31-1.「2004年食べ納めパン」を巡る旅 〜東京→仙台→花巻〜



2004年がもうあと3日で終わる!

怒濤の2004年が!

2004年ほど、濃厚で濃密でパン環境が激変した年はなかった。

(あ、あくまで私の、ですが(笑))


そんな2004年を締めくくる「2004年食べ納めパン」は何にしよう。

2004年の締めパンはここにしまーす」「年越しパンは○○のー」

あちこちでこういった報告を耳にした。

パン好きにはなんとなーく、この「食べ納めパン、食べ始めパン」って

こだわりたくなっちゃう習性があるんだろうか。


私は別にこれ、という意識はなかったのだけど、

「帰省がてら、仙台に行きたいなぁ」

そういう漠然とした思いがあった。

私は毎年、年末年始は実家に帰る品行方正な(?)

年越しをするのだが、北海道への航空運賃はこの時期は片道3万円。

普段格安ツアーとかでチケットを取っている自分としてはヒジョーにもったいない!

そこで、「陸」で北海道まで北上することにしたのだ。

31日までに父方の実家のある日本海の漁村まで辿り着けばいい。

さぁ…プランニングプランニング!




最初の到着地、仙台へ!


我が社の仕事納めは12月28日。

夜は会社全体の納会で締めくくるのだが、

私は八重洲24時ごろ出発の夜行バスで仙台を目指すことにした。

会社に帰省荷物を持参し、納会では大いに盛り上がり、

2次会でも浴びるように酒を飲んだらめちゃくちゃ泥酔(笑)。

千鳥足で八重洲のバス乗り場まで荷物を引きずりながら…。

近くのコンビニのトイレでメイクを落とし(!)

バスに乗り込む。ぎゅうぎゅうの満席。

しかしアイマスクもトラベルまくらを膨らませるまでもなく、

べろべろに酔っ払った私はたちまち眠りについた…。


夜行バス代 東京八重洲仙台 6210円




朝、6時ころ仙台到着。

まだ真っ暗だよーーそれにしても寒い!!

荷物をロッカーに預けて、身軽になる。

朝の6時からやっているという温泉施設をちゃんと下調べしておいた。

地下鉄で南長町まで行き、そこから近い「ペアーレ仙台」という保養施設へ。

夜行バスに「朝風呂」はセットのようなものなんだよね。

眠すぎて風呂場でそのまま水没するかと思ったが…。






2004年 食べ納めパン? その1「バーニャのパン」


私は2003年の秋に、パン友達らと1泊2日の「仙台・山形パンツアー」なるものに行った。

めちゃめちゃ軒数を回ったそのツアーで、

なんとしても「もう一度行きたい!!」と強く思った店が2店だけあった。

それがこの「バーニャのパン」だ。



民家の並びにひっそり佇むこの店は、絶対に「本場のパン好き」には

一度は行ってもらいたい店なのだ。

なんといっても、その濃すぎるパンたち!!(笑)

ここは本当に米どころ宮城? と首をかしげたくなるようなほどに

本場臭い、…臭すぎるパンが、解読に少々時間のかかる手書きのプレートとともに

所狭しと並べられている。日本のパン、ではなくて外国そのもののパン。

人の顔に例えるなら「バタくさいパン」が多いのだ。

他のパン屋さんがすました「醤油顔」にみえてくるのが不思議だ…。


窯の臭さか、店に入っただけでたちまち

「焼肉屋で食事をした後」のような焦げの臭いが染み付く。

その臭いはすべてのパンに染み付いている。窯の焦げの臭いがそのままパンの味になったような。

しかも、これがもうもう、ものすごーく美味しいのだから私には衝撃が強すぎた。

とにかくものすごーーい「濃いパン屋」であるのだ。

(行ったことがある方なら分かると思うが、…「濃い」のはパンだけではなく…(笑))




これから北上の旅を続けるのでほんの少しだけ、朝食べる分だけ…と思っていたら甘かった。

ここのパンを見たら、買わずにはいられない!!

上の画像はバゲットカンパーニュ。

みて、この焼き込みっぷり! こんなパン、日本のどこを探してもないはず。

パンの描くラインたちがなんだか筆ペンで描くような感じなんだよなー(笑)。

外側はがりんがりんと乾いているんだけど、中はみちみち、ねち? みたいな。

旨味が強くて、そして焦げ臭も激しい。すごいパンたちは健在だ。


今日が年内最後の営業日だったらしく朝からがんがん焼かれている。

最初はちょっと違和感を抱かずにはいられないお店のおばちゃんも(失礼!)




とても親切で、あれこれ世話をしてくれ、

挙げ句の果てにはクロワッサンを半分おまけしてくれた。

「ほら、できたてだから食べて来なさい」と。

あ、ありがとうございますーーっ。

買ったクロワッサンの方は手を付けずに、もらったクロワッサンをお店の外でかじりつく。






そうそう! 私はここのクロワッサンに衝撃を受けたんだった。

バターの巻き込みが少なくて層が厚く、なんとなく昔懐かしい「デーニッシュ」なんだが

がりがりっとハードな層と、しっかり実のつまった「食わせるクロワッサン」。

バターと粉の味わいが同じくらいして、なんとも甘い甘いクロワッサン。

NYCで食べたCITY BAKERYや、水海道Nとか(もっと繊細にしたら)通じるものがある。

 


笑わしてくれたのは(失礼(笑))この「クロワッサン・ザマンド」。

めっちゃくちゃどっすりと重たいのに140円?! ありえんありえん。




で、中はクリームがサンドしてあるんだけど…どこ??? わかりにくい(笑)

これまた昔懐かしいコンビニデニッシュを彷佛させる(笑)。



めちゃくちゃ大味で剛胆なのに、粉の旨味があるもんだから舌が困惑(笑)。

食べて行くうちにじわじわこの粉の旨味にはまって行っちゃうんだよなー。



 

この薄いピザのような生地にリンゴ、くるみ、イチジク載ったやつ。

これすら独特の焦げ味がするのが愛しいわ。




パン・オ・ノアの「ぐるぐるぐるて〜ん!」みたいなねちょねちょしたクラムだって

まじここでしか味わえない逸品だと思う。持つ手はやはり焦げくさい(笑)。

画像にはないけど、クロスグリは絶品! ミッシュブロートも美味しかったー。


はー、ほんっとにすごいパン屋さん…。

また仙台に来た時は行きたい。というか、フランスに恋しくなったら来たい。

私の中で「日本で一番本場臭いパン屋」はここだと思っているから。




番外。

バーニャのすぐ近くのお菓子屋さんのシュールな看板にウケ、

正月のお菓子に購入

とにかくキャッチコピーが仰々しくて笑えるのだ。

100人食べて100人がうまいと言ったお菓子」

「恋人達の奏でるシンフォニー」

「ちょっと気取っておとなのあじ」



…だめ、ベタすぎる。ベタすぎるーっ!(笑)

でも、予想外にも「意外にうまい…」と思った私、

100人のうちに入るらしい(笑)。






2004年 食べ納めパン? その2「ベーグルU」




さぁ! もう一つの仙台の本命パン屋さん、 ベーグルU

ベーグラーたちに絶大な人気を誇るこちらのお店、私も2003年秋に訪れた時が初めてだった。

その時に食べたベーグルたちの美味しさに衝撃を受けたのだ。

それまでベーグルはデパートの地下で買ったりする程度で、

ドーナツ型の形をしただけの「ベーグルと言う名のパン」が多い巷では(笑)、

それほど美味しいものと思っていなくてその存在を「なめていた」。


しかしここの、指では引きちぎれないほどにぴーんと張った膜のような表皮に驚き、

その確かな嚼みごたえと優しく沸き上がる甘みに知恵熱が上がった。

「い、いままで食べて来たベーグルっていったいなんだったんだ?!」

そして、その豊かなフレーバーのラインナップ。

イモ栗かぼちゃは女の幸せ、その女心をくすぐるベーグルたちの豊富なこと!

なんとしても再訪したかった今回の帰省旅。

もしかしたらここが2004年締めパンになるのかしら…?!


雪が本降りになってきて最悪な天候の中、最寄りの地下鉄駅からいそいそ向かう。

前回は車で来たので、歩いて行くのは初めてだけど不思議、

なんとなく土地勘はあるのかしら、この道に覚えあり!





きゃあぁぁ〜! かわいいかわいいベーグルとお菓子たちがお出迎え!

若きパン職人であるUちゃんはパン屋さんとは思えないほどにかわいらしいお嬢さん。

(パン屋さんに失礼か(笑))

少し手を休めて忙しい中かまってくれて感謝感謝!

ハズカシイくらいに言葉が上滑りしている自分がわかる。

なぜか緊張しちゃっている私だったのだ、この素敵なパン屋さんを目の前にして。



前回はお目にかかれなかったサンドたち(時間が遅かったからかも)、

ずらずら〜っと並べられて、ラップとシール貼りを同時進行に。

ベーグルサンドはすべてプレーンベーグルを使っていた模様。

うーん、どれにすべき?! どれにすべきー?!


 

そうそう、こちらはベーグル専門店…ではなくて、

ベーグルとパンとスイーツと…と、女の子の好きなものがたくさん詰まったお店なのだ。

今回はベーグルばかり買っちゃったけど、このマフィンもすっごく美味しそうだった〜。




それとそれと!! 「キャラメルチョコと渋皮マロンのほろほろクッキー」。

たまたま買った唯一のスイーツ、これがめちゃくちゃ美味しかった〜!!

粒粒っと口の中で弾けて、パチパチキャンディー(って昔あったお菓子)を思い出す。

キャラメル味をベースに、確かなマロンとチョコの優しい甘さが。

すべてがまあるく仲良くひとつに溶け合っているクッキー!




(案の定)あれこれ買っちゃったのでこれらはあとでバーニャのパンと一緒に

東京に発送することにしましょう、…ならばがんがん買っちゃえー(笑)。

というわけで、食べたことのないベーグルたちを一通り買っちゃう私。

本当はあれもこれも買いたかったのだけど


若いのにすごく勉強熱心でベーグルやお菓子に熱い想いを持つUちゃん。

お店やパンたちを見ていると、本当に大事にされているパンたちなんだなぁってすぐわかる。

ハードではない、むしろソフトな嚼みごたえ。チュウイーという表現がぴったり!

ほんわか柔らかくて、優しい優しいベーグルたち。

こんなに素材の味がリアルに出ているベーグル、いや、パンでもあまりないかも!

(とくにずんだベーグルやスコーンのリアル枝豆っぷりは必食! さすがは仙台?!)

自分の目指すベーグルをとことん追求してほしい!!

また仙台来た時は立ち寄らせて頂きます〜♪


仙台は12時40分には発つ。

雪がやばいほど降って来て歩き食いは不可能となった(笑)。

仙台駅に戻り、とあるカフェでこそこそ梱包作業する怪しい女。

これは持って行く、これは発送する…、カットして…、ラップして…

残り時間で急いで土産屋を物色、家族への土産に牛タンを地方発送。

これで仙台とはおさらばだ! 次なる北上へ!!






さらなる北上! 花巻温泉卿行き貸し切りバスでベーグルランチ


最初、どうせ東北へ行くなら行きたい温泉があったのだ。

私には死ぬまでにもう一度食べたいものが(いくつか)ある。

そのうちのひとつが、田沢湖の乳頭温泉卿・鶴の湯の「山の芋鍋」。

3年前の夏と2年前の冬とで2回リピートしているのだが、

東北に行くならなんとしてもまた食べたいーーと思っていた。


しかーし甘かった、土壇場までこの帰省旅行は白紙だった。

「明後日なんですけど部屋空いてますか?」

準備が遅すぎた…人気旅館だもの、空いているわけもなく。

鶴の湯計画はおじゃん。ついでに乳頭温泉卿の宿はどこも一杯。

こうなったらどこでもいいや、仙台より北ならどこでもいいや(笑)


路線変更して「旅の窓口」で旅館を探していたらなんと格安の温泉宿があった。

花巻の温泉卿のひとつ宿、「鉛温泉」というところの旅館で、

「旅館部」と「自炊部」と分かれており、

湯治客向けの自炊部でも一泊二食付きで5900円というパックがあるらしい。

この手の温泉宿はこれまでも何度も利用しているし、

ちょっとくらい汚くても慣れているからいいやーと思って即決。

なんと、仙台からこの温泉卿まで直行する観光バスが2000円で出ているそうな!

(仙台花巻まで2000円というのは非常に手頃だ)

このバス旅行がまた結構オツなものだったのだ。




仙台広瀬通りから出発するこのバス、なんと乗客は私だけ?!

私の予約が入ったために運行されると言う。あぁぁ、貸しきりですーー!

一番後ろの席は寒かったのだが、どうせ誰もいないので、

シートで体を伸ばして眠りながらいくことにした。

夜行バスで睡眠不足だったのでこれは極楽!(でもこの日は大雪で激寒(笑))


その前にお昼ご飯にしよう!

朝からパンしか食べてないからな、ここは野菜補給も(笑)。

 


ベーグルUちゃんで買って来たベーグルサンド2種。

甘辛両方からひとつずつ選んでみた。

左はエビマヨブロッコリーサラダ。

クリームチーズとマヨネーズがたっぷり入っているのに

ベーグルの優しさに包まれてわりとあっさりいただける。



右はバナナクリームチーズのベーグルサンドイッチにりんごの赤ワイン煮、

さつま芋の甘露煮の入った夢のようなサンド♪

これは青葉区にあるなかよしパン屋さん「さくらぱん」さんとの

コラボレーション企画なんだとか! 今回は時間もなかったけど、

さくらぱんさん、是非是非行ってみたい!

このベーグルサンドがすごーーく美味しくて、甘くてしあわせ〜♪

甘いものが好きな人が作る甘いものは美味しいなぁ〜。


これと少し切り分けて来たバーニャのパンたちも齧る。

もしかしたらこれが年内最後の「食べ納めパン」になるのかなー?

お腹も満たされ、バスのシートをベッドにして、私はたちまち夢の中に入って行った。


バス代 仙台花巻鉛温泉 2000円

累計 8210円



ひなびた温泉宿でひとり湯治客ごっこ


仙台を出発して約3時間後。

「お客さーん、着きましたよ!」

運転手さんがわざわざ最後部座席まで起こしに来てくれた。

やぁ、着いたんですね。ぐっすり眠ってしまった。

トイレ休憩を入れなかった分、早く着いたらしい。



ぽつねん…。


バスが着いて降ろされたのは辺り一面の雪景色。

一瞬「ここはどこ? 私はだれ?」の世界だったが遠くに旅館の看板があった。

数分後、旅館の人がバス停まで迎えに来てくれた。

 


この「藤三旅館」というのは、旅館部と自炊部に分かれており、

入り口と建物、履物、衣類全てにわたってきっちりわけられているのだが

温泉はどちらも利用できると言うのがポイント高い。

風呂さえ良ければ部屋はどうでもいいやと思っていたので。


実にひなびた…良く言えば古風な…温泉宿だった。

番頭さんたちの東北弁が温かみがあった。いいなぁ、やっぱり東北。



  


自炊部は暗くてめちゃくちゃ寒い。

旅館部は明るくてそこまで寒くない。このメリハリは逆にいいなぁ(笑)。

 







自炊部には共同炊事場がある。湯治客が何ヶ月という単位で住むわけだから、

ちゃんと売店もある。野菜とか一通りの生活用品は売っていて、

またここのおばあちゃんたちがいい味してんだぁ。温かいんだ。


  

部屋もやはり恐ろしくひなびていて、それこそ「げほげほ」と煎餅布団かぶって

血の咳を吐くような文学青年を思い浮かべるのだが(おいおい)、

これが意外と居心地がよかった。





たぶん、それほど混んでいないから隣の部屋から音がもれたりしないし、

ストーブとこたつをつければ暖かい。それに、窓の外の景色!

本当に山奥、川のせせらぎがうるさいほどに。いい!



早速お風呂へざぶん。

今流行りの(笑)、全浴場源泉100%かけ流し。

露天風呂からは部屋と同じ景色が見える。

なんせお客が少ないものだから(笑)、がしがし写真を撮っちゃう私。

夜はライトアップされて幽玄な雪景色が美しかったのだ。




自炊部の夜は早い(笑)。

まだ5時だと言うのにもう夕食の時間だ。

部屋に運ばれた食事、質素ではあるけれど、それなりそれなり。

ぶりかまが2枚も付いて来たが、すっかり冷えていた★

…けど炊事場の電子レンジまで持っていくのも面倒でがまん(笑)。


 

 

こちらの旅館の名物風呂である「白猿の湯」は、

日本一深い岩風呂だそうだ(それが決め手で私もこの旅館にしたようなもんだ)。

混浴なのだが、19時〜20時半は女性専用。

早速カメラ持って(笑)一番乗りにざぶん。

天井がとても高くて、文学ロマン…な雰囲気がある。

画像では伝えられないのが残念。

そしてこの立ち湯、本当に深くて、165センチある私でも、ぎりぎり顔しか出ない深さ。

これだと間違いなく150センチ台の女性や子どもは溺れます(笑)。




夜は部屋で年賀状書き(笑)。

こたつに入って、せっせと年賀状を書く。

古いアドレス帳しか持って来なかったので全部は書ききれなかったけど

ついつい「今、東北のひなびた温泉旅館にいますー」と書く私。

ひなびたひなびたひなびたひなびたひなびた

…と一体何度書いただろう(笑)ごめんなさい。



翌朝!

食事前にお風呂にざぶん。

晴れ渡って、イイ感じ雪景色が眺められる。



見えるかな? 私の足と川と向こう岸。


 

 

朝食だが、真っ暗な廊下(画像修正しているので明るく見えるが実は真っ暗)に

並べられる御膳(ご飯は案の定冷えている)。そして格子の扉…。

ちょっとムショ暮らしっぽい気分が味わえる(笑)。

 
 


やっぱり温泉はいい、雪国の温泉はいい!

私はパンにここまで翻弄される以前、温泉めぐりにいそしんでいた。

学生時代は日本各地、実にいろんな温泉に行った。

その時に忘れられなかったのは東北温泉旅行。

混浴にも果敢にチャレンジ、たまたま混浴したじいさんに

「冥土の土産になりましたぁ」と言われた過去を持つ(笑)。

今回はここ一軒しか行けなかったけど

思いきって来てみてよかった〜! 一年の疲れを垢をここで落としていけたかな。



花巻駅までの送迎バスを待つ間に旅館の周りをお散歩。

携帯も通じない山奥、凍った空気を胸いっぱいに吸い込んで後にしよう。


宿泊代 5900円+暖房費等=7000円

累計 15210円



★ さらなる北上はつづく ★


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