102.トスカーナの我が家とパン@西麻布ダノイ


「パン食うLOVE」の恒例イベント、おはなしの会。
会員制になってからの「パン食うLOVE」の活動はめちゃくちゃ精力的だ。
これまで数カ月に1回、…いや、下手したら半年1回がやっとだったような
おはなしの会の開催が、月1回ペースにアップ。
魅力的なイベントが目白押しなのは嬉しい悲鳴だが
パンクラ貯金もせねばヤバい(笑)。

今回は、西麻布の老舗イタリアンレストラン、ダノイさん。
数年前にパネッテリアも併設し、
パン好きさんにも名前が浸透しつつあるお店だ。

私はパネッテリアができる数年前、
こちらにランチに訪れたことがある。
よくも悪くも家庭的な雰囲気なのだが
パスタの美味しさが印象に残り、品川の支店などにも足を運んだりもした。

まさか数年後に、パン屋さんをオープンさせることになるなんて
しかも、そこに招かれたのは、なんと神戸の某有名ブーランジェリーで
腕を磨いた若手シェフだというから驚きだった。




美味しいパンを食べると、美味しい料理が食べたくなる。
パン好きではあるけれど、それ以前に美味しいものが好き。
今回、パンだけでなくイタリア料理も当然出るとのことで
喜んですぐに申し込んだのだが…

フタを開けば、こんなに満足をして帰路につくことになろうとは
当初は思いもよらなかったのだ!





お店の前では、ダノイオーナーの小野シェフが出迎えてくれた。
先にパンを覗いていこうかと思ったら
どうやらメンバーさんたちで満員(笑)。
あとでゆっくり見ることにしようと、地下の「我が家」へ潜っていった。

料理が出る前に、最初にシェフブーランジェ(あー、どうしてもフランス語になっちゃいますな(笑)すみませんー)
村田シェフが、お土産用のパンの仕込みの実演をやってくださるのだ。

たぶん、その場に居合わせた人全員が思っただろうが、
村田シェフはとてもイケメンである(笑)
すごく気さくな好青年、やばい、お手元見てません、私(笑)。

このポテト入りのフォカッチャは実にシンプルなレシピだ。
粉、粗いマッシュポテト、ドライイースト、水をまぜ、
ざっくりと捏ねていく。

さらに、食感を楽しむためのたまねぎスライスも投入。
ざっくりざっくりと捏ねて、以上、終了!

あとは発酵させて成形して二次発酵してから焼き上げる、だけ。
えーーっ、これなら私でも作れそう?!

今日出てくるパンたちは、どれもシンプルな、
料理に合わせたパンばかりのよう。
このお土産用のフォカッチャを合わせて、全部で10種類のパンたちが
この後、料理とともにサーブされるのだ…。
しかも、渡されたメニューをみると…
ひぃ! しっかりたっぷりフルコースじゃないですかっ! 嬉しい誤算!





オーナーシェフの小野シェフが、料理について語り、
シェフブーランジェ(だから仏語(笑))の村田シェフがパンを語り、
その裏で厨房でもくもくと料理を作ってくれるのは若手の河村シェフ。
この3人の素敵なシェフたちが私たちだけのためにパンと料理とトークを
繰り広げてくれたのだ。


このダノイは、オープンしてから15年もたつ老舗。
シェフは以前はフレンチを学んでいたのだが、
独立して店を出すにあたって、イタリアンの店をやりたいと思い、
言葉もわからぬイタリアに単身乗り込んだんだそう。
そこで出会った、トスカーナはフィレンツェの町。

そう、私もフィレンツェに去年赴き、なにを食べても美味しい
豊かな食文化に感動を覚えた。
(フィレンツェの旅行記はこちらから)




豆と野菜のスープ
減塩のカンパーニュ

トスカーナの料理は結構塩気が濃い、はっきりした味のものが多い。
だから、パーネトスカーナ(トスカーナのパン)は、無塩なのだ。
そのまんまで食べたらはっきりいって美味しく無い。
でも、パンと合わせて食べた時の美味しさの変貌ぶりは驚愕ものなのだ。

ここで最初に出て来た減塩のカンパーニュは、
パーネトスカーナのように、無塩ではないのでそのまま食べてもとても美味。
だけど、塩気が控えめなので、やはり料理を意識して作られたパンである。

まずひと皿目は、10種類くらいの野菜を蒸し、豆の茹で汁とともに
煮込んだスープ。量はお上品だったけれど、
これがものすごーーーく濃い風味!
ええ?! 肉も使わずにこの深い出汁が出るの?!
ローズマリーの香りも強く出ていてとにかく絶品!
一発目からガツンとやられてしまった。

そしてパンが、実に良いはたらきをしてくれる。
濃い口の料理には絶対にパンが欲しくなる。
スープをぬぐうようにしてすっかり頂いた。





トスカーナ風生ハムとサラミの盛り合わせ
グリッシーニ2種(プレーン/アーモンドと黒胡椒)

お次は、グリッシーニ!
これに、生ハムやサラミを巻いて食べて欲しい、とのこと。
ちゃんと美味しい食べ方を提案してくれる。
生ハムもとてもいい、脂に酔わないもので美味ー!
さらに、ちょこっと添えられたレバーペーストがさらに絶品!
アンチョビとケッパーが入っているんだそう。

やっばいなぁ…
全日本麦酒党の私、ワインじゃなくてビールが欲しいです!(笑)
(実際に、無理をお願いしてビールを出して頂いた…お店の方、感謝します!)



ギアラ(牛胃袋)とビエトラのトマト煮
アルタムラ ダノイ風


待ってました、臓物系!(笑)
そう、トスカーナではとにかく臓物をよく食べるのである。
私は向こうでとにかくトリッパばかり食べていた。
ここでは、4番目の胃袋であるギアラ。いい出汁が出るんだそう。
それにビエトラ (=普段草とも呼ばれる野菜。関西ではメジャーなんだそうで) とトマトを煮込んだもの。

これももうもう、首をのけぞってしまうほどに悶絶ものーー!
自分の好みのド・ストライクの味なのである!
出汁が濃くて、ちょっと濃いかも…くらいな料理が大好き。

だって、
こういう料理はパンが食べたくなる。
パンを食べたら料理が食べたくなる。
(ついでにビールも飲みたくなる(笑))
この幸せなスパイラルに延々とまかれてしまうのだ…

パンがこれまたすんごく美味!
セモリナ粉100%を使用したパン。
アルタムラという町の郷土パンがあるそうなんだけど
(単に私は「村田」から来ているのだと思っていた…ばかな(笑))
実際よりも形状を小さく成形しているから「ダノイ風」なんだそう。
「ちょっと逃げ道を作るために○○風ってつけちゃうんです(笑)」とシェフ。

わーーん、この煮込み、もっと食べたい、、、
追加料金払ってでも食べたい、、、
これ、わしわしとボール一杯食べられたら、、、
まじでこれを食べるためにダノイにまた来なきゃ(笑)



プティ パン コンプレ

パスタが出てくる前に、きちんと焼き戻されたコンプレがサーブされた。
こちらのパンの焼き戻し、実にパン好き的!(笑)
ちゃんと霧吹きをしてから、外はカリッと中はふんわりと、
どこも焦がすところなく理想的に焼き戻してくれる。
そういうところも、レストラン好きパン好きにはツボなのだ。

しかもまぁーーー
このコンプレがめっちゃ美味っ!!!
そう、よく「パンが美味し過ぎて、料理がかすむ」とか
「パンをついつい食べ過ぎて料理が来る前におなかいっぱい」とか
レストランでは往々にして「パンが美味しすぎることの功罪」ってあるのだけど
(だからわざとパンのレベルをさげる店もあると聞く。私はいくらでも美味しくしてくれてもいいのにー!(笑)
まさにこのコンプレはその典型。
美味し過ぎて、料理が来る前に「そのまんまで食べたい…」と
思わされるものだった(笑)。



キャベツとアンチョビーのスパゲッティーニ

にんにくのいい香りが辺り一面を包みだした。
これが、ダノイの名物パスタ。
もともと賄い用のパスタであり、「焼そば」と呼ばれたりするそうだが(笑)
一人あたり、しっかりたっぷりと出されてしまった。
まじで! でも食べるよ、食べ切るよ?!
とにかくできたてが勝負なので、出されたらすぐに食べること! との指令。
言われなくてもそうしますとも!(笑)
私も、友達も、無言で瞬食!

とにかくニンニクの香りとアンチョビの塩気が全面に出て
麺は固めでしっかり。キャベツが良い意味で下町風。
さすがにこれを食べているときだけは、パンのことは放置だったわー(笑)



フォカッチャ
バゲット
レーズンとクルミのカンパーニュ


さすがに、パスタの後に出てくるパンたちは
お腹がそろそろきつくなってくるころなので
食べ控えよう…と思ったのだが、
出されたパンはほぼすべて、その場で、食べきってしまった。
持ち帰るパンがほとんどなかったことに自分でも驚いた(笑)



白金豚と白いんげん豆のトマト煮

最後の最後にでてきたのはメインのひと皿。
先ほども「トマト煮」が出て来たのだが、
これはまったく印象の違うものだ。
いや、こちらの方がより「トマト煮」らしいひと皿。
具がしっかりと煮込まれ実に美味!
輪郭をしっかり取った塩気がきちんと効いた、
これも自分的ストライクな料理だった。



パン・ド・カンパーニュ

ああ、
料理を食べたらパンが欲しくなる!
パンを食べたら料理が欲しくなる!

このカンパーニュは、皮の焦げた部分が甘苦く、
めちゃくちゃ美味しい。
焼き過ぎとは決して思わないけれど、
「焼き過ぎって言われることもあるんですよねー」とシェフ。
えええーーっ、ここが旨いんじゃないか…。

本当に、パンと料理のバランスがなんて絶妙なコースだったことだろう!
しかも、どれも「家でも作ってみたい」と思わせるものばかり。
決してこ難しい料理ではない、家庭的な、でもやっぱり
「なかなか同じ味が出せないわーー」なんて悔しがるのも容易に想像できるんだ。



ブリオッシュ アランチャ ババ風 ジェラート添え

最後に出て来たデザートは、まるまるブリオッシュ!
たっぷりと洋酒で湿らせたババは、それだけで酔いが回るほど。
ブリオッシュだけ、ジェラートだけ、で食べると、
そうでもないのに、一緒に合わせて食べた時の相乗効果にびっくり!!
どちらが欠けても完成しない、二つで一つの絶品デザートだった。



ほんっとうに満足度の高い、高すぎる、濃密な会だった。
改めて、「美味しい料理には、美味しいパンが不可欠」であることを痛感させられた。
3シェフもほんっとうに良い方ばかりで、
ファンにならない方がウソだ。
本当にありがとうございます…

最初にデモンストレートした、ポテトとたまねぎのフォカッチャ。
(画像がしょぼくてごめんなさい…)
温め直すと、優しいまろやかな甘さが広がる…!
あの楽しくて美味し過ぎたあの会を、また舌と脳裏に再現させながら
幸せな朝食を迎えることができたのだ。

地上のパネッテリアで購入したパンについてはこちらからどうぞ)

改めて食べたパネッテリアのパンたちにもすっかり魅了されてしまった。
これから、じっくり付き合っていきたいお店がまたひとつ増えてしまった。

かつて一度訪れたことのあるお店。
その時の印象がそこまで刻まれたものではなくても
また再度、じっくり向き直させてくれる。
またそこに引き戻してくれる。
そして大ファンに生まれ変わらせてくれる。
それは、パン好きにとってはなんと大きな収穫だろうか、と。

また、「パン食うLOVE」のイベントには
大きな借りができてしまったのだった(笑)。
2008.5.17



ESSAY TOP

HOME




-----------------------------823378840143542612896544303 Content-Disposition: form-data; name="userfile"; filename="" Content-Type: application/octet-stream