する街だが、その夜はなぜか、ホテルまでの道のりで、

チンピラみたいな人ばかりとたくさんすれ違い、女性とは一人もすれ違わなかった。

なぜ? なぜなの?(笑)


ホテルについてお風呂入って、あとは寝るだけ。

…いや、待て!! パンのラップ包み作業があるやん!!

もー、頼むよ、寝かせてよ、パン君〜。。。




豊橋はほんとに「寝るだけ」で立ち寄ったので、朝は思い切り早く起床、

パンをいくつかかじったあとホテルを後にする。

7時10分の東海道本線に乗り、あとはひたすら東を目指す。


豊橋7:10発 → 三島10:16着





昨日のシュクレのセーグル・マロン・バルサミックを車中でかじりながら。

ガリッとしたクラストが持ち味のパンだけど、

私は結構しっとりしなしなっと馴染ませた状態で食べるのも好きだったりする。

生地が力強さを持っていれば逆境(?)をはねのけるのだ。




10時16分、三島到着!!

三島で下車する理由は、パンではない。うなぎである!!

三島に美味しいうなぎ屋さんがあるという情報を見てから、

パン&うなぎ&温泉旅を前から考えていた。

今日はパン屋さんは一軒だけ、と決めている。

ていうか、お昼にパンを食べるつもりなのにあなた、

うなぎ屋さん寄るのって、それってどーよ?!(笑)


伊豆箱根鉄道で一駅の三島広小路駅前にあるうなぎ屋さんは11時オープン。

行列ができるという話なので、早めに三島に着いたので、散策がてら一駅歩いてみる。

荷物があまりに重すぎたし足が痛いしであまり楽しく散策できなかったのが未練(笑)。





文学の香りが漂う、しっとりとした町並みの三島。

水路もある。彫刻がいたるところにある。

神社や庭園がいくつもあり、決まって街角には昔ながらのポストがある。

年配の散策客がとても多いことにも納得だ。







三島の老舗でうな重いただき!


そして到着した老舗うなぎ屋さん「桜家」。




うわ、開店20分以上前だというのにこの待ち人は…!




一瞬ひるむが、名前を残せば呼び出してくれるので、

とりあえず「1名」で名前を残す。





そして目に入ってきたのは隣の洋菓子店(笑)。

プチシュークリームを8個買い、

うなぎを食べる前のアミューズに…(って、おい!)。


このプチシュークリーム、王道の洋菓子味で、かなーり砂糖甘いんだけど、

とろりんとしたクリームが昔ながらのカスタードで美味しい!

うなぎ前なのに3個も食べてしまう。

あぁ、早く開店してくれないと全部食べちゃうよー(笑)。

しかし、紙袋に入れられたのは微妙(笑)。

東京に着いた頃にはふにょふにょでしたとさ(笑)。





開店からまもなく、名前を呼ばれて無事入店。

歴史を刻んだ、手入れの行き届いた古さの店内。

きびきび動く仲居さんたち。

一人客だからだろうか、渡されたのは雑誌「ミセス」(笑)。

あ、ありがとうございます。私は一応まだミスなんです(笑)。





うな重2200円はうなぎが2枚。

タレはあまりかかっていないので、自分で足して調節ができる。

うなぎの肝の吸い物が美味しい〜〜。糠漬けも〜。





やわらか〜いうなぎは、これは焼きオンリー?

脂も適度に乗っている。タレは甘くない。

醤油の香ばしさが強く、とてもシャープな味わいだ。

うなぎの好みは人に寄りけり。

私は明らかに「蒸し・甘い」が好みのタイプだが

典型的な関東人だな、って、あんた道産子じゃん!(笑))

これはこれでおいしゅういただきました♪





時計を見ると12時ちょい前。おぉ、思ったよりも早いよ。

雨が降って来たので一駅だけ伊豆箱根鉄道に乗る。

駅の行き先の掲示板がなんだか温泉チック(というか銭湯チック?(笑))。

あー、温泉入りたいよ。温泉。





お湯はなくとも湯河原ブレッド&サーカス


そう! 三島から30分くらい上ったら熱海、そして湯河原!!

そもそもこの旅では、帰りに湯河原に寄りたい、というのが目標だったの!!

自分の中では、東京から行くよりも、西から帰ってくる途中に立ち寄りたい…という

自分なりのロマンがあったわけで(笑)。


湯河原にひとり降り立ち、実はパンを食べる前に温泉でも入りたかった。

が、しかーし、勉強不足、湯河原の駅周辺には気軽な立ち寄り湯が

見つからなかった。うぇーーん。バスでわざわざ行くほどパワーも時間もなーい。





駅からほど近いところにある「ブレッド&サーカス」。

独学でパン作りを学んだご夫婦が、この温泉街にオープンさせたユニークなパン屋さん。

なにがユニークって…。パンが、パンの種類が、ものすごく多国籍!!

何系のパン屋、とも言いがたい。

一言でいうならばどれもこれも「でかいパン!」なのだ(笑)。

少量多品目買う一人暮らしの私が、一人で来るのは確かに無謀だったかも知れない。


そんなとき、今日の旅行の計画を話していた友達が

ちょうど湯河原に降り立ったというメール!! しかも2人づれで!

うわーーー!! パン分けようよーー(笑)。





古いアンティークの棚に飾られるパン。

ひとつひとつのパンに、とても物語を感じてしまう。

今朝、もしくは昨日焼き上がったパンであっても、

まるで昔からそこに飾られているかのような、時を刻んでいるような存在感…。





あ、これは確かに時間が経っているね(笑)、

ディスプレイ用のパン。





どれを買ってどれを分けて…と随分悩まされたものだ。

なんせ、どれもこれもでっかいの!!

このポテトクラウンというサークル状のパンなんて

まるで××の座ぶとんのようだよ…なんてそんなことをひそひそ囁きながら(笑)。





奥さんに、写真撮影の許可を得たことがきっかけで

スローモーに話が盛り上がりだす。

とっても「間」がユニークな、おっとりとした語り口調の奥様、

なんだろ、とてもチャーミングなの!!


パン好きさんのブログでも「美味しい!」と評判です、

私もHPやってるんですけど、みんなにおすすめされたんです、


すると奥様。

「きゃ。じゃあ私も載るんですねぇ。わあい」


そのチャーミングな反応に私たちは大ウケ!!

「は、はい!

ぜひぜひ登場しちゃってください〜!!」






「女性の方ってこういうのがお好きみたいですね…」

奥様いわく、女性に人気が特に高いというフルーツバンドル。

まるでプレゼントのようにリボンをかけれらたこのパンは

洋梨を混ぜこんだ生地にクランベリーやレーズンなどのフルーツが入っている。

できたてよりも、少し時間を置いた方が美味しかった。

味が馴染んで来て、甘さもわいてくるように。


この真っ白なヒモ、実はそのまんま焼いているんですって!

ヒモを解くのがなんだかもったいないから、分けにくかったよ(笑)。





「チーズと野菜のパン」は、

友達いわく「野菜スープの味がするパン!」。

へ? 野菜スープ? どんなんよ、どれどれパクパク…。


一口でその表現があまりに的確すぎることに爆笑!(笑)

ほんっとに野菜スープだよ、これ!!(笑)

(奥様も、その表現を使った人はあなたが最初です、だそう!)


セロリとトマトとベーコンをぐつぐつとろりと煮込んで、

仕上げにチーズを振り掛けた時のようなスープの味わい。

これは食べたことのない味わいだわ…!



「リアルカンパーニュ(手前)」と「プンパニッケル(奥)」も、棚の中でどーんと鎮座していた。

ここのは、プンパニッケルが丸いカタチをしているのが特徴的。

丸いせいか、普通私たちが知るプンパとは違ってふんわりと軽め。

キャラウェイのパンを食べ慣れている私でさえも

最初、「辛い!」ってほどに効いていて、とにかくスパイシーだった。

しかしこれもホントに美味しくなっていたのは翌日と翌々日。

あの辛さが嘘みたいに、生地の熟成されたまろやかな酸味に包み隠されていい塩梅に!!

表皮のカラメルに似た甘苦いような香ばしさがとても美味しい。





私がこのお店で一番感動したのはなんといってもこれでしょう!!!

グラマラススコーン!!!

石挽全粒粉、オートミールにドライフルーツ、アーモンド、サワークリーム…。

味は例えるならば、ダイエット中に食べるようなフルーツシリアルバーみたいで

ぼろぼろというよりも、歯につくねちっこさみたいなものもあるの。

たったひとかけらに一体何種類くらいの栄養が入っているの?!

そう、めちゃくちゃ栄養満点! だからグラマラス!!

これを食べてグラマーになれたらどんなにいいか!(笑)

とにかく絶品。マスト!!!





迷える小羊な私たちに、お店の常連さんがお薦めしてくれたのが「フルーツ800」。

「これ、美味しいわよーこれのためにわざわざ買いに来たくなるのよ」と。

ローフ型にがっちり焼かれた黒い物体。

ドライフルーツがたっぷり含まれてとても甘い!

ねっとりとした糖蜜のような甘さも加わって、

放っておいても勝手に旨くなってくれる(笑)。





ハードだけじゃございませぬ。

とにかくコーンの味がリアルなコーンパンも、

レーズンブリオッシュも、柔らかいパンたちも美味しいのだ。





でも、私が一番美味しかったのは田舎風バゲット!!(名前不明)

ポテトクラウンの断面図とどっちがどっちだかわかんなくなっているが(笑)

どちらも煎餅のような香ばしい甘さのクラストの美味しさが強烈だった!



あらら、パンの羅列紹介になってしまったが(笑)

一人暮らしの私が一人で行ってはこんなにたくさん楽しめなかった。

全てのパンを1/3ずつで計算してくれたことにも感謝…!!


でもここのパンはやっぱり大きい。

家族みんなで食卓を囲んで、何日もかけてゆっくり楽しむような、

そんなまるで外国のような光景が目に浮かぶパンたち。

布に包まれて、大きなパンナイフでざくざくと切り分けられるのを

籠の中で待っているのかな、そんな姿が似合うんだ。


大きく焼いた方がパンは美味しいから。

そんなおおらかな思いが、おおらかなパンを生むんだな。

いくつもパンを買うよりも、一つのパンをどっかーんと買って、

じっくり食べる。そういう風に食べられたらな。夢かな。


今度来る時は、紹介してもらった温泉にも行ってみよう。

そして大きいパンを抱えて暖まりたい。心も体も。

いっぱいいっぱい暖まりたい。






鉄道の日きっぷで味わった秋のパンたち。

2日間で6000円ちょっと。往復18時間。

かけた時間だけ、セーブできた予算の分だけ、

余計に美味しさを欲張るパンの旅。


次の18きっぷシーズンにもまた、西へと旅立つんだろうな、

かける時間の長さと美味しい感動が比例するこの旅を、また。

次に出会えるパンのことを考えながら

時刻表を開いてあれこれ夢をみよう。




* おしまい *