103.とある6月、八王子パン遠足
例年よりも早い梅雨入りだった今年の6月。
前々から「久々に八王子にパン買いに行きたい」と思いつつも、
電車を乗り違えて福生に行ったりとかでなかなか実現できず終いだった。
(そのときの模様は2ヶ月前のDIARY、こちらから)
ようやくリベンジをと、満を持して八王子へと向かう。
今回はちゃんと青梅線直通には乗らなかったぞ、ちゃんと中央線乗ったぞ!(笑)
八王子エリアは、御存じBBBさんの他にも
近年すてきなパン屋さんが増えているよう。
気になるお店の地図を何枚か持参して、まずは八王子から。
体力(と気力)が持つ限り、パン屋さんへ行ってみよう。
*
BBBさんのオープン時間は11時から。
開店前には並ばなきゃならないので、ちょっと早めに八王子に到着した。
店の前を通りかかると、すでにパンは並んでいたけれど
まだ開店時間ではない。
昔から知り合いであるシェフのタケシさんに声をかけた。
そうだ…そういえば、タケシさんにはじめてお会いしたのは
4年前の6月6日、水海道だったっけ…。
(いや、2003年の11月だったか…)
開店時間まで30分。
すでにその時間の使い道は決まっている。
BBBのある、みずき商店街をそのまま北上すること2、3分。
近年、若い女性がかわいらしいパン屋さんがオープンしたということだ。
フランスで修行し、ご両親や妹さんと一緒にやっているそう。
お風呂屋さんを改装して、とのことだそうだけど…
わわ! かっわいい!! 絶対ここに違いない!
木なりの棚にパンを並べ、フランス雑貨をかわいらしく配置した
女性の心をわしづかみのお店!
すぐそばのBBBさんもバリバリのフレンチなブーランジェリーだけど、
こちらはまたカラーが違う。
パンを売るお母さんと妹さんの素朴な雰囲気も、
牛乳売りの冷蔵ケース(アイスクリームを売るような…)も、
温かみがあっていいんだぁ〜。
朝早くからやっているようで、
パンの種類は結構そろっていた。
今日はやわらかめのラインナップにしてみた。
お店の前のみずき商店街は、
シャレたお店もあったり、銭湯があったり、
なにより街路樹とせっとでベンチがたくさんある。
まさに「さぁさぁ腰かけてお食べなさいな」とでもいわんかのごとく。
…いや、それは私の思い込みなのだが(笑)
ベンチに腰かけ、サルドゥバンさんで買ったパンとジュースを食べはじめた。
フランス粉を使ったバゲットは、素朴で、
一番オーソドックスなカスクルートを作ってがぶりといきたくなった。
そう、ハムとチーズ。それが絶対に合うパン。
つんつんとハリネズミのようなパンはやわらかいクルミパン。
塩気がちゃんと効いていてクルミの美味しさが引き立つ。
スライスしたカンパーニュにペシャメルソースをかけて焼いた
キノコとほうれん草のタルティーヌは、
温めて食べ直したいところなのに、なんかとても美味しくて
まさかその場で食べきってしまったっ。
まあるいエッジの効いていないクロワッサンは(笑)
その名も「ボブクロワッサン」。
ネームプレートにかかれていた鼻の大きいくりくり頭の「ボブ」さんの
イラストがまさにその通りで(笑)ツボに入ってしまった。
フランスのリヨンで出会ったそのクロワッサンは、
甘めのテイスト。私は甘めのクロワッサンが大好きなので
もろ好みの味わいだ。バターだけでない、生地自体が甘いやつ。
「アメリ」は、クロワッサン生地にカスタードとフランボワーズを
挟み込んだヴィエノワズリー。
アメリも好きなはず! というコメントがフランスかぶれの私には
触手を延ばさずにはいられない(笑)。
*
かわいい女の子のパン屋さんのパンを
フランス娘きどりで道ばたのベンチでかじっていたら
…ああ! もうBBBさんの開店時間まで時間がない。
バタバタとお店に戻ってみると…
わー、10分前だというのに、もう5人ぐらい行列が。
私のあとには、さらに列がのびて開店時には10人以上の行列が…
オープン以来の来訪のBBBさん。
最初に訪れたときは、まだ工房と売り場が一体化した
お肉屋さん(笑)のようなお店だった。
(そのときのESSAYはこちら!)
あのころの店構えもものすごく好きだったけれど
あれから隣に売り場を増築して、さらに素敵なぶーるぶーるを完成させていた。
行列のすごさは相変わらずだけど、パンもその分、種類も量も増えて
もう名実ともに八王子ナンバーワンのパン屋さんの風格…!
やばい、たくさん並ぶフリュイや胡桃コショウをみると泣けてくる…
私は、やっぱりあの頃の水海道を思い出させるパンを求めて
フリュイやらリュスやらをたくさん購入した。
新しく増えたパンもたくさんあるのに、一度では味わいきれないくらいにあるのに。
わぁん、また来なきゃだめだ…何度でも来なきゃだめだ!
店の中には「アメリ」のポスター。
赤い木枠のショーケース。
そして、奥の方には私物と思われる、先ほどのご近所の女の子パン屋さんの
ショッピングバッグがおいてあった。
それをみて、この商店街の近くに住む人は幸せものだ。そう痛感した。
次の目的地に向かいながら齧ったのは、
焼き立てでまだ熱々の「ブールブール」。
ぶーるぶーるの自信作のクロワッサン。
水海道で食べたあの味とも食感とも全然違う、まったくのオリジナル。
バリバリっと層に主張があり、
猛烈なコクというか、バターの油分というか、
込み上げるものが半端じゃない。
え? え? な、なにこの攻撃的な味わいは?!
バターのコクとかでは説明できない、不思議な余韻!
甘くない、しょっぱくもない、なにか一方を強く指し示すような
牽引力のすさまじい味わいなのだ。美味しすぎる…!
「これはなに? これってなに?!」
そう思わされるパンほど、途中で止められない。
一気に食べ切ってしまった。
わかりやすい美味しさよりも、
つかみどころがない、言葉が見つからない美味しさ。
そういうモノの方が「瞬食力」が強い気がするのだ(笑)
ぶーるぶーる、あしなが3兄弟(笑)。
このためだけに八王子に来られる、おなじみのフリュイ。(2本も買っちゃった)
水海道時代に、実はフリュイよりも好きだった胡桃コショウ。
そして、BBBオリジナルの「ブラン」は、ホワイトチョコとマカダミア。
画像にはないけど、カンパーニュも激うまだった…。
くすんだグレーの生地に、粘着質でぺったぺたのやわらか〜いクラム。
ねっちりとクセのある酸味をまとった香りがぐわぐわくる(笑)。
リュスティックと、もちろんバゲットも一本まるまる購入した。
濡れたような、つやつやクラムのリュスも、バゲットも、
どちらも「炊きたてごはん」を思い出させるような甘さ。
そう、私のパン好き人生の歴史を語るのに欠かすことはできない記念碑的な味。
どれもが私には泣けるくらいに美味しい、懐かしい味。
懐かしさだけでじゃない。
もうここは全くのひとつの、東京を代表するパン屋であることを
痛感させられるものばかりだった。
「東京でどこのパンが美味しい?」
一番よく聞かれる質問でありながら
一番答えにくいような質問をされたとき
私は答えるかもしれない。
「八王子にあるんだけどねー。行く価値あるよ! 行くべきよ!」
自信をもって答えるかもしれない。
相手はきっと面喰らうに違い無いけれど。
「君にそれだけの情熱があるかどうか見せてごらん!」
……そんな、ちょっといじわる心をみせながら(笑)
*
みずき商店街からすぐのところに、バス停があった。
次に目指すのは高尾なのだが、なんせこのBBBさんは駅から遠い。
ちょうどよく、高尾行きのバスがきた。
ここは旅慣れした私のカンの見せ所。
とりあえず乗り込み、途中の西八王子にあるパン屋の近くで
下車してみた。前に八王子から西八王子のケーキ屋さんにいったときは
歩いたのだが、相当遠かったので…
最近、体力まかせでなく、それなりに交通費を使うようになった
mi_wa@加齢実感中、である(笑)
西八王子の駅から5分くらいの住宅街にある、
これまたお洒落なパン屋さん。
一見すると、美容室とも間違えかねないような。
一面ガラス張りで厨房の仕事が見える。
平台には、小奇麗なディスプレイのパンたち。
あれ? ここのパン…巻き込み型のシナモンブレッドにコロネなどなど…
もしかして、どこそこの出身では?!
私、わりと最近、いったかもしれないお店の…
(違ってたら恥ずかしいのでここでは書きません(笑))
焼き立てでやけど必至の明太チーズPIZZA!
明太子はそれほどきつくなく、やさしい塩気がチーズとあわさって美味!
てか、生地が美味しいなぁ〜。
カスタード入りのコロネは、冷蔵ケースにあったもの。
このこってり濃厚なクリームは、
クリームパンのカスタードというよりもまさにシュークリームのそれ!
焼いたあとに注入したのかも?
コロネの形状をキープできないくらいに大量に入っていて
持ち上げた瞬間に決壊、半分に折れてしまい思わず笑ってしまった。
なんてサービス精神のあるコロネだろう!(笑)
*
西八王子から1駅、はじめて降り立つ高尾の駅。
登山客が多く下車し、観光ムードに湧いていた。
私が今から目指すのは、ここからバスで山の方に15分くらいいったところ。
このパンとおかしの店を見つけたのは、
なにかの偶然だったと思う。
たまたま先日、PCのブックマークを整理していたら、
このお店のHPが出て来たのだ。いつブックマークに入れたのかは記憶にない。
HP自体はわりと地味なのだが、なぜか心に残っていたのである。
高尾に行く機会があれば…といっても、
あえて機会を作らねば行くことはなさそうだ(笑)。
今回、満を持して行ってみることにしたのだ。
高尾の駅から、どんどん山の方へ入っていく。
途中、大きな霊園がたくさんあった。
お墓参りのために年に1回くらいは来る人もいるかもしれない、
でも、パン好きがパン屋のために乗るバス路線ではないかもしれない(笑)。
降りたバス停の辺りは、そこまでローカル度は高く無い。
なんせ、目印がコンビニだからだ(笑)。
しかし、路地を曲がって坂道をあがると、
わわ、やっぱりローカルだ!(笑)
どんどんのどか度が増していく。
グルヌイユという言葉の意味は「カエル」。
なるほど、お店のすぐ側の道が「モリアオガエルの道」!(笑)
道の突き当たり、家の裏には裏山と畑が、というロケーション。
やはりここも「東京都であること」を忘れるような場所!
ごく普通の民家の軒先に…
そのお店の入口があるのだ。
御簾が涼し気で、田舎のおばあちゃんちに遊びに来た感覚を呼び戻す。
いや、東京のパン屋さんに来たという感覚はどこにもない。
どこか、信州とかの小さなパン屋さんに来たかのような…
お姉さんが二人でお店をやっていた。
とても気さくなお姉さんに、怪しいながら写真の許可をえたが
「あらら、汚くてちらかっててごめんなさいー」とな(笑)
えええーーーっ。こんなにかわいくてすてきなのに、どこがですか(笑)
自家製酵母のパンは、種類は多く無いけれど、
ひとつひとつを丁寧に大事だいじにつくっていることはひとめでわかる。
パンだけでなく、古道具屋さんにありそうなアンティークな家具たちも
きっと、お姉さんたちの大事だいじな家族なんだろう。
あちこちに飾られたカエルさんたちも…
お菓子もどれもツブツブ感のありそうな素朴なものばかり!
お姉さんにあれこれ相談して決めたのはにんじんのクッキー。
じょりじょりっと粗挽きのつぶつぶが舌に歯に響く。
にんじんの味がそのあとに訪れてびっくり。ほんとにニンジンです!(笑)
感動的なのは、全粒粉入りスコン!
粉の素朴な味わいに、じょりじょりと口に当たるあの食感。
カラダにいいから、ではなく、美味しいから食べたいもの。
必要最小限に抑えたであろう砂糖と油分のサポートが、実は最大限に美味。
最高に美味しい、素朴でありながら贅沢なスコン!
お友達のお菓子作家さん(カシュカシュさんとおっしゃるそう)の
作るお菓子も並べられていた。クッキーを購入したが、
そば粉の香りがして美味! ほんっとに素朴。なのに、やはりそこはプロの味。
パンももちろん美味。
ベーグルの表面のバリッとしたハードさ&クラムのきゅっと引き締まった口当たりも好き。
いちじくくるみも、いちじくがとにかく美味。
イチオシは山型食パン。
てりのあるパリパリの表皮に守られた、くすんだ色のクラム。
この手の酵母パンの食パン好きの方なら経験あると思うけど、
ざらざらとした切り口を、指で削いで食べたくなる衝動を止められない(笑)。
一見シンプルだけど、ほんのりと甘くて余韻がある。
できればなにもぬりたくない、すでにこの完成された味に
手を加えたくないなぁ〜とすら思う。
こちらは食べる場所がないので
(お店の前のベンチは、ひっきりなしに訪れるお客さんのためにどうにも座りにくい(笑))
裏庭のコケの生えた老木に腰掛けさせてもらいながら齧った。
アリンコと格闘しながら、時折指す初夏の日射しに照らされながら、
「なんとまぁ遠くに来たものだ…」と、説明しがたい愉快な気持ちになった。
本当はもう2軒、八王子の別の路線にあるパン屋さんにも
行ってみようと思っていたが、
ここに来て、もう満足すぎて、ここで締めくくろうと思った。
私にしてはよくばりすぎた八王子のパンめぐり。
また改めてくればいい。
何度でもくればいい。
八王子とはいってもここは東京なのだから。
決して遠すぎることはないのに、
知らずにいた、東京のはじっこにある小さな幸せ。
梅雨の中休みの、東京の小さなパンめぐり。
*おしまい*
*
*番外編*
福生でもそうだったけど、どうも締めはラーメン、というパターンが多い(笑)。
八王子はどうやら「八王子ラーメン」という、
地ラーメンというかラーメンジャンルがあるらしい。
特徴はたまねぎのみじん切りが乗っていること。
八王子駅から徒歩圏にあるこちらのラーメン屋さんは、
なんと500円のラーメン! しかも学生さんは100円引きだという!
だからわんぱくな高校生がずらっと行列していて、パン好きお姉さんはちょっと座持ち悪い(笑)。
まだ16時だというのに、もうこれで店じまい、私でラスト3の客。
煮干し出汁の醤油ラーメンは、細めの麺と絡まって、シンプルながら王道。
たまねぎのみじん切りは思ったよりもやさしめで存在感は薄かったけれど
味玉が旨かったわぁ〜。まさかの味玉追加おかわり♪
2008.6.7
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