16.「ライトな人の、ライトな人による、ライトな人のための」パンオフ事始め



4月上旬の辰巳海浜公園。

「ディープ」なパン好き、ではなく、

「ライト」なパン好きたちが集まって

「パン&スイーツオフ」なんてことを試みた。




もともと私はパン好きというよりも、

食べることが好きだった。

ここ数年はパン屋ばかり行っているが、

以前はいろんなジャンルのレストランに行くことが大好きだった。

フレンチだろうと懐石だろうとラーメン屋だろうと、

ひとりでもじゃんじゃん行っていたけれど、

最近はすっかりそのパワーはパン屋ばかりに向けられた。


まじでパン屋オンリーになってきた自分に

ストッパーをかける意味もあって(笑)

私はグルメサークルに入っている。

かろうじてこの会のおかげでパンだけに偏りがちな私の

グルメライフが起動修正されると言うわけで(笑)。


そこではノンジャンルで美味しいもの好きたちが集まるけれど

メンバーそれぞれに「専門分野」みたいなものがある。


「焼酎専科」とか

「ラーメンはまかせろ」とか

「ワインはちょっといい線行くわよ」とか

「人間カレー屋検索機」みたいな人もいる。

あ、「フレンチの御意見番」みたいな方も?


もちろん、私は「パンきちがい」として存在アピール

…するつもりはないんだがどうも「パン語」しか話せないもんで(笑))




そんなこんなで、今回のテーマは「パン&スイーツ」。

私がよく顔を出すような「ディープなパン好きの集まり」とは違う。

中には「パン? 滅多に食わないっすよ」なんていうのも。


なにせメンバーは、「常識レベル」のパン好き度だ。


一日くらいパンを食べなくても禁断症状を起こさない。

電車で何時間もかけてパンを買いに行かない。

駅名を聞いたらすぐに「そこに○○ってパン屋ない?」なんて言わない。

…バゲットを食べるためだけにフランスまで行かない(笑)。



そんなこんなで、パンオフ。

参加者が行きたい店、行きつけの店のパンをそれぞれで一軒ずつ選び、

そこでオススメパンを1個程度買ってくる。

交通費は自腹、他の経費は全て折半。

お酒やデリ担当も決め、あとは食べたいものは自分で持ってくる。

これがルール。



私はどこのパンを持っていくか非常に迷った。

美味しいパンならいくらでも知っているのだが、

どうも自分の嗜好が最近「常識」から

離れて行っている気がして(笑)選択は難しかった。


「誰もが美味しく食べてもらえて(これが難しい)

誰もがそこそこ知っていて(これもさらに難しい)

なおかつ、自分がとっても大好きなパン!」



そして思い付いたのが、幕張の「ドンナ」さんの食パンだ。

ここの食パンを初めて食べた時の衝撃は忘れられない。

滅多に食パンを食べない私だから、知恵熱的にノックダウン。

12時辰巳の公園集合までに、幕張へミニトリップすることにした。



***




幕張本郷駅は意外に遠かった。

横浜へ行くのと同じくらいに遠かった。

駅からも少し歩く。


ここが、PTAのお母さん達が集まって始められたという

「ま」が抜けたマドンナたちのパン屋さん、「ドンナ」だ。



ドンナママは、パンを丸める手を止めて挨拶に出てきてくださった。

以前、一度お会いしたことがあり、

どうやら顔を覚えてくださっていたようだ。

そういうことって、パン好きにはたまらない嬉しさだ。

ある意味、芸能人よりも、パン職人に会える方が感激だ。

…ほら、私は「非常識」なんで(笑))。




よくある町のパン屋さんである。

老若男女に好まれそうなパンが並んでいる。

メロンパンの隣にはクリームパン。

クリームパンの隣にはカレーパン…のように

誰からも愛されるお店。

御近所のお母さんやおばあちゃん、子供達が元気にパンを買いに来る。

ドンナママがひとり一人に声をかける。

いいなぁ、こういうパン屋さん。

大人だけではなく、子供の常連さんもいるお店って。




レジ横の棚には予約済みの「ドンナママの食パン」が並んでいる。

今日、これから私達が食べるのはあそこにあるのか!

食パンを一本、どっしりした重みを抱きかかえた。

早く食べたい…もうお腹が空いてたまらない!

自分用にもいろいろ買いたかったが、

この後の集まりのことも考えてほんの少しにしておいた。

また今度パンをじっくり楽しめる時に来たい。




…とかなんとかいいながら

やはり歩き食いクイーンとしては(笑)




レーズン入りメロンパン食ってるし。

(駅の陸橋の上)




クロワッサンも食ってるし。

(駅のホーム)






最終的に辰巳にメンバーが集結したのは13時過ぎ。

続々とパン達が集まってきた。


バゲットなら1本程度、というルールだったと思ったのだが、

みんなやっぱりお店に行ったらあれもこれも買いたくなるのだろう。

ひとり5人分以上は買ってきてしまったようだ。

かくしてこのような状態に…!!




「非常識」な私は、こういう光景は見なれている(?)が、

「常識的」なみんなは唖然としている。

これをたった9人で食べようというのだから…。




そして写真撮影大会が始まるのだった…。

(ぼかし入り)


BBQ場であるのにBBQではなくパンを取り囲む大の大人たち。

他の客からみたら異様な様だったろうなぁ…。




では、今回のエントリー作品を紹介しよう!

(名称は私の覚えている範囲なので正式ではありませぬ…御勘弁を)

 

VIRON@渋谷

バゲット・レトロドール、ショーソン・オ・ポム、エピベーコン、セーグル・フィグ、パンペルデュなど

レベルはやはり高いわけだが、Vはわりと食べ慣れているので、今回は他店のパンばかりに手が伸びた。 あとでスイーツで挽回?! 



Zopf@松戸

ヨーグルトライ、パンオノア、ゴルゴンゾーラとポテト入りのサワードゥ、その他マフィン、パイ他

朝一番に行ってもらったわけ(笑)。ここもね、食べ慣れているとはいえ、 パンオノアを久々に食べて「あれ、こんな美味しかったっけ?」と発見したり。 ゴルポテ買ってくる辺り、素人とは思えないセンスだね! よ、大将!  そして、改めてヨーグルトライの無類に明確な美味しさを実感。メンバーも大いに納得していた。 私は人より多くお土産確保した(笑)。



関口ベーカリー&opatoca@中目黒

あーー、もうどれがどれだかわからなくなってるが(笑) とりあえず思い出せるのは、opatocaのクロワッサンが意外にレベルが高いってこと! このパンオフの直前に私も来店したが「あかさん」は、買い出しy嬢もお気に入りだとか。 クリチと胡桃レーズンの入ったワインパンというわりとありがちなのに、クリチのまろやかさが旨い!  それに胡桃レーズンでしょ。単純明解な美味しさ。みんなも絶賛。 食パン(年長さん)はちょっとここで味わうにはよくわからなかった。トースト向き? 関口さんのは、かちかちに固まった甘い黒密がうねっている、デニッシュロールをいただいた記憶が。 



メゾンカイザー

おなじみクロワッサンと、大好きなタルトノルマンディ♪ さらにキッシュも買ってきてくれた。 タルトやキッシュはタマゴ度が高く、やはり万人が美味しいと思われるような、 素材をケチらない確かな作り。大好き♪

正直な話、ここのクロワッサンの「売り方」については私はいろいろ思うことがある。 あのフィガロ紙No.1という売り方はもうやめよーよ、と思うのだが。 だって、あれって1999年の話だし、プージョランと同率でしょ。 美味しいけれど、みんなに過剰な期待をさせて食べさせるのってどうなんだろ、 大衆紙のアンケートなんて、日本だったらとかみんなが知っている店しか上位に来ないよ。

いや、美味しいんだけどさ(笑)。

私はどっちかと言えばこの生地を使ったオザマンドやパンオレザンやその他の アレンジものの方が好きなんだよね。この「パリパリ」食感が冴えるし、 甘さ控えめ感があってさ…。

みたいなうんちくを熱弁してしまった私。やな奴(笑)




パンジャミン&ぐうちょきぱん@南浦和

            &デイジィ@西川口

超有名店であるデイジイは私も行ったことがある。久々に名物クロワッサンBCを頂いたが かつて店で食べた時よりもずっと美味しく感じる。なんでだろう。そう思った人が数名いた。 でも、やっぱり生地のふんにゃりした感じが気になってしまう。 しかし!! 衝撃を受けたのが画像手前のレーズンペストリー!! 一同、大騒ぎするほどに美味しかった〜!! 粉糖からシナモンから、生地のリッチさから、全ての甘さが 上品に集約されている。これは、パン好きじゃなくても人間ならば絶対美味しいと感じるわ(笑)。BC買うよりはこっちを。

パンジャミンはオレンジの入ったブリオッシュだったか?(忘れた…)

そしてインパクトがあったのが、ぐうちょきぱんのチャバッタを甘くしたような素朴なパン。 いったいなんの甘さなんだろう…バターよりももっと軽い感じの脂分で…美味しかったなぁ。




Pao@新松戸

ここのパンもひさしぶりに食べる! 新しいお店には私は行っていないのだが、買ってきてくれた子によると混雑は緩和していたそう。 久々に食べるカボチャのオザマンド。記憶よりも大きくなった? しかし、記憶通りに真っ黄色! 一層一層にコシがあって、ぷつんぷつん噛み切るような食感が奇妙に好き。そしてこのカボチャのストレートさ。 そして美味しかったのはプンパニッケルのように蒸し焼きされた感じのライ麦パン。 非常に酸味が強いのだけど、その後のコクは余韻が長い。臭いチーズがあったので たくさんつけて食べた。臭い酸っぱいコンビで♪ 他にはグラハムパオ(だったっけ? レーズン入りの。 やたらレーズンと生地が密着していて噛む時は奥歯で引きちぎる、みたいな(笑))。 お土産を包む時、ほとんど私がもらって帰ってきてしまったパオのパン。 私は好きなんだけど、この酸味系はやはり難しかったか…? 




神田精養軒@落合

デパ地下とかでお馴染みの精養軒。実は、落合に工場があるのだが、ここだと 焼き立ての「スイスエッテ」が直売で買えるというのだ。 私は2年くらい前のモバックショーで食べた試食品の中でこのスイスエッテが一番美味しかった 記憶があった。そのころペルティエとかの長時間低温発酵による「噛めば噛むほど甘いねちねちしたバゲット」の登場に 世間が(というかパン好きが?)湧いていたころだった。このスイスエッテもそれに匹敵する甘〜い旨みがある(クラストはザクザク系だけど)。 でも、デパートで買って焼き戻して食べた時は、その時にはおよばなかった。 やはり、できたてすぐのものだったら全然違うだろう! 現に、この日のスイスエッテは本当に美味しかった。 なんか、3人くらい悶絶している人がいたなぁ…(笑)。  もって来てくれたSくんは前途有望なパン好き青年。さぁ、どんどん道を踏み外しなさい…(笑) 



ドンナ@幕張

そして…。1本まるごと買ってきた「ドンナママの食パン」。 目がしっとりと詰まっていて、ふんわりと柔らかいのにいくらかコシもある。 赤ちゃんのお尻よりも滑らかで(?)絹のような繊細さ…。 それほど噛み締めないまでも、ものすご〜く甘みがあって、めちゃくちゃにまろやか!! 説明するまでもなく、これ以上に美味しい食パンを私は知らない。 美味しい食パンは、生で食べられる限り食べたいものだ。 この美味しさは絶賛され、あれよあれよと売れていく。 パオ担当の子は自家製文旦マーマレードをたっぷり挟んで噛み締める。 Sくんはクランチチョコ入りクリームをどっぱり挟んでかぶりつく。 何をしても、食パン自体の甘みが損なわれることないのがすごい…。 自分で持ってきたせいもあるけど(笑)やっぱりこれが私にとって本日のナンバーワン!!



「非常識な」私は、この手の持ち寄りパンパーティー慣れしている。

パンがいくらたくさんあっても食べる量を把握して、

持ち帰って食べる術を持っているのだが

みんな、かなりのハイペース、かなりの量を食べている。

特に、男性陣がよく食べる。




(私は食パンの耳の角が好き(笑))


最初私がほんのひとくちサイズにカットして差し出しても、

新たに大きくカットしておかわりする始末。

思った以上にパンは早いペースで減っていき、

お持ち帰り分は意外と少なくなってしまった。

さすがはグルメサークルのキワモノツワモノたち!





ほら、あんなにあった食パン、こんなになくなってしまったよ?!




パン以外もお見せしておこう。

 

グルメサークルのパパ的存在、Yさんお手製のサラダ。 パンだらけだと、結構しんどくなるものだが、このサラダなどのお惣菜が 癒しとなった…。持ち寄りパンパーティー初級者の男性陣の間では 「今度はパンは少なめに、デリは多めに」を教訓にしたという…。 





手前味噌だが、私の自家製文旦マーマレード。 去年、初めて同じものを作ったが、今年はより一層美味しくできた♪ Paoのライ麦パンにクリームチーズと合わせて。




本来は「パン&スイーツ」だったはずなのに、すっかりパンがメインとなった今回。 しかし…念願のVIRONのケーキを初体験!! だって、Vに行ってもケーキを買う(金銭的)余裕はないから(笑)。 もう書くのが疲れたので詳細は省くが、どこもこれもがめちゃくちゃ美味しい! 個人的にケーキでは「甘さ控えめ」なものよりも、「ちゃんと甘い…けど甘過ぎない」ものの方が好き。 VIRONのスイーツは、どれもが確実に甘味欲求を満たし、かつしっとり上品。大人向け。 とくにサバランのくらくらする洋酒の香りがな〜♪ それにそれに、この苺とカスタードの 一見何の変哲もない組み合わせなのになぁ…なぜにこんな美味しいのだろう。 好きなケーキ屋さんが一つ増えたような、得した気分♪ …といいつつ、所詮私はパン専科。たぶんパンばかり買うんだろうな、今後とも(笑)。 






これは埼玉のどこかのケーキ屋さん(申し訳ないが失念)。 左側のケーキ。これが非常に難解で、一同「いったいこりゃー何の味だ?」と 悩まされた。素直に「美味しい」という一言が出てこないケーキなのである。 かといって「不味い」わけでは決してないのだ。 「これってコーヒー?」とか「ナッツも入ってる?」とか そう検証していく内になくなっていく…というものだった。 結局、美味しかったのかも知れない(笑)。



どのパンも美味しくて、超充実したパンオフだった。

いわゆる「ライト」なパン好きさんたちが持ち寄るパンは

こ難しいこと抜きに、単純に「美味しい」ものばかりだった。

美味しいものにはやっぱりジャンルは関係ない。

誰もが潜在的パン好き要素を持っているんじゃないかな、と

いつもの「ディープ」なパン好きたちとのパンオフとは

違う面白さを味わうことができた。


しかしみんなよく食べた…。

「ディープ」なパン好きよりも絶対食べている。

こんなに持ち帰りの量が少ないとは思わなかった。

みんな「しばらくパンは見たくない〜」とでも思っていそうだなぁ。

ははは、パン普及、逆効果?(笑)



…格言。

パンを嫌いな人、

もしくは

パンを嫌いになりたくない人、

持ち寄りパンパーティーはおよしなさい(笑)。



でも、慣れたら、私みたいに

翌朝でも、その夜からでも

やっぱり毎回パンばかり食べられるようになるよ〜。


…なりたくないか(笑)。