1.Nicolas@茨城水海道




11月初旬。「パン職人と愉快な仲間たち」と称して

水海道でホームパーティー(?)を開催。

皆が美味しいものを各自持参する中、私はほぼ手ぶら状態でのこのこ水海道へ乗り込んだが、

なんとかHP開設を間に合わせた。…手みやげ代わりに。

そうして、名も無きパーティーに「mi_waのHP開設祝いパーティー」と

無理矢理こじつけさせる図々しさ極まりない私(笑)。


集まった面々は、筋金入りのNicolasファンばかり。Nicolasのパンを食べるためなら
何時間かけても、ローカル線に乗り継いでも、駆けつける生粋のパン好きども。
それだけの価値があるのだ。この若き天才パン職人の作るパンには。

予算の範囲内で、パン職人自慢のパンを惜しみなく披露してもらう。
テーブルいっぱいに並べられたのは、



●リュスティック
カリッとした薄いクラストにみずみずしいクラムの絶品リュス。
べたべたするくらいの保湿具合でてらてらつやめいている。
巷でもリュスティックはメジャーになりつつあるが、ここのリュスは、どこか糠クサさというか、
お酒のような香りがする。どこか炊きたてのお米を連想させる。

私はこの香りがたまらなく好きなのだ。


ソーダブレッド2種
今回はレーズンとカシューナッツ、オレンジの2種類が登場。
オレンジの方は、マーマレードがふんだんに練り込まれているようだが、
練り込んでいるはずなのに、マーマレードとバター(どちらかというとマーガリン的な懐かしい風味)を
後からたっぷり塗って食べているかのような鮮烈な香り。ほろほろではなくてしっとりタイプ。



●クロワッサン(うずまきバージョン)
Nicolasのクロワッサンは、外層はパリパリ、中がもっちり、粉の風味が味わえる食事向けタイプである。
しかし、このうずまきバージョンは、層が薄くてサクサクと小気味良い食感が特徴的。
塩気が適度で、サクサク系であるにも関わらずに、(粉の)甘みがしっかりしている。
いつものクロワッサンも好きだが、これはかなり好み!! 
これにレザンやクリームを混ぜてNicolas版パンオレザンをいつか所望…!




●ベルリーナラントブロート(コーヒー豆バージョン)
まるでコーヒー豆?!
そう見えるのは、ルックスだけでなく、こんなにざっくざくとたくさん盛られちゃっているから。
表皮も中も一体化してむちっと凝集性があり、ライ麦のうまみの宝庫!


フリュイ
これ以上に甘さとコクと旨みを兼ね備えたくるみパンを私は他に知らない。
渋皮を残し、丁寧に処理されたくるみの美味しさは口の中の味覚神経を麻痺させるほどなのだ。
これは食べた者にしかわからない類い稀なる体験である。
クランベリーの甘さまでも包み込む懐深い生地の旨みは呼吸が止まる。
…しかし、いつもならこれ目当てに水海道まで買いに来る私だが、今回はなんと5ミリしか食べていない。
他のパンもあまりに美味しくて食べる余裕がなかったせい。あまりにもうれしい誤算!!


マンデルブロート
中でも、私が一番「来た」のは、これ(…といいつつ、これだけ写真がない(笑))。
ベルリーナラントブロートにアーモンドを混ぜ込んだこれ。
かつて通販で食べたことがあったのだが、翌々日到着のものでも十分に美味しかった記憶がある。
しかし、焼きたての、まだあら熱が取れていない状態でほくほく焼き芋状態のように食べて、
全身鳥肌が立ってしまった。もちろん、感激の鳥肌が!! 美味さ、測定不可能!(笑)

ライ麦の濃厚なコクと、アーモンドの香ばしさ(ナッツ独特のコクも併せ持つ)が
タッグを組んで口の中で全ての味覚をぎゅうぅぅぅっと集めて集めて…爆発させる!!
アーモンドのしゅくしゅくっとした食感もたまらない。しかも、このマンデルは特別バージョン。
細長い形状で、編み目のようなクープがしっかり立っていて石畳のようである。
ここをめくり返してクラストを味わうのが…至極!! これは通常バージョンでは味わえない醍醐味。
なんつーー美味さ。びっくりだ。これまで食べたベルリーナラントブロートの中ではダントツだ。
あのドイツパンの名店よりも、あの店よりも。

私はライ麦パンも、ドイツ系パンも、ほとんどその日のうちに冷凍してしまう。
翌日翌々日でもそれなりに美味しいが、それは、「当日の美味しさ」を味わったがゆえの
余裕のある行為だと思う。変化を楽しむには、「当日」を味わわなくてはそれは不可能だ。
このマンデル、以前食べたときはこの魅力を半分も味わいきれていなかったことを実感してしまった。




パン以上に料理の腕前まで披露されるとはさらに大きな誤算だった。
まずは豆とお肉の煮込み料理。青梗菜が乗せられている。
コリアンダーの入ったようなエスニックな香りが食欲をそそる。
しっかりしたクセのある味付けはパンを求めたくなる。リュスとの相性は抜群。



一番上の写真、ちょっとグロイ豚の塩釜焼き。
口の部分から怪しく豚の肉汁が溢れている…大食漢の我々に、挑戦的な不敵な笑いを浮かべる豚(笑)。
この塩釜を取り除き、味の染みこんだ大根と甘いパプリカ、セロリの葉を添えたお料理。
塩釜にはハーブがふんだんに使われているため、お肉にはしっかり味が移っている。
セロリの強い香りが全体を仕切っている。これがたまらん! 
お肉が苦手な一部のメンバーには、大根が大人気。



お料理ラストは(もうこの時点でみんな腹10分目?!)
ひらめのムニエルにイチジクのソースがかかったお料理。
オーブンで焼かれることでしゃっきり感と旨みが閉じこもったスティックセニョールと
赤と白がきれいなドライリンゴが彩りを添えている。
このイチジクのソースがなんとまぁウマイもので…!!
イチジクって言われないとわからないのだけれど、説明しがたい旨みが凝縮している。
みな、このソースにハマリまくり、奪うように、リュスで拭いながら完食!!
(考えてみたら、こういう風にリュスを食べるなんてなんて贅沢なの…♪)

一同、パン職人の多才ぶりにひたすら感動。
「パンづくりのウマイ人は料理も上手なんだねぇ…」
美味しいレストランでは、たいていパンも美味しいという法則があるが、
その逆というのはあまり例がない気がする。
しかも、どの料理も、どうやって作ったのか想像しにくい複雑な味付け。
階下の厨房からはまた「新たな匂い」がただよってくる…。まだまだ待ち受けているらしい!!



ジャーン!! ベーグル!! 焼きたて!! 
プレーン、カフェオレ、トマトバジル、黒ごまの4種のベーグルが焼きたてで時間差で次々に登場。
今回のメンバーにはベーグラーが多い。彼らのこだわりっぷりは怖いものがある。
ひき具合、つや、穴、もちもち感、甘み、めちゃくちゃにチェックが厳しい(笑)。
フラッシュをたいたら「反射するから止めた方がいい」とのアドバイスまでいただいた(笑)。恐るべし。
あら熱が取れるまで待ち、時たまツンツクさわりながら「そろそろ(ひきが)生まれた?」と(笑)。


私はそこまでベーグラーではないのだが、今回立て続けに焼きたてベーグルに遭遇してわかったのは、
ベーグルは焼きたてで食べるものじゃないってこと。
冷めて、あえてラップなんかしちゃう方が表皮が膜が張ったようにひきが強くなる。
これをみんな待っているのか…。焼きたてかぶりつきが全てじゃないのか(笑)。目からうろこ。



とどめはデザート系。これはルビーグレープフルーツのデニッシュ。
バニラビーンズのカスタードをたっぷり敷いて、ジューシーなグレープフルーツの実と
ピスタチオ、粉糖。個人的にはカスタードの風味が好みではないが、
パリパリザクザクの食感、ちょっとお米的粉の「味」のある生地には「待ってました!」



これが! Kさん大推薦のブッタクーヘンの「端っこ」。
通販セットにも入っているブリオッシュのようなリッチなブッタクーヘンの切り落とし部分である。
これがなぁ…。首がぐにゃぐにゃするほどにウマイ…。
首だけじゃないな、全身の骨がぐにゃぐにゃしているわ、きっと(笑)。

本当に最高のひとときだった。パンがあり、料理があり(思いがけず!)、お土産があり。
そして、いくらしゃべってもしゃべりたりないくらい楽しい仲間たち。
この水海道という町(私なんて、この店ができるまで町の名前すら知らなかったのだ)に
またパン好きたちがこの職人のパンを求めて集結するだろう。


最後に。
お土産争奪ジャンケン大会では、その週末からNYCへ旅立つ
「ベーグルを穴から食べる者」(mi_wa命名(笑))が見事にジャンボフリュイをゲット!! 
なんてすばらしい餞別なのだ。
ただでさえボリュームあるフリュイ、8本分というから、とんでもないことだ。
しかも「味も8倍にふくれあがってるんですぅぅぅ!!」と後日恨めしい報告を受ける…(笑)。